妖怪の山の麓では、大神境奈と大神煌炉の戦いが行われていた。
飛び交う土狐の攻撃を煌炉は火炎や爆風で相殺し、煌炉の体術を境奈は土狐を盾にして受け流していく...どちらも譲らない戦いとなっている。
強力な力を持つ大神家の戦い...その軍配はどちらにあがるのだろうか?
「それそれ!墓夢土狐!」
境奈は黒い土狐を出して煌炉へ向かわせるが煌炉は距離を取り、能力は発動する。
「バーンウインド!!」
熱風が吹きすさび、煌炉へと放たれた土狐は彼女へたどり着く前に爆発してなくなる。
煌炉は境奈へと近づき蹴りの連撃を浴びせるが彼女は尾を盾にして後退する。
「おっとと...乱暴ね~」
「そうでもしないと姉さんを倒せないからな!」
そして煌炉の拳撃が境奈の頬を打つ...
彼女は頬を手で押さえて少しイラッとした表情を浮かべるがすぐに消す。
「...土狐」
境奈の周りの土狐が煌炉へ攻撃を行うが彼女が高速移動をしてそれを避けるため意味をなさない。
その光景を見て境奈は面倒くさそうに頭を掻く...
「あらら...速いわね?全く...あまり時間はかけたくないんだけどね?」
「私も同意見だ...」
煌炉は煙草を消して境奈は地面に手をつける。
「...なら!その機動力を削いであげましょうかね!土狐ピラー!!」
辺りの空間に土狐が乗った石柱が何本も出現して辺りは柱だらけのバトルフィールドになる。
煌炉は辺りを見回す。
「障害物で私のスピードを抑える気か...」
「それだけではないわよ」
境奈が指を鳴らすと柱の上に乗っている土狐の目から光線が発射されて煌炉が避けることが出来ずに被弾する。
「くっ!?障害物の他にも役目があるとは!」
「ほらほら!止まってると当たるわよ?」
「くっ...」
大量の柱から発射される光線に煌炉は回避をしようとするが、障害物の所為で自身のスピードを活かすことができずに次々と被弾していく...
「ぐっ...はぁ...はぁ...」
「息が上がって来た頃しらね?」
傷つき動きが鈍くなってきた煌炉を見て境奈は笑みを浮かべて土狐を大量に展開し飛ばす...
煌炉はスペルカードを取り出す。
「っ!覚醒符(プロミネンス・フォキシリア)」
爆風とともに煌炉の体は大きく変化し、3メートル級の火がそのまま形作ったような炎の巨大な九尾へと変貌する。
そしてその出現と同時に起きた爆風により境奈が放った土狐は消滅する。
「本気だしたわね~!でも地形から考えてその図体じゃあ大きな的ね...」
「なら!戦いやすい環境をつくるだけだ!!」
煌炉は妖力を高めると辺りの空間が連鎖的に爆発し、大量にあった柱も爆発により破壊されていく。
「な!?まさかこの一帯を爆破するつもり?土狐!準備をしなさい!!」
「土狐では守り切れない力を出してやる!!」
ぼん!!!
境奈は土狐を大量に展開し盾にするが煌炉の爆発による攻撃の方が上だった...
無残にも土狐は消滅し、術者であった爆風で境奈も遠くへ吹き飛ばされて地面に伏す...
しかし境奈からあふれ出ている殺気に気づいて煌炉は臨戦態勢のままだ。
「...やるじゃない...煌炉...このアタシをここまで追い詰めるなんて...驚きよ...」
「一応...本気でやったのにまだ意識があるとはね」
境奈は立ち上がりスペルカードを取り出す...
「少し痛かったわ...これからアタシ...本気出すけど?死ぬなよ?覚醒符(クイーン土狐)」
境奈の体に妖力が集まり、彼女の体が変化する...
