会場は騒然としていた。
なにせ御当主様ともあろうお方に刀の鋒を向いた人物が居るのだから。
その人物の名は十条姫和。平城学館中等部三年。動きも素早くとても優秀な刀使が、御当主様を狙った。
「十条姫和、お前がしている事がどの様な事を意味するか理解しているのか?」
「いつの間に!」
俺はあくまで教師を任されている(強制)訳で、まぁ仕事はよくわかって居ないが御当主様を守るという使命もある訳だ。
そしてそれを狙う者が目の前に居る。
それは仕事を意味する。
「くっ! わたしは、そいつを仕留めないといけない……」
そう訴える十条の目には確かな意思があった。
ならここは面倒だが面白そうな方につくのもありかもしれない。
面倒は嫌いだが面白いのは嫌いじゃない。
しかし、親衛隊の真希が追いつき十条の写シを斬る。そして更には十条までも……
その瞬間、一人の少女が真希の刀を防ぐ。大戦相手の衛藤だ。
俺はこの隙を逃さず二人を脇に抱える。
「兄さん!」
「悪いな真希……御当主様。俺は教師を申し付けられました。ですので生徒の意見を尊重しますよ」
「ふん、面白い」
そう言って前方から御当主様の御刀、少し遅れて真希の御刀が降りかかる。
だが、遅い。
「それじゃぁ」
「なに?!」
俺は特殊な歩行法『瞬歩』を使いその場から一瞬で抜け出し、会場の外に走り出す。
御当主様は親衛隊を静止させ、こちらを追おうとはしなかったが親衛隊の一人がそれに背きこちらに飛翔して来る。
「わたしも混ぜて!」
「悪いが付き合う暇はない」
再度瞬歩を使い出口の屋根に移り外に逃げる。
「ズルイ!」
後方からそう叫ばれたが、構っている暇はないのでそのまま逃げた。
***
完全に外に出て追手が来ないことを確認すると二人を下ろす。
十条は先程の御当主様への攻撃と真希にやられた事により体力を消耗していた。
「はぁ……はぁ……何故お前達まで……関係ないだろ」
そう言いながら睨む十条に衛藤は答える。
「う〜ん、決着が付いてない……からかな」
「俺は生徒の意思を尊重したまでだ」
「お前は!」
「おっと御刀向けるんじゃないぞ。俺は仮にもお前の刀を止めだが同時にお前を救ったんだからな?」
そうおだてると十条は刀から手を離す。
「俺は獅童和也、よろしく」
「……十条姫和」
「わたしは衛藤可奈美! ねぇさっきどうやって移動したの!」
「ん? あぁ、アレは瞬歩って言ってな。特殊な歩行法だ。それより、ここに居ても仕方ない。取り敢えず行くぞ。十条の話の訳はここから離れたら聞かせてもらう」
俺はそう言って気配を探る。やはり親衛隊がこちらに来ている。早めに逃げないとヤバイな。
「そら、行くぞ」
「「……」」
二人は無言でうなずき走り始める。俺は後ろを守る様にしながら走る。
さて、この幼い雛鳥二人はどう成長するのかな。
****
しばらく走っていると、安桜から救援のメッセージが届く。
走って暫く経った。安桜が俺に連絡をすると言うことは追って来てるって事だな。つまり、アイツらも捕まったら反逆者扱いと。
「はぁ……衛藤、十条。俺は安桜の所に行ってくる。バレるんじゃないぞ」
「分かってる」
「………」
十条からの返事はなかったが俺は踵を返し安桜の方に加勢すべく元の道を戻っていく。
そんな時だった。
「み〜つけた!」
「なっ!」
それはいきなり空から飛来して来た。
外見からすればまだ幼い。しかし、その表情や御刀の持ち方には熟練者のオーラが見て取れる。
コイツ、さっき御当主様の命令無視して来たやつだな?
「なんの様だ。俺には用事があるんだ」
「だって貴方も紫様に盾ついたんでしょ? なら斬ってもいいよね!」
「ちっ、面倒だな」
この子さらっと怖いこと吐いたよね? 写シ使ってる時の事言ってるんだよね? だとしたら斬らないで。俺写シはれないんだよ。
「まて、俺は写シはれないんだよ。斬られたらこまる」
「いっくよ〜!」
「人の話を聴け!」
なんて注意するのも無駄の様で突撃してくる親衛隊少女。
俺は軽くかわして距離を取る。
「お前、名乗らずに人に斬りかかるなって習わなかったのか?」
「え〜、じゃぁ教えてあげる。私の名前は燕結芽!」
「はぁ、マジで名乗るってことは斬る気まんまんじゃねぇかよ……獅童和也だ」
「ねぇ、それより早く死会おうよ!」
燕は戦うのが好きなのか好機の目をこちらに向けてくる。
ここは戦わないと逃げられそうにないな。
俺は斬月を引き抜き燕と対峙する。
「それじゃぁいっくよ〜!」
「お手柔らかに」
****
静かな街の中、刀と刀が交差する音だけが忙しなく聞こえる。
その音は俺と燕の戦闘によるもの。
建物は壊れていないが電信柱の一本二本知らずにやっていても不思議ではない。
「にしてもやりずれぇなこの場所」
「よそ見しちゃだめだよ!」
「おっと……まだまだ」
先程からこの調子で、俺はずっと燕の刀を避けているだけ。偶に防ぐために御刀を使って居るが大抵は回避のためだ。
しかし、このままでは拉致が開かないがこんなところで斬月を振り回したら流石に危ないだろう。
どこか広い場所は……
「って、御前試合した場所しかねぇな。まぁ、クビになったらなったでいいか」
俺は斬月再びしまい会場へと向かう。
「場所を移そうぜ。御前試合決勝会場だ」
「いいよ〜! だってお兄さんが本気出してくれるんでしょ!」
「本気……か」
長らく本気なんて言葉すら聞かなかったし、本気で戦ったこともない。
だがこの少女は本気を求めている。
仕方ない。初めて本気出してみるか。
次回は斬月状態での超速戦闘?回となっております