理由は別小説にて(書くのがめんどくさいだけ)
さて今回は、調×リィカ編の後編となります。
それでは、歌の力を借りて、この世界を混沌から救い出そうー
「――サン!調サン!」
調は目を覚ました。リィカが、彼女の顔をまじまじと見つめている。
「健康状態、精神状態に異常ナシ…」
「リィカさん、ここは…?」
「どうやら私たちハ、ファントムによって古代ニ飛ばされテしまったようデス。」
そう言うと、リィカは辺りの土を採り、センサらしきものでスキャンを始めた。
「エルジオン内のデータとこノ土の成分ヨリ地質年代を特定…」
しばらくして、リィカが戻ってきた。
「調サン――ドウヤラ私たちハ、メソポタミア文明黎明期に飛ばされテしまったようデス。」
「...ってことは、私たちが今いるのは、ウェル博士と同じ時代ってこと…!?」
だだっ広い土地に、少女の虚しい悲鳴が響いた。
「...調サン、叫んでいても誰モ助けに来ないト思いマス。」
「とりあえず、ウェル博士を探さなきゃ…彼が力になってくれるかも。」
調とリィカは、目の前に見えた巨大遺跡に向かった。
彼女たちが入口に着くと、二人の門番が待ち構えていた。彼らは彼女たちに向かって、彼女たちの知らない言語で語り掛けてきた。
「日本語が通じる…わけないよね。リィカさん、翻訳できないの?」
「私たちの時代デハ、古代文明はパルシファル王朝デス、ノデ。残念ナガラ、彼らノ言っていることハ私にも分からないデス。」
「そっか…」
2人が途方に暮れていると、突然上から声がした。彼女たちが上を見ると、そこには白衣を着た男性が立っていた。彼は門番同様よくわからない言葉で門番と話していると、突然門番が二人に頭を下げ、門の両脇によった。2人がどうすればいいのかその場で立ち往生していると、白衣の男性が言った。
「その二人は通っていい、と言っている!直々に私の友人と言っておいたからねぇ!」
2人が門を抜ける時、リィカは不思議そうにぶつぶつ呟いていた。
「ここでは日本語は通じないハズ…どうしてあの男性は日本語を使っていたんでショウカ?」
「あぁ、それは――」
「――愛、ですよッ!!」
調が答える前に、さっきの白衣を着た男性が突然話しかけてきた。調には見覚えがあった。
「ウェル博士…!」
「…何故ソコデ愛なのか、理解しかねます、デス。」
「リィカさん、そこはスルーして大丈夫。それよりドクター、協力してほしいことが――」
「それはこっちのセリフですよ!訳の分からない青いもやに飛ばされて、気が付いたらここ。最初は言語も分からないし、一年半かけてようやく簡単な挨拶ぐらいができるようになり、五年かけてやっとこさ何となく会話ができるようになった――あの野郎、今度会った時はけちょんけちょんにしてやりますよ!」
ウェル博士の愚痴をよそに、調が話した。
「…ウェル博士、私たちと協力して元の時代に帰らないと。」
「あぁ、そうでしたねェ!折角君たちと会えたんだ、私もできることをしなければ!」
すると、周りの人の騒ぎが三人の耳に入った。ウェル博士が耳を澄ます。
「彼らはなんて言ってるの?」
「フーム…なるほど、どうやらファントムのお出ましみたいだよ。彼らは『この都市の中心部にある洞窟に青い炎のような動くものが現れた』だそうだ。」
「――!!じゃあ、そこに行けば戻れるかも…!」
「いずれにセヨ、それ以外ニ手掛かりガ全くアリません、ノデ!」
三人は、その洞窟へと向かうことにした。
「――ここ、だいぶ深いみたい…」
調が呟いた。入り口からだいぶ歩いてきたが、最深部にはまだつかないようだ。辺りに岩が転がっており、時折コウモリの羽音が聞こえる程度で、他には何もなかった。
さらに、この洞窟の中は猛烈に暑かった。調もウェル博士も、洞窟に入って数分もたたないうちに滝のような汗を流している。
「調サン、ウェルサン、ここで休めそうデス。」
狭かった洞窟が開け、座れそうな岩も転がっている、三人は一度休憩をとることにした。
「はぁ…この洞窟、何でこんな暑いんだろう…」
「あの遺跡の人々たちの話では、この洞窟はもともと涼しかったようだ。彼らの言う『青い炎のようなもの』と関係があるかも――」
その時、突然地鳴りが起こった。三人がとっさに立ち上がると、そこには巨大なファントムダストがーいや、どこかノイズのような気配も帯びた生命体が彼らの目の前に現れた。
「――!?何、これ…」
「私のデータベースにもこのような生物ハ載っておりません、ノデ!」
「何だか知らないけど、とにかくやるしかないでしょうよッ!私だってこの右手がありますからね!」
三人は戦闘態勢に入った。
「――ハァ…ハァ…」
「おかしいデス…私タチの攻撃ガ効いていないようです、ノデ。」
