ソードアート・オンライン ジーニアス・メモリーズ 作:人民の敵
裏側を書くのって中々厳しいですね……(汗)。しばらくはセブンも出てこないですし。
では、どうぞ!
『間もなく当機は成田国際空港に着陸いたします』
SAO事件発生から3週間、パスポートの更新やら大学側への説明(アルが概要は話してくれてはいたのだが、それでも諮問会に呼ばれて正式な書類を通さなければいけなかった)・日本側の事情などで大幅に予定は遅れたが、ようやく俺は二つ目の祖国である日本に降り立った。のはいいのだが――
「桧宮博士、今回の事件についてどう思われてるかお聞かせください――」
「マサチューセッツ工科大学はVR技術の研究に多額の資金を投入しているとのことですが、そのことについて大学から何か聞いては――」
「この事件の実行犯と疑われている茅場博士と親交があったそうですが、それについて一言――」
日本では全くの無名だから取材の類は全く受けないかと思っていたのだが、どうやらこの国の放送機関は思いの他優秀なようで、入国するや否や空港は何十もの放送局の記者が詰めかけていた。どうやら大学側にリークした人間がいたそうで、俺はその猛烈な質問――取材攻勢とこちらでは言うらしい――を躱しつつ空港を出て、ある場所に向かった。
――――――――――
俺は東都工業大学に来ていた。日本の中でも屈指の実力を誇る工業大学で、今日本国内で最もVR技術の研究が盛んな場所だ。MITとの間でも何度か学生の交換留学や教授の相互派遣などが行われており、茅場晶彦博士もこの大学出身だ。
「お久しぶりです、神代博士」
「久しぶり、柚樹君。わざわざアメリカから来てくれるなんて、七色ちゃんも心配したんじゃないかしら?」
今、俺は応接室で白衣を身にまとった女性と向き合っている。女性の名前はは神代凛子。東都工業大学のVR研究者にして茅場晶彦博士の恋人と噂される、若き秀才科学者である。
「いえいえ。これは僕が決めたことなので。死者が出たとなれば、反対派が活性化するのは目に見えています。研究はアルに任せても何とかしてくれるでしょうし、僕はロビイングに徹しようかなと」
「ロビイングなら七色ちゃんの方が向いているような気がしないこともないけどね。あの容姿でVR技術への支持を訴えかける、なんてしたら支持者続出よ。男なら間違いないわ」
「ちょっと僕もそれは思いましたけど、彼女はまぁ……若干一般常識が欠け落ちてるのでどこかでやらかすとも思いまして……」
「幼馴染に散々な物言いだね。ま、君も容姿は相当恵まれてるしそれに弁も立つときた。文句なしじゃないかな」
「そう言っていただけると助かります。まぁ……ロビイングの具体的な方針もまだ固まっていないんですが」
俺はため息を吐きながら言う。
「ほう?」
「最初は博士のツテを頼って少しずつ活動範囲を広めていこうと思ってましたが、まぁ空港で色々ありまして……」
俺は空港での体験をかいつまんで語った。神代博士は最初こそ静かに聞いていたが、途中から目が若干怖くなっていたような気がする。
「……というわけです」
「君も災難だね……
「うちの国にも
俺がため息交じりにそう言うと、神代博士は少し笑った。しかし、すぐにその顔は元の真剣な表情に戻る。
「今はこの一大ニュースを前に各放送局がピリピリしてる状況だからね。うちの研究室もここ最近は取材対応に追われてろくに人手が割けない状況だし、ましてやアメリカから有識者、それも僅か13歳の少年科学者が来るなんてネタに飛び掛からない放送局なんてないに等しいわ」
「こんな
「君が若いから、こそよ。ただの科学者がテレビであーだこーだ言ってても視聴率は取れないけど、そこに"天才少年"という属性を付けるだけで人々は飛びつくんだから。そういう意味では君が来たのは正解だったかもね。七色ちゃんが来ればそれはもうこの事件の報道を越えて完全に興味本位の放送が行われる可能性が高いし、プライベートだって危ないわ。何せあの美貌だもの」
