鬼狩り? 私は一向に構わん!!   作:神心会

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半年も間があいてしまい、まことに申し訳ございませんでした。
私生活で立て続けに問題が起こり、なかなか時間が取れませんでした。

多少回復の目処が立ちましたので、一気に書かせていただきました。
何卒よろしくお願いいたします。


35 リアルシャドー

 

 

 

 

 

炭治郎並びに烈海王達が、冨岡義勇―――そしてその過程で、伊黒小芭内も―――が抱える心の闇を晴らしてから、数ヶ月経ったある日。

 

 

 

 

 

とある藤の家紋の屋敷……その庭先にて。

 

 

 

 

ここにもまた一人、彼等と比しても決して劣る事のない密度の修練へと、懸命に励む男がいた。

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅぅッ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

烈海王が継子―――不死川玄弥。

 

 

額より多量の汗を流し、拳打の構えを取ったまま静止姿勢を取っている。

 

 

 

 

 

その視線が向けられた先は、眼前の何もない空間。

 

 

人は勿論、虫の一匹すらもいない……本当に、何もない空間。

 

 

 

 

 

 

しかし……玄弥の眼には、確かにそれが視えていた。

 

 

 

 

 

 

(集中しろ……もっと強く、脳裏に浮かべろ。

 色濃く、ハッキリとした形を……その動きをッ……!!)

 

 

 

 

彼が思い返しているのは、先日に遭遇したとある鬼の姿。

 

 

自身が体験してきた中でも、間違いなく最強の存在。

如何に己が未熟であるか、そして倒すべき敵が如何に強大であるかを改めて認識させられた、恐るべき修羅。

 

 

 

上弦の参―――猗窩座。

 

 

 

烈海王が繰り広げた死闘は、脳裏に強く焼き付いている。

その一挙一動を一切見逃さぬ様に、視続けたが故に。

 

 

 

 

だから……思い描ける。

 

もし仮に、あの拳魔が眼前に現れたとしたら……如何なる拳を振るってくるかッ……!!

 

 

 

 

 

「ッ……ハァッ!!!」

 

 

 

脳内の猗窩座が繰り出すは、右の正拳。

 

それを左に一歩ステップ―――当然、脳内シミュレートのみならず現実にその身体を動かして―――して、最小限の動作で回避。

直後にすかさず、右の縦突きを脳天目掛けて繰り出す。

並の相手ならば確実に捉えられたでろう、見事なカウンターであった。

 

 

「ッッッ!!!???」

 

 

 

しかし、その一撃は当たらず。

猗窩座は首を軽く横に反らし、容易く拳を回避してきた。

血鬼術と経験則が為す、驚異的な反応速度。

これが上弦の参なのだ。

 

 

 

「ッッ~~~!!!??」

 

 

 

続けて、震脚より繰り出される怒涛の拳打―――破壊殺・乱式。

一撃一撃が凄まじい破壊力を誇り、それが頭部から腹部まで、上半身の広い範囲に襲い来る。

 

玄弥は咄嗟に防御を固め、バックステップをした。

この至近距離での回避はどうあっても―――烈海王や柱ならば、話は別かもしれないが―――不可能。

ならば、少しでも攻撃の威力を削ぐのが最善手だ。

 

致命になり得る拳の軌道に意識を注ぎ、受けるダメージを最小限にするッ……!!

 

 

 

「ッ……グッ……!!??」

 

 

それでも、流石は鬼随一の剛拳というべきか。

防御越しであるにも関わらず威力は十二分にあり、且つ速度も桁違いだ。

 

まして鬼は、人間と違い無尽蔵のスタミナを誇る……当然、疲労による乱打終了などあり得ない。

かつて花山薫が対峙した、自由の女神を破壊した死刑囚―――スペックが誇る無呼吸連打すらも、更に上回るだろう拳の密度。

 

 

 

皮膚に、筋に、骨に……衝撃が、突き抜けてくるッッ!!!

 

 

 

(ッ……やられっぱなしでいられるなッ……せめて一矢報いろッッ!!)