ただ...他の姉妹とは違い、境奈の体は縮小していき60cmくらいの子狐の姿になる。
頭には立派な王冠を乗せ、尾は小さな体格とは真逆のハチの巣みたいにまとまった9本の尾を持っている。
境奈のこの姿を見て煌炉は警戒する。
「姉さんの本気の姿か...」
「ええ...アタシの本気の姿よ~...ちょいとお仕置きするけど構わないわよね?」
境奈が尾を向けると尾からは土狐が顔を出して煌炉を威嚇する。
「かまわないよ...私も本気で挑ませてもらう!!」
彼女達の濃厚な妖力が辺りを包み込む。
一方紅魔館
大神家当主である大神暦はレミリア・スカーレット 十六夜咲夜・パチュリーノーレッジ・紅美鈴の4人を相手に戦っていた...
本気を出しているとはいえ、幾ら彼女でも苦戦を強いられている。
side暦
「レッドマジック!」
「デフレーションワールド!」
「サイレントセレナ!」
「彩光蓮華掌!」
「どえええ!!?」
4人から放たれる光弾を辛うじて私は避け策を考える...
本気出すとはいえ、幾らなんでも4人相手は辛すぎる!!
このままでは私の敗北待ったなし!!
「しかしなぁ...厄介なのが多すぎる...」
とりあえず火炎弾を発射して応戦するけど、パチュリーが詠唱する。
「プリンセスウンディーネ!」
彼女から水の弾幕が放たれて私の攻撃が消滅する。
この中で一番厄介なのがパチュリーの存在...
彼女の属性魔法により私の五行の力が思う存分に力を発揮できない...
火を出せば水で消され、水だせば土で汚されて...
「どうしよ...」
考えを巡らしていると私の前にナイフが大量に現れる!
咲夜の時間停止能力か!!
「本当に勘弁!!」
私は上空に上がってそれを避けるが更に追撃が!!
「ああもう!!鬱陶しい!!」
そのナイフを剣で弾くと咲夜の笑い声が耳に入る。
「よそ見はしない方がいいわよ?」
「虐めか何かかな!?」
せせら笑う咲夜に怒りを覚える私だが、それは逆切れというものだもの...
今回は私が悪役...不本意ながらの異変の参加...嫌になるわ...
「暦!本気で来なさいよ!でないと死ぬわよ?」
レミリアは槍を私に向けながら光弾を放つ...
レミリアのスピードは厄介だけど、気をつけていればそこまで脅威にはならない!
とりあえず咲夜とパチュリーを止める方法を考えなくては!!
「もらいました!!」
「え?」
気づいたら美鈴が私の着物の襟を掴み投げる体勢に入っていた!!
しまった...他の3人に気を取られてた。
「そおい!!」
「ごほぉ!!」
床に叩き付けられて息が出来なくなる。
が...まだ終わらない!
「暦さん!倒れてください!!」
美鈴からの蹴り攻撃...倒れている私は避けることはできず壁にまで吹き飛ばされる。
「けほ...!?」
怯んでいる私の目の前には槍に力を込めているレミリアの姿が!!
「スピア・ザ・グングニル!」
魔力を込められた槍が飛んでくる!!飛んでくる!!!
だけど!ここは深呼吸!!
槍は金属!なら火の力で打ち消すことは可能なはず!!
「なら!火で打ち消して...」
「させるわけないでしょ?」
パチュリーの声が響いたかと思うと頭上から水が大量に降ってきて私の体がずぶ濡れになる。
おかげで...火が発動できない...
「はぁ...」
溜息をつき、私はそれをくらい壁ごと向こうへ吹き飛ばされる。
sideレミリア
「やったわね!?」
穴があいた壁を注意深く観察しながら、私は心の中でガッツポーズをする。
この私が大神家当主を倒したのよ!!これでなら霊夢に褒めてもらえるわ!!
「咲夜!やったわよ!!」
私の言葉に咲夜は微笑み頭を下げる。
「おめでとうございます...お嬢様」
「レミィの力だけではないと思うけど...」
パチェが何か言ったかもしれないけど、ここは保留としとく...
今日はいい気分!ワインが美味しくなるわ!!
「お...お嬢様?暦さんが吹き飛んだままですが?」
心配そうに美鈴が壁の穴の向こうを見つめている。
大丈夫でしょ?仮にも神でしょうし...心配はいらないはず。
「大丈夫よ...彼女ならね...」
とりあえず暦を捕まえて娘達に引き渡そうかしら?
この異変には大神家が関わっている。
これでなら多少は霊夢の負担が減るはず...
