鬼狩り? 私は一向に構わん!!   作:神心会

6 / 40
烈さん、鬼殺隊や鬼について色々と知る回です。

頂きました感想では「鬼と闘えるとかワクワクしてそう」「刃牙世界の人達、本物の鬼観たら嬉々として闘いそう」というご意見が見受けられました。



作者にも、まさにその通りだと……そう思っていた時期がありました。



06 断じて許せぬ存在

鬼殺隊。

 

 

その数およそ数百名。

 

 

政府から正式に認められていない組織。

 

 

 

 

しかし、古より存在しており彼等は今日も鬼を狩る。

 

 

 

 

生身の身体で、人間の遥か上を行く鬼を狩る。

 

 

 

 

 

『悪鬼滅殺』の心を以て。

 

 

 

 

全ては、鬼を滅ぼし人々を守る為に。

 

 

 

 

「鬼殺隊、鬼、全集中の呼吸……人の世の裏で、そんな存在があったとは」

 

 

 

そんな、鬼殺隊とそれを取り巻く環境についてを聞き、烈海王は正直驚いていた。

 

自分とて、中国武術界を背負う海王であると同時に、東京ドーム地下闘技場の格闘士だ。

闘争に絡む事にこそ限定はされるものの、表沙汰には出来ぬ所謂裏の事情にはそれなりに精通している。

だからこそ、普通の手段では闘えぬ者達と拳を交える機会を持て、磨けた技術も多くあった。

 

 

 

 

しかし……その烈海王を以てしても、今の話は全てが初耳ッ!!

 

 

全集中の呼吸なる闘法も、人を喰らう悪鬼の存在も、全く聞いた事が無いッッ!!

 

 

まさか、未だ自分が知らぬ闘いの世界―――それも大正時代という過去に―――があったとはッッ……!!

 

 

 

 

「人を餌とする鬼……か」

 

 

とりわけ、烈海王が強く意識したのは鬼の存在だった。

自身にとって、この名称はやはり特別な意味を持つ。

 

 

言わずもがな、オーガの異名を持つ範馬勇次郎……そして、その血を引く者達だ。

 

 

彼等の身体能力と闘争心は、常軌を逸している。

もはや人であるかどうかですらも―――事実、古代の遺跡に範馬勇次郎らしき存在を示唆する壁画が残っている始末―――怪しい存在。

同時に、全ての格闘士にとっては超えるべき頂きとも言える。

 

 

人が超えるべき、倒すべき超常の存在。

人として、積み重ねられた技術を以て暴力を払う。

そう言う意味では、鬼殺隊が言う鬼と彼等は似ているのかもしれない。

 

 

実際、あの範馬勇次郎は強敵を『餌』と、倒す事を『喰らう』とよく比喩していたが。

 

 

 

(喰らうという点においては、ピクルもそうか。

 私自身、右脚を彼に食われてしまっている……)

 

 

 

また、人食いという点においてならば、ピクルも近いものがある。

彼は自身の右脚を、愚地克己の腕を、ジャック・ハンマーの表皮を文字通りに『食って』いる。

闘争の末、仕留めた獲物としてその口に血肉を運んでいる。

 

鬼と同じく、飢えを満たすための餌として……

 

 

 

(……否ッ!!

 彼等が鬼と似ているッッ!?

 何を考えているのだ、私はッッッ!!)

 

 

そこまで考えて、烈海王は自身の短絡的な思考を呪った。

 

断じて違う。

この大正の世に跋扈する鬼は、決して範馬一族やピクルの様な者達ではない。

 

 

 

 

 

彼等を同一の存在と捉える事は……侮辱に他ならないッッ!!!

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「烈さん……?」 

 

 

季節はまだ、春に差し掛かって間もない頃。

夜風もあって、極めて涼しい……肌寒さすら感じる時期である。

 

だというのに……しのぶの額には、いつの間にか汗が滲み出ていた。

喉もからからに乾き、思わず唾を呑み込まざるを得ない程だった。

 

 

その熱気を生んだのは、目の前に座る烈海王が瞬時に放った気迫―――凄まじい怒気だ。

 

 

 

鬼殺隊についての諸事情を説明した途端だった。

つい先程までは、極めて冷静沈着であったのに……何が、彼の逆鱗に触れたというのか。

 

 

(……鬼の存在を、許せないと思っている……?

