More than you think   作:夜鐘

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前回評価、コメントありがとうございました!
楽郎くんは走り出しましたが、物語はまだ走り出してません。


走り出す

 瑠美の一般論を加味し、今までの自分の行動と玲さんの行動を吟味した結果、なるほど、一般論で言えば間違いなく瑠美の言っていることは的を射ていると思われる。しかし、しかしだ。相手は廃人ゲーマーのレイ氏とクソゲーマーの俺である。一般論が通用するのか。

 少なくとも俺は瑠美に指摘されるまで、玲さんに好意を持たれているとは、露ほどにも思わなかった。神に誓ってもいい。玲さんのリアルのアバターが美少女だからこその思考バグはあったが、その想像、否。妄想に現実味を帯びたことはなかった。今まで起こったイベントを並べて、初めてそうかもしれないと思ったぐらいだ。

 

いくら俺がクソゲーに人生の半分以上を捧げているとはいえ、ここまで露骨なフラグである。流石に普通なら気づく。それを尽く意識さえしないまま、無視してしまったのはなぜか?

 

 それは、リアルバレしてから、付き合いこそ増えたが、玲さんからそういうアピールを受けた覚えが一切、ないからだ。

 大抵の話題はシャンフロについてだし、次点で学校の話題である。二人で遊びに行こうと誘われたのはそれこそ件のJGEぐらいだし、それも岩巻さんからの融通があっての偶然……!勉強会については、本当に勉強会だった。例のあれについての雑談もしたりしたが、基本、真面目に机に向かっていたのだ。

 

 

そう、全ては状況証拠を突きつけられたことに焦った俺の勘違い……!

 

 

「で、話が終わっていれば平和だったんだよなあ」

 

はあ、と一際大きなため息が、揺れる水面に落ちた。その結論が出た今尚、頭を抱えているのは、可能性を見出してしまったからこその葛藤だ。正直に言うと、一度可能性を見出してしまったからこそ、事実はどうであれ純粋なゲーム仲間として見れなくなっている。

 

(いやだって、玲さんに一秒でも恋愛感情向けられてるかも?って思ったら無理ですわ。ワンフレーム惚けたらコンボ決められてタコ殴りKOされるに決まってるだろ……)

 

 玲さんに非はない、分かっている。くっ、POW対抗で自動成功する程度のステータスが俺に備わってさえいれば……!魅了状態のキャラクターってこんな気持ちになってたのか、なるほどこれは辛い。混乱して後出しの絶妙に可愛くないヒロインの為に世界滅ぼす気持ちも分か……いやあれは別に魅了にかかっていた訳じゃねーしな。

 

 

「とりあえず、チャートだ……綿密なチャートの組み上げこそ勝利につながる。とりあえず明日の朝は一時間早く出るか……」

 

 

通学路が近いという事実と、交流が出来たことによって、最近は通学路で玲さんに声かけられることが多いのだ。勿論、友人の背中を見つければ声をかけるのは自明だが、明日に限ってはそれさえも避けた方が無難だろう。

 

「あ、いけね。晩飯」

 

強制ログアウトの足音が聞こえて来るようだ。いや、まあこのゲームで強制ログアウトさせられても痛くはないんだけど。身についた習慣が焦らせてくる。もう数えるのもやめてしまったブルーギルを川に戻して、慌ててログアウトした。

 

 

***

 

 

ーーリアル恋愛ゲームとは。

即ち選択肢の連続であり、その癖、残念ながらセーブもロードもできないので常に一発勝負、その上、頼れる攻略チャートもないゲームである。

 

「……控えめに言ってクソゲーでは?」

「なに?陽務、新しいゲーム買ったの?」

「んにゃ、HR終わったらすぐに、一秒のロスなく、ダッシュで買いに行く」

「……そんな売り切れそうな人気タイトル今日発売されてたっけ?」

 

 高橋が首を捻っているが、別に売り切れを懸念して走る訳ではないんですよ。クソゲーを求める俺の中の"passion"が俺に走れと囁くのさ。……何処かの雑菌福耳ピアスのポエム病が移ったかな。

 

「……何故こっちをみる」

「いや、ポエムミームも存在するのかなって」

「ポエムミームって何!?」

 

 雑ピがなんで急に巻き込んできたんだ、という目でこっちを見ているが、あ?高橋が雑ピを揶揄いたそうな目でこちらを見ている。仲間になりますか?

 

「……ポエムミームとは!!!」

 

まるで画面の向こうに語りかけるように口火を切ると、キラキラと目を輝かせた男子数名がガタッと音を立てて立ち上がった。

 

「知らぬ間に、人々の言葉を介して感染し!」

「感染した者の脳内を犯して、思考バクとしてポエムを撒き散らす!」

「……え、俺?俺が締めるの?……お、恐ろしい病である!!!」

「普通だな」

「暁ハート先生ならもっといいキャッチコピーを考え出せるはずだぜ……!」

「精進しろよ。つーことで席につけぇ、HR始めるぞ」

 

 いつの間にか教室に来ていた担任に、ポン、と肩を叩かれて、激励された雑ピくんはセンセーまでぇ!と声を上げながら渋々と席に着いた。

 さて、先生からの連絡事項を頭に入れながら、頭の中で最短通路を叩き出す。右手で鞄を掴んで混みにくい前のドアから教室を出て、東北階段から、下駄箱へ直行。後は乱数イベントが起こらなければ完璧だ。

 

「よし、今日も寄り道は程々にして帰れよー」

「起立、礼」

「お疲れ様っしたぁ!!!!」

 

かんっぺきだ!完璧なスタートダッシュだ!

教室の喧騒さえ背中に置いて、先生に見咎められない程度に早歩きで下駄箱へと辿り着き、外に出たら走り出すうううう。唸れ俺の脚力うううううう!

 




教室の窓から外をみていた玲さん
(あ、楽郎くん……?あんなに急いで、ロックロールでしょうか……?)
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