古狩人、隻腕にて   作:CATARINA

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更新凄い前だったんだねこれ。
ちょびちょび再開…


英雄ないし咎人

夜風の中でさえ熱さを感じ、臓腑を灼き、身を焦がし、辺りからは溶岩の香りでは隠せない死の香りがする。

 

つまり火の国は、既に国として崩壊していた。

度重なる竜の襲来、凝り固まった生贄の文化、ギルドの発言すら届かぬ僻地。

まぁある意味お前の故郷より酷かったと言っても問題無いな。

「そもそも何時火の国に行ったんですか?」

丁度二十年前だったか、多分。

一回お前も連れて行ってるが流石に覚えちゃいねぇか。

カティ姉に怒られたから以降は置いていったんだが。

「何回聞いても先生よりもネコ嬢さんが歳上というのが信じ難いんですよ………本当です?」

本当だよ、俺がいたいけな可愛らしいショタだった頃からあの人はあのままだぞ。

ネコ婆さん曰くまだ年齢は二桁止まりらしいからあんま歳の話はしてやんな。

その点(ミルシィ)の方は俺と同い歳なんだぞオメー。

 

……あの頃は俺も若かったモンで上手く行かなかった事も多い。

コイツもその一つだからな。

 

機械で組まれた左手を軽く掲げ嘲る様に苦笑する。

モミジ=カイニスは知っている。

師は失った腕を自分の戒めとする一方で、誇りであるとも感じている。

 

だが長々と生きて、狩人としての俺は理解した。

狩人は狩人であって、狩()でしかない。

故に決して忘れる事無かれ。

狩りに誇りを。

強敵に敬意を。

そして命を軽んずる事なかれ。

 

 

 

さて、話を戻そうか。

あれは……

 

 


 

同時刻、とある詩人謳うは英雄譚。

火の国を救った龍狩りの狩人を讃える賛美歌。

 

 

 

 

これなる話の舞台、此方より彼方、彼処よりも遠き果てに火の国あらん。

死と灰と数多の獣の住まう地は果たして滅びの定めを歩む。

然し、焔来る龍狩りの狩人により定めは覆る。

外人であり鬼獣の如き風貌の狩人を人々は恐れた。

されど狩人は強し、苦境など歯牙にもかけぬとばかり。

溶けた岩石吐く魚竜も、爆砕の力持つ獣竜も、龍蟲纏う牙竜さえ止めること適わず。

更に火の国の護りは狩人独りに偏り、民は嫌悪示すが頼らざるに得ず。

二年過ぐるに悪感情薄れ、敬意さえ受ける事少なからず。

多くの若人を狩人に育て上げ、火の国を建て直す。

ただ一人これを善しとせぬ者も居た、それは火の国が巫女その人。

巫女は劣るとはいえ火の国一の狩人であり、それ故に憤る。

「何故外人なぞに頼るのか、愚かな」と。

孤高の巫女を変えたのは奇しくも巨竜。

獄炎に座する者、火の国を落とさんと欲するに狩人、亡国と贄__即ち巫女を永らう。

狩人の斧が覇竜の首を絶ち、その牙を宴の肴として皆湧いた。

 

 

 

然るに之、英雄譚。

然しこれよりはその終焉。

如何な英雄にも終わりは避けられぬ。

 

 

 

更に一年の後に炎妃、火の国を襲う。

巫女と狩人、死力を尽くしてこれを退けんとす。

狩人の武具は黒く炭化し、巫女の顔に消えぬ疵を遺しながらもそれは果たされた。

傷付き座り込む二人に牙向くは猛追する炎帝。数刻と休ませる事も無く襲い来る。

武具すらなく逃げ惑う中炎帝が巫女を捕らえた。

命を薄紙のように引き裂くその牙。

その牙が向けられた刹那、狩人身を呈して巫女を庇う。

堅牢な防具を、鍛えられた骨と肉を、臓腑までを貫き、その命は潰えた。

屍となった狩人に涙を流して慟哭する巫女、帝は未だ君臨し続けるが。

だが巫女の泪は奇跡を起こす、物言わぬ屍となった狩人の五体に力が漲る。

その全身を貫いて尚留まらぬ程の棘と膂力を持って。

 

