ソードアート・オンライン ジーニアス・メモリーズ   作:人民の敵

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更新遅れて申し訳ありません!最近リアルが忙しくて……
さて、柚樹は今のところシリアスめの堅い人物ですが、多分ALOにログインしたりセブンと一緒にいるようになると多少人間味が出る……はずです(多分)
では、お楽しみください!


#4 アーガスへ

 怪しげな総務官僚、菊岡と出会った俺は定期的に彼と連絡を取りながらVR規制阻止のための情報収集に奔走していた。それと同時にアメリカの友人に問い合わせて医学法学の専門書を送ってもらい、参考人招致とやら、そしてプロジェクト・メディキュボイトに向けた準備を行っている。

 

 そして、今日はいよいよ全ての元凶といっても過言ではないソードアート・オンライン運営会社《アーガス》社へ乗り込むことになる。と言っても現在アーガス社は陸上自衛隊が占拠し、サイバー攻撃の痕跡探しや救出方法の検討に当たっているらしいが。

 

「遅い……」

 

 俺は菊岡と打ち合わせて設定した待ち合わせ場所で腕時計を見ながら呟いた。今回の乗り込みには彼も同伴するというので早めに来たのだが、待ち合わせ時間は刻一刻と迫っている。真冬だから別に構わないのだが、マスコミを避けるために赤色のコートに帽子を被りマスクなどで変装しているこっちの身にもなって欲しい。

 

「おーい柚樹君、お待たせー」

 

 なんてことを思っていると、駅の中から小走りしながら菊岡がこっちに近づいてきていた。彼は俺のすぐそばまで来ると、汗を拭ってからこちらに向き直った。

 

「いやぁごめんごめん。出ようとしたらいきなり部下に緊急の書類決済を求められてね。なんとか待ち合わせ時間には間に合ったから良かったけど」

「ならば仕方ありませんね。先方とは何時に約束していたんでしたっけ?」

「10時30分。まだ30分ほどあるね」

「余裕ですね。少し早すぎるくらいでしょうか」

「だね。まぁ早く行っても損はないし、それに君が調べたようなアーガス社への時間よりは確実に時間がかかるから」

 

 菊岡は俺のスマホの画面を指しながら言う。

 

「と、言うと?」

「まぁ見てたら分かるよ。取り敢えず、ここでずっと立っているのもアレだし、行こうか」

「そうですね、行きましょう」

 

 

――――――――――

 

 

 駅から歩くこと十数分、俺は菊岡の言ってた意味を理解した。

 

「……僕は変装し直した方が良いんですかね?」

 

 俺と菊岡は一旦立ち止まり、視線の先を埋め尽くす大群衆を見据えた。無論、SAO事件遺族やそれに便乗した反VR市民団体から構成されるデモ隊だ。その数は軽く1000人は超すのではないのだろうか。

 

「むしろこうなることは必然でしたね、迂闊でした。……どうしますか?」

「強行突破と公権濫用は僕の望むところではないんだけど……致し方なし、というべきかな」

 

 そう言うと菊岡はスタスタと歩き始め、それと同時にスマホを取り出しどこかしらに電話を掛ける。

 

「もしもし……あぁ、僕だよ。……その呼び方は今はナンセンスだよ。うん……分かった、今から向かうからよろしく」

「どちらへ?」

「アーガス社内部を占拠してる自衛隊部隊に知り合いがいてね。めっちゃ悪い言い方をすればデモ隊の排除をお願いしたんだ」

「それは確かに公権濫用ですね」

 

 そんな会話をしながら俺たちはデモ隊、というよりその先にあるアーガス社に向かって歩き続ける。当然、群衆は俺たちに気づき、そしてその中にいたメディア関係者が俺に駆け寄ろうとする。

 

「えー、現在アーガス社に抗議を行う遺族の方々の報道を行っていましたが、現在現場にアメリカ・マサチューセッツ工科大学のVR科学者、桧宮柚樹博士が現れました!」

 

 どこかのメディア報道官が言ったその言葉に、一気に群衆の目線が俺たちに集まった。

 

「お前もこの事件に関与しているんじゃないのかー!」

「私たちの子供を返してくれ!」

 

 俺という明確な敵意をぶつける対象が現れた途端、群衆が目に見えてヒートアップした。まさかここまで明確に敵意を向けられるとは思っていなかったが、ここまでは問題ない。日本人はどうやら民間の武器所有が制限されているらしく、デモ隊の殆どが素手のままだ。暴徒化したらそれこそ内部や周辺封鎖に当たってる自衛隊部隊や警察が介入することになるだろうし。

 

「どうしますか菊岡さん、あの様子じゃ少なくとも通してくれそうにはないですよ」

「そのための自衛隊じゃないか、じきに()が出来るよ」

「道?」

 

