「でね、この前さー、現場で一緒になったモデルさん……あっ男なんだけど。全然話が合わなくて休憩時間めちゃくちゃ困った」
「瑠美がそうなるのは珍しいね」
「大抵の人と一時間ぐらいは話を途切れさせずに話せる自信があったんだけどなー」
日曜日の午前八時、大凡一週間ぶりに顔を揃えた我が家族は、朝食を食べながら活動報告……もとい自分の趣味についての雑談で盛り上がっていた。母さんは最近飼育し出したなんとかとかいう蝶の体調が悪くて、気温管理に四苦八苦しているらしいし、父さんはそろそろ釣竿の買い替え時らしくカタログと睨めっこしている。俺は俺で、最近ゲームでちょっと『やらかして』オフゲーの釣りをしているはなしをやんわりとしたら、父さんの食いつきが凄くてびびった。あっ、いや、釣竿はいらないです。ゲーム!ゲームだから!マイ両親は、すぐ人を自分の趣味に巻き込もうとする……!
「合う合わないは仕方ないんじゃ?黙ってブラックリスト入れとけよ、マナーだぞ」
「おにーちゃんの人付き合いはそうかもだけど、仕事では苦手な人もブロックできないって知ってた?」
「へえ、仕事って面倒だね」
「うっわ、むかつく」
おにーちゃんもアルバイトしてみなよって?ざーんねん。うちの高校はアルバイト禁止ですし、そもそも毎月いただける資金で十分首が回ってるからなー。大学になったら何かするかもだけど。
それにお前、数ヶ月前に後輩アルバイトの女の子にも同じ様な事言ってたけど、今、結局手作りクッキーとか貢がれてるじゃんか。
「はー、話す気がない人とひたすら無言で一緒にいるのは流石に憂鬱だよ〜」
「愚痴はそのぐらいにして。そういえば瑠美は期末テスト大丈夫なの?」
「はぁい……。テストはいつも通り……って私だけ?」
「楽郎はこの前、勉強しに行くって珍しく図書館まで行ってたもの」
「へえ!おにーちゃんがめっずらし。え、家で勉強が追いつかないぐらいやばいの?」
「やばくねーわ、テスト範囲内の理解と暗記はもう終わってますぅ!」
「ああ、レポート提出かい?大学みたいだねえ」
「高校になったら、テストだけじゃないんだ……」
「ちがうちがう。勉強会?みたいな感じ。めちゃくちゃ頭良い友達に誘われたから」
父さんの言葉に瑠美が面倒だとばかりに顔を歪めた。いや、道徳作文は考えていたけどレポート提出はないから勘違いはとりあえず正しておく。瑠美が高校入ったらバレる嘘は未来の俺が困るから……。
「あれ?楽郎、勉強終わったらすぐゲームしたいから基本勉強は部屋でするって言ってなかった?」
「……あ……まあ、はい。偶々、ええ………ごちそうさまでした!」
「はい、お粗末様でした」
「あっ!おにーちゃん逃げた」
「戦略的撤退は戦術のひとぉーつ!!!」
なんか面倒な追求をされる予感がすると、俺の鍛え上げられた第六感がいってんだよ!あっお母様、ニコニコしながら女の子かしらって言わないで、聞こえてるし、あってるけどあってないからぁ!
***
玲さんはリアルの貴重な(廃)ゲーム仲間です。いや、たまにちょっとこう、俺も男の子だからちょっとそうかな?って期待……ではなく!予想することもあるにはあるが、玲さんの接触は尽くゲーム絡み!邪な感情を抱くのは廃人としてリスペクトしているレイ氏に失礼だ。
カツンカツンと、ペンが液晶に当たる音が部屋に響くが……えっと、これなんだっけ、辞書辞書。はい。……あーだめだ全然頭に入らん。今日のノルマをクリアしたら、久々にシャンフロにインするかと思ったけれど、もうちょっと頭冷やしてからにしよう。カップ麺食べたい。
「三分飯、三分飯〜っと。」
「めっずらし、おにーちゃんが、お昼の時間にお昼しにきてる」
「お前こそ、この時間まで家にいるの珍しいじゃん」
「さすがにテスト期間中はバイト減らしてるの。平均点なら余裕だけど良い点数とっとくに越したことないし」
「で、今日は」
「買い物行くけど、晩ご飯までには帰る」
「左様で」
割り箸とお湯を注いだカップ麺を持って、食べ終わったら今度こそゲームしよう。気分が乗らなければ、今日もシャンフロじゃなくても良いや。
「あ、そういえば、今日朝言ってた勉強会の相手って本当に彼女なの?」
「はっ……!!!あっち、え?なに?かのじょ……?」
「え?言い方的にみんなで、って感じじゃなかったしぃ、お母さんが絶対女の子っていってたから……じゃあ彼女かなって結論になったよ」
「本人抜きで結論を出すんじゃない……いやいや、本当友達。たしかに女性だけど、あの彼女と俺は性別の垣根を超えた友達なんですわ」
鼻歌まじりで階段を上ろうとした時に朝回避したはずの爆弾が帰ってきた。学校のクラスメイトに誤解されるのとは訳が違う。きちんと誤解を解いておかないと、一度連れてこいだとかそういう話にまで発展してしまう……!なんせウチは趣味一家なのだ、嫁いでくる可能性がある人に対しては結婚後のギャップができるだけないように、親族一同全員でうちの特異性について説明することになっている。うちの両親は特異な例でお互いの実家に挨拶に行った時の、趣味狂いについての注意喚起が、全く同じだったといういまでも親族酒盛りの鉄板ネタ……いや、いやいや、それは関係なくてだな。そもそも玲さんは彼女じゃないんだって。
「……えー?それマジで言ってるならお兄ちゃんないわー」
「なんなの、だから本当に」
瑠美はどうしてそういう思考になるのか分からないとでもいうようにため息を零した。あのねえ、とまるで出来の悪い子供に説教するようなテンションだ。
「少なくとも女子的には異性と二人で勉強会は割とハードル高いよ」
「え?まじで?」
「まじ。場所が図書館かどっちかの部屋になる時点で誘うの勇気いるよね?」
「いやでも、部屋はともかく図書館は……」
「図書館ならあんまり喋れないでしょ?沈黙がキツくない人じゃないと無理じゃん。というかまず異性と二人で図書館で勉強は、世間一般でいう図書館デートに該当します」
「としょかん、でーと」
『デート』という言葉でパッと出てきたのはJGEでの自分の発言である。あー、お互いその気がなくともデートみたいだよなー、迷惑じゃないかなと思ったのをぼんやりと覚えている。その問いに玲さんはなんと答えたのだったか。確か、『問題ない』ってバグりながら……?え?
「少なくとも、周りの全く縁のない他人に、お兄ちゃんとデートしてるって思われてもいいって思って、二人でいるわけじゃん……ってあれ?お兄ちゃん?」
「……あたまが ずつうで すごくいたいので、カフェインきめて、ゲームをします」
「………ふぁいと!」
………あ、カップ麺の麺伸びきってやがる。
ははは……えー?
続けばいいな〜〜