 けれど、それにしても……)

 

 

もし今の会話で烈海王が怒りを覚える部分があったならば、それは鬼の存在以外には考えられない。

確かに、人の血肉を喰らう鬼は許されざる悪だ。

鬼が我欲を満たそうとせんが為に、多くの犠牲者が生まれてしまった。

 

故に、義憤を覚えるのはもっともだ。

事実、鬼を許せぬという正義感から鬼殺隊に入った者も少なくは無い。

 

 

 

しかし……烈海王から感じる怒りは、その類ではないのだ。

 

 

蝶屋敷の主という立場上、多くの隊士を診てきた自分だからこそ分かる。

彼の怒りは、そんな正義感ではない……寧ろ、どこか自身に近い代物だ。

 

 

 

もっと、個人的な強く濃い気持ち。

 

そう……鬼に親しい者を奪われた、復讐心から来る怒りに近い。

 

 

 

だが、それはありえない。

烈海王は、誰かを喪ってなどいない。

それどころか、鬼という存在を今初めて知ったのだ……ならば、何故彼は怒りを覚えている?

 

 

 

 

一体、鬼の何にここまで身を震わせる怒りを覚えたというのか……?

 

 

 

 

「ッ……すみません、胡蝶さん。

 驚かせてしまった様ですね」

 

「あ……いえ、お気になさらないでください。

 私は大丈夫ですから」

 

 

そんなしのぶの様子を察して、烈海王はすぐに我へと返った。

溢れ出ていた怒気を一瞬で消すと同時に、頭を下げてその失礼を詫びる。

 

もっとも、しのぶもこういった場面には立場上馴れてはいるので、そこまで気分を悪くはしていないのだが……

 

 

 

「何故私が、そこまで鬼という存在に怒りを覚えたか……そう疑問に思ってますね」

 

「……ええ、その通りです。

 義憤でもなければ、恨み辛みとも何かが違う……烈さん。

 あなたの怒りの源は、一体何なのですか?」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「……先程お話した通り、私は自らの武を磨く為に世界を旅して来ました。

 欧米のボクシング、日本の空手……数多くの出会いがありました」

 

 

しばしの沈黙の後。

怒りの根源を問うしのぶに対し、烈海王は静かに口を開いた。

 

 

 

彼は最初、自身の身分を問われた際に『旅の武術家』と答えていた。

自らを高める為、武者修行として世界を旅している身だと……それを、しのぶもすぐに信じた。

力強く揺るぎない言葉で伝えられたが為に、嘘は無いと判断したのだ。

 

 

 

実際、全て本当の事だ。

 

 

 

地下闘技場最強トーナメント出場に当たって日本に渡り、多くの闘士と交流を深めたのは事実。

 

中国武術を更なる領域へ引き上げる為、渡米してボクシングに挑戦したのもまた事実。

 

 

 

何一つとして、烈海王は間違った事を口になどしていない。

 

 

ただ……幾らかの経歴を、敢えて語っていないだけなのだ。

 

 

 

―――百年近く後の未来からやってきた。

 

 

―――蘇った宮本武蔵に斬殺され、気が付けば大正の世にいた。

 

 

 

最も大きな要素であるこの二点を、烈海王は伏せていた。

こんな現実離れしすぎた話を信じてもらえるとは、流石に思えなかったが為だ。

 

一応、鬼という超常の存在を考えれば、受け入れられる可能性もゼロではなかったかもしれないが……今は右も左も分からぬ身。

余計な火種を生む必要性も無いので、敢えて口にしなかったのである。

 

 

 

「その最中で、私はある男に出会いました。

 文明が発達した世においては、あまりにも異質な……古き時代の戦士と。

 彼は、闘いの果てに倒した相手を……文字通り『食べた』のです」

 

「ッッ!?

 烈さん、その人は……!!」

 

 

烈海王の口から出た言葉に、しのぶは驚愕して思わず立ち上がった。

人を喰らう男。

それは彼女達鬼殺隊からすれば、決して無視できぬ存在であるが為に。

 

 

「いえ、しのぶさん……彼は鬼ではありません。

 紛れもない人間なのです」

 

 

しかし、それは杞憂であると烈海王は静かに告げた。

彼―――ピクルは、自分達と同じ人間なのだと。

 

そう聞いて、しのぶは一瞬安堵するも……すぐに、別の意味で驚愕した。

つまりそれは……人間が人間を食べるという事なのだから。

 

 

「食人文化……ですか……?」

 

 