 

 

 

だが、受けるダメージに反して玄弥の闘志はより高まっていく。

ただただ暴打に晒されるだけの無様でいられるものか。

 

見極めるのだ。

如何なる攻撃であろうとも、如何なる敵であろうとも、決して万能ではない。

何処かに必ず綻びがある。

耐え抜き、その隙を見出すのだ。

 

 

 

「ッッ……そこだぁッッ!!」

 

 

 

僅かな一瞬。

噴き乱れる拳風が弱まる微かなタイミング―――拳の引き際を、遂に掴む。

 

 

 

右拳が伸び切り、且つ左拳を繰り出そうと後方に肘が伸びる刹那。

 

 

 

 

玄弥は、脳内にて読経―――反復動作のスイッチ―――を行い、瞬間的に脚力を全開放ッッ!!!

 

 

その左が放たれるよりも速く、懐に飛び込み……打つッッ!!!

 

 

 

 

 

「破ァァッ!!!」

 

 

 

胴体への右拳直突きッッ!!!

 

 

攻撃動作の切り替え時という僅かだが確実に生じる隙への、爆発的瞬発力による突撃……如何に羅針が探知しようとも、回避そのものが間に合わぬスピードッッ!!

 

 

これ以上ないクリーンヒットにより、猗窩座の全身に―――痛みこそ与えられはしなかったものの―――衝撃の波が走る。

その影響により、乱打は一時停止。

この機を逃さず打つッッ!!

 

 

 

「シャアァァァッ!!!」

 

 

左拳で手刀を作り、喉元目掛けて真上に突き出すッ!!

無論、分厚い首を断ち切れる様に大きく捻りを加えた上でッ!!!

 

 

烈海王も同じく猗窩座討滅の決着打に選んだ、螺旋貫手ッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

――――――ザシュッッ!!!

 

 

 

 

 

その瞬間……玄弥は、己が頬に血飛沫が飛ぶ幻影を確かに視たのであった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァッ……!!!」

 

 

「お疲れさん……すげぇよ、お前ッ!!

 ぼんやりとだけど、俺にも鬼の姿が見えたぜッッ!!」

 

 

 

時間にして、およそ二分後。

玄弥は肩で息をしつつ、軒下に腰掛けていた。

その横に座るのは、汗拭き用の手ぬぐいを持つ後藤。

 

彼は、つい今しがた行われた鍛錬―――リアルシャドーに、強い感銘を受けていた。

薄っすらとではあるものの、確かに上弦の参の姿が視えたのだ。

呼吸による幻影ならば幾度となく見てきたが、このような鬼の姿は初めてだ。

 

 

そんな存在しない筈の鬼を生み出し、実際に闘う姿を見せた玄弥の技量……ただただ感心する他ない。

 

 

 

「ありがとうございます……けど、まだまだです。

 烈さんなら、もっとハッキリした形で視えますからね」

 

 

しかし、当の玄弥は己がまだまだ未熟であると語る。

まずこの鍛錬法は、烈海王が目の前で実践したのを真似たものなのだが、彼のそれは実に鮮明であった。

自分が生んだのよりも色濃くハッキリとした虚像……高い練度と集中力があるからこそなのだろう。

 

 

更に言えば、烈海王曰く自分よりもまだ上の存在―――ご存知、範馬刃牙である―――がいるとの事なのだから、世界の広さを思い知るばかりだ。

 

 

 

 

「それに、何より……後藤さんにも視えていた通りです。

 俺は、上弦の参には全く届きませんでした」

 

 

 

 

 

 

そして、それ以上に玄弥が自らの力量不足を実感したのは……上弦の参の首を、断てなかった事だ。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

――――――ザシュッッ!!!

 

 

 

玄弥が決め手とすべく放った、螺旋貫手。

 

威力・速度共に申し分ない見事な一撃であった。

 

まして放ったのは懐に潜り込んでからという、極至近距離。

 

 

 

大抵の鬼は、まず間違いなく命脈を断たれるだろう状況下だった。

 

 

 

 

 

 

しかしッッ……!!!!

 

 

 

 

 

 

(浅いッ……避けられてるッッ!!??)