 俺がそう言ったのとほぼ同時に群衆の奥からざわめく声が聞こえてくる。その方向をしばらく凝視していると――

 

「なるほど、人を割って作った道ですか。まるでモーセだ」

「さしずめ人の道と言ったところか。君はユダヤ教徒なのかい?」

 

 目線の先では自衛隊員が群衆を押しのけて俺たちのために隙間を作っていた。

 

「まさか。僕はユダヤ人大迫害(ポグロム)をやった帝政ロシア人の子孫ですよ」

「はは、ブラックジョークと受け取っておくよ。それじゃ、今度こそ行こうか」

「ですね」

 

 俺たちは自衛隊員に礼を言いながら彼らが作ってくれた道を通り、アーガス社に向かう。その間も俺に発言を求めるメディアの人間や遺族の怒号は響いていたが、俺はあえてその声を意識から締め出してひたすら歩き続けた。

 

 

――――――――――

 

 

「10時24分、結構ギリギリでしたね。菊岡さんが自衛隊にコネを持ってなかったらどうなっていたことやら」

「逆に言えばそれがあったから集合時間をあれくらいにしたし、もしあの群衆に2人だけで突っ込めと言われたら、多分僕は車を選択していたよ」

「車で送ってくれることが出来るなら先に言ってくださいよ!」

「あー……今気づいたけどそっちの方が良かったか」

 

 無事アーガス社の中に到着した俺たちはエントランスで警戒をしていた自衛官に責任者への取次ぎを頼み、ひとまず一息ついた。

 

「全く……マスコミという僕にとって最悪の副産物が付いてきましたからね」

「そう言えばそうだったね、確かに最近2日に一回くらいはテレビで君の顔を見るようになったねぇ」

「言っておきますけど僕自身はメディア露出なんて数えるほどどころか一回二回程度なんですよ……」

「そうだったっけ、にしてはやけに詳しい情報が出てた気がするけど……」

「そうなんですか?」

 

 俺は口をひん曲げた。

 

「敢えて僕からはどんなことが語られてたのかを出すのは避けておくよ」

「帰ってから見てみますよ……尤も、見て気分が良くなるものでもなさそうですが」

「はは、それは半分当たってるかな」

 

 俺たちがそんな話をしていると、部下と思しき自衛官に先導された人物が現れた。俺と菊岡はさっと立ち上がり、彼のもとに向かう。

 

「わざわざご足労いただきありがとうございます。本官、陸上自衛隊陸上総隊電磁波作戦隊サイバー攻撃即応群の鎌田と申します。階級は二等陸佐であります」

 

 鎌田二佐――二佐は米軍で言うところの中佐らしい――はがっちりとした体格の男性だった。続いて菊岡が名刺を差し出して自己紹介をする。

 

「どうも、僕は総務省"SAO事件"対策特別チームの菊岡と言います。本日は無理な要請に応えていただき感謝します」

「いえいえ。で、こちらの方は……」

「僕はマサチューセッツ工科大学仮想技術応用研究室第一研究室の桧宮柚樹と申します。今日はどうぞよろしくお願いします」

 

 ぺこりと一礼しながら身分を告げる。鎌田二佐は俺たちの名刺を見比べると小さくうなずき、「どうぞ」と俺たちを中に案内した。

 

 

――――――――――

 

 

「我々は自衛官の中でもプログラムに強い連中を集めた精鋭という触れ込みなんですが、それでもこの案件に関してはさっぱりです」

 

 コントロールルームに向かう途中で、鎌田二佐がこぼした。

 

「ほう。やはり自衛隊としてもVRはまだまだ難しい分野ということですか」

「ええ。特に今回は何せただのプログラムの問題ではなく、人命が関わっているとのことなのでこちらとしても強硬手段を取るのは避けねばならないという問題もありますし」

「……ええと、僕の記憶が正しければサイバー攻撃の可能性があると自衛隊は考えているとのことですが……」

「ええ。当初はそのセンが一番可能性が高いだろうと我々は睨んでいました。しかし……海外からの不正なアクセス記録がほとんど見つからんのです。特に北朝鮮と中国、そしてロシアの干渉の可能性を考えて徹底的に洗い出したのですが……」

海南島(ハイナン)からも?」

 

 菊岡の言葉に、俺は首を傾げたが鎌田二佐は頷いた。

 

「ええ。海南島の陸水信号部隊、61398部隊、朝鮮人民軍偵察総局121局、ロシア連邦軍参謀本部情報総局第六局特殊部隊OSNAZ。考え得る限りのサイバー部隊からのアクセスは見つかりませんでした。ただ……」

