ランプの魔人と騙され転生者   作:ククク...

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4.5巻編始まります。

ひよりが通い妻やっているところもありますが、どっちかっていうと櫛田がメインだという矛盾。

因みにタイトルはおやつの僕夏tasの例のアレが元ネタです。・・・分かる人には分かる。




4.5巻
今日は何にもない素晴らしい一日だった??


「貝沼君……貝沼君……起きてください。朝ごはんが出来ましたよ」

 

 ……誰だか知らないがもう少しだけ寝させて欲しい。

 

「……全く、寝顔が可愛くて起こしにくいですね……。ほーら! 起きてください!」

 

 タオルケットを取られてしまった。……まだ寝ていたかったのに……。まだ寝ぼけている目を開くと、そこには銀髪の美女がいた。

 

「……おはよう、ひより……」

 

「はい、おはようございます。さあ、早く目を覚ましてください」

 

 ……うん? ちょっと待って? 自然に名前呼んじゃったけど、俺って確かに玄関の鍵閉めたよな? なんでひよりが部屋に入って来てるんだ!? 

 

「おい!? ちょっと待て! なんでひよりがこの部屋にいるんだ!」

 

 俺の意識はこの異常事態に遭遇したことで目覚めた。いや……確かに恋人になったとはいえ、何でいきなり自分の部屋に彼女がいるんだ。

 

「?? 何って……朝食を作って一緒に食べようと思っただけですよ?」

 

「いや、そういう問題じゃないんだ。俺は確かに昨日部屋の鍵を閉めていたんだ。なのに何でお前がこの部屋に入って来れたのかと聞いているんだ!」

 

「いえ……ドアを何回ノックしても返事が無かったので管理人さんに相談したら合鍵を貰えたのでそれで入りました!」

 

 自慢げに言うんじゃねえよ! あと、管理人もそんな簡単に合鍵渡すんじゃねえよ! 原作1巻の時から思っていたけど、何で試験に関することとかに対する情報のセキュリティは完璧なのに、こういうセキュリティはガバガバなんだよ! 管理人はちゃんと職務をこなせ! 

 

「……ひより。だからと言ってやっていいことと悪いことってのがあるだろう?」

 

「……そうですね。私がやった行為は世間一般的に考えて褒められた物ではありません。そこは認めます。……ですが、もとはと言えば貝沼君が悪いんです。食事は大切なんですからきちんと食べてください! 私が注意しても全く反省してないじゃないですか。ですから、こうやって食べさせに来たんです! 分かったらこっちに来てください」

 

「……悪かったよ。何ポイントぐらい使ったんだ? きちんと返すぜ」

 

「いえ、ポイントはいいです。私が好きでやっていることですから。むしろ、今はポイントよりかは……甘えさせてください。独りぼっちはもう嫌です……」

 

 ひよりは涙目でそう言ってくる。……こいつがどれだけ苦しんだのかは俺が知る由は無い。他人の心を読むことが出来たとしてもそれがどれほどの苦しみかなど、当事者でもない限り理解出来ないのだから。

 

「……まあ、良いだろう。こちらもやる事はある。まずは朝飯を食うとしよう」

 

「はい、簡単な物ですが。是非とも食べてください」

 

 何故ひよりが俺の食事事情を知っているのかというと、一昨日の出来事が関係していた。

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 学科試験が終了し、夏休みに入った自由期間。俺たちはひよりの交友関係が解放されたことで再び会うことになったのだった。……その際だから王にもきちんと謝罪しておこうと俺は考えた。禍根は残さない方が良いからな。出来るだけ早く謝っておいた方が良い。

 

「お帰りなさい! ひよりちゃん!」

 

「ただいまです。王さん」

 

 ……まあ、この2人がまた仲良く交流出来るようになって良かったとは思う。あんなことをしてしまった以上、俺がこんなことを言う資格はないかもしれないがな。

 

「……貝沼君。取り合えず椎名さんとまたこうやって会えるようになって良かったね!」

 

「ああ、そうだな」

 

 佐倉には悪いが今はあまり話をちゃんと聞いてやれない。王へ謝罪しなければならないので少し緊張している。

 

「……貝沼君。ひよりちゃんのこと……ありがとう。貝沼君が何とかしてくれたんだよね? これ」

 