 

 

 

 

 

 

猗窩座はこれを避けたッ……!!!

 

 

首への攻撃は致命的、だからこそ意識をその一点に集中させての超反応ッッ……!!!

 

 

 

 

命中寸前、首を僅かに横方向へと傾ける最小限の動作で……貫手の損傷を、僅かに首筋を抉る程度にまで抑え込んだのだッッ!!

 

 

 

 

 

 

(ッ……しくじったッッ!!!)

 

 

 

 

玄弥は、己が判断の誤りを痛感した。

あの烈海王でさえ、至近距離からの螺旋貫手は決定打に出来なかった―――尤も彼の場合は、その威力による紐切りを成せたので結果的には良かったが、残念ながら玄弥ではそこまでは至れず視神経は健在である―――のだ。

 

 

なのに、自分の攻撃は通用すると思った甘さ……何たる不覚かッッ!!!!

 

 

 

 

―――腹部に一撃を見舞った後、一度距離を取っての仕切り直しが正解だった?

 

 

 

―――否、そもそも懐に飛び込まずに流星錘を叩き込めばよかった?

 

 

 

―――だが、流星錘であの拳打程の速度を出せたか?

 

 

 

 

どちらにせよ、言える事は一つ。

 

この状況は……圧倒的にまずいッッ!!

 

 

 

 

 

 

――――――ドゴォッッ!!!

 

 

 

 

 

「ッッッ~~~!?」

 

 

 

 

猗窩座の右膝が、腹部を捉えるッッ!!!

 

咄嗟に腹筋を固めたものの、威力が高すぎる……衝撃で、肉体が空に浮き上がるッッ!!!

 

 

 

 

 

(しまった……空中じゃ、踏ん張りがきかねぇ……防御がッッ……!!)

 

 

 

 

 

そして、空に浮いた玄弥を仕留めるべく、猗窩座が動く。

 

 

 

 

背骨を含む全身の骨格を連結加速ッッ!!!

 

 

その速度を以て放たれる一撃は、瞬間的に音速にも等しくなるッッッ!!!

 

 

 

 

そして、人間ならば襲い来る反動の強さ故に多用出来ぬこの絶技を……猗窩座は、その回復力によって乱射が可能であるッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

猗窩座式マッハ突き――――――破壊殺・空式ッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……グゥゥッッッ!!!??」

 

 

 

マッハの拳圧が生む、衝撃波の乱れ打ち。

 

 

 

 

玄弥にそれを防ぐ術は無く……強烈な痛みと衝撃を全身に受け、肉体は後方へと大きく吹っ飛び、そして地に伏せたのだった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「この先、鬼との闘いはもっと激しくなる……だから、もっと強くならなきゃいけない。

 只管、鍛錬あるのみですよ」

 

 

幻影の猗窩座との闘いは、己が未熟を痛感する結果に終わった。

かつてに比べれば、確かに力がついたという実感はあるが……それでも、まだまだだ。

更なる修練を積み重ねなければなるまい。

 

 

より高みを目指すには。

 

己が目標とする漢達―――兄や烈海王―――と並び立つ為には。

 

 

 

 

 

 

(……いや、けど……今の時点で、お前も十分やばくねぇか?

 あれ、上弦の参って幻影だよな?

 こいつの動きの完成度が高いから、そこにいるみたいに錯覚してしまって……でも、こいつ確かに吹っ飛ばされてたよな……?)

 

 

 

そんな玄弥だが、後藤からしてみれば……ハッキリ言って、彼も色々な意味で普通じゃない領域だった。

 

リアルシャドーの原理についてはよく分かる、分かっている……何度も全集中の幻影は見てきたのだから。

 

 

 

 

けれど……ただ幻影が視えるだけならいいが、最後の方は玄弥の身体が明確に吹っ飛ばされていた。

 

あれはもう、単なる幻影とかそういう次元ではないのではないか……?

 

強すぎる集中力と意識が肉体にまで影響を与えるとは言うが……目の前で起きても尚、信じ難い現象である。

 

 

 

 

しかも、玄弥の言葉を信じるのであれば、烈海王はその上の領域にあり……且つ、その烈海王すら大きく上回る漢が更に存在している。

もはやそれは、拳法家ではなく妖術遣いか何かではなかろうか?