医術を学ぶに当たり、海外の文化や風土を知る機会は多々あった。

そして、食人―――カニバリズムの風習についても、その過程で知ってはいた。

鬼殺隊からすれば、心情的には複雑極まりないモノだが……しかし。

まさか、実際に目で見た人間が現れようとは、流石に思ってもみなかった。

 

 

「……信じられないでしょうが、事実です。

 しかし、決して誤解しないでいただきたい……彼は悪しき存在ではない。

 我々人間が、空腹を満たし英気を養う為に魚や鳥を食べる様に……彼にとっては、それが当たり前なのです。

 ただ、その対象に人を含むだけの事……自然の摂理に従って生きているのです」

 

 

野生の掟に従って生きるピクル。

彼が食べるのは、外ならぬ生きる為なのだ。

太古の恐竜も、獰猛な獣も……人間も、皆等しく。

 

 

 

そう……烈海王が鬼に対して怒りを抱いた理由の一つは、そこにあるのだ。

 

 

 

「だがッ!!

 そんな彼にも、自身で定めた確かな誓いがあったッッ!!

 己に襲い掛かるモノのみを、餌と定めて喰らう……それを彼は、誇りにしていたのだッッッ!!!」

 

 

ピクルは、無差別に何かを食らう事など決してしなかった。

己に襲い掛かってきた相手―――それも、強敵のみを唯一餌と見なしていた。

 

 

 

そして……出会えた強敵を、友を、自らの手で食らわねばならぬ宿命に、涙まで流したのだ。

 

 

 

「私は、彼を素晴らしい戦士だと思っている……それに引き換え、鬼の愚かしさは何だッ!?

 例え乳飲み子であろうとも、闘う術を持たぬ者を……逃げ惑うしかできぬか弱き者すらも、喜んで食らうとッッ!?

 ただ快楽のままに食らうなどッッ……!!

 彼の……彼等の誇りには、程遠い愚行ッッッ!!」 

 

 

 

烈海王にとっての鬼とは、許しがたい愚者。

 

即ち、全ての格闘士を……その誇りを侮辱する存在なのだ。

 

 

 

社会から見れば極悪極まりない最凶死刑囚達ですら、闘争に関しては、一応の―――烈海王の知る限りでは、だが―――美学があった。

個々での差こそあったものの、皆が『敗北を知りたい』と願い……その為に、強敵を求めていたのだ。

その過程で犠牲になった者もいはするものの……その大半は警察官であった様に。

基本的には、彼等を止めようとして挑んだ者達ばかりだ―――スペックに襲われたコンビニ店員に関してはどうなのかという意見もあるが、中華饅を死守しようと勇敢にも挑んだという説もある為、敢えて保留とする。

 

常に、彼等の思考は闘争で固定されていた。

 

 

 

 

暴力の化身たる範馬勇次郎とて、例外ではない。

彼の振る舞いは、一見理不尽極まりないものだが……意外にも、自らに牙を剥けぬ相手に拳を向ける事は殆どなかった。

事実、米軍基地内のピクルを警護していた軍人達は、勇次郎に敵対行動を取らなかったからこそ無事で済んでいる。

 

 

ただ、柳龍光に対して「屈服しねえ以上は俺の前に立ったって事」と認めて、顔面を破壊した出来事が如実に語っている様に。

誰であろうとも立ち向かってくる相手を容赦なく叩き潰しているだけ―――もっとも、日常的に楽しんでいる道場破りの様子からして、相手を挑発してそうなる様に仕向けているケースもある為、かなりグレーゾーンだが―――だ。

 

 

非力な朱沢江珠や、その婚約者である朱沢鋭一を殺害した点についてはよく槍玉にあげられるものの……彼等も例外ではない。

鋭一は、初対面で勇次郎にコップの中の飲み物をぶちまけるという挑発行為を行っている。

江珠に至っては、息子の刃牙を守る為に自ら勇次郎へと拳を叩きつけているのだから、ある意味当然の結果だ。

 

 

 

 

 

しかし……鬼はどうだ?

か弱い女子供も老人も、見境なく食らう。

それも、野生動物の様に生きる為というならばまだ分かるが……快楽を満たしたいが為だけに、暴虐の限りを尽くす者が大半というではないか。

 

 

 

「何よりッ!!

 鬼には致命的すぎる欠陥がある……人を食らう怪物に成り果てる?

 陽光を浴びる事が出来ない身になる?

 否、そんな事はハッキリ言ってどうでもいいッッ!!

