この作品はここで終わり(かもしれない)ですがこれからもどうぞ鮭猫をよろしくお願いします。
「デェェースッ!」
「はぁぁーッ!」
「くたばれッ!」
気合を入れ、ギルドナと切歌、調が闇の主に殴りかかる。その後ろから、ヘレナとクリス、未来が援護射撃を行う。
相手の攻撃を叩き落すのは、翼、サイラス、マリア、エイミが担当だ。
それでも傷ついた仲間は、リィカとフィーネがすぐに回復させる。そして、
「今デス、響さん!」
「いけ、アルド!」
隙のできたところを、響とアルドが叩く。バランスの取れたチームと今までの訓練による連携力の向上、そして皆の間に生まれていた絆により、状況は目に見えて優勢だった。
「せあぁぁッ!!」
アルドの重い一撃が決まり、闇の主がぐらりと揺れる。
「よし、このままみんなで押し切るぞ!」
アルドがそう言った、その時だった。
闇の主の様子が、突然変わった。
「貴様ら…この程度で我らの勝った気でいるなよ――」
そう言って、闇の主が取り出したのは、四本のソロモンの杖だ。
「あいつ、一体何をする気デス?」
「分からない…切ちゃん、気を付けてね」
そんな二人の会話など全く耳に入っていないかのように、闇の主が四本のソロモンの杖を掲げる。と、後ろから突然声が聞こえた。
「なっ――これは…一体何をした、ファントム?」
キャロルの声だ。リィカの表示したモニターに、異世界からやってきたキャロルの顔が映っていた。隣にはサンジェルマンもいる。
「キャロルちゃん、サンジェルマンさん!一体、そっちで何が?」
「急にノイズどもが、どこかへ消えていった」
「ひとまず、こちらの世界から危機は去ったようだ。だがそちらはまだ片付いていないようだな――くれぐれも油断はするな、立花響」
「はい、分かってますッ!!」
「おい、そこで何を話している?」
闇の主の声が、会話を遮った。同時に、地面が揺れる。空気が震える。思わず、マリアとエイミは後ずさりした。
「な…何…?」
「一体何が始まったというの!?」
「新たなる生命の誕生だ」
闇の主はゆっくりと、しかしはっきりとした口調でそう言った。
「新たなる生命の…誕生!?」
「そうだ。わが身とノイズを融合させることで、一つの完全生命体として進化を遂げる。そして我らはこの新たな力を使い、あらゆる時層、あらゆる世界を混沌へと堕とすのだ!ククク…ハハハハハ!!」
闇の主の言葉は少しずつ低くなり、姿もだんだんと大きくなっていく。
さらに突然、闇の主の背後から青い光が漏れ出た。
「これは――時空の裂け目!?」
「まさか、本当にノイズと融合しようってのかよ!?」
「だから言っただろう――これは新たなる生命の誕生であり、混沌への、さらなる一歩だとな!!」
その言葉と同時に、
「うわぁぁぁっ!?」
「こ、これは…ぐあぁっ!!」
地面に叩きつけられた響たちの前に、
「あれが――本当に、ファントムなのでござるかッ!?」
「にわかには信じ難いが、奴に変わりないんだろう――もう闇の主とは言えないがな。…
「ほう、カオス・ノイズか…その名前、気に入ったぞ」
「別に気に行ってほしくてつけた名前じゃない。お前が敵だということの再確認をしただけだ」
「フン、なんとでも言うがよい。だがギルドナ、どう足掻こうと貴様の未来には必ず闇が憑いている――お前はこちら側に来るのだ!ギルドナ、お前は闇の傍に立つ者なのだ!」
「黙れ。力を求めすぎた成れの果ての分際で、俺を闇に誘い込むだと?まったく――」
ギルドナの刃が、炎を帯び始める。
「――片腹痛い。貴様5ときに屈するような俺ではないということ、存分に思い知らせてやるッ!!」
「ギルドナさん、アタシも合わせるデス!!」
「この際だ、全員で片付けるぞッ!!」
「そうね、私もいい加減、このおぞましい空間から出たくなってきたわ!!」
「よし、全員の呼吸を合わせるんだ!この一撃で、必ずあいつの野望は食い止める!!」
「私も、これ以上私たちの世界を壊させるわけにはいかないッ!!」
「はあぁぁぁぁぁッ!!」
全員の気合が、想いが、空間を包む。彼らから放たれる光に、カオス・ノイズは思わず目を覆った。
「ぐッ…!?」
「これが、私たちの――
時空を超えた、絆の力だぁぁぁッ!!」