 

人の身でありながら血鬼術を使えるような、そんな類の……?

 

 

 

 

(……いや、言うのはやめとこう。

 折角やる気出してんだし、武術からっきしの俺にどうこう言う権利はないな、うん)

 

 

 

後藤は、それ以上考える事を止めた。

己は闘う術を身に着けていない隠の身だ。

如何に疑問を挟もうとも、同じ土俵に立っていない以上は問うべき立場に非ず。

 

 

 

 

決して、思考を放り投げた訳ではない。

 

 

人体って凄いなと改めて思い知った……それだけの事だ。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「じゃあ炭治郎も、日の呼吸を自分なりの形にしようと頑張ってるって訳か……」

 

「ええ、水の呼吸にヒノカミ神楽を混ぜ込む事で負担を軽く出来たから、今度は基本の五大呼吸についても学んで……烈さんが言うには、フィードバックっていう原理みたいです。

 五大呼吸は日の呼吸から直接分岐しただけあって共通点が多いから、逆に辿る形で神楽の完成度を高める事が可能だと」

 

 

数分後。

肉体のクールダウンを済ませた玄弥は、後藤とともに茶を飲み言葉を交わし合っていた。

 

話題は、炭治郎について。

後藤も玄弥―――文字の読み書きに不慣れな実弥と違い、悲鳴嶼から教わっている―――も、手紙で彼とはやり取りを行っている身。

現在彼が置かれている状況については、二人とも大体分かっていた。

 

ただ、隊士の玄弥と隠の後藤とでは、手紙の内容が―――特に戦闘技術についての記述には、大きな差があった。

勿論これは、二人の置かれている環境を鑑みた上での、炭治郎なりの配慮である。

 

だからこそ、こうして話をしてみると、互いに知らなかった事も良く分かり面白い。

 

 

 

 

「この前は、片平さんの紹介で岩の呼吸の育手に会ってきたみたいなんですが……片平さん、驚いてたみたいですよ。

 炭治郎、思った以上に筋が良いって……岩の呼吸の適性、あるんじゃないかって」

 

「あいつが岩かぁ……同僚から聞いたんだけどよ。

 炭治郎のやつ、物を投げた時の命中率が異常に高くないかって。

 逃げた鬼目がけて刀を投げたら、見事に脳天直撃……その前も、投石したら鬼の両目に当たって悶絶したって話だぞ」

 

「それですよ、俺が聞いたのも。

 鎖分銅付きの刀を使わせてみたら、投げて命中させるのが滅茶苦茶上手くて……流石に、悲鳴嶼さん達みたいに鎖を操るっていうのは難しいみたいですけど」

 

 

 

炭治郎は岩の呼吸の適性があるのではないか?

 

そう言われてみると、不思議と納得できる。

特にあの、異常なまでの投擲技術……命中率の高さは、鬼殺隊随一ではなかろうか?

そして岩の呼吸ならば、それを十二分に活かせるだろう。

 

 

 

現に、彼からの投擲を受けた水柱冨岡義勇は、後にこう語っている。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

―――炭治郎と初めて会った日……あいつは、俺に斧を投げた。

 

 

 

 

―――俺を必ず倒そうと、寸分の狂いも無く額目掛けて飛んできた。

 

 

 

 

―――もう少しばかり、気付くのが遅ければ……俺は死んでいた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「あいつ、炭焼きの生まれだったよな?

 なんでそんなに投げるのが上手いんだ?」

 

「分かりません……兄弟達と、よく玉遊びでもしてたとか?」

 

 

何故、炭治郎にあれだけの投擲技術があるのかは分からない。

炭焼き由来で身に着けたものでは、決して無い筈だ。

 

 

つまりあれは、炭治郎が生まれ持っていた天賦の才による。

 

 

 

 

 

もしも、生まれてくる時代が違えば……野球や砲丸投げをはじめ、各種近代スポーツで名選手になりえたのではなかろうか?

