五条悟が最強であることは理解していたが、まさか封印されるとは思ってなかったんだ。 作:のれん(-_-)zzz
戦闘は薄味。展開が早い。
夏油は五条が背後の男から刺されたことを認識し、呪霊を召喚する。巨大な呪霊が地面から現れ、男を飲み込んだ。
「兄様っ」
千代は五条に近寄る。
夏油も呪霊の方に意識を向けながら五条の方へ駆け寄り安否を確認する。
五条は手を千代たちの方へ向けにやりと笑って答えた。
「問題ない。術式は解除していたが、内臓は避けたし、呪力で強化して刃を引かせなかった。お前らは天内を早く天元様の元へ連れていけ。ここは俺が持つ。」
五条の言葉を夏油は信用し、言葉をかけた。
「油断するなよ。」
夏油は天内の方へ走る。
「しねえよ。」
千代はまだ、五条の近くにいる。
「お前も早く行け。」
五条は千代を急かす。
千代は唇をかむ。ここで治療を申し出ても五条は断るだろう。敵はまだ生きている可能性が高く、ここでどうこうしている猶予はない。先の攻撃から術式を再度発動して、五条に触れることもできないのだからなおさらだ。
「ご武運を。」
千代はそれだけ言って、夏油達の後を追った。
「任せろ。」
千代が去り、彼女に聞こえないようにして五条はつぶやく。次の瞬間、夏油の呪霊が内側から切り崩され、中から先ほどの男性が現れた。
彼の名は伏黒甚爾。極めて特殊な「天与呪縛」の持ち主である。呪力を完全に持たない代わりに、呪縛の強化によって五感が呪霊を認識できるまでに鋭く、身体能力も圧倒的である。体に武器庫の役割を持つ呪霊を巻き付け、武器の自在に操る。
五条は目の前の敵に対し、戦闘態勢を取った。
夏油達は、星奨体同化のために、高専最下層、
2人が涙し、別れを惜しむ姿を見て千代は思う。
(一生家族に会えることが出来ない、隔離された世界へ赴く彼女はどのような気持ちなのだろう。使命だから納得し、受け入れた結果だとしても彼女の本心はどこにあるのだろう。本来ならば普通の生活を送るはずだった人の子である彼女自身の心は。)
千代は数か月前に家入に自分のことを考えればと言われてから自分の本心について、そして他者の気持ちについてよく考察するようになった。
この状況においてそれを考えるのは不謹慎かもしれないが、目の前で抱き合う2人を見て、そう思わずにはいられなかった。
千代はちらりと夏油を見遣る。夏油も何とも言えないような顔で2人を見つめていた。
黒井との別れを済ませた後、歩を進め、
夏油は天内に同化までの順序を説明する。それを浮かない顔で聞く天内。まだ、先ほどの別れが忘れられないのだろう。
夏油は説明し終わったあと、天内にとって思いがけない言葉が付け加える。
「…、それか引き返して黒井さんと共に家に帰ろう。」
その言葉に驚いた表情をする天内。
千代もその言葉に思考が一度止まった。呪術界の要である天元の同化を放棄することだ。そんな簡単に放棄することなど出来ない。
夏油曰く、その判断が親友の五条と相談して決めた結果だという。天内がどんな選択をしようと、その未来が侵されないよう保証することも付け加えられた。
(兄様と傑先輩がそう決めたのなら異論はない…、ただそういう大事なことは前もって教えてほしかった。)
千代は自分の生い立ちを考慮され、伝えられていなかったと考えた。それに関して少々思うところはあるが、仕方のないことだと割り切った。
千代は夏油に目配せして了承の意を送った。夏油もそれを認識し、2人は天内の回答を待った。
夏油の言葉を聞いた、天内は自分の本心を漏らす。
「私は生まれたときから特別と言われて、それを普通だって思ってた。幼いころに両親が亡くなったことも、もう忘れて辛くも悲しくもなかった。同化してしまえば同じように辛いことも悲しいことも忘れる。だからみんなと離れ離れになっても大丈夫だって思ってた。」
天内の目から涙がこぼれだす。
「でも、でももっとみんなと一緒にいたい!いろんなところにいって、いろんなものを見たい!」
天内の魂の叫びだった。これが星奨体である天内理子でなく、1人の人間としての天内理子の本心。
夏油はその願いに応じた。
