五条悟が最強であることは理解していたが、まさか封印されるとは思ってなかったんだ。   作:のれん(-_-)zzz

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拾弐話

灰原死亡から約一か月後 9月中旬 長野県某所

 

まだ夏の気配を忘れていないかのように、青々とした草木が周りを包み込む広大な池があった。山の中であるがこの美しい池を観光地とし周りにキャンプ場や山荘を構えているため、未だ夏休みであろう大学生やお年寄りでにぎわっていた。

 

その池の目の前に二人の女性が佇んでいた。2人とも山の中では珍しい黒い服を着ており、その容姿も整っていたため、周りの目を引き付けていた。特に片方の服は制服らしいから猶更だ。

 

「何かありそうな雰囲気がありありとしています。ね、荒縫先生。」

 

美しい池を目の前にし、片方の女性がもう片方の女性にそう言う。

 

「任務が来たのだから当たり前だろ、千代。」

 

荒縫先生と呼ばれた女性は、はあとため息を吐き、千代と呼んだ女性に答える。

 

「まあ、そうですけど。どうします?周りの人の視線が痛いのですが」

 

千代はちらりと周りを見る。さすがに散策に来た格好ではないため、悪目立ちをしていると感じていた。

 

「…とりあえず、予約していたコテージに行くぞ。夜に動く。」

 

荒縫は簡潔に指示を出し、池に背を向けた。

 

「了解です。」

 

そう言って、千代は荒縫の背を追った。

 

 

 

 

 

コテージに戻った二人は今回の任務を確認していた。

与えられた任務は、この観光地として人気の坩月池(かんげついけ)の調査。最近、坩月池のあるこの山を訪れる人の遭難が多いという。事前調査で原因が池にある可能性が高いと分かった。そして、一級術師の荒縫妃佐と二級術師になった五条千代が派遣された。

 

地図を見ながら、行動範囲を示し合わせていく。

 

「…よし、じゃあ午前零時に行動を開始する。」

 

「分かりました。」

 

「……」

 

任務の確認も粗方終わり、2人の間に沈黙が落ちる。

 

 

(気まずい…)

 

千代は内心そう思った。一か月前の灰原の死から面と向かって荒縫先生と対峙していなかったからだ。むしろ避けていた節まである。

 

(この前言っていた面談まだしていない…)

 

千代はそう思って、地図から顔を上げて、荒縫へと目を向けた。相変わらずの分厚い眼鏡で表情が読みにくい。

 

そうしていたら、荒縫も顔を上げて千代に目を向け、なにか言おうとする。

 

(うっ)

 

千代はぎくっとしながらも、荒縫の発言を待つ。

 

「…行動開始が深夜になる。今のうちに寝ておけ。今日は移動もあって疲れただろう。」

 

「えっ?」

 

思いがけない言葉に硬直する千代。

荒縫は千代の様子など気にせず、自分の部屋に行こうとする。

 

「あ、あのっ」

 

千代は思わず、荒縫を引き留めてしまった。

 

「なんだ?」

 

振り返って、問う荒縫。

 

「い、いえ何でもないです。」

 

「ふむ」

 

荒縫は、千代の慌てた様子にすこし考え、答える。

 

「今はこの任務に集中しろ、面談はその後だ。じゃあな。」

 

そう言って、部屋の中に入っていってしまった。

 

「はあ、やはり気づいてますよね。」

 

誰もいなくなった部屋に千代は溜息を吐きながら、ぽつりとこぼした。

 

 

 

 

部屋の中に入っていった荒縫もまた内心溜息を吐いていた。

 

(私も随分甘くなったな。本当ならあの日の後すぐにでも話すつもりだったが、あそこまで避けられているとなるとな。)

 

千代の心の中。深くまで突っ込むつもりなどなかったが、明らかに嫌厭されていたため無理に話しかけることもなかった。

 

(あいつの考えていることは大体予想がついているのだが…、どうしてこうも御三家には厄介な奴しかいないんだか。)

 

荒縫が窓の方を見ると、日が落ちてきていた。

 

(…寝るか。)

 

先ほど生徒に行った手前、自分も任務に集中しなければならないと考えた荒縫は、髪をほどき、眼鏡をはずし、ベッドへと横たわった。

 

 

 

 

 

 

 

 

6時間後、あたりは真っ暗になり、虫のさざめきが四方から聞こえてくる。数少ない電灯が、朧げに坩月湖への小道を照らしている。

 

仮眠を取った荒縫と千代はその小道を進み、池までやってきた。ちゃぷちゃぷとした水の音は聞こえるが、水面は手前しか見えず、その奥は暗闇。池の周りを取り囲むように木の柵と小道があり、それに付随して電灯があるが数えるには両手で足りる。

 

「雰囲気は昼と変わりませんね。何かありそうですけど、確定するには難しいです。」

 

池の方を向いて千代が言う。

 

「ふむ。」

 

荒縫も顎に手を当て何か考えている。

 

そのままあたりを見渡し、そして何かを見つけた。

 

「あれはなんだ?」

 

荒縫が向いた方向に千代も顔を動かす。

 

あたりはほぼ暗闇で包まれているにも関わらず、荒縫が目を向けた方向には明かりがちらちらと点灯している。

 

「あの光は…花火?それに人ですかね。それも複数人。」

 

「面倒だな。」

 

おそらく観光に来ている大学生だろう。一般人が呪霊の被害があるこの場所にいるのは少々まずい。そして二人の調査もしづらくなる。

 