「まあな……。王、あの時は悪かった。俺が全面的に悪かったというのに……。お前が俺を心配してくれていたのは分かっていたんだ。だが、俺は……」

 

「良いよ。あの時は私もちょっと慣れない無人島での生活でストレスが溜まっていたみたいで……気が立っちゃったんだ。ごめんね」

 

「いや、俺の方が圧倒的に悪かった。本当に済まなかった」

 

「もういいよ。許してあげるから、今はひよりちゃんが戻ってきたことを喜ぼうよ!」

 

 ……なんて良い奴なんだ。良い奴過ぎて涙が出てきそうだ。今後王には危害は加えないようにしよう。そう心に決めた。何かしらの代償を払うことになると思っていたから本当に予想外だった。

 

「王さん……あの時とは……? 何があったのでしょうか?」

 

 ひよりがそう聞いてくる。……あの時のことを伝えても良い物なのか……。そんなことを考えていると王が了承してどんどん話してしまっていた。

 

「えっとね……。無人島試験があったよね? あの時貝沼君とっても無茶してて……それを止めようとしたんだけど……強引に止めようとしたのがいけなかったのかお腹を蹴られちゃったんだよね。弱めに蹴られたから怪我とかは無かったんだけど……その時から貝沼君とは会ってなかったんだよ。正直言うと試験終了後に倒れた時はだから言ったのに……って呆れちゃったよ」

 

「へぇ……。詳しく聞かせて貰いましょうか。ねえ? 貝沼君?」

 

 ひよりの目が途轍もなく怖くなった。この真夏だというのに気温が下がったように感じ、身震いが止まらなかった。俺にとっては王に謝罪するよりもひよりの問いかけの方が試練だったのは間違いなかった。

 

 

 

 

 

 

「はっきりと言ってあげましょう、馬鹿ですか!? 無人島で断食? ふざけないでください! 本当に……本当に……死んでしまっていたらどうするんですか……馬鹿……」

 

 ……そこまでぼろクソに言わなくったって良いじゃないか……。

 

「この際ですから聞きたいことを全部聞かせて貰いましょうか。あなたを野放しにしてはいけないと言う事が良く分かりました!」

 

「いやー、ひより。俺にそこまで答えてやる義理は無いと思うんだが……」

 

「何か言いましたか? 教えてくれますよね?」

 

 ひよりは笑いながらそう言うが、目が笑っていない。……俺は弱い。はっきりと言って怒ったひよりは綾小路よりも怖いかもしれない。そして、一番たちが悪いのは俺のことを思っての発言なので何も言い返せないということだ。

 

 俺のことを深く愛してくれている。少なくともその気持ちは信じたいからな。俺はひよりの質問全てに答えることとなった。……王と佐倉が横に居るのにだ。一体何が悲しくて2人にも色々と知られないといけないのか……。だが、目の前にいるエンマ大王と化したひよりの前ではそんな愚痴をこぼすことは出来なかったのだった。

 

 

 

 

 

 全ての質問が終わったところでひよりから下された俺への判決は重すぎる物だった。

 

「では、貝沼君。帰ったらきっちりと反省しましょうか。罰として正座を3時間してください。私はずっと見守っていますからサボったりしてもすぐにバレますからね!」

 

 ……ひよりは絶対に怒らせないようにしよう。そう思わざるを得ない一日だった。

 

 今までやって来たことの殆どがたった一日だけでバレてしまった。石崎たちを嵌めたのは俺だったことや、Dクラスでの冤罪事件。その他諸々のやらかしに加えて、ポイント節約のために朝飯は毎日食べていなかったこと。昼ご飯は山菜定食が基本。夜ご飯は0円で手に入れた物を適当に使って食べていたことなど。中々に不健康な生活を送っていることが我慢できないらしいひよりが遂に俺の部屋に不法侵入してまで食事を作りに来たというわけだ。……わざわざ食材を買っておいてだ。

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ひよりと別れた後、俺は櫛田と会う約束をしていた。特別試験が終了してから数日しか経っていないにもかかわらず、例の件を把握することが出来たらしい。仕事が早いのは助かる助かる。

 

 集合場所はカラオケルーム。その件について話が終わった後は愚痴の言い合いをするつもりだからだ。……まあ、裾の部分にボイスレコーダーを仕込んでおくのは忘れないが。最悪、櫛田が何かやらかした時の保険に出来るからな。