全員の総攻撃が、カオス・ノイズの体を貫いた。カオス・ノイズの体からは火が噴き、水が迸り、風が吹き荒れ、砂嵐が巻き起こった。溢れんばかりの光がファントムノイズの体を包み、その体がぐんぐん上昇して――
「――この程度か」
全員が、己の目を、耳を疑った。先程までこの空間に満ち満ちていた光は跡形もなく消え、カオス・ノイズの声が再び響き渡る。
「な――ッ!?確かに、手ごたえはあったはずなのに――」
「貴様らの攻撃など、痛くも痒くもない。これが全身全霊の一撃などとは、貴様ら闇の傍に仇なす者らも、落ちたものだな」
「く――ッ!!」
耐えきれず、翼は単騎で突撃していった。
「待つでござる、翼殿!?」
「まだ、この防人の刃は――朽ち果ててなどいないッ!!」
そんな翼の行動をあざ笑うかのように、カオス・ノイズは右腕を引いた。
「まったく――救いようのない、愚か者めが」
「はぁぁぁ――ッ!!」
翼の刃が、一直線にカオス・ノイズの右腕へと吸い込まれていった。それと同時に、カオス・ノイズの右手が撃ち出された。
途端、すさまじい衝撃波が響達を襲う。思わず、彼らはその場でうずくまった。
「ぐ――ッ!!翼さんは!?」
衝撃波が止み、皆が翼のいた方角に目をやった。が、そこに翼はいなかった。
「なっ――!?おい、先輩!?」
「翼さんッ!!聞こえていたら、返事をッ!!」
叫ぶ響たちの後ろで、何かが動く音がした。恐る恐る振り返ると――そこには、血だらけになって倒れている翼の姿があった。
「そんな――翼さんッ!?」
「すまない、立花…私の剣では、あやつには、届かなかった…」
「大変デス!!早く回復作業ニ移りまショウ!!」
後ろで未来とフィーネ、リィカが必死に回復作業を行っている間にも、カオス・ノイズとの攻防は続く。とはいっても、響たちはただ逃げることしかできないのだが。
「そんな――このままじゃ、私たち全員がやられちゃう!!」
「だが、一体どうするというんだ?このまま逃げているばかりでは埒が明かないぞ」
響は、必死に頭を働かせた。一瞬だけでもいい、何かあいつを超えられる方法は――。
「絶唱…」
「何だって、響?」
「私たちがあいつに唯一対抗できる策だよ。もう出し惜しみなんかしてられない!私は歌う、たとえ、私がどうなってもッ!!」
Emustolronzen fine el baral zizzl
Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el zizzl…
「まさか――絶唱ッ!?」
「よせ、バカッ!!お前の体がどうなるか分からないのにッ!!」
「それでも、いい!」
決意を胸に、響は再び歌い出す。
「それでも、いい。たとえ私の体がどうなろうと、私は歌い続ける――今まで私たちを助けてくれたみんなの為に、そして何より、アルド達をもとの世界に返すためにッ!!聞け、私の歌をぉぉぉ―――ッ!!」
その言葉と共に、響のギアがまばゆい光を放ち始めた。
「これは――響殿のしんふぉぎあに、何が起こっているというのでござるかッ!?」
「あれは、絶唱によってフォニックゲインを引き出し、それに加えて、絶唱を使用した反動による肉体へのダメージを乗り越えた者のみが纏える、最終決戦用ギア。奏には成すことのできなかった、まさに奇跡の体現――
《バーニング・エクスドライブ》だ」
「うぉぉぉぉぉっ!!」
響の拳と、カオス・ノイズの拳が衝突する。長い衝撃波の末、倒れたのはカオス・ノイズの方だった。
「ぐあぁ…ッ、まだこんな力が、残っているだと!?」
カオス・ノイズは明らかに動揺していた。その目を見開き、響のことを凝視している。まるで、新たなる生命の誕生を見ているかのように。
「みんな!立花は自らの命をかけて奇跡の体現に成功した――ならば私たちとて、立花に遅れるつもりはないだろうッ!!」
「あぁ、今までも毎回あのバカにいいとことられてばっかだ――今度はアタシが、カッコいいとこみせてやる!!」
「私も行くよ。切ちゃんは、私の後ろに」
「何を言うデス、調!?アタシはいつだって、調の隣で全力全開10000%で頑張ってるのデス!今更後ろに隠れてろなんて、調らしくないデスよ」
「まったく、みんな譲らないわね…でも、私もそうかもね。――狼狽えるな、私」