 武を、技を、力を高めんとする身からすれば、それは断じて許せぬ事ッ……!!

 鬼の在り方そのものが、私には許せぬのだッッッ!!!」

 

 

 

そして何より。

 

鬼には、強さを求める者としては絶対に許せぬ欠落がある。

 

それは、鬼殺隊の隊士ですらも殆どが気にも留めない事かもしれない。

 

鬼を屠るのが使命であるが故に、考える者は稀であろう。

 

 

 

しかし……烈海王は、真っ先にそれに気づいてしまった。

 

 

 

だからこそ、彼は己を恥じたのだ。

 

こんな愚かしい者達と、ピクルや範馬一族を同一視してしまったなどとッ……!!

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

(烈さん……この人は……)

 

 

烈海王が鬼に怒りを抱いた理由。

それを知り、同時にしのぶは彼がどういう人物なのかも理解できた。

 

烈海王は、一言で表すならば『武人』だ。

際限なく真っすぐに、極みを目指さんとする……武に生きる闘士なのだ。

彼は、武術をどこまでも愛している。

 

その矜持が、鬼の在り方を決して許せなかったのだ。

 

彼の様な人物は、鬼殺隊には中々―――敢えて言うならば、炎柱がそれに近いか―――いない。

しかし、決して悪い人間ではない。

 

 

寧ろ、今の心からの叫びを聞いて確信できた……烈海王は、信用に足る人物だと。

 

 

「……烈さん。

 あなたがどういう方なのか、これではっきりと分かりました。

 疑う様な真似をして、申し訳ございませんでした……改めてお礼を言わせてください。

 私達鬼殺隊の手助けをしていただきまして、本当にありがとうございました」

 

「いえ、当然の事をしたまでです。

 私とて、右も左も分からぬ身……ご教授、感謝致します」

 

 

両者ともに、相手への感謝を改めて示した。

出会い頭にあった警戒心は、もはや微塵もない。

何処か張りつめていた空気も、すっかり様変わりしていた。

 

 

 

 

「それにしても、中国武術って凄いんですね。

 私達は全集中の呼吸で鬼を打ち倒してきましたが……」

 

 

ここで、話題は中国武術へとシフトする。

全集中の呼吸によって身体能力を高め、呼吸に応じた剣技を繰り出し鬼を狩る。

それが鬼殺隊の基本的な戦い方だが……烈海王の闘法は、全く違う。

彼は、長年の修行で培った中国武術によって鬼を討滅した。

鬼殺隊からすれば、これは異端中の異端とも言えるだろう。

 

 

「いえ……私も、全集中の呼吸については驚きました。

 確かに、多くの武術において呼吸の仕方は基礎的な物にはなります。

 ただ、それこそを重要視する技術というのは……ある意味、盲点でしたね」

 

 

対する烈海王にとっても、全集中の呼吸は興味深く新鮮な技術であった。

武の世界における呼吸法とは、長時間の闘いにおいても体力を維持できるようにと、その大半が意図されている。

息を切らせば肉体の精度が落ちる、だからこそ長く保てるようにと息遣いを学ぶ。

これは、現代アスリート―――特に長距離走の選手にも見てとれる。

 

 

しかし、全集中の呼吸はそこから更に一歩踏み込んだ技能だ。

 

鍛錬によって肺機能を高め、独自の呼吸法により莫大な酸素を身体へと取り込む。

そうして血の巡る速度を大幅に上昇させ、瞬間的に身体能力を向上させる。

 

理に適っている……だが、決して楽なモノではない。

意図的に血流速度を上げるとなれば、当然肉体にかかる負担も増す。

見様見真似の生兵法は、大怪我の基になる。

もし習得しようと思わば、長い年月をかけねばならないだろう。

 

 

 

もっとも……それに当てはまらない例外が、僅かながらにだが存在してもいる。

 

 

独学で独自の呼吸法に辿りつく者。

 

刀を握り僅か数カ月で鬼殺隊最高位の柱にまで上り詰めた、恐るべき才覚の剣士。

 

 

 

彼等の様な例外を考えると、烈海王の鍛えられた肉体ならば、呼吸法の仕組みを理解さえできれば或いは……?