「ただ?」

「一件だけではありますが、サービス開始後に韓国からのアクセス記録が確認されています。逆探知でアクセス地点を確認しましたが、韓国陸海空軍施設ではありませんでした」

「つまり……」

「恐らくですが、これはサイバー攻撃ではありません。それが我々サイバー攻撃即応群の出した結論です。そもそもサイバー攻撃だとして、もしも茅場博士が利用されたなら潔白を証明するのが普通でしょうし、これは覆せない真実だと思います」

 

 鎌田二佐の言葉を聞き、俺は心の中で静かにため息を吐いた。元より期待はしていなかったが、これで茅場博士犯人説はほぼ確定したことになる。つまり――反VR勢力及び規制賛成派との戦いは避けられなくなったわけだ。

 

「そうですか……ありがとうございます。その結論はいつ頃総隊に?」

「今週中には報告書をまとめて上に提出し、それが終われば我々は最低限の警備部隊とサーバー監視部隊を残して撤収する予定です。……つきましたね、こちらがコントロールルームです」

「……分かりました。ありがとうございます」

 

 菊岡は鎌田二佐に礼を言った後、俺に視線を向けてきた。その意図するところを何となく察した俺は小さく頷き返した。そして、俺たちは案内されるままコントロールルームに入った。中では自衛隊員がせわしなく各々の職務を行っており、中央のパネルの前に座った指揮官らしき士官が指示を出していた。

 

「現在はサイバー攻撃よりも内部での組織ぐるみの犯行の有無に重点を置いて捜査をしております。これは本来警察の仕事なんですが、ここに投入する人員の選定に時間がかかるとの通達が警視庁(桜田門)から届いたため、我々がその業務を代行しているというわけです」

「なるほど。それで、アーガスの技術責任者の方は?」

 

 俺は本題を切り出した。無論自衛隊の動向をうかがうのも一種の目的ではあったのだが、本来の目的は技術責任者から話を聞きだすこと、そして―――

 

「奥の小部屋におられます」

「分かりました。ありがとうございます」

 

 俺と菊岡は鎌田二佐に礼を告げ、奥にある小部屋に向かう。ドアの前でコンコンと二回ノックをすると、「どうぞ」というか細い声が聞こえた。

 

「失礼します」

 

 そこには、白衣に身を包み眼鏡を掛けた男性が座っていた。男性は俺たちを見ると怪訝そうに目を細める。

 

「あなた方は……?自衛隊の方ですか……?」

「いえ。この人は知りませんが、僕は恐らくあなたと同業者ですよ。どうも初めまして、僕の名前は桧宮柚樹。かつてあなた方のボス(茅場博士)と一緒に仕事をさせていただいた人間です。以後お見知りおきを」

「あ、あなたが桧宮博士でいらっしゃいますか!?これは失礼しました、自分《ソードアート・オンライン》プロデューサー補佐兼ナーヴギア開発副主任の時崎直人と申します」

 

 時崎と名乗る男性は俺の名前を聞くや否やいきなり椅子から立ち上がり名刺を差し出してきた。俺は困惑しながらそれを受け取る。

 

「茅場から桧宮博士の話は聞いておりました。こんな形とはいえお会いできて光栄です」

「柚樹君、相当名が知れ渡ってるみたいだね。僕も恐れ入ったよ」

 

 茶々を入れてくる菊岡を肘で小突きたくなったが、相手が年長なことと官僚なことを勘案し何とか行動に移すことはしなかった。

 

「菊岡さんはちょっと黙っておいてください。それで、茅場博士は僕のことを何と?」

「非常に賢く、理想論に陥らず現実的な見方が出来る有能な少年科学者であると。彼になら安心してVRの未来を託せる、とも」

「それはどうも……と言うべきでしょうかね?言うべき相手は雲隠れしていますが。そこら辺も含めてお聞きしたいのです」

「……既に、話せることは自衛隊の方に話しました。我々運営スタッフは一切この事件に関与していませんし、出せる資料は全てお渡ししました。これ以上話せることは……」

「さようですか。ではそこら辺は自衛隊の方に聞くとしましょう。しかし、あなた方には一つ、自衛隊には渡したくても渡せないものがあるはずです」

 

 俺の言葉に時崎は首を傾げる。俺は一息吐き、口を開いた。

 

「そのものとは……」

 

 

 

 

「世界初のVRヘッドギア、ナーヴギア。そのブラックボックスの解除キーを含めた設計図です」




色々難しい話をしていましたね……
菊岡二佐は多分職場的にこういった電磁波作戦隊みたいな人とよく会っている(と思うので)、柚樹に正体がバレないように協力してもらうのに苦労してそうですね()
次回は未定です。次回もお楽しみに!
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