「大丈夫な訳...ないでしょ?」
「...!?あら?」
声を聞き、穴を見ると暦がボロボロの格好で出てくる...
見る限り満身創痍...
これで勝負あったわね...
「降参かしら?幾ら貴女でも私達相手は辛かったかしら?」
「...集団リンチを受けているのだから当然でしょ?」
暦は髪をかき上げて、片手を燃やして私に向ける。
「でも私の力は逆境に立たされて初めて効果が出る...まだ勝負はついていない!」
暦は私に一直線に走り近づくがパチェが私の前に立つ...
「火なら水よ...」
パチェの前に巨大な水の壁ができる...
暦は火!これでは攻撃が通らないわ!!
「神の火が!その程度で消えるか!!」
ばしゅ!!
「むきゅあ!?」
暦の攻撃は水の壁を貫通し...そして私の横を何かが通り過ぎる...
私がその方を見ると、そこには地面に突っ伏しているパチェの姿が...
「ぱちぇ!!!?」
「大丈夫...気絶しただけでしょ?」
暦は何事もなかったかのように私に近づく!!
「咲夜!」
「は!」
咲夜は私と暦を一瞬で引き離して彼女と対峙する。
「...全く面倒な能力」
「お嬢様には指一本触れさせないわ!!」
咲夜は大量にナイフを展開し、暦へ放つが彼女は涼しい顔をしている。
「金には金よ...」
暦の周りにも大量のナイフが展開されて、お互いに打ち合い床へと落下する。
「確かに咲夜の能力は強力だけど...決定打に欠けるわ...」
「くっ!ならもう一度!」
今度は先ほどよりも多く暦の周りに大量にナイフが展開される。
「手品はもう飽きたわ...」
ごー!!
暦の周りに激しい火柱が上がりナイフが消滅する。
あれは月に行ったときに見た神の火!
「...そんな」
その火柱を見て戦意でも喪失したのか咲夜はその場にへたりこんでしまう。
圧倒的力の差...それを間近に見せられたら...
「ぐぐ...」
悔しいけど、この状態になった暦を止める手立てはないわ...
私達の負け...
「お嬢様!!」
美鈴の声に私は我に返る。
美鈴は暦を羽交い絞めにしている...
「...美鈴!」
「私ごと!攻撃してください!!幾ら暦さんでも限界は近いはずです!!」
「...」
暦は抵抗することもなく立っているだけだ...
私の槍を握る手に力が入る。
美鈴が捨て身で作ってくれたこのチャンス...失敗するわけにはいかないわ!
「暦!受けてみなさい!!スピア・ザ・グングニル!」
私の放った槍は真っすぐ彼女へと向かっていく...
だが私は暦の顔を見て戦慄する...
「...ふふふ」
笑み...
この状態なのに彼女は笑っていた...
何故?
私が言葉にする前に暦の体が不気味に発光し辺りに巨大な術陣が形成される...
「なっ?」
私が覚えているのはここまで...
不思議な光に包まれて意識を手放していくのと彼女の笑みだけを覚えている。
side暦
「...」
私の周りには気絶したレミリア・咲夜・パチュリー・美鈴が床に転がっている。
少し苦戦を強いられた...
このままでは後に響くな...
がちゃ...
「あら?」
扉が開く音がしその方向を向くとレミリアの妹であるフランドールがいた...
彼女は目の前の惨状に目を丸くした後私を見つめる。
「お久しぶり暦?どうしたの?これ?」
「ちょっと...戦えと言われたのよね」
フランはボロボロの私を見て何か察したのか溜息をつく...
「大変だね...暦も色々と...」
「分かってくれる?ところでフランはどうするの?かたき討ち?私と戦う?」
彼女は首を横に振る。
「いや...私は何も見なかったことでお願い...どうせお姉様も霊夢に褒められたくてこんなことをしたんだろうね...」
フランは呆れた表情をして帽子の中からロリポップを出し私に差し出す。
「これあげるわ...頑張って」
「...ありがと」
私はそれを口に咥えてその場を後にする。
余計な時間をかけてしまったわ...
妖怪の山に急がないとね...
まだ緋想天は続きます...
ではこれにて