「あの集団の方へ向かうぞ。」

 

「了解です。」

 

 

 

まず、一般人には退散願おうと二人は花火の光が発せられている場所まで向かった。2人が徐々に近づくと、若者たちの話し声も聞こえてきた。どうやら4人いるようだ。

 

 

 

「全然噂と違うじゃん。行方不明者急増の呪われた池なんて。」

 

花火片手に不貞腐れた男が話す。

 

「けんたそういうの好きだよね~。ま、昼来たのは年寄りばっかだし、夜になってもただ薄暗いだけだよね。」

 

4人の内、紅一点の女が話す。先ほど話していた男はけんたというらしい。

 

「花火持ってきて正解だったしょ。さすが俺。」

 

違う背の高い男が少し自慢げにが話す。

 

「おーナイス判断。」

 

けんたが棒読みでその男を褒める。

 

「………」

 

「おい、さっきから何黙ってるんだよ、とおる。」

 

友達にとおると呼ばれた男が反応する。ずっといままで黙っていた男だ。

 

「いや、なんていうか。視線を感じるというか。誰かに見られている気が。」

 

「なにい、とおるって霊感あるかんじ?」

 

「いやちがうだろ、こいつの場合今まで散々女に詰め寄られてたからその名残だろ。」

 

3人いる男の中で、とおるという男性が、一番容姿が優れていた。そのため、残りの友人も納得する。

 

そんな友人の反応を見てとおるは反論する。

 

「そんなんじゃないって。なんかこう嫌な感じみたいなのが…「おい」っうわあ!」

 

とおるは後ろから声を掛けられ、前のめりに倒れそうになる。しかし、友人たちが支えてくれたおかげで地面にダイブはしなかった。

 

そこに立っていたのは2人の女性。荒縫と千代だ。

 

「なっ、なに?」

 

とおるは動揺している。

 

「あ、昼に見た人だ。けんたがイケてる女がいたって騒いでた。」

 

背の高い男は特に驚いた様子もなく、荒縫と千代を昼間にみていたことを言った。

 

女はその男の言葉にけんたに目を向ける。けんたはギクッとしたような態度を取った。どうやらこの二人はそういう関係らしい。

 

「君らはなにしてるんだ。」

 

荒縫は4人に質問する。

 

「なにって見たとおり花火しているだけですけど。」

 

けんたが答える。

 

「ふむ…さきほどの話を聞く限り心霊体験にでも来たのかと思ったが?」

 

荒縫はズバリと聞きこむ。声色は強めだ。

 

けんたはその様子に少々気圧されたが、特に悪いことをしているわけでもないので反論するように返す。

 

「いや、そりゃあここに来たのはそれがあったからだけど、おねーさんたちこそなに?そっちも噂が気になってきた感じ?」

 

千代はちらりと担任を見た。調査に来たのだが、どう答えるか気になったからだ。

 

「まあ、そんな感じだ。そこの男がなにか視線を感じるらしいな。どこから感じる?」

 

荒縫は話が面倒になる前に、先ほど視線を感じるといった男から聞きこむ。呪力を持ってはいないようだが、違和感に気づくということは、なにか今回の調査のカギを握っているのかもしれない。

 

「え~、なになにそいつの言うこと本気にしてるの?」

 

答えたのはとおるではなく、女が面白がるように反応した。

 

荒縫はその女の言うことを無視してとおるを見つめる。

 

女性に見つめられて焦ったとおるは反応する。

 

「い、池の中からです。」

 

そう言われて荒縫と千代は池の方へ眼を向ける。何かあるのは2人の中でも確定している。

 

(ただ、感受性がいいだけかもしれんが…)

 

荒縫は千代に目配せする。

 

千代は荒縫からの視線を受けて、とおるという男の近くに寄る。

 

「なな、何?」

 

荒縫の後ろに控えていた千代がいきなり自分に近づいてきて、戸惑う男。

 

「いえ、念のためです。」

 

笑顔で答える千代。

 

((((いや、何のだよ!?))))

 

若者たちは2人の行動が理解できないようだった。

そこでまた、けんたが反抗するように言う。

 

「結局、おねーさんたちはなんなの?せっかく花火楽しんでたのに。邪魔しないで…」

 

けんたが話している途中、明らかな異変を3人は感じ取った。

 

荒縫と千代が素早く戦闘態勢を取ろうとするが、その間もなくそいつがやってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザッバーーーンと水しぶきが舞う。その音に一歩遅れて、大きな波が陸まで押し寄せた。

身構えた荒縫と千代の二人はその波に流されずに済んだが、若者4人は数メートル池から流され、地面に腰をついている。

 

数名、波が来た勢いで水を含んでしまったようだ。

 

「ゴホッ、ゴホッ、な、なんなんだ。」

「なによこれ。」

 

若者の内、3人は突然のことに何が起きたか分かってない様子だ。いきなり波がやってきた池の方に顔を向けても何もない。何もないことで逆に混乱し、恐怖する。

 

しかし、4人の中でただ一人、とおるはその元凶が視えていた。あの女性二人組が立つ目の前に、水面から大きくせり出す得体のしれないバケモノが。そのため、他の3人とは別の意味で恐怖していた。

 

 

 

 

 

 

慄く若者たちを背に、荒縫と千代はそれぞれの得物を取り出し、今度こそ戦闘態勢を取った。

 

 




読んでくれてありがとー。

場所は捏造。原作にない話を書くのは時間がかかるね。
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