 

 

 

「……烈さん。

 少し、試してもらいたい事があります」

 

 

そこまで考えて、しのぶは懐よりある物を取り出した。

 

片平隊士の運搬中、自身と遜色ない動きを見せたのにも関わらず、烈海王は呼吸法を使っている様子を見せなかった。

しかし、呼吸法抜きであれだけの事が本当に可能なのだろうか。

そんな疑念が生じてしまったが為……しのぶは、対談に当たって用意をしていたのだ。

 

 

鞘に収まった、本当に小さな……一振りの短刀を。

 

 

 

「この小刀は……?」

 

「日輪刀です。

 私は普段使っている刀の他に、履物にも刃を仕込んでいます。

 この短刀は、その取り換え用として備えていた予備です……抜いていただけませんか?」

 

 

短刀を抜いてほしい。

それは烈海王からすれば、どういう意図かが分かりかねる頼みであった。

刀を鞘から引き抜いて、一体何になるというのか。

それが、呼吸法の話とどう繋がるというのか。

 

しかし……態々改まって言うという事は、何かしら意味があるのだろう。

ならば、やるしかあるまい。

右手で柄を強く握り、左手で鞘から刃を引き抜く。

 

 

すると……烈海王の目の前で、信じ難い現象が起きたのだ。

 

 

 

 

「なッ……刀の色が、変わったッッ!?」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「刀身が、碧く染まっていったッ!?

 鋼の色が変わるなど……しのぶさん、この刀は一体ッッッ!?」

 

 

引き抜かれた短刀の刀身。

 

それが今、烈海王の目の前で見る見る内に色を変えたのだ。

 

 

 

 

日本刀特有の鋼色から、さながら海を思わせるかのような……紺碧の色にッッ……!!

 

 

光の反射による、見え方の変化等ではない……鋼が完全に、根本から染まっているッッ!!

 

 

中国拳法四千年の武器術にも無い、摩訶不思議な現象ッッ!!

 

 

 

「やはり、そうでしたか……日輪刀には、色変わりの刀という別名があります。

 私も詳しい仕組みまでは知りませんが、全集中の呼吸を学び且つ一定以上の実力に達した剣士が持つと、刀身の色が変わるんです。

 炎の呼吸ならば赤く、雷の呼吸ならば黄色くといった具合に、その持ち手に適した色へと」

 

 

驚く烈海王へと、しのぶがそのメカニズムを説明した。

日輪刀は、呼吸法を身に着けた剣士が持てばその色が変わる。

持ち手の呼吸に最も適合した、特有の色合いへと……謂わば、武器が持ち手の個性に答えてくれるのだ。

 

 

 

そして……烈海王が手にした刀が、色を変えたという事はッッ……!!

 

 

 

 

「烈さん……あなたは、呼吸法を既に扱えています。

 日輪刀の色変わりが、その証拠です」

 

 

 




烈さんが鬼との闘いを決意する、その切欠となる話になりました。

刃牙本編を見る限り、烈さんって『仁義』にこそ厚いものの『正義』の人かと言われると、正直疑問符がありました。
その為、「鬼が人の命を奪う存在だから許せない」という理由だけでは闘わないだろうと思っています。
もしそんな理由で闘う人であれば、最凶死刑囚の五人を出会い頭に即捕縛して、警察に突き出してる筈ですから(´・ω・`)

その一方で、鬼には烈さんのみならずグラップラーの大半が許せないだろうという極めて大きな要因があります。
しのぶさんに語った様に「闘う力を持たない者すらも無差別に襲って食らう=ピクル達の誇りに対する侮辱」というのもその一つです。

しかし何より、彼等にはもっとも鬼を許せない事情があります。
感想欄でも触れられてた方がいますように「猗窩座と出会ったら喜ぶんじゃないか」「武を極めようとしている猗窩座や黒死牟は寧ろ好意的にとるのでは?」という可能性も勿論ありますが、それすらも吹き飛ぶほどのレベルです。
それが何なのかは、敢えて今は伏せさせていただきますが、近いうちに作中で述べさせていただこうと思っております。

烈さんが呼吸を使えている理由に関しては、次回でしっかり説明させていただきます。


Q:最凶死刑囚にも闘争の美学があったというけど、シコルスキーって無力な梢を攫ったりしてなかった?
A:刃牙の実力を引き出させる為であり、梢自身には手出しをしてないのでギリギリセーフ判定です。

Q:ジャックとシコルスキーの闘いに巻き込まれた、電話ボックスのシュウちゃんは?
A:二人とも、あの状況下でもシュウちゃんには一撃も当ててないという優しさがあったので、ギリギリセーフ判定。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。