「私も、やらなくちゃ――ただ響の背中を追うだけじゃない、響と並んで戦うためにもッ!!」
装者全員が、それぞれの決意と共に絶唱を奏でる。たとえギアを纏っていても体が崩壊しかねない苦しみをその身に宿しながら、それでもなお進み続ける装者たちの姿に、アルド達は絶句した。
「これは――」
「彼女たちは皆、これほどの重圧を背負いながら戦っていたというの…?」
「あれが、
「お兄ちゃん…」
不意に、フィーネが兄のもとへ駆け寄る。
「私たちも、手伝わないと。響さんたちだけに戦わせてちゃ駄目だよ」
「あぁ、分かってるさフィーネ。さぁ――俺たちも行こう!」
こうして、最後にして最大の戦いが始まる。
カオス・ノイズの強烈な拳の一撃を響たちが受け止める。その後しばらくは再び腕が引きあがることはないため、その隙を見て、全員で相手の体力を削っていく。
が、カオス・ノイズも負けてはいなかった。カオス・ノイズが右手を振り上げると、その背中から現れたノイズが響たちに襲い掛かり、こちらも少しずつ彼らの体力を消耗していった。
個の果ての見えない戦いが、何時間続いただろうか――音を上げたのは、響たちだった。
「アルド!!このままじゃ私たちが先にやられちゃうッ!!」
「分かってる、けれどどうすれば――はッ!?」
アルドは、自らの腰に提げていた大剣の存在を思い出した。
「そうか――オーガベイン!!」
が、彼の叫びは魔剣に届かない。何度も呼びかけるが、結果は同じだった。
「くそっ…どうしてなんだ、オーガベイン!!この期に及んでまたオレと対立しようってのか!?」
「お兄ちゃんッ!!」
その声に、アルドがはっとして上を向いた。そこには、ボロボロになりながらも果敢に立ち向かう妹の姿があった。それにエイミやサイラス、今まで共に戦ってきた仲間の姿が、そこにあった。
「お兄ちゃん、まだ諦めちゃ駄目だよ!!」
「攻撃は私たちで食い止めるから、その隙にッ!!」
「アルドがこんなことで諦めるような男ではないこと、拙者も十分わかっているでござるからなッ!!」
「アルドサンがここデ諦めた時ノ勝率…0.001%。ここで諦めてハ試合終了、デスノデ!!」
「あなたは私たちの時空を守ることを最後まで諦めなかったから今があるのよ。別の時空を見殺しにすることなんて出来ないのじゃないかしら」
「お前がここで死んだら全員ここでおさらばだ。お前と切磋琢磨する時間は、まだ足りていないぞ?」
「みんな…」
アルドは改めて、これまで自分を支えてきてくれた仲間たちに感謝の念を抱いた。そして、これからも支え合うために。
「あぁ、オレは最後まであきらめない――オレはこの世界に来た時から、ずっと決めていたんだ!!この世界からファントムの脅威を取り除くまでは、膝をつくことはできないってッ!!」
途端、オーガベインがまばゆい輝きを放った。同時に、剣から声が聞こえる。
コイツこんなにいいキャラだっけ、と思ったのも束の間、オーガベインはひとりでに柄から抜け、アルドの手の中に納まった。
「よし――行くぞ、みんな!!」
その言葉とともに、アルドが剣を掲げる、すると、アルドを中心に異世界が広がる。《アナザーフォース》だ。
「今のうちにめった切りにするデス!!」
「こんなところで手加減する情など、拙者らにはないでござるッ!!」
全員が、全力の技を繰り出していく。ユニゾン技に成功したものは、その技も放っている。
「調サン、参りまショウ!!」
「はぁぁぁーッ!!」
調とリィカが、《》を放つ。
「ギルドナさんッ!!」
「分かっている――くたばれッ!!」
次いで、切歌とギルドナが《》を叩きこんだ。
「アルド、私たちもッ!!」
「あぁ、今の俺たちならできる!!心を合わせて、一緒に行こう、響!!」
アルドのオーガベインと響の拳が、さらに強い光を放ち始める。その輝きに、カオス・ノイズも後ずさりをした。
「これは…この光は…ッ」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――ッ!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!!」
