古狩人、隻腕にて   作:CATARINA

9 / 9
過去話が気になる人も居たっぽいけどそっちを真面目に書くとR18Gになるよ…… 主人公であるヴェント君はココットの英雄達初代狩人世代の二代くらい後の世代って設定だから今のハンターみたいに堅牢な防具も、モンスターに対応する適切な対応も広く知られて居ない。 殆どの狩人は下位クラスで留まり、上位クラスは年に十数名。 G級に至ったハンターも居なくは無かったけどね…… ハンターズスクールも出来たばかりで、今みたいに闘技場で温室栽培する事が出来ないから教官同行で狩場に行って実戦を積み重ねるカタチ。当然目標外のモンスターが乱入してくる事もあり、才能の無いハンターは生き残る事すら出来なかった世代だったり……


火と火に交わる者たち

「装衣は着たか?クーラードリンクは?砥石の準備はOK?」

『……うっとおしい。』

 

最近の子はドライだ、結構傷付く。

だが案外、こういった冗談が狩猟には肝要だったりする。

自らの行為は血に塗れて、それでも尚尊いモノだと。

誰かの明日を護らんとする使命であると。

そう思わねば耐え難い。

気が触れて人と獣の区別さえ付かなくなった者が居ない……訳ではない。

だからこそ狩人狩り(ギルドナイト)の存在がある。

ある程度長く狩人で居ればその事実に気が付くだろう。

 

 

 

 

見覚えのある顔立ちに、武器。

何より所作が最初の頃のアイツによく似ている。

元より頭脳明晰という訳でも無いが……耄碌したつもりもない。

だからこそ観察処分として手元に置いといてるのだから。

 

『で、お前は何者なんだ。』

龍結晶の転がる大地を歩みながら問う。

「火の国から来た……それだけ。」

『嘘が下手だな、よく似てるよ。』

 

今更……今更俺を狙う理由が無い。

ただでさえ人手が足りず、常に滅びる危機に晒されてるのだ。

そんな中、態々俺のところに送ってきた。それも新天地まで。

ならば恐らくは、俺に何かして欲しいのだろう。

血によるモノか、荒削りながら才覚は申し分無い。

 

『多分だが巫女(アレ)の親類だろう、お前。それもかなり近い。』

「………」

歳の離れた妹とか従姉妹とか……遠くても姪程度の。

詳しくは聞かんよ、今のところはな。

戦えるならそれで良し、だ。

 

 

 

「よし()()()。今回の狩猟対象を答えろ。」

爆鎚竜(ウラガンキン)、それと__』

『はい!溶岩竜(ヴォルガノス)です!』

 

お前が答えてどうする……まぁ良い。

 

「この二体の生息域は非常に似通ってるが……魚竜種である溶岩竜を探すのは骨だ。

そこで獣竜種である爆鎚竜を優先して捜索する。獣竜を追う時の一番の目安は足跡だな」

 

そう言ってヴェントは足元の窪みを指差す。

ピッケルを突き立てて漸く削れるような硬質な大地がぐっぽりと抉れている。

獲物の重量はあまりに規格外なのだ。

 

「基本的に獣竜種は強靭に発達した後脚と退化した前腕を持つ。その分身体は重く、出来る行動にはある程度の縛りが存在するがな。例外として、砕竜(ブラキディオス)のように発達した前腕を主武装とする種も居る。大柄な体格故に環境への適応能力も高く、地続きなら飛竜以上の生息域だ。」

『……? でも獣竜なのが分かっても、ウラガンキンとは限らない……?』

 

ふむ、良い質問だ。

 

「確かにそうだな。爆鎚竜は獣竜でも群を抜いて重い、足跡のクレーターがかなり深いんだが……それ以上に確証を持たせるなら……あった。このスパイク跡と鉱床の食み跡だな。食み跡は言うまでもなく、スパイク跡はウラガンキン固有の特徴で、身体を丸めて転がる事で高速移動と攻撃を両立している訳だ。」

 

さてと、能書きを垂れてる間に到着してしまった。

爆槌竜ウラガンキン。

 

全身がとにかく固く、とくに剣士は狙い所に苦心する。

だが反面……硬いというのは案外脆かったりするのだ。

 

進行ルートに掘っておいた落とし穴が爆槌竜の重量で作動。

それを確認した後に大タル爆弾Gを満載した荷車を坂の上から転がし、顔面に的中。

同時にモミジによる曲射が命中し、爆槌竜は爆炎に包まれた。

間髪入れずに剣士二人は接近。

顎が破壊されてる事を確認すると剣斧の狩人は切り上げた斧を変形、剣での連撃連携に繋ぎ破損した顎を深々と抉る。その背後から走る双剣使いは男を踏み台として跳躍。

リーチの短さ故に爆槌竜へと有効打を与えにくいと空中へと飛び上がり、転がり落ちるように切り刻み。

そしてその背に刃を突き立て、幾度となく痛打を与えて体勢を崩そうとする。

 