「じゃあ、帰ろうか。」
夏油はそう言って、天内に手を差し出す。
天内は笑って、「うん」と言い手を伸ばす。
その天内の手が夏油の手を握り返すことはなかった。
天内の脳天に銃弾が撃ち込まれたからだ。
天内はどさりと横に倒れる。その目は生気を失っていた。
「千代ちゃん!」
夏油は千代の名を叫ぶ。
「はい!」
千代は夏油に言われるまでもなく、急いで天内の元に駆け寄り、天内の状態を確認する。
まだ、命の灯が消えていなければ、蘇生は可能だ。が、
「……っ無理です。私の術式が反応しません。……即死です。」
千代は絞り出すように答えた。千代の術式は死んでしまった人間には作用しない。
夏油はその事実に歯噛みして、銃弾が飛んできた方向を見遣る。
そこには、先ほど襲ってきた男、伏黒甚爾がいた。五条と戦っていたはずの男がだ。
「何してんの、終わりだよそいつは。解散解散。」
人一人殺しておいて、さして何も気にしていないように伏黒は言う。
「なぜ、お前がここにいる。」
夏油が問う。
「はあ?なんでって、ああそういうこと。」
夏油の言葉の意味を理解した伏黒は答える。
「五条悟は俺が殺した。」
「そうか、死ね」
伏黒の言葉を聞いた夏油は呪霊を召喚し、純粋な殺意を敵に向けた。
伏黒と夏油が戦い始めようとしている中、同じ言葉を聞いた千代はその場にしゃがみこんだままであった。体を動かすことが出来ず、その内では、先ほどまでは目の前に横たわる天内の死に自身の無力さを感じていたはずなのに、今ではその感情もある一つの思考に飲み込まれていた。
(兄様が…死んだ。最強の兄様が…あの男に? 嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。………私のせい。私が沖縄で無理にでも兄様を治しておけば。刺されたときに治しておけば。兄様はこの男に敗れることなど絶対に、絶対にない。ここまで来て役に立たなかったんだから、最初から私の全てを、兄様に差し出せば良かったんだ。それなのに、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして…なの?)
目の前では、夏油の攻撃をいなしながら、伏黒がどのようにして星奨体の殺害を成し得たのか絡繰りを説明していた。
夏油は一つ質問をする。黒井はどうなったのかと。
伏黒は答えた。気にしていなかったなと。多分死んでいると。
その言葉に夏油の殺意はさらに膨れ上がる。伏黒も飼っている呪霊から、武器を取り出した。
術師同士の本格的な闘いが始まった。
呪力の全くない伏黒は天与呪縛により底上げされた身体能力で夏油の呪霊を容易く嬲る。その呪霊、
千代はその様子をまるでテレビに映った映像のように捉える。先ほどの二人のやり取りも聞こえてはいたのに、理解をしていない。今の千代には兄の死以外の情報は何も入って来ない。茫然自失という言葉をそのまま体現していた。
夏油のように天内、黒井、そして五条の死に復讐しようとする気概を千代は全然見せないでいた。彼女にとって復讐は何の意味もなさないからだ。復讐したとて兄が戻ってくるわけでもない。
夏油は新たに召喚した呪霊が倒された後の隙を利用して、伏黒に間合いを詰めた。その行動は近接を得意とする伏黒にとって悪手といえるものだったが、夏油の狙いは伏黒の武器保管庫の役割である呪霊を自身の呪霊操術の支配下に置くことで、相手の武器庫を抑えるものだった。
しかし、伏黒とその呪霊の間には既に主従関係が構築されており夏油の術式は空振りに終わった。逆にその隙を伏黒に切り込まれ、夏油は敗れた。
夏油は意識を飛ばし地に伏した。伏黒は床に転がった夏油を蹴り上げた。
普通ならそのままとどめを刺すものだが、夏油を殺した場合、彼の支配下にある呪霊が解放される可能性があることを考え、伏黒は夏油にとどめをささなかった。
「親に恵まれたな。」
その言葉を夏油に吐きかけた後、伏黒はこの場にいるもう一人の呪術師と向き合った。
ここまで読んでくれてありがとうー(前回書き忘れた)
パパ黒、かっけぇ。そのかっこよさをうまく出せればよかったのに。