 

 

 

 

 

「ま、落ち着いたら聞いてみるか……今はあいつ、音柱様と任務中だしな」

 

「そうなんですか?

 柱と一緒って……まさか、十二鬼月と?」

 

 

 

柱と合同の任務。

そう聞いた途端に、玄弥の表情から笑みが消え引き締まった。

 

 

柱が任に当たるとなれば、基本的には他の隊士で対応しきれない難解なケースが多い。

まして、合同任務となれば猶の事だ……先日の無限列車が正にそれだった。

 

ここしばらくの間、十二鬼月―――特に下弦と思わしき鬼の活動が全く見られないという状況であったが、遂に動き出したのか。

 

 

 

だとすれば……上弦の可能性が高い。

 

 

 

「場所は何処か分かります?」

 

「ああ……これを聞いたのはアオイちゃんからなんだが、音柱様が向かったのは吉原だ。

 近いっちゃ近いな……玄弥、もしかしたらこれって……」

 

 

 

 

 

 

「後藤さんのお考え通りです。

 玄弥、我々はここでしばし待機……連絡を待てとの事だ。

 耀哉さんも、この一件には上弦が絡んでいると睨んでいる」

 

 

 

 

その瞬間。

後藤が次の言葉を紡ぐよりも、少し早く。

 

 

部屋の襖を開け、彼―――烈海王が、そう言い放った。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「烈さん、お帰りなさい……どうでした?」

 

 

 

 

遡ること半日前。

烈海王は、突如として鎹鴉より産屋敷邸からの招集を受けた。

 

 

 

鬼舞辻無惨の打倒について、重要な用件を話し合いたい。

 

情報漏洩を防ぐ為、詳しくは直接会ってからの話になる……急ぎ向かってきてほしいと。

 

 

 

勿論、烈海王はそれを承諾した。

玄弥には藤の家紋の家で待機する様に伝え、隠に担がれ向かったのである。

 

 

 

その間に、別の任務を終えた後藤がたまたまこの屋敷へと訪れ、そして今に至る。

 

 

 

 

「うむ……その事なんだが、玄弥。

 近いうちに、今度はお前にも来てもらう事になりそうだ」

 

「え……俺がですか!?」

 

 

 

いきなり自分を名指しされ、玄弥は戸惑いを隠せなかった。

 

鬼舞辻無惨を倒す為の重要な会合。

その場に呼ばれる……光栄な話なのだろうが、それ以上に驚きと不安が強すぎる。

 

 

 

 

何故、その様な場に一隊士である自分が……?

 

 

 

 

「ふふっ……そう不安になるな。

 これは胡蝶さんと、そしてあの人からの強い要望だ。

 ただ……後藤さん」

 

「分かってますよ。

 御館様の許可無しに、俺に話せる内容じゃないんですよね?」

 

「すみません……玄弥、この事についてはまた後で話させてくれ」

 

 

 

胡蝶しのぶ、そしてあの人。

 

気になる単語は出たものの……玄弥には、それ以上追及する事は出来なかった。

隠の後藤がいる場では、話せない……尤もな話だ。

 

 

 

彼の事は信頼しているし、情報がその口から洩れる事はまずありえないだろう。

だが、問題は彼が非戦闘要員であるという点にある。

 

 

 

鬼舞辻無惨は、その細胞を通して配下の鬼が持つ記憶と情報を得る事が出来る。

また、そうして得た知識を任意で他の鬼に与える事も出来る。

 

 

 

では……鬼殺隊にとって重要な情報を持つ人間が、強制的に鬼化されてしまえばどうなるか?

