今回は、クリスとヘレナの回になります。
それでは、歌の力を借りて、この世界を混沌から救い出そうー
Chapter 4 -たとえ一度は刃を交えようとも(前編)-
クリスとヘレナは、ノイズとファントムダストが同時に出現したという、リディアン近辺の住宅街に向かっていた。二人は道すがら、こんなことを話していた。
「...へぇ、貴方も一時は司令と対立したこともあったのね。」
「アタシは幼いころにパパとママを無くして、それからほとんど一人で生きてきた。ほかのやつらを信じることなんてその時はできなかったけど、あのバカがアタシとS.O.N.G.を繋げてくれたんだよな」
「実は私も、最初からアルドたちと協力関係にあった訳じゃないのよ」
「へぇ、じゃあアンタとアタシは同じような境遇にあったってわけだ」
少しぎこちない会話だが、クリスは自分と同じような過去を持つ仲間がいてうれしいと思った。
2人が住宅街にたどり着く前から、すでに騒ぎは聞こえていた。急いで現場へ向かうと、そこには文字通り「
パトカーや救急車のサイレンがあたりに鳴り響き、建物の倒壊も見えた。そして、この住宅地の至る所にノイズ、ファントムダストは広がっていた。
「こりゃやべぇな、さっさと片付けないと!」
「私はいつでもいけるわ。構えて!」
「Killiter Ichaival tron...」
クリスは聖詠を唱え、その体にシンフォギア「イチイバル」を装着する。
「さぁ、行くぞ!」
「ええ、必ず生きて帰りましょう!」
2人は互いの無事を誓い合った後、住宅地に突入した。たちまち、大量のノイズとファントムダストが襲い掛かった。
「ノイズはアタシに任せな、アンタはダストを!」
「分かったわ!」
ノイズへの攻撃は、通常は当たらない。位相差障壁とかいうやつのせいで、外部からの干渉力をほぼ0にしているのだ。だが――
「さぁ、たっぷり浴びせてやらぁ!」
クリスの放った弾丸がノイズに命中し、そのまま消えていく。シンフォギア装者であれば、ノイズの位相差障壁を無効化し、攻撃を当てることができる。実体がないものに無理やり実体を付けるようなものだ。
しかし、新たな敵に直面したときは、情報を集めなければ話にならない。もともとシンフォギアは対ノイズ用に作られたものであり、これがほかの敵に効くのかどうか、不明な点も多い。そして今回は、それをアルドたちにカバーしてもらうという戦い方だ。
「喰らいなさい!」
「そらよ!」
2人は順調にノイズとファントムダストを倒していく。住民の避難も終わったようであり、周りからサイレンの音は聞こえなくなった。
(いける...このまま押し切ってやる!)
クリスが勝ちを確信したその時――
大きな音を立ててビルが倒壊した。そして、その中からやってきたのは――
「ーッ!?なんだ、あれ...バカでかいファントムダストか!?あんなの、この建物のどこに隠してたんだよ!」
「気を付けて。大型のノイズも複数出現しているみたいよ。」
「だけど、たかだかちょっと強いのが3,4匹出てきただけだ、さっさと終わらせるぞ!」
「ええ、分かってるわ!」
2人は、そのビルの方へと向かっていく。その後ろ姿を、陰からじっと見ているものがいた。
「こりゃあ、すげえ...」
クリスが思わず声を漏らす。遠くから見てもそれは大型ノイズ及び大型ファントムダストであることは把握していたのだが、近くまで行くと、その大きさは二人の予想よりもはるかに大きいことが分かった。
「...これは、"
「もうただのデカブツじゃねぇか!」
「まあいいわ、あれは私に任せて。アナタはノイズを。」
「いわれなくてもわかってるっての!」
クリスは即座に言い返すと、ノイズの方を見た。
「よし、どっからでもかかってこい!」
そういって、クリスは大型ノイズに向かって突進していった。
「彼女も頑張ってるものね...さて、私も本気を出さないと!」
彼女は、ガリアードという名のパートナー機のことを考えていた。彼の顔を思い浮かべると、彼女はいつも胸の奥から力が湧いてくるような気がした。
ヘレナは大きく深呼吸をすると、巨大なファントムダストに向かっていった。
「これで...ッ!」
クリスが、最後の大型ノイズを倒しきる。彼女はふう、と息をつくと、ヘレナの方へと向かっていった。
「そっちはどうだ?」
「ええ、今片付いたところよ。少し手間取ったけど」
2人が互いの健闘を称えあっていると、突然――
「-ッ!おい、なんだあれ...?」
「あれはまさか...時空の裂け目!?」
突然切り裂くような音を聞き、二人が空を見上げると、そこには不気味に青く光る穴が浮かんでいた。2人が呆然とする間もなく、その穴から何かが飛び出してきた。
「おい、なんだあの黄色い陽炎みたいなやつは?」
「あれはまさか...ファントム!?」
ヘレナは青ざめた。自分たちと共にファントムダストがこの地に乗り込んできた以上、ファントムが来る可能性も0ではない。しかし、よもや本当に現れてしまうとは...