___狩人は龍に成った。

剛力比類する事無く、炎帝を圧倒しその豪腕角を砕く。

深手を負い逃走する炎帝を見やり、狩人は満足気に倒れ伏した。

龍狩りの宿命ある限り彼の者に平穏無く、彼の者は龍に憑かれている。

龍狩りの命限り、龍の脅威は去る事無し。

民はそう気付いた。そして巫女に懇願した。

狩人()を討て』と。

その瞳から出ずる涙は大河となるも尚止まず。

龍と化した狩人はその白刃を受け入れ微笑んだ。

「此度の務めは龍を討ち祓う事、お務めを果たし下され巫女殿。」

 

 

 

 

後は語られて居らず、ある伝承には狩人の後を追い命を絶ったと。

涙と共に感情を喪った巫女は火を治める冷酷な王となったとも伝え聞く。

 

どちらにせよ今は昔の英雄譚。

語られる事の無い追憶かな。

 

 


 

『フェックショォォォン!!』

「女性の前くらいデリカシーというものがないんですか……」

どっかで噂話でもしてんのだろうさ。

なんせ俺は有名人だからな。

「殆どの人は御伽噺としてですけどね。」

 

まぁそんな面白い話でも無かったろ。

死にかけて疎まれて追い出された、それだけだそれだけ。

ただ偶に懐かしくもなる、歳は取りたくないもんだ。

『ニャアー』

……そういや猫連れて来てなかったな。それはお前のか。

「私はユクモ村の頃から一緒の子を連れてきてますよそりゃ。

弓手が一人で戦うのはリスクが大き過ぎますから。」

俺はそんなに銃手(ガンナー)はやらないからな。ま、どうにかなる___モミジ、武器!

 

近い。間違いない。

なんで気付かなかったんだ?

 

龍が___

 

 

 

その瞬間、船室が持ち上がるように破砕され、垂直に傾く。

咄嗟に猫を蹴り飛ばして船室の外に出すと同時に刺客とモミジを掴もうとしたが床が抜け、掴んだ格好のまま空に吸い込まれる。意識を失っている不埒者はともかくモミジは()()()()

だから僅かに残った船室に向けて投げる、反動で自分は投げ出されてでもも。

「先生!!!」

倒れたまま必死に伸ばされた手は届かずそのまま何かの背を転がり落ち、海に呑み込まれて行った。

 

 

 


 

「フィー!フィー!」

『朝っぱらから騒がしいんですよ貴女……そんなんだから彼にも逃げられるんです。』

「黙れ小僧!お前に『若い子にはもう分かりませんよそのネタ。』なん、じゃと………」

純白の少女と対比する様に呆れ顔をさらけ出す赤衣の男。

強大な龍の姿に反して人の姿を取る時というのはどうしてこう俗っぽいのか。

 

彼らは総じて人より非常に長く生きる。

そして比類なき程に強大だ。

故にこそ日頃をぼんやりと気楽に過ごすことが多い。

 

「んー?」

 

()()()()()を除いては、だが。

『彼』にとって一番の好敵手は間違いなくかの龍だ。

だがしかし、最も多く命のやり取りをしたのは彼女だった。

あまりにも小さなその体躯で巨龍を退ける姿に惚れ込み、戦い続けた。

どんな逆境もそれ以上の気迫をもって突破する彼___

 

一番の遊び相手の気配が無い事に気付いた幼女は大空に飛び出した。

 

 

あそびにいってくる

 

汚い書き置き一つ残して。

 




書き始めたの3か月前。
完成が遅すぎる。
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