 

組織として、この上ない致命傷だ。

 

 

 

その為に、産屋敷家や刀鍛冶の里といった重要拠点の所在地をはじめとする重要情報には、徹底した秘匿策を取っている。

 

 

 

 

故に、後藤には話せない―――逆に言えば、玄弥はその危険性が低い……即ち、鬼に容易く倒されるような漢ではないと認められた―――のだ。

 

 

 

 

 

 

「分かりました……それで、烈さん。

 話を戻しますけど……炭治郎達がいる吉原には、上弦の鬼がいるかもしれないんですよね?」

 

「そうだ……宇随さんの御家族が潜伏していたのだが、定期連絡が途絶えたらしい。

 私も以前にお会いした事があるが、あの彼女達がとなると……少なくとも、並の鬼でない事は間違いない」

 

 

 

話題は再び、炭治郎達についてになる。

耀哉は宇随より今回の件について報告を受けており、それを烈海王も先刻聞き及んだ。

 

 

宇随の家族―――三人の妻が、吉原で消息を絶った。

 

三人ともが手練れの忍であり、低級の鬼相手ならば決して剣士にも引けを取らない実力もある。

何より、隠密活動に長けた潜入捜査のエキスパートだ……烈海王も彼女達とは面識がある。

きっかけこそ、中華料理について教えてほしいという要望からではあったのだが……彼女達の力量はよく知っている。

 

 

 

故に、現状の厄介さもまた分かっていた。

 

 

 

 

吉原遊郭に潜む鬼は、一筋縄ではいかぬ難敵……だからこそ、自分達に待機命令が下ったのだ。

 

事態が動いた時には、すぐに駆け付けられる様に。

 

 

 

 

「分かりました……なら、薬や包帯の確認をしときますね。

 どんな鬼が出てくるかもわかりませんから」

 

「ええ、お願いします」

 

 

 

ならばと、後藤は備品の確認を行うべく立ち上がった。

相手が十二鬼月であるかもしれない以上、万全を期して挑みたい。

闘う術こそ持たぬ身なれど、後方支援としてならば幾らでも出来る事はある。

 

 

隣室においてある荷物袋を取ろうと、襖を開く。

 

 

 

 

 

 

その、次の瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

「緊急伝令ッ、緊急伝令ッッ!!!

 烈海王、不死川玄弥、タダチニ吉原遊郭へと急行セヨッッッ!!!

 宇随天元達ト合流シ、鬼ヲ討テッッッ!!!」

 

 

 

 

 

風雲急を告げる、鎹烏の伝令が響き渡ったのは。

 

 

 

 

 

 

「現地デハ、竈門炭治郎ガ鬼ト交戦中ッッ!!!

 敵ハ十二鬼月、上弦ノ陸ッッッ!!!」

 

 

 

 

 

 




Q.玄弥、リアルシャドーを体得している?
A.烈さんから原理を効いて実践したところ、思いのほか上手くいきました。
 流石に刃牙程の精密さはありません、あれはもう妖術です。

玄弥vs幻影の猗窩座。
多少いいところまではいくものの、玄弥ではやはり勝てませんでした。
加えて、玄弥のリアルシャドーは刃牙の様な高い精度がないので、本物に比べればレベルが落ちてます。
それでも後藤さんの言うとおりに「やれるだけでも凄い」というリアルシャドーですが、これには一応玄弥だからこそ出来た理由があります。
鬼食いをしている身なので、鬼がどういう存在なのかを少しばかり身近に考える事ができる=リアルシャドーに繋がった……と考えてもらえたら幸いです。


Q.炭治郎って岩の呼吸の適正があるの?
A.呼吸適正があってもなくても、あの投擲技術はマジでおかしいです。

Q.烈さんが呼び出された理由は?
A.過去に烈さんが取ったある行動がつながっています。
 ヒントは烈さんが口にした、玄弥との会合を希望している「あの人」です。

Q.カナヲが継子だからという理由で吉原の任務に連れて行かれなかったのに、炭治郎が音柱と一緒にいるのは矛盾してない?
A.炭治郎達は原作同様に蝶屋敷で音柱拉致未遂の現場に遭遇してますが、そこで炭治郎が「柱の許可を取ればいいんですよね!!」と即啖呵を切りました。
 そしてすぐに水・炎の両名に鎹鴉を飛ばしたら「いってこい」の二つ返事だった為、そのまま原作同様に同行となりました。

Q.思春期真っ只中で女性にうぶな玄弥を遊郭連れてくのってやばいのでは?
A.そんな事気にする暇も無い地獄が待ってるので問題ないです。
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