ひときわ強い光が二人を包む。それは剣でも、拳でもない――新たな道を切り拓く、ガングニール本来の姿である槍へと変わり、カオス・ノイズを貫いた。短い時間ではあっても、特訓やコミュニケーションを重ね、誰よりも絆を深め合った二人だからこそ成せる技――《我流:王牙聖剣突・AF》。
「ぐぉぉぉぉぁぁぁぁッ!?」
遂にカオス・ノイズが膝をついた。体のところどころが形状崩壊し、真っ黒な炭素と化している。
最早響たちの勝利は確実かと思われたが、カオス・ノイズはまだ倒れなかった。
「まだ――終わらせないッ!!」
そうして振り上げられた拳は、今までの者よりも一撃が重かった。今度ばかりはバーニング・エクスドライブ状態の装者たちでも相殺することができず、たまらず後ろに吹っ飛んでいく。
「く――ッ、あいつ、最後の最後でこんな強さを…ッ!!」
「アルド、オーガベインが!!」
「!?」
見ると、先程までまばゆい光を放っていたはずのオーガベインは、ほとんど光を失いかけている。恐らく、先のユニゾン技でエネルギーをほぼ使い果たしたのだろう。
「まずい――ここでアナザーフォースが解けたら、今度こそオレ達は全員まとめてあの世行きだぞ!?」
「だとしても――」
後ろで、響の声がした。
「だとしても、私はあきらめないッ!!ここまで来るのに、たくさんの人が力を貸してくれた。だから、それに応えなきゃ――私たちの世界を、守るために!!」
その時、響の声に呼応するかのように、ガングニールが輝きだした。それに反応し、翼やクリスたちのギアも輝きだす。
「こ、こいつは一体…!?」
そして、さらなる驚きが、彼らを包んだ――オーガベインが、アルド達の武器が、輝きだしたのだ。
「なっ…どういうことなの!?」
「きっと、神様がオレ達にくれた、最後のチャンスだ。だから――ここで、倒すんだッ!!」
そして次の瞬間、彼らはすでに行動に移していた。
全員のありったけの力と想いを込め、それにより生まれたエネルギーを身体全体に纏う。そうして集まったエネルギーを、今度は全員で増幅させる。そしてそれは流れ星のように、カオス・ノイズの体めがけて突撃していった。
「オレ達の手で――」
「私たちの手で――」
「この世界を――」
「混沌から――」
「救け出すんだッ!!」
全員の想いと、力と、決意のこもった一撃――
《Another Determine》。
「流れ星、落ちて燃えて尽きて、そして――」
ファントムノイズの体が、ボロボロと零れ落ちていく。
「私たちの世界を、守ってくれた――」
「まだ、だ…」
またも、全員の予想に反したことが起こった。闇の主が動き出したのだ。
「まだ、終わらせぬ…我らの目的は未だ遂行されていない…」
「だが、お前はもう間もなく朽ち果てる身だ。そんな体で何ができる?」
「今少し、時間を稼ぐことはできる――ふんッ!!」
カオス・ノイズは最後の力を振り絞り、巨大な時空の裂け目を生み出した。
「こ、これは――!?」
「おわっ、吸い込まれるでござるぞ!?」
「いいか、貴様ら――この闇の主、今は貴様らに敗れた身だ。だが、我は必ず戻り、もう一度この世界を混沌に沈めてやろう。それまでの時間稼ぎはさせてもらう。ククク…ハハハハハ!!」
不敵な笑い後へを最後に、カオス・ノイズは完全に消滅した。
「あいつ、また戻ってくるってどういうことだ?」
「それよりアルド、今はこっちよ!!」
「あ、あぁ!――みんな!」
アルドは声を張り上げた。
「大丈夫だ、落ち着いてくれ。時空の裂け目の中に入ったら、仲間を見失わないように、時間の流れに流されて進めばいい。きっと子の裂け目は、オレたちの時代に繋がってるから――」
アルドの言葉はそれまでだった。もう彼の体はほとんど時空の裂け目の中に沈んでいたのだ。
「それじゃあ、向こうで待ってるからな!」
その言葉を最後に、アルドは時空の裂け目へと消えていった。
「よし――わたしたちもいこう。今は何もできないけれど、きっとここに帰ってくる。そして――
また皆で、ふらわーのお好み焼きを食べに行こう!!」
こうして、響たちは時空の裂け目へと消えていった。まだ見ぬ世界を目指して――。
これでこの作品は終了――ではありません!
次回から
第二部、(テストが終わり次第)近日公開!ぜひそちらの方も見て下さるとありがたいです!
では、時空を超えてまた会いまショウ!