漸く穴から這い上がった爆槌竜は身を砕かれる激痛に悶えつつ、背の異物を振り落とさんと__

刹那、その視界が漆黒に塗り潰される。

弓手より放たれた矢が寸分違わず眼球を抉り穿ったのだ。

双剣の狩人がモンスターの体勢を崩し、よろめかせたと同時に隻腕の男が鉤爪を突き刺し接近、

騎乗したまま属性解放突きを放ち、強打をもって壁に突き飛ばす。

強烈に頭部を壁に打ち付け、その他にも多くの深手を負った爆槌竜は朦朧とした意識の中、吠える。

 

空中で剣を斧へと換装し、粉砕した顎を貫き、脳まで届かんと切り裂く。

その一撃が致命傷となり、爆鎚竜は物言わぬ骸となって斃れた。

 

 

 

「お疲れ!なんだ、良い動きじゃねぇの。」

ガシガシと防具の上から頭を撫でる。

旧大陸に於ける、とうに上位中堅程の実力はあるだろう。

 

……避けられた。オトメゴコロ、ムズカシイ。

「そも乙女心というか、普通2m超えの大男に突然撫でられたら即通報ですよ。」

『なるほど、ジェネレーションギャップという奴だな。頭が痛い。

俺はお前らより二十歳近く上なんだよ、許してくれ。』

 

今でこそギリッギリ中年狩人の風貌だが本来は隻腕の廃人だ。

世代が違ぇよ……

 

『俺ん時は男女混合のパーティなんて恋人に親子兄妹くらいだしな……

男女間のトラブルは解決が無茶苦茶ダリィから仕方ないんだが。』

「………経験談?」

 

ノーコメントだ。プライバシー保護の為に黙秘権を行使させてもらう。

休憩が終わったなら次行くぞ次。

なんだかんだ仕事が立て込んでるんだ。

そして陸生の魚竜種は教える事も多い。

 

まずは呼吸だな。

水棲魚竜の殆どはエラと肺のハイブリッドだ、陸上でも活動可能になるからな。

じゃあ陸生魚竜だが……よく分かってねぇんだよな。

種ごとに違うというのが定説となっている。お前ら、潜行竜を狩った事は?

 

「二、三回なら……」

『私の管轄域には居ないんですよね、昔に一度だけです。』

 

まぁ見た目が分かるなら良い。

アレはエラと肺の混合か肺のみかで中々結論が出てねぇ。

捕獲例も多い筈なんだがな。

ま、主体は肺の場合が多い。

あんだけ大型の身体に酸素を巡らすにはエラから取り入れるだけじゃ足りん。

俺らも泳ぐのは走るより疲れるだろ?

「私泳げませんけど?」『右に同じく……』

 

oh……つまりどういう事かと言うとだな、定期的に浮上してくんだ。

二秒以内に飛び退け、総員戦闘配置。

 

黒く冷え固まった溶岩が赤熱し、巨大な魚竜が姿を表す。

魚竜種はモンスター全体を見ても比較的大柄な体躯となる場合が多い。

それにしても……それにしてもそれは大きかった。

最大サイズで2600cm弱。それが図鑑に於ける溶岩竜の大きさである。

 

『30mは……』

「いや、35mはあるだろうなこりゃ、カルシウム摂りすぎだ。

新大陸の溶岩竜は一回り小さいと聞いてたんだが……クソガキ(ルーキー)め……」

 

師弟のボヤきを尻目に、双剣の狩人は突貫した。

溶岩の中で生活するヴォルガノスに火属性は全く通らないが、

身に纏う溶岩を熱して柔らかくする事が出来る。

つまり直接ダメージを与えるのは自分たちの仕事である。

狩人たちは各々の武器を抜き放つ。

 

 

 

溶けた溶岩の隙間から切りつけ、或いは剥がし。

着実に手傷を負わせていく。

 

抜刀、斧で切り上げ、渾身の力を込めた切り降ろし、地面に着く直前で刃を横回転。

遠心力で切りつける刹那、剣に切り替え三閃、尾の薙ぎ払いを踏みつけて背鰭を切り裂く。

剣斧はかなり重く、本来その動きは大きく制限される。

狂気じみた鍛錬と経験が一つの技術として武器の限界を超越しているのだ。

命を賭した狩りの最中であると理解していても、見惚れてしまう程の動き。

隻腕であるハンデを感じさせない程に。

 

ぞっ、と。

肺に残る息を全て吐き出し。

ごう、と。

息を吹き返す。

 

呼吸を忘れる程、攻撃だけに特化した連撃。

石を打ち鳴らす様な音と共に吐き出された熱線を身体を捻りながら回避し、

懐で身体を捻り、独楽のように溶岩竜の周りを回転しながら肉を削ぎ落とす。

 

それはとある地方にて見出された()()の妙技の一つである。

異なる武器でさえ同様の技を放てるほど、狩人の技術は洗練されていた。

全身を削がれ、竜は血溜まりの中に倒れる。

 

『次行くぞ次、後二つ纏めて受注しちまったからな……』

 

()()()()

その名に恥じず、灼けた大地に零れた血は揮発し、噎せ返る様な香りを漂わせた。

 

 

 

 

 

 

漸く終わったぜ……

つかれた、温泉入って寝たい。

 

調子に乗ってクエストを纏めて受注したのが良くなかった。

もう若く無いのだ、ある程度動ける歳に戻ったとしても。

アラフォーの狩人は十二分にロートルの部類なのだった。

 

「先生、今の人はアラフォーもロートルもあんまり使わないみたいですよ。」

マジかよ、じゃあどうやって表現すんの?老害とか?