 

「ヤッホ―♪ 貝沼君」

 

「よう。首尾はどうだった?」

 

「メールでも伝えた通りバッチリだったよ。じゃあ行こうか」

 

 俺と櫛田が堀北を乏し隊だと言う事がバレると色々と面倒なため、周りを確認しながら移動していると池と山内が物陰に隠れてこちらを監視しているように見えた。……気の所為だといいがな……。

 

 

 気の所為では無かった。どうやら付けられているらしい。大方、俺と櫛田がどんな感じかを知りたいとか……他にあるとすれば、俺が櫛田に何かしないかの監視……と言ったところか。まあ、むしろ自分たちがストーカーしているところを録られているとは毛頭思ってないだろうな。

 

 学生寮からカラオケ店まではそれなりに距離がある。もしかしたら……と思い携帯のレンズを後ろに向けて録画していたのだが、案の定ストーカーしてきていた。……まあ、4.5巻でも綾小路に葛城のことを監視させたり、プールの時には更衣室にカメラを仕掛けるという頭のおかしいことをしていたからな。

 

 頭の中にモラルという概念が入っていないんだろう。色々と救いようのない奴らだ。……特に山内はな。

 

「櫛田……気付いてるか?」

 

 俺は櫛田にそう問いかける。少なくとも俺よりかは彼女の方が嫌らしい視線を感じて早く気付いていたんじゃないだろうか? 一応聞いてみた。

 

「……あいつらが付けてきてるんでしょ? 須藤君は少しまともになったけど……あいつらは本当に無理。気持ち悪すぎる。ここまで本心を明かして散々文句を言ってやりたい相手は久しぶりだよ」

 

「前例がいるんだな? それは……」

 

「堀北だよ。あんたは分かってるでしょ?」

 

 やっぱりか。誰に聞かれるか分かったもんじゃないから仕方ないんだろうな……。本人からは遠ざけられてるみたいだしな。誘い出そうとしてもきっぱりと断られていたんだろう。ご苦労なこった。

 

「よぉ? 貝沼。坂柳のパシリの次は櫛田か? 随分女漁りに熱心じゃないか」

 

 ……何でこんな状況で龍園に会うんだ? 運が悪い。

 

「勘違いすんな。今後Dクラス……いや、お前たちが降格したから今はCクラスだったか。Cクラスが今後どう動いていくかの相談をしたいだけだ」

 

「クククッ、本当にそれだけだとは俺には思えないがな。まあ良い。今日はお前にプレゼントをくれてやる」

 

 そう言うと龍園はポケットに手を入れてピンク色の袋の中にゴムが入っている物を取り出した。……そう、コンドームである。……こいつセクハラで訴えてもいいかな? わざわざ箱から取り出してある状態で渡してくるあたり確信犯だろこいつ。 

 

「……セクハラで訴えていいか? 櫛田が」

 

「えっ!? 私!?」

 

 だって、男が訴えるよりも遥かに女が訴えた方が効果あるじゃん。女が痴漢だと言えば99.9%有罪が確定する国……それが日本! ……何もしてないのに痴漢だと言うクソアマは〇ね。

 

「いや、その、えっと、ちょっとそういうのは止めて欲しいかな龍園君。別に私たちそういう関係じゃないから……ね?」

 

「何を考えているのか知らねえがお前には言ってない。俺は貝沼に言っているんだ。偽善者は黙ってな」

 

「……えっと、何を言ってるのかな?」

 

 ……どうやら龍園もどこからかは分からないが櫛田の裏の顔について知っているようだ。……なるほど。これは櫛田が堀北を潰してもらうための大きなアドバンテージだな。このことは体育祭に向けてアドバイスしておこう。

 

「というわけだ。こいつは取っときな。俺としてもひよりを孕まされでもしたら困るんでな。TPOはわきまえろよ」

 

「お前にだけは絶対に言われたくない」

 

 こいつにTPOを守れとか言われても……。どう考えてもお前の方が守ってないだろ、TPO。

 

「あと、随分と面白いことをしてくれたらしいじゃねえか。坂上が泣いて懇願してきたんだよ。貝沼努をどうにかしろってな。あいつはお前がやったことを全てゲロってくれたぜ」

 