「それは……非常によろしくないですね。由々しき事態、こっちだとそういうのでしょうか」
俺は口を曲げながら応じた。彼女のプライベートを明かされた場合何が起こるか分かったもんじゃない。MIT内でさえ彼女の
「あ、柚樹君妬いてるね?」
「へ?」
「七色ちゃんを独占したいって顔してるわ。まー分からんこともないけどね、君は七色ちゃんの御守役と言ってもいいわけだし」
俺は怪訝な表情を浮かべながら反論する。
「誤解です。僕はあくまで彼女の研究パートナーで幼馴染、それ以上でもなければそれ以下でもないですよ」
「そうか。それなら別にそれでいいんだけど。……話がそれたね」
「ええ。それで僕は一体どうすればいいんでしょうか?話を聞く限り、もう半分空港で追い掛け回されることは確定したらしいですが」
俺が言うと、神代博士はうーんとしばらく唸った。何度か頭を振った後、口を開く。
「どっちにしろ彼らの情報拡散力はホンモノだから、いつかは頼らないといけないのは間違いないんだけど。時期に気を付けないと君まで悪者にされかねないからねぇ」
「僕も、ですか?」
「うん。というか君や私、七色ちゃんやこの研究室の人間を含めたVR研究者全体がこの事件に加担していると思われてイメージがガタ落ちしかねないよ。メディアの力っていうのはそういうもんなんだ。情報の提供をするのはこっちでも、それを都合のいいように取捨選択する権利を持っているのはメディアだからね」
「なるほど、しばらくは下手に動かない方が良いと」
「そうだね。どっちにしろこっちに長期滞在するなら
その言葉を聞き、俺は内心ホッとした。実際こっちに来てからの仮宿としてここの寮に住まわせてもらうというのが一番可能性があった候補だったが、さすがにこっちからそれを言い出すのは憚られたからだ。
「ありがとうございます。……一応聞いておくとその部屋というのは――」
「上がなんて言うかによるけど、ちゃんと一部屋貸し切りにしてあげようとは思ってるよ。何せ君は大学にとったらお客様なんだからね」
「そうしていただけると助かります。では、これからよろしくお願いしますね」
「うん、こちらこそよろしく。私は別件でそろそろ抜けないといけないから、ここで失礼するよ。ここから別の人間に案内を任せてるから、何かあったらその人に聞くといいよ」
そう言って、神代博士は応接間を退室していった。僕も部屋を出て構内を見て回ろうかとも思ったが、案内の人が来て困惑させてしまう可能性を考え、大人しく残っておくことにした。
――――――――――
神代博士の退室から待つこと十数分。流石に手持ち無沙汰すぎて応接間に飾られた銅像やら賞状などを見ていると、その人物は現れた。
「ういッス、君が神代先輩が言ってた天才君ッスね?」
「天才かどうかは怪しいですが、神代博士が言ってた人という部分は恐らく合っているかと。初めまして、僕の名前は桧宮柚樹、以後お見知り置きを」
「こちらこそ初めまして。自分、比嘉健って言います。一応博士号は持ってます。よろしくッス」
比嘉と名乗ったその男性は、眼鏡を掛け頭は金髪に染めており、白衣をラフに着こなしていた。年齢は20代前半くらいだろうか。
「取り敢えず、構内を案内した方がいいッスかね?こっちに来たばかりなら疲れてるかもしれないんでもしあれなら寮まで連れていきますケド……」
「そうですね、寮までお願いしていいですか?」
「了解ッス。じゃあついて来て欲しいッス」
そう言うと比嘉博士はスタスタと歩き始めた。どうやら悪い人ではなさそうだ。俺はそんな感想を抱きつつ、彼の後ろについていき、新たな住処となる大学寮に向かった。
はい、いきなり原作博士属性持ちを2名出しました。この後神代博士は茅場博士探しに……おっと失礼しました。
次回も少しづつ書いていっております。感想・評価お待ちしております!