五条悟が最強であることは理解していたが、まさか封印されるとは思ってなかったんだ。 作:のれん(-_-)zzz
呪法の名前とか安直にしてしまう。
原作者さんのあの難しい漢字が呪法にピッタリとマッチする感じがすごいと思う。(小並感)
2006年4月、学生は新しい学年を迎える時期である。それは、ここ東京都立呪術高等専門学校とて例外ではない。
校内にある桜を見つめる生徒が一人。白い髪に、黒のヘアバンド、そして呪術高専の黒の制服。今年の新入生の内の一人、五条千代である。
「うーん、春ですねえ。」
しみじみとした表情で言う。
「さてと、そろそろ教室に向かいますか。」
十分に桜を堪能したあと、新しい教室に向かった。
教室の中にはすでに二人の生徒がいた。黒髪のまだあどけなさが残る青年、茶髪で外人の血が混じっているであろう、長身の青年だ。二人とも、さほど任務に行かない千代とは初対面だ。
「おはようございます。1年の教室ってここであってますよね?」
「うん、合ってるよ!」
黒髪の青年が答える。
「ありがとうございます。」
千代はそれに安堵して教室の中に踏み入れ、席に座る。
「ねえねえ、君のお名前聞いてもいい?」
これまた、黒髪の青年が千代に聞いてきた。
「名を名乗るときは自分からという風習がありますけど、どうします?」
千代は少し意地悪をするような笑みを浮かべて聞き返す。
青年はきょとんとした後、にかっと眩しいぐらいの笑顔に変えて答えた。
「それもそうだね。僕の名前は灰原雄。よろしく!」
(あ、この子まっすぐ過ぎるな。呪術師には珍しい。)
千代は直感で灰原の性格を察した。そしてもう一人、
「そちらの長身の方は?」
茶髪の青年は読んでいた本を閉じ、千代の方を向いて答える。
「私は尋ねていないのですが、」
「細かいことは気にしないんですよ。」
「いや、あなたが最初に気にしたのでしょう。はあ、私は七海健人です。」
そうは言いつつも礼儀正しく返してくれる青年に千代も答える。
「私は五条千代です。よろしくお願いしますね、灰原君、七海君。」
互いの自己紹介がちょうど終わったとき、教室の扉がガラッと開き、黒髪を後ろで低めにひとまとめにして、瓶底メガネをかけた女性が入ってきた。
教卓の前まで進み、千代たちを見渡す。
「あー?1年生全員揃っているね。私は君たち一年の担当、
「「「えっ」」」
いきなりのことに3人の声がハモった。
しかし、その後の反応は三者三様であった。
「先生、オリエンテーションとかそういうワクワクイベントないんですか?」
真っ先に手を挙げて先生に聞くのは灰原。
「あのー私、そんなに戦えないんですけど。」
非戦闘員であることをアピールする千代。
「なぜ集めてからすぐに任務に行くのですか。まだ、互いについてなにも知りません。」
任務の必要性を抗議する七海。
荒縫は手元の資料をめくりながら言う。
「みんな、一気にしゃべりすぎ―。えーと、まず灰原雄。」
「はい!」
荒縫の呼びかけに元気よく返事をする灰原。
「オリエンテーションはもっと大人数でやってこそ、楽しめるもんだ。四人でやってもつまらないだけだ。」
「そうですか。分かりました。」
荒縫の言葉に灰原はシュンとする。
一方他の二人は、
((え、そういう理由?))