「まあ、お前にはバレても仕方ないよな。……にしても教師が生徒に泣いて頼み込むって……。坂上先生って泣き虫かな? 大の大人が恥ずかしく無いんだろか? なあ?」

 

「クククッ、まあな。だが、俺にとっては使える駒だってことだ。あと、その件で伊吹がとってもキレてたぜ? 何でも知らない内に利用されていたのが気に食わないんだってよ。その内お前を殴りに来るかもな?」

 

「逆ギレとは……醜いな。作戦のリスクを理解しておきながらやったのはあいつ自身だしな。むしろ、坂上先生に感謝した方が良い。坂上先生が俺の提案に応じていなければお前はもうこの学校にはいなかったんだからな……と言っておいてやれ。多分もっとキレるぜ」

 

「だろうな。伊吹はさらにキレそうだ。面白そうだから伝えておいてやるよ。……じゃあな、夏休み明けに……覚悟してろよ。今度は俺たちが勝つ番だ」

 

 熱血系主人公的なセリフを言って、龍園は去っていった。

 

「まあ……な。是非とも頑張って欲しいもんだ」

 

 ……本当にな。堀北を徹底的に潰せるのは龍園。やはり、お前しかいないからな。個人的な戦いはともかく、クラスとしては全部今回の戦いは捨てているのさ。悪いな、龍園。お前の期待には完全に答えてやるつもりは毛頭ないんだ。

 

「……本当にあんた何やったの?」

 

 さっきの会話を横で聞いていた櫛田がそう聞いてくる。まあ、さっきの話だけで完全に理解出来る方がおかしいよな。……この断片的な情報だけで坂柳や綾小路は何をしたのかを理解出来そうなのが怖いところだ。

 

「さぁ? お前に教える義理も無いからな。ただ、強いて言うなら深くは関わらない方が良い。面倒事に巻き込まれたくなければな」

 

「別にいいから教えて。あと、あんたそれいつまで握りしめてんの? 私まで変態認定されかねないから早くどうにかしてくんない?」

 

 ……コンドーム押し返すの忘れてた。こんなの数十回分も貰って迷惑でしかないわ。……不本意だが櫛田の言う通り、今の状況だと俺が変態と思われることになるし、櫛田にとっても悪評が広がりかねないだろう。なので、すぐにポケットの中に突っ込んだ。

 

「はぁ……全く。ちょっと予想外のことが起こったけど……気を取り直して行こっか」

 

 そろそろ表櫛田に戻るようだ。まあ、不用意にリスクを冒す必要も無いだろうしな。

 

「そうだな」

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「それで……体育祭か文化祭……どちらかがあるという情報を掴めたんだろう?」

 

 カラオケルームのとある1室にて……俺たちは今後のことを話し合っていた。

 

「うん。あんたに頼まれていた通り、上級生……それもDクラスっぽい人間から情報を奪い取ってきたよ。結論から言って体育祭が2学期が始まってすぐにあるらしいよ。ただ、詳細までは教えてもらえなかったよ」

 

「十分だ。報酬は払っておいた。確認してくれ。あと、その情報はクラスのグループトークに載せておいてくれ」

 

「良いの? あんたのことだからその情報を独占するものだと思ってたけど」

 

「んなわけ無いだろう。体育祭がクラス全員で挑む物だということぐらい理解している。それに、この学校のことだ。今後も運動能力を見極める試験が行われるのは間違いない。……この際だからこの夏休み期間にクラスの実力の平均値を上げたいだけだ」

 

 ここまでお膳立てしてやっているのに運動していない奴がいたら? その場合はそいつがそれまでの人間だった。それだけのことに過ぎない。

 

「ふ~ん。意外。あんたのことだからまた1人でどうにかすると思ってたけど」

 

「……お前は俺のことを何だと思ってるんだ」

 

「天災とか厄災」

 

 ……まあ、そうだけどさ! そうだけど……はっきりと言わなくても良いだろうに。

 

「はぁ……まあ良いか。勿論言う理由だってある。恐らくだが、殆どの人間がこの学校の異質さやSシステムについて理解を深めている。そのことは学校も理解しているはずだ。……となれば、これから本番が始まる……そうとは考えられないか?」

 

「……退学者が出てくる……。そういうこと?」

 