ワッ……!!辛辣過ぎてないちゃった……!!

『事実を陳列してるだけ……?』

 

止めておけ、死人が出るぞ。主に俺だが。

 

というかさー、俺の謎テクニックに感想とか無いわけ?

普通こういうのに興味持って、『どうか教えてくださいお願いします』とかさー。

それで俺が『仕方ないなぁ……』とかやるモンじゃあない?

 

「出来る気がしませんし……」

『普通に双剣でやれば良いだけ。』

 

ワァッ……

 

メセポルタよ!私は帰ってきた!「何処ですかそれ……」

知らないのか、まぁ仕方ないが。

彼処はヤバいぞ、俺と同クラスの狩人が複数人居るくらいだったぞ。

ラスタの奴らは元気だろうか……揃いも揃って濃い連中だったが。

 

俺らの居住スペースは何を思ったか三人一セット。

あのオッサンは何を考えてるんだ……

総司令、ソードマスターは両方知ってる人だった。狭いね世界。

この二人が居るってことはまぁ大団長は想像付く。

ラージャンみたいな大男って時点で一択のサービス問題。

 

このチーム編纂者と組んでる奴が一人も居ないのがそもそも人選ミスだよなぁ。

調査チームというよりかは駆除チームとして扱われてる気がするぜ……

どっかに編纂者付きの若いのは居ないモンか。

二人面倒見てる以上三人でも誤差だろうし……一々報告書を書くのは俺なのだ。

このボンクラ共にそんな細かい作業は無理だ。

 

アイボウ!マッテクダサイヨ,アイボウ!

ドンクサイワネ!コートニシチャウワヨ!

 

姦しいなぁ。第六期団で来た奴らは皆若い。

 

だからこそ俺みたいなロートルにも声がかかったんだろうが。

こんな生き方をしてる以上、畳の上で死ぬ奴のが少なかろう。

だとしても、今を生きる若者には緩やかに死んで欲しい。

そう思わずにはいられなかった。

 

らしくもない……寝るか。

 

 


 

 

美しい、と。

血と死の香りが漂う狩場で確かにそう思ってしまう程に。

流麗かつ苛烈。傷一つ負う事無く狩りを終える狩人。

生まれは確か。東国の果ての果て。

辺境で育ち、培った技を持っていれば当然、奴は強かった。

名だたるモンスターを蹴散らし、或いはG級に届くか。

俺よりも……否、誰よりも期待されていたのだと思う。

 

狩人を長く続けて、実力は得た。

技術も知識も、人脈もそこそこは。

ある意味調子に乗っていた俺に。

身をもって教えてくれたんだ。

 

人間より強大なモンスターとの戦いでは案外、運の良い奴が生き残る。

運の良い奴()()が生き残るのだ。

 

 

 

 

嫌な夢を見た。

年端も行かない幼子のように何度も反芻している。

くだらない、実にくだらない。

今更__何人も見殺しにしたのだ。

いつか飛竜を討ち取る英雄になるのだと息巻く若者。

今度子供が産まれるのだと、笑っていた同期。

 

そしてお互いに知己と呼んだ盟友。

 

寝台に横になったまま、喪わずに残された腕を掲げる。

幾らか若返り、辛うじて戦う力を取り戻した腕。

それでも尚、酷く老いて頼りなく見えるのだ。

 

夜明けは近く、仄かに地平から差す光が大地を照らす。

 

寝台からゆっくりと身体を起こし、正確な時刻を予見する。

霜が降りてるだろう外気の寒さを肌身で感じで身震い。

寝台に戻り、悪気なく勝手に入り込んだ裸の愚か者(バカ弟子)を抱え上げ、凍てつく外界に放り投げた。

死にかけのマッカォの様な喚き声を伴奏として、俺は着慣れた装備を纏う。

 

グェェ!イケズ!フノウ!ED!ヴェクション!!!  ヤッパリムリガアルンジャナイカ?

ハダザムクヒトコイシイヨル!コノミヲサラシテセンセイヲアタタメルノハ、マサニシュクジョ!モハヤフウフトイッテモカゴンデハナイ!

ワカッタ、ワカッタカラフクヲキテホシイ……

 

 

 

 

悪いな。

まだ、そっちに行くにゃ早そうだ。




ヴェント君の過去はボロボロ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。