斬月で無双したい少年が斬月で無双する話   作:猫又侍

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第弐幕

 さて、どうしたものかと頭を悩ませる。ここで戦わなければいけない。かと言って戦ったら建物一つ二つ壊すのは確定だろう。

 

 しかし、この量だ。あちらの刀使でどこまで耐えられるか分からない。増援を呼ぼうにも先程携帯の電池がなくなってしまって呼ぶにも呼べない。

 

「はぁ……やっぱやらないとだめか」

 

 俺は御刀には触れずに手の平を前に差し出す。取り敢えずここら辺一掃すれば大丈夫なはず。周りに人がいない事を確認。よし、今ならいけるな。

 

 俺は一呼吸起き、詠唱を開始する。

 

「君臨者よ、血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 、焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ!」

 

 瞬間、手のひらに紅いエネルギー弾の様な物が精製される。これを射てばここら辺の奴らは一掃できる筈だ。

 

 しかし、コイツを使うのは久しぶりだからうまく行くか分からないのが不安な所しかし、今の事態を考えれば考えている暇はない。

 

「破道の三十一、赤火砲(しゃっかほう)!」

 

 俺が詠唱を唱え終えると、赤火砲は荒魂目掛けて飛んで行きそこら一帯を吹き飛ばす。

 

 戦闘とは言え被害は最小限に抑えたいので雑魚だけ倒せるくらいに抑えたやつを撃ったので建物の破損は最小限で済んだ。

 

「よし、あっちの加勢に行きますかね」

 

 俺は荒魂がいない事を確認し、先程の刀使の元へ向かった。

 

****

 

「っ! 数が多い!」

 

 さっきから何匹も倒してるのにどんどん湧いてくる。なんなのコイツら!

 

 でもエレンさんと薫さんが居るから勝てる!

 

 そう考えてしまい気が緩む。

 

 その瞬間、後ろに迫ってきていた荒魂が私に迫ってきている事を直前まで気付けなかった。

 

「え?」

 

 私が後ろに振り向くと、荒魂はすでに目の前に迫っていた。

 あ、これはだめだ。そう思い込んだ時だった。

 

「縛道の六十一……六杖光牢(りくじょうこうろう)

 

 その声が聞こえると同時に、目の前の荒魂の動きが止まった。私がなにがなんだか分からず、混乱していると男性の声が聞こえてきた。

 

「ふぅ、間に合って良かった〜」

 

 その声のする方を私が見ると、そこには美濃関の制服を纏い御刀を携えている男性の刀使がそこに立っていた。

 

「あなた……誰?」

「グハッ! 初対面で言われると結構くるな……俺は獅童和也。本日付で美濃関の生徒になったんだ」

 

****

 

「美濃関の生徒って……あなた、刀使なの?!」

 

「ま、そういう事だ。俺も昨日知らされたよ。御当主に言われたもんでね。仕方なくって感じだよ」

 

 六杖光牢で縛っている荒魂にとどめをさしながら質問に答える。

 

 やはり男の刀使は俺しかいないのか、驚かれている。まぁ、驚かなかったらそれはそれで俺は傷つくけど。

 

「あれは長船女学園の生徒か……動きがいいな。それに息もピッタリ」

「えぇ、あの二人ならこの場をしのげる」

「いや、それは違うな」

「え?」

 

 俺は目を閉じ神経を研ぎ澄ませる。そこで感じる僅かに重い空気。だいぶ大きな荒魂だと予想がつく。と言う事は俺も御刀引き抜かななきゃいけないって事だ。

 

 でも連絡手段ないしなぁ……あ、そうか。美濃関のこの子に借りればいいか。少し悪気もするけど。

 

「こんな状況で悪いんだけど、携帯貸してくれる? 連絡したい人居るんだけど」

「本当にどんな頭してるの? はい、どうぞ」

「ありがたい」

 

 俺はダイヤルを押して電話をかける。数回コールをした後に覇気の混じった女性の声が聞こえる。

 

『もしもし』

「あ、御当主様? 今荒魂と接敵してるんですけど俺御刀使っていいですかね? まぁ、建物の保証はしかねますが」

『……理由は?』

「長船の刀使が戦ってますけど後ろに結構デカい荒魂が居ます。恐らく御前試合の選手でしょうし、そっちとしても大切な人員なくすのは嫌でしょ?」

『仕方ない、許可する』

「ありがたい」

 

 俺は電話を切り、美濃関の生徒に携帯を返す。御当主様と言ったのが聞こえていたのか少々驚いているがそこら辺は気にしてはいけないと圧をかけておいた。

 

「おい! そこの長船の生徒!」

「うわっとと……ワタシ達の事ですか?」

「あんた達以外に長船の奴はここら辺にはもういない。悪いが少し俺の後ろに避けてくんねぇか? 一発デカイのかましてやるからよ」

「分かりマシタ!」

 

 一瞬驚かれたが今は緊急、構ってる暇はないってところか。

 

 俺は後ろに背負っている御刀を引き抜き構える。

 

「え? それがあなたの御刀デスか? 柄も鍔もないデスよ?」

「まぁそう焦りなさんな」

 

 目の前の荒魂だけでざっと五十。そのほかも含めて百は超えてるか。よくもまぁここまで湧くよ。

 

 俺は御刀を引き抜く。

 

 御刀は包丁の様な見た目をしており、先程言われた通り鍔も柄もない。

 

 これは爺ちゃんから貰った御刀。そして、俺しか使えない御刀だ。

 

 敵は大勢、対するこっちは俺だけが刀を振る。

 

 だがそれだけだ。

 

 なにを恐れる?

 

 恐怖を捨てろ。

 

 前を見ろ。

 

 進め、決して立ち止まるな。

 

 退けば後ろを誰が護る。 

 

 臆せば死ぬ。

 

 なら叫ぶだけだ、相棒の名を。

 

「そろそろ起きな……斬月!」

 

 そう叫ぶと同時に俺は刀を横に大きく振る。

 

 その瞬間、建物は一瞬で切り裂かれ雑魚から大物の荒魂までの全てが吹き飛ぶ。

 

「これは……」

「ビューティフルです……」

「……」

 

 俺は再び御刀をしまい振り返る。一人は無関心、一人は荒魂を取られて怒っている。だが、大半が驚きの表情をしている。

 

「これが俺の御刀……斬月だ」

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