「ファントム...ってことは、あいつがこのダストを取りまとめてる親玉なのか?」
「そうね、あれがあと何体もいると思ってくれればいいかしら。」
「はぁ、あいつがもっといるってことか!?こりゃあ、ヤバい相手みたいだな...」
すると、唐突にファントムが口を開いた。
「ご名答...我らは次元の渦より出でしもの。すでにお前たちの世界は混沌から解放され、時の暗闇も消え去った...だが、ここにはノイズという奴らがいるそうではないか。」
「ああ、だけどソロモンの杖もバビロニアの宝物庫も閉じて、ノイズは消滅したはずじゃ――」
「その通りだ、しかしそれは"この世界"でのこと...我らの力を使えば、過去からノイズを連れてくるのも可能だろう?」
「何ですって!?まさかあなたたちは、時を越えてノイズを――!?」
「そうとも、そして――」
そう言いながら、ファントムは何かを取り出した。それは――
「――ッ!!まさか、ソロモンの杖!?」
「フ、今更気づいたところで...さて、我らは準備を進めなければなるまい...さらばだ、時の迷い子と装者たちよ。残された少しの刻を、せいぜい楽しんでいるがいい...」
「おい、待ちやがれッ!」
「深追いしても無駄よ、奴らはきっと、時空の裂け目の向こう側だわ。それに...」
2人が振り返ると、そこには大量のノイズとファントムダストが出現していた。
「まずはこいつらを仕留めないと、ってことか」
「そうね、すぐに片づけてファントムの動向を探らないと...!」
「そうと決まれば、まとめて一気に片付けてやるッ!」
その叫びと共に、クリスが大量の銃弾を撃ち込む。それにより、大半のノイズは消滅した。だが――
「嘘だろ...なんでアタシの攻撃がダストには効いてねぇんだ!?」
「私たちの攻撃がノイズに当たらないのと同じなのかしら...」
ちょうどその時、S.O.N.G.から通信が入った。
「クリス君、ヘレナ君!聞こえるか?」
「ああ、ばっちり聞こえてるぜ、おっさん」
「急に通信だなんて、何か伝え忘れたことでもあったの?」
「いいや、たった今判明したところだ。響くんたちが戦っているときのデータを調べているときにもしや、と思っていたことなのだが――あらかじめ、調君と切歌君には伝えてある。」
「もったいぶらねぇで早く言ってくれ!何が判明したってんだ!?」
風鳴司令は、少し重いため息をついたかと思うと、こう続けた。
「奴らも――ファントムダストも、ノイズと同じように位相差障壁に似たものがあることが分かった」
第四話、なんとか書き終わりました。
本当は昨日投稿したかったのですが、外出の予定や家の用事などで遅れてしまいました。申し訳ございません。
さて次回は...
工業地帯についた調とリィカ。そこにいたのは、驚くべき人物だった。
次回[信じる正義のために(前編)]
お楽しみに!
(因みにこのタイトル、アナデンをやったことがある人は聞き覚えがあるかも?)