全く同じ疑問を抱えていた。
「次、五条千代。」
「はい。」
「もともとサポート向きの術式だが、五条自身が最低限戦えるのも分かっている。そこら辺の調整は3人で行うからお前も来い。」
(まあ、そうですよね。)
「はーい。」
一応納得して千代も返事をする。
「最後、七海健人。」
「はい。」
「今回は互いの戦い方を見て、吸収するのが目的だ。事前に話すより、実戦で見た方が互いのことが分かりやすい。」
「分かりました。そういうことなら。」
七海も荒縫の言葉を渋々受け止めた。
3人の様子を見て、荒縫は自身のメガネの蔓に手をかけ、位置を調節しながら、にやりと笑い発破をかける。
「それにな、お前ら……、呪霊は待ってはくれないぞ。」
その言葉を聞いた3人の顔は先ほどより幾分か引き締まっていた。
任務は公園跡地にて3級呪霊を祓うものだった。もともと、灰原と七海は以前から任務の経験が豊富であったので、難なく呪霊を相手にできた。少々突っ走り気味の灰原を七海がセーブしていたが。
七海の術式は『
灰原の術式は『
そんな二人の戦いを見つつ、千代も分銅鎖を使って、軽くアシストを行う。
(うーん?やっぱり私必要ない気がする。)
この戦いの中で彼女の術式を使うことはなさそうだった。
呪霊の数はそこそこ多かったが、特にこれといった問題もなく、呪霊を祓うことに成功した3人は担任の荒縫もとに集まった。
「うん、戦い見させてもらったよ。特にチームワークの部分は気にしていなかったが、まあ十分だね。3人ともどちらかといえば近接戦闘を専門にしているから心配だったけど戦いなれているからか問題ないし。よし、帰ろうか。」
淡々と講評をして、彼女は背を向ける。
(あまり、感情が見えない先生だなあ。自分の従う理論があるみたい。)
心の中で、千代は思った。
荒縫先生は無駄に生徒と話さず、適当に任務で戦闘の配置を伝えてあとは観戦していただけだ。しかし、配置は呪霊との戦闘で有利であったし、時折聞こえる指示は、正確なものだった。データでしか、五条たちのことを知らないはずなのに。
帰ろうとする荒縫は、何かを思い出したように足を止め振り返った。
「ああ、五条。うーん。五条と被るから千代でいいか。千代、一応お前の術式で二人の傷治してやってやれ。」
五条千代の兄、五条悟のこともよく知っているのだろう。千代の呼び方を変えた。
そして、荒縫の指示は二人を治せというものだった。
しかし、千代は少し不服そうに申し立てた。
「え、高専の反転術式使う人に治してもらえばいいじゃないですか。そんなに大けがじゃないですし、わざわざ私のを使わなくても。」
呪霊は確かに弱いものだったが、数がいたので二人は少々傷を負っている。しかし、すぐ治す必要性のないものだと千代は判断した。彼女自身、そんなに見せびらかしたい術式でもなかった。
千代の言葉に、荒縫は説明する。
「さっきも言ったけど、今日は実戦で3人が互いに知ることが重要だ。これから、3年間一緒に過ごすんだ。術式は知っておいた方がいい。」
「はい…、分かりました。」
千代は渋々了承し、二人の肩に手を当てた。二人は何が起きるか、あまりよく分かっていないようだったが。
『
「
千代の術式が発動すると二人の体から、傷が消えた。突然痛みがなくなり、驚く二人。
「私の術式は相手の体から傷を私に移すものです。ああ、私の方は気にしないでください。自分だけに反転術式が使えるので、このぐらいなら集中すれば怪我の痛みを感じる前にすぐに治せます。」
軽く術式を説明して、心配されないように言う。
「へえ~すごいね!」
灰原は、感心しているようだ。一方で七海は何とも言えないような顔をしていた。
(うーん、七海君は頭よさそうだな。私の術式の意味を正確に捉えてそうな感じがする。)
そう、五条千代が戦いに参加するのは身代わりの意味合いが強い。その意味を瞬時に理解し、七海は少し不快感を表す。
しかし、呪術師というものの中で、自分の身を媒介にする者は多い。呪霊を祓うためなら、なんらおかしいことでもない。呪術師は狂っていなければやっていくことなど出来ない。
七海はそのことも理解していたからこそ、その感情を押しとどめた。
荒縫は千代が二人を治し、あらかた説明が終わったのを見ると、3人に声をかけた。
「よし、じゃあ、今度こそ帰るぞ。飯ぐらい奢ってやる。」
その言葉に、3人は一斉に荒縫の方を向く。
3人とも驚きの表情だ。
「なんだ、その顔は。」
荒縫は3人の表情を見て言う。
「先生何食べてもいいんですか!?」
「荒縫先生は論理的思考しか持っていないかと思っていました。」
「すいません、生徒に奢るような人に見えなかったです。」
灰原、千代、七海が順に勢いよく話す。
「おい、若干1名質問の方向性が違うが、まだ会って数時間なのに散々な言われようだ。じゃあ、なにかそのまま直帰するか?」
「え、僕食べるって言いました!」
「ぜひ、いただきます。」
「せっかくなので、お願いします。」
荒縫は3人の反応に軽く溜息を吐き、言う。
「よし、じゃあ、行くぞ。」
荒縫は振り返り、歩き出す。その後ろを3人が追う。
まるで親鴨に続く小鴨のようであった。
歩を進める荒縫は、心の中でつぶやいた。
(私は生徒が大事だよ。)
分厚い眼鏡の下に、ひどく優しそうな瞳があった。
ここまで読んでくれてありがと。
今回は二つのオリ設定が出てきたけど、灰原君の呪法は今後活躍するときがなさそう。