それでは本編どうぞ!
「―ということは、彼らはソロモンの杖を量産しようと...いや、すでに量産している、と言った方がいいのか?」
クリス、調、切歌とヘレナ、リィカ、ギルドナが戻ってきたことによって、彼らの目的は大まかにつかめてきていた。
「あぁ、何でも連中はファントムノイズとかいうダストとノイズの融合体を作ってたみたいだ。」
「それから、古代メソポタミアの遺産であるソロモンの杖の試作品をもとに作ったって言ってた...」
「錬金術も応用したらしいデスッ!」
六人が各地で戦っている間に、翼とマリアも戻ってきていた。今はサイラス、エイミと話をしている。
「ほう、巨大化する剣とは何とも面妖な!是非とも手合わせしたいでござる。」
「あぁ、いつでも相手になろう。あなたの剣の腕も拝見したいところだし...」
「それじゃあ、トレーニングルームに行きましょうか?私たちも久しくギアを纏っていなかったのだし、いい体慣らしにはなると思うわ。」
「えぇ、私たちも長らく体を動かしてないからちょっと暇してたのよね。」
「では、そのとれーにんぐるーむとやらに行ってみよう、でござる。」
四人はトレーニングルームへと向かったようだ。その様子を、響、未来、アルド、フィーネが見ていた。
「そういえば、俺たちもあまり体を動かしてないな...」
「それじゃあ、翼さんたちの訓練が終わったらみんなでトレーニングしようよッ!」
4人が脇で待機しようとトレーニングルームへ向かったその時、
「ノイズ発生!場所は...旧リディアンです!」
突然のサイレンを聞き、響たちは指令室へと急いだ。
「みんな集まったか―よし、それでは簡潔に話そう。旧リディアンの校舎にノイズ反応と、ファントムと思わしき反応が確認された。」
「ファントムも...!?」
「あぁ、だが...すでに前線に出ていた六人は体力の消耗具合から出動の自粛をしてもらうことになった。今回は響君、未来君、翼君、マリア君とそのペアのものに行ってもらう。いいかね?」
「はいッ!!私はいつでも平気です!」
「俺たちもいつでも行けます!」
「よし、では君たち―旧リディアンに現れたノイズの殲滅をお願いする!」
「了解(でござる)ッ!!」
響たちはヘリに乗って旧リディアンへと向かった。リディアンの校舎はルナアタック事変の際に膨大な量の放射線が検出されたことで、現在は関係者以外立ち入り禁止になっている。当然、人影は見えなかった。が―
「あれは何でござるか!?」
二つの影が見えた。一つは空中に浮いている炎のように揺らめく影。もう一つは、響たちの見てきたファントムダストやノイズとは比べ物にならないほどの大きさの影だった。
「あれが、報告にあった――」
「――ファントムノイズッ!!」
報告によれば、ファントムノイズはファントムダストとノイズの体の融合が不完全なため、体がファントムの部分とノイズの部分に分かれている―なのでアルド達はファントムダストの部分―赤みがかった青色の部分を、装者はノイズの部分―それ以外の色の部分を狙えば位相差障壁の影響を受けることなく攻撃を当てることができるという。無論、響たちは狙うべき場所を狙い、攻撃を仕掛けた。その体の至る所で爆発、土煙が起こる。
「よし、これで相応のダメージは入ったはずだ!」
ファントムノイズはゆっくりと体を持ち上げ
付近にいた未来とフィーネ、サイラスを吹き飛ばした。三人は住宅街の方へ、別々の方向に飛んでいった。
「...どう、なっているんだ!?」
「何か悪い夢でも見てるみたいね...」
「いいや、どうやら現実のようで―ッ!?みんな、伏せて下さいッ!」
響の声にすぐに反応した四人はすぐに屈んだ。彼女らの頭上を、巨大な瓦礫が飛んでいった。おそらく、ファントムノイズが投擲したものだろう。
何とか全員無事なよう
「――?4人...?」
ようやく響は気づいた。あの場にいた中でただ一人、エイミだけは響たちの反射神経に一歩間に合わず、瓦礫の海の中で頭から血を流して気絶しているのが見えた。
「そんな――エイミさん!」
と、四人が連絡用に持っていた端末から通信が来た。急いで出ると、司令の焦った声が聞こえてきた。
「みんな、聞こえるか?こちらにも状況は見えている――君たちだけでも退避して、奴らを倒す方策を練るんだ!」
「でも、エイミさんが――」
「彼女のトレーニング風景を見ていたが、君たちが心配するほどヤワじゃない。いずれこっちから現場に赴いて回収する予定だ。」
「...分かりました。私たち四人だけでも、緊急退避します!」
響、クリス、翼の三人は住宅街の方へと駆け出した。ただ一人、アルドを除いて。
「アルド、何をしてるの?ほら、早く逃げないと――」
「いいや、オレは最後まで諦めない!なにより、仲間を見捨てて逃げるなんてこと、オレにはできないんだ!!」
アルドの言葉に、響ははっとした。仲間をおいて逃げる?自分だけが助かって、それでいいのか?そんな思いが先走り、響はこう叫んでいた。