「いや、よく見ろ、2人とも。」
後ろから声がした。振り返ると、戦闘態勢に入ったものの早々に離脱して岩陰から様子をうかがっていたウェル博士がいた。珍しくまじめな顔をしている。
「博士…『この右手がありますからね!』って言ってたのに、結局参加しないんだ...」
「それはともかく、デス。私の生体反応センサーによると、どうやらアノ生命体の身体の一部に傷がついているようデス。」
そう言われて、調は目を凝らした。確かに、ところどころに傷がついている。
「じゃあ、このまま戦えばいつかー」
「待て、2人とも!ただ闇雲に攻撃を当てていては駄目なようだ。私が即席で作った成分分析マシーンによるとー」
そんなものを即席で作れるのか、すごいなぁ、などと感心している場合ではない。調はウェル博士の言葉に耳を傾けた。
「青い部分に打撲のような跡が、それ以外の色の部分に切り傷のような跡があるのさ。」
「――えっと…?」
「ここで、君たちの武器を見てみよう!リィカ君のは打攻撃を得意とするハンマーで、調君は斬攻撃を得意とするヨーヨー…さて、これからいえることは――」
「――!!つまり、私がいろいろな色の部分を狙って、リィカさんは青色の部分を狙えば!!」
ウェル博士は満足したかのような笑顔を見せると、二人の背中を押した。
「さぁ、弱点は私のおかげで分かったんだから、あとは君たちに任せたよ!」
「まったく…行くよ、リィカさん!」
「脅威判定A。セーフティロック解除。ターミネート・モード起動。いつでも合わせられます、ノデ!」
ウェル博士は再び岩陰に戻っていった。調は他色を、リィカは青色の部分を狙って攻撃を仕掛ける。
「はぁぁーっ!」
「ハイ!エイ!」
しかし、
「ウェル博士!他に急所とかないの?」
「今調べているところだが、こちらからは体力がバカでかいとしか言えない!一気にけりをつけた方がよさそうだ!」
「そんなこと言ったって――」
しかし、リィカはそれを聞くと頷いて、
「分かりマシタ。脅威判定ヲSに変更。カタストロフ・モード起動。対象をロック。敵ヲ殲滅しマス!」
リィカは自身のリミッターを外したようだ。先程とは速さ、打撃の威力が段違いである。唖然とする調に、たまらずウェル博士が叫んだ。
「君にも強化機能はあるんだろう、調君!」
「あるにはあるけど、簡単に起動できるわけじゃ――」
調が言いかけたとき、リィカが叫んだ。
「調サン!避けてくだサイ!」
「えっ――?」
調が反応する間もなく、彼女をビーム粒子が包んだ。瞬間、爆発が起こる。
「調サン――!?」
「調君!無事か!?」
心配した2人が駆け寄っていく。その時を待っていたかのように、
「――!!まずい、あんなのを喰らったらひとたまりもないぞ!?」
「デモ、調サンが!?」
煙が立ち上る中、二人は何とかして調べに近づいていこうともがいた。その間にも、彼らの後ろでは着々と発射準備が進められている。
「アノ生命体のエネルギーが、先ほどの最大値二――イエ、それ以上に上がっていマス!」
「何だって!つまり、さっき以上のビームが飛んでくるということか!!まずい、非常にまずいッ!」
2人が煙の中でもがく中、
二人の目の前で金色の光がまばゆく輝いたかと思うと、二人のすぐ背後で調が
「調サン!!ソノ姿は一体…?」
「間に合った――アマルガムの発現!」
彼女のギアは金色の輝きを帯び、その手には巨大な盾が握られていた。
「リィカさん、待たせちゃったね。行くよ!」
調はふっと笑った。リィカもツインテールパーツをグルグル回して応答する。
「ハイ!仕切り直し、デスネ!」
調の盾が変形し、巨大なカッター付きヨーヨーへと変形する。ウェル博士が飛び跳ねた。
「これですよ、私が求めていたものはッ!さぁさぁ、その調子でささっとやっつけちゃってください!」
「毎度毎度、調子がいいんだから…」
「調サン、今ならアノ生命体を倒すことも可能デス!」
リィカの声に、調はあの生命体に立ち直った。先程のエネルギー射出の反動だろう、
「弱ってる…今なら!!」
調とリィカが大きく振りかぶった。調はヨーヨーを高速回転させ、リィカはハンマーの打撃部分に力を込めて――
突然、周りの景色が解けた。岩も、あの生命体も、ウェル博士も消えた。二人は振りかぶった状態で、その場から身動きが取れなくなっていた。
「――!?何、これ?」
「調サン、前方ヨリエネルギー反応を検知。何かが接近してきているものと思われマス。」
調が驚いて返答しようとする前に、二人の前に青く揺らめく影が見えた。
「――ファントム!!」
「ほう、私が放ったファントムノイズをもろともしないとは…そうとも、あいつは私が、次元粒子を使って生み出した存在なのだよ。ファントムダストとノイズの融合症例、ファントムノイズだ!」