「ああ、出来るだけ自分を高めなければ己の身が破滅するだろう。この学校が希望通りの進学や就職を100%保証しているのは、優秀な人間しか生き残らないからだ……という結論に俺は至った。だからこそ、この学校も安心して生徒を推薦できる……ってところじゃないか?」

 

 ……まあ、堀北兄がいる3年なんかはいい例だろう。基本的に劣等生だとか無能だとか落ちこぼれだとか色々と言われるDクラスの人間どころかCクラスの人間だって殆どいなくなっているのだから。……まあ、それは単純に堀北兄と同世代が弱すぎただけという可能性もあるにはあるのだが……。

 

「なるほど……。分かった。送信しとく」

 

「じゃあ、体育祭の話の続きだが……俺はリーダーをする気は無い」

 

「……は? どういうこと? あんたがやらないで誰がやんの? 平田君?」

 

 櫛田が俺にそう問いかけてくる。……にしても勝つことに関しては結構信頼されてたんだな。他のクラスメイトもそうなのか? 

 

「さあな? 平田かお前か……堀北だ。表では何とか我慢出来ているが平田は俺のことが大っ嫌いなんだろう。まあ、俺もあいつの甘ったれた考えは嫌いだが。そこで奴は俺以外の新たな可能性を探り始めるだろう。出来るだけ俺みたいな外道戦略を取らないであろう人間を」

 

「それで堀北が選ばれると? あんた本気で思ってんの?」

 

「少なくとも池たちみたいな馬鹿どもよりかは選ばれると思うが? まあ、堀北が選ばれたところで否定意見が出るのは間違いないだろうな。……幸村あたりから」

 

「そうだね。幸村君はプライドが高いところがあるから……早くAクラスに上がるためにも否定してきそうだよね」

 

 原作ではこの体育祭で己の無力さを理解していたが、この世界線ではどうかな? 事前に伝えておいてきちんと運動すればまだ可能性はありそうだがな。

 

「まあ、その時には俺が今回はやらないと言ってやる。それで終わりだ。そして、お前に言っておかなければならないことがある」

 

「何? 堀北を潰すための案でも教授してくれるのかな?」

 

 oh……大正解。と言っても原作で櫛田がやったことと何も変わらないのだが。ただ今回は状況が違う。綾小路が堀北を隠れ蓑として機能出来ていない状態だし、何よりも真鍋達の件は既に龍園に伝わっている。その時点で作戦会議時点の音声を録音させてそれで龍園を脅すという手法は使えない。

 

 ……というかそれ以前に龍園の罠に嵌められたら綾小路の助言とかも仮にあったとしてもこの世界線の堀北じゃ聞かないだろうな。つまり、今回の体育祭。この時点で完全な敗北が確定している。

 

「ああ。それを説明する上で重要な情報を教える。お前の裏の顔……多分龍園にはバレてるぞ」

 

「……やっぱり?」

 

 まあ、偽善者と顔をきちんと見て言われれば櫛田としてもそう思わざるを得ないだろう。だが、櫛田にとって裏の顔を知られることは確かに不味いことではあるが、修正が利くレベルの話。女ってやっぱり怖いわってだけで済むからな。櫛田は優等生で通っているから余程のことが無ければ信頼を失うことは無いどころか、それを言った人間の方が信頼を失いそうなレベルだ。

 

 よって、龍園にそのことを知られていてもあまり問題はない。櫛田にとってもっとも地雷なのは堀北だという事実には何の曇りもない。……まあ、中学時代の件。俺も知っているがな。原作知識という本来起こりえないだろう方法でな。

 

「リーダーが堀北で確定した場合は好きにしろ。お前なら何をすればDクラスにとって致命的な損害を与えることが出来るかよく分かるはずだ」

 

「……堀北にリーダーとしての責任を取らせるってこと? まあ、あんたが薦めてきたってことは好きにやって良いんでしょ?」

 

「良いに決まってるだろう。何故わざわざ聞いた」

 

「いや、あんたがどこまでやったら怒るのかのラインを知っておきたかっただけ。にしても……あんたがリーダーを一時的とはいえ、降りるとは思ってなかったよ。何か理由があるの?」

 

 櫛田がそう聞いてくるので俺は船内試験での堀北の発言を聞かせた。

 

『簡単よ。1つ、私にリーダーを譲る事。2つ、今後Dクラスの情報は売らないこと。3つ、あなたには全力で協力してもらうわ。無論、あなたが持っているその膨大なプライベートポイントもDクラスが試験で勝つための共有資産よ』