「...そうだよ、まだ負けたって決まった訳じゃない。フィーネちゃんやサイラスさん、エイミさん、それに――
未来をおいて逃げることなんて、私には出来ない!まだ...まだ負けてなんかいないッ!!」
ファントムノイズへと突進していくアルドと響、それを追う翼とマリア――四人の"追いかけっこ"を見ていたファントムは、彼らのすぐそばに現れ、呆れたようにこう言い放った。
「まったく、お前達の強さを計っておこうと思ったがこのざまだ――それでも暇つぶし程度にはなったよ、
ファントムが手を上げると、ファントムノイズは咆哮を上げた。空気が震え、響たちは耳を抑えてその場でじっとすることしかできなかった。
「フハハハッ!!強大なものの前に、これほどまで無力になるとは――今度こそ、お前たちを冥途に送ってやるとしようか!」
ファントムノイズが右手を上げた――今度は全員を狙っている。身動きが取れない響たちにファントムが嘲笑う声が響く中、ファントムノイズが右手を彼らめがけて一点に振り下ろした。
「―――う、うぅ...」
響は目を開けた。立ち上る土煙の中、まだその場で立っている四人の影がおぼろげに見えた。土煙はすぐに消えた。響の目の前に浮かんできたのは、衝撃の光景だった。
響たちがいる場所を中心に、巨大なクレーターが出来上がっている。他の三人を見ている限り、もう立っているのもやっとな状態であるようだ。三人とも、頭から、目から、口から血を流している。程なくして、響の片目も額から流れてきた血で紅く染まった。
ファントムは狂喜していた。さしずめファントムノイズの火力調査と言ったところだろう。
「おぉ...これが、あいつらがついぞ完成させることのできなかったファントムノイズ"完全体"の力...!」
「――!!完全体、だと...!?」
「そうとも、この個体はもう完全な融合を果たしている――次元粒子のおかげでな!」
「次元...粒子!?」
4人は、事前に調とリィカが言っていたことを思い出した。
「――そして、その体からはごく少量ですが次元粒子が見つかったんです」
「次元粒子...?それは一体?」
「次元粒子トハ、この世には存在しナイ未知ノ物質デス。時空に歪みガ発生シタ時に同じく発生するヨウデス。」
「なるほど...しかし、なぜ奴らは次元粒子をファントムノイズの体に...?」
ファントムは話を続ける。
「次元粒子とは、この世には存在しない未知の物質...その役目は長年の間不明だった。だが、我々は次元粒子に『複数の物質を強制的に融合させる性質』があることを突き止めたのだよ...」
「!!ということは――」
ファントムは勝ち誇ったように手を掲げた。
「そうとも、このファントムノイズは―――
―――完全なる融合体だッ!!」
耳にしたことが、信じられなかった――いや、信じたくなかった。完全なる融合体ということは、こちらの攻撃はファントムダストとノイズ、相互の位相差障壁により完全に無効化されている。それだけではない、奴のあの力は、報告にあったファントムノイズとは桁違いのものだ。
「そん...な...」
打ちひしがれた四人に向かって、再びその腕が振り下ろされる。今度は、その腕が炎に包まれていた。
「く...っ、オーガベイン!!」
アルドがアナザーフォースを放ったことで何とかかわせたものの、そこから攻撃に転じるほどの体力も、気力も、響たちにはなかった。
「おのれ、くたばり損ないの分際でちょこまかと!やってしまえ、ファントムノイズ!!」
アナザーフォースを発動させたばかりだった彼らはしばらくその反動で動けなかった。そんな四人に、ファントムノイズの炎を纏った腕が、今度こそ狙いを違わず振り下ろされた。
しばらくして、四人はようやく立ち上がった。全員足元はふらつき、さっきよりも出血が激しくなっている。マリアはアバラを抑えてゼーゼー唸っていた。どうやら骨を折ってしまったようだ。
響はどうやら、一番遠くに飛ばされてしまったようだ。他の三人の元へ戻ろうと、響は歩きだした。
「うぅ...マリア...さん...」
前の方で、腰に手を当てていた影が倒れるのが見えた。
「翼...さん...」
そこからほどなく遠い場所で、翼が倒れた。
「アル...ド...」
巨大な剣を支えにして何とか立っていた彼は、響が到着する直前にオーガベインを片手に倒れた。
「ダメ...まだ.....
み...く―――」
響の意識は、そこで途絶えた。
今回も読んでいただきありがとうございます。次回からは第三章となります。
少しずつですが感想を書いてくれる人も増えてきました、ありがとうございます。それらでもらったアドバイスなども参考に、さらにいいものにしていけるよう頑張ってまいります。
さて次回は...
「――これなら、渡り合えるかもしれません」
敗北を喫した響達。ファントムたちに対抗するために、エルフナインはギアにあるものを取り付けていた。
次回[負けてばかりの私たちじゃない]
お楽しみに!