「次元粒子…?」
「次元粒子とは、物質が時空を超える時に発生する、この世には存在しないはずの物質…少し細工を加えてやると、二つの物質を強制的に融合させる能力を持つのだよ。それはそうと、調、お前はかつての敵に力を貸しているのだぞ...昔の自分が見たらどう思うだろうか?本当にあの男に手を貸すのは正しい選択なのか?調、リィカ――お前達の決断があらゆる時代、あらゆる未来を殺すことになるやもしれぬぞ?」
調はうつむいたまま、しばらく黙っている。いつの間にか、地に足をついて、ヨーヨーも地面に転がっていた。
「調サン…?」
「…私は、ずっと間違ってたんだ…真に刃を向ける敵を…」
ファントムがフッと静かに笑った。調は顔を上げる。その顔は、決意をあらわにしていた。
「私が刃を向けるのは、響さんやウェル博士だと、ずっと思ってた…でも違う!私は、私が信じる正義を貫く!だから――」
調が大きく振りかぶった。
「私が――私たちが真に倒す敵はあなたたちだよ、ファントム!」
調の刃がファントムに届いた。ファントムは悶え、たじろいだ。
「愚かな!我が言葉に従っていればよいものを――いいだろう、お前たちの選択が正しかったかどうか見届けてやろうではないか。」
そういうと、ファントムは静かに消えていった。途端に元の風景に戻り、ファントムを貫いていたはずの調のヨーヨーはーファントムノイズに巨大な傷を負わせていた。
「――!?一体、何が起こって――」
「いいですよッ!ほら、あの巨体に穴が開いた!あそこを狙えば倒せるはずですよッ!」
ウェル博士が叫んだことで、調ははっと我に返った。見ると、ファントムノイズの胸部辺りに大きな穴が開き、その中に核のようなものが見えた。
「あれを狙えば――リィカさん!」
「エッ?あっ、ハイ!いつデモいけます、ノデ!」
リィカと調が呼吸を合わせる。ほとんど動けなくなったその巨体に、二人の合体技が繰り出される。
「これで――ッ!!」
「終了デス!」
双β式・
炎に包まれた一撃を核に当たる部分に喰らったファントムノイズは苦しみ、悶えてー消えた。
「やったの…?」
「ファントムノイズの生体反応を解析中――消失ヲ確認。調サン、何とか倒せたヨウデス。」
「やりましたよ、二人ともッ!私の予測が正しければ、これで――」
ウェル博士が言いかけたとき、どこからともなく青い稲妻が現れ、二つの青い穴が現れた。
「これですよッ!そう、私はこれにさらわれたのですよッ!」
「私たちも、この穴を通ってここまで来た。」
「時空の裂け目、デス。流れ込んでくる空気から年代ヲ測定――」
しばらくして、リィカが言った。
「――測定完了。ドウヤラ、右の時空の裂け目の方が年代が古いようデス。」
「つまり、私は右の穴を、君たちは左の穴を通っていく、というわけだな?」
「そういうこと、かな。ここでお別れだね、ウェル博士。」
ウェル博士は少しためらってから、調に質問を投げかけた。
「調、一つ聞きたい。僕は、英雄になれたかい?」
「それは…」
調はどうこたえるか迷った。ウェル博士は確かに世界の崩壊を防いではいるが、その前に悪事をこれでもかと企んでいる。すると、リィカが突然口を挟んだ。
「それハ、自分の目で確かめるのがよいと思いマス。自分の行く末をはじめカラ知っていては面白くないデス、ノデ!」
「リィカ君…」
ウェル博士は、リィカの方をしばらく見つめていた。やがて頷くと、
「…それもそうだ。よし、僕の最期は僕自身で目に焼き付けておこうじゃないかッ!」
三人の後ろで、穴が少し小さくなった。リィカがいち早く感じ取った。
「ハッ!?調サン、ウェル博士サン、時空の裂け目ガ小さくなっていきマス!」
「これはまずいね。さて、話したいことは山とあるが、一つだけ言おう、調君!今度会った時は敵同士だからねッ!」
ウェル博士は笑い声を響かせて、穴の向こうへと消えていった。
「さて、と…リィカさん、私たちも戻ろうか。」
「ハイ!そろそろワタシも、外の空気が吸いたくなってきマシタ、ノデ!」
二人は、時空の裂け目を抜けて元の世界へと戻っていった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。だいぶ投稿頻度が落ちてきています、すみません。それから、それでもめげずに読んでくださる方、ありがとうございます。
さて次回は...
都心部に発生したファントムダスト・ノイズの殲滅をいとも簡単にやってのけた切歌とギルドナ。そんな二人にいら立ちを見せたファントムがとった行動とは...?
次回[Lost Alchemy(後編)] お楽しみに!