 

「フフ、ハハハハハ! 滑稽過ぎて笑えてくるね。ありがとう。こんなに笑ったのこの学校に来てから始めてだよ!」

 

「まあ、こういうこった。いつまでも調子に乗っていてウザいからそろそろ黙らせようかなと思ってな。この際だから現実を見せてやろうというわけだ。……最悪の形でな」

 

「いいよいいよ! 是非ともやらせて! リーダーという物は他人が選出するものだと理解すらしていないのが本当に笑える! 譲ってもらうとかそんなことは出来ないのに!! だけど……実際に譲ってもらって希望を見出したところに絶望を与える……いい案だよ」

 

「気に入っていただけたなら何より。個人的には龍園をお薦めする。あいつなら遠慮なく堀北を潰してくれるだろうからな。……これで今後の話は終了だ。あとは……悪口の言い合いだな。せっかく防音仕様のカラオケルームなんだ。叫んでストレス解消しとけ」

 

 この後はお互いに自らのクラスの悪口を言いまくった。因みにこの時、池と山内がドアからこちらを覗いていたので部屋に押し込んで脅しておいた。ストーカー被害を受けたと言って訴えても良いんだぞと言ってな。ちなみにここぞとばかりに櫛田は自分の本心を池たちにぶつけていた。・・・池たちが魂が抜けたような顔をしていたのが特に印象的だった。

 

 勿論、池たちには櫛田の本性や俺との関係について言及しないことを約束させた。破った場合はストーカー被害を受けたと櫛田が俺の撮った動画を見せれば良いからな。

 

 池たちに本心を明かした櫛田はスッキリしていたように見えたのだが、途端に不機嫌になっていた。恐らく、あいつらが付けていたのは俺にかなり原因があるから、それに巻き込まれた形で自分の本性を知られてしまったのが嫌だったのだろう。だが、一応助けてもらったからだろう。お礼を言ってきた。

 

「あいつらがこっちを覗いていたなら教えてくれたって良いんじゃないかな? でも……ありがと。あのまま気付かなかったら悪評が広がっていたかもしれないから……」

 

 櫛田は照れくさそうにそう言った。……普段の明るい櫛田も良いがあれは裏の本性を知っているためあまり良い気がしなかった。だが、今の櫛田の表情は素の櫛田が見せた物。はっきりと言って今のしおらしい櫛田の顔はグッと来た。

 

 俺が櫛田の顔をジッと見ていたのが気に障ったのかビンタされてしまった。……顔を赤くしているのを見るに照れ隠しか? まあ、他人の顔をジッと見るのは失礼だし俺が悪かったな。

 

「見ないで。恥ずかしいから……」

 

「少なくともビンタをかます前に言ってくれませんかねぇ?」

 

「貝沼君が悪いんだよ。ば~か」

 

「へいへい、俺が悪かったですよ~だ」

 

 こうして夕日が落ちるぐらいまで櫛田とは語り合った。……こうやって気楽に話せる女友達ってのも良いな。新鮮な経験だ。……櫛田のあのしおらしい顔……もう一回見てみたい物だ。次は永遠に見れるようにどうにか写真に収められないだろうか? そんなことを考えながら自分の部屋に戻ったのだった。

 

 




裏櫛田の性格でしおらしい顔されたらギャップ萌えが凄そうという作者の偏見です。

ギャップ萌え・・・良いですよね。表と2人っきりの時で男女の立場が変わるやつとかすごく好きです。

次の内容はまだ決めてないですが、原作に沿うことはなく、多分オリジナルになると思います。

~おまけ~  櫛田と貝沼をストーカーしていた時の池たちの思考。

櫛田ちゃんどこ行くんだろ。⇒はぁ!?何で貝沼と櫛田ちゃんが一緒にいるんだよ!ふざけんな!⇒コンドーム・・・?まさか!あの野郎絶対許さねえ!⇒あくまでも確認・・・確認のためだから・・・⇒畜生!嵌められた。櫛田ちゃんも本当はあんな子だったなんて・・・。俺たちは何を信じれば良いんだ・・・。

3巻編にて赤文字は必要ないと思ったか否か

  • 全然使ってもいいと思う
  • 要らなくね
  • 別に太字とかそういうの全部要らない

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