五条悟が最強であることは理解していたが、まさか封印されるとは思ってなかったんだ。   作:のれん(-_-)zzz

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拾漆話

五条悟視点

 

いつからだったろうか。俺のそばにいるあいつを意識し始めたのは。

 

俺は五条家に生まれ、五条家相伝の『無下限呪術』の術式を持ち、それを使役するための『六眼』をも持っていた。

 

一方、俺の妹はその類を何も持っていなかったらしい。しかし、珍しくも反転術式を使うことができたらしい。それが判明してから、そいつは俺の後をついてくることが多くなった。外に任務で出た後は、必ず玄関先で待っていた。たまにうざいなと思っていたけど、妹が俺のために尽力してくれているのは、子供ながらに嬉しかった。例えそれが俺に向けた本心でなく、五条家が決めたことからくる行動であったとしても。

 

その日は、いつものようにあいつが俺に反転術式をかける時だった。ただ、いつもと違ったのは俺が今までにない重傷を負っていたことだった。だから、気づいてしまった。術式発動後の妹から、血が垂れ、その表情が青ざめながら、必死に自身に反転術式をかけていたことを。あいつが俺に反転術式なんてかけていない。あいつが自分の身を犠牲にしてまで俺を治していた。この事実に、俺は頭に血が上った。家の奴らを問い詰めれば、簡単に吐いた。あいつの術式は、身体の能力、状態を奪うものだと。反転術式は自分にしか効果がないということを。俺の代わりとなるように、今まで育てられ続けていたということを。

 

弱い奴を捨て駒にし、強い俺を生かすということは、五条家からしたら自明の理だ。ただそれで、犠牲になるのがあいつだというのが気に食わない。あいつもあいつで、どうしてそこまで受け入れているのかも気に食わない。こんなこと絶対に認めないやるものかと俺は勝手に決意した。

 

それから、俺は家の奴らに二度と俺にあいつの術をかけるなと言った。さすがに、これには家の奴らも食い下がってきた。殴って、黙らそうかと思ったが、結局矛先が向くのはあいつなのだろう。仕方なく、俺が重傷を負ったときのみと限定し、引かせた。つまりは、俺が強ければあいつに迷惑は掛からない。そう思って、更に最強への道を進んだ。

 

親友である傑とも出会い、高校へ入り、一年もしたらあいつが入学してきた。今までと変わらず、俺に対してへりくだってくる。その態度にイラつきはしないものの、距離の取り方が分からず、素っ気なく返してしまう。それを親友にいじられる方がイラついた。そいつはそいつで妹と普通に話しているから、猶更イラついた。

 

その後、星奨体の一件で俺は遂に反転術式を扱えるようになった。これでさらに上を目指せる。呪術師界最強として。呪霊を屠り、あいつも俺のために使役されずに済む。そう思っていた。だから気づかなかった。親友の苦しみ。そしてあいつの決意に。

 

 

 

―――――

 

 

 

傑が呪術師界を離れて、数日経った。最後に傑に会ったとき、俺は、傑に攻撃できなかった。それは彼が親友だったから。あいつの理想、あいつの苦しみに気づいてやれなかった後悔から。

 

結局、俺一人だけ強くてもダメだった。なにも守れやしない。

 

そんなことを考えながら、俺は任務にあまり出ず、高専内をブラブラしていた。こんなところ普段、夜蛾先生に見られたら叱られるだろうが、先日の件で今はそっとしておいてくれる。良い教師だな、いつもこのぐらい寛容であればいいのに。

 

「教師か。」

 

ふと思う。教師という存在で生徒を導く。自らの手で強くすることを。

 

「そういうのしてたのは、荒縫先生か。」

 

先日、傑が離反した同日に亡くなった妹の担任を思い出す。ぶっきらぼうで夜蛾と同じくらい厳しい先生だが、生徒のことをよく理解しようと努めていたのは分かる。

 

「そういえば、最近あいつに会っていなかったな。」

 

ここ数日は傑のことで手一杯で妹のことを何も考えていなかった。担任が亡くなったというのに何も話していない。

 

「そろそろ、あいつとも真面目に話すべきか。」

 

数年前、あいつのことを知ってから、対応をなあなあにしていた。俺一人最強であっても、だめだ。そう自覚したからこそ、あいつと真摯に向き合うべきだと思った。

 

 

思い立ったが吉日、俺は高専内の寮に向かい、妹の部屋の目の前に立つ。ふうっと息を吐きだし、コンコンとドアをノックした。

 

しかし、反応がない。

 

「あいつ、何してるんだ?」

 

妹は、今日任務があるとは聞いていない。高専内にいるものだと考えていたところに夜蛾先生が通りかかる。

 

「ん、悟か。何をしている?」

 

「あー、妹に用があって。」

 

ぽりぽりと頭を掻きながら答える。兄がわざわざ妹の部屋までやってくるのが、少々恥ずかしかった。今まで素っ気なくしていた分余計に。

 

「聞いていないのか。千代は実家に戻ると言っていたぞ。やることがあると言って。」

 

その言葉を聞いた瞬間、何か嫌な予感がした。とてつもなく嫌な予感が。

 

「先生ッ!俺も実家に帰る!」

 

そういって、急いで廊下を走る。

 

「お、おい!」

 

慌てる夜蛾先生の声が聞こえるが、無視する。あとでいくらでも説教されてもいい。今はあいつの所へ向かいたかった。

 

 

 

 

急いで五条家に戻ってきた。家の者は、突然俺が返ってきたことに驚いているようだ。

 

「さ、悟様!いかがされた「おいっ!」っは、はいぃ。」

 

「妹が帰ったと聞いた。あいつは今どこにいる。」

 

「千代様ですか?確か用があるとかおっしゃって、怨禅の間に向かいました。」

 

恐禅の間、今は何もない場所に何故?

 

取り敢えず、そこに向かうため、地下への階段を下る。そしてあいつが、居るであろう部屋まで近づく。

 

そこで異変に気付く。部屋に近づくにつれ、あいつの呪力が強く、濃く伝わってくるのだ。

 

「お前、なにしてるんだよっ。」

 

そう文句を垂れ、部屋の目の前までやってきた。襖の取っ手に手をかける。これを開けばあいつがいる。

 

 

 

 

 

しかし、その瞬間、あいつの術式が発動した。いつもとは違う何か特殊な術。俺でさえも抗えないような術。二度とあいつと会えないような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思った俺は叫んだ。

 

 

「ちよおおおおおおおおおおおっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はその後、襖を開けることはしなかった。そして、部屋を気に掛けることすらせず、呪術高専へ帰っていった。

 

俺はこの時、大切な存在の記憶を持ってはいなかった。

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。
取り敢えず、これで過去編は終わりです。次に行く前に、閑話的なものをあげるかもしれません。

今後ですが、作者のリアルが忙しくなりそうです。また、原作ではまだ渋谷編をしているので、どのようにストーリーを変化させるかが難しいです。ザ・オリジナルで頑張るか、原作に沿う形にするかも迷います。
この二点から、投稿が超スローペースになると思いますので、ご了承ください。

P.S.
アニメと新刊、楽しみです。これでもっと呪術二次が増えることを願います。

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