神社崩壊異変から数日が経過する...
博麗神社は元通りになり、一件落着といったところだが...
現実はそう甘くない...
異変に加担した大神家の者の末路が幻想郷に影のようにうごめき始める...
side暦
「...う?」
目を開けると見慣れた天井...
ここは...私の自室のようだ...
「...う...っ痛ー!!」
布団をめくり右足を見ると包帯でぐるぐる巻きにされている...
あの?天人を蹴った所為か...
慣れないことはするもんじゃない...
「お目覚めですか?お母様」
部屋の入口を見ると娘の一人である潤香がいた...
彼女の左手を見ると包帯が巻かれている...
「おはよ...どうしたの?その手?」
「...お皿を割ってしまいましてね」
「...そう」
潤香は私の枕元に座り、手紙を手渡す。
「なにこれ?」
「博麗神社からです...お母様宛です」
「まじか...」
私は恐る恐る手紙の封を開けて目を通す...
そこには...
(3日後...博麗神社で待つ...)
と...短い文章が書かれていた...
何か...死刑執行を言い渡された気がする...
異変に参加した私にどんな罰があるのだろうか?
「うげ...」
「まぁ...身から出た錆ということで諦めてくださいな」
そういって潤香は部屋から出ていく...
...潤香が冷たい
「はぁ...考えても...仕方ないよね...お風呂はいろ...」
足を引きずりながら私はお風呂場を目指す...
どんなお仕置きでももういいや...
やってしまったことは仕方がないもん...
ここは竹林...
竹林の夜雀亭を目指す者がいた...
彼女の名は今泉影狼...
夜雀亭へは食事をしに来たわけではなく、人探しのために足を運ぶ...
そう...数日間音信不通の大神銖理を探して...
side影狼
「...ここね」
竹林の隠れた名所である夜雀亭の前に私は立つ...
銖理が行方をくらまして5日が経過する...
私の狼女の嗅覚を使って彼女を探してここにたどり着く...
ここは...私が普段から愛用している居酒屋...
ここに銖理がいるのかしら?
「...」
現在時刻...8:52
お店の開店時刻は9;00
そっと店の壁に耳をつける...
「ぎゃああああ!!」
「!?」
壁の向こうから聞こえる絶叫に私は飛びのく...
この声銖理の声?
「ここに銖理が?」
「許してくださーい!!!」
...何度聞いても彼女の声が聞こえる
何か拷問でも受けているのかしら?
耳をすませると銖理の絶叫が聞こえる
「もう...鶏肉が食しませんからー!!!」
「...鶏肉?」
私は店の看板を見る
店の看板には(鶏肉を使った料理は固く禁じます)という言葉が赤文字で書かれている...
銖理はここのお店の禁止事項を守れなかったのかしら?
「...」
銖理の声が聞こえない?
しばらくするとお店の戸が開く
「はぁい!夜雀亭の開店ですよー!」
この店の主であるミスティアが戸を開ける...
彼女は私に気づいて笑みを浮かべる
「!?」
「あら?貴女は...今日もお食事?何がいいかしら?」
「えっと...新商品が出ると噂で聞いて」
「了解♪」
女将さんに店内に通される
食事に来たわけではないけど、嫌な予感がするので適当に注文を頼むことにした...
「...」
店内はいつも通りの雰囲気...
でも...うっすら銖理の匂いがするわ...
「ふんふーん」
女将さんはおすすめメニューを作っている...
でもその顔は何か黒いような気がする...
私は恐る恐る声を絞り出す
「あ...あの...銖理は来てないかしら?」
「...うん?」
女将さんは身を乗り出して私を見つめる...
光のこもっていない目...
こ...怖すぎる...
冷や汗が体中から噴き出す...
まずい...言うべきではなかった...
「別室にいるよ?現在進行形でお仕置き中だけどね」
「ふぇ?」
...言ったわ...認めたわ...普通にお仕置き中とまで言ったわ!
女将さんは出刃包丁を出してそれを抱きしめる様に頬につける。
「まぁ...今は気絶しちゃったから会っても無駄だけどね♪明日の朝くらいには開放するわ♪」
「あ...朝...」
...お仕置き終わってないみたいね
ご愁傷様銖理...
「ち...ちなみに何だけど...どのくらいお仕置きを?」
「ん~?...営業時間外だから...深夜の1時から明け方の開店前までね...それを数日間♪」
「...」
お仕置きじゃないわ...拷問よ...
このままでは銖理が死んでしまうわ!!
勇気を出して!今泉影狼!!
私は誇り高い狼女!!
女将さんくらい何とかなるわ!!
「...うん♪良い殺気ね♪でも?その姿で戦うのかしら?」
「!!」
私は自分の姿を確認する...
あら?何で耳がないの?
女将さんは黒い笑みを浮かべながら店の壁を指さす
「このお店では能力遮断の護符が貼られているわ...貴女の能力は良く分からないけど...私を倒すほどの力は得られないわね♪」
「ひっ!」
女将さんは私に近づいて羽交い絞めする...
そして私の首筋を舐める?
「ひぐっ!!」
やばい...殺される!!
でもいいわ...銖理を守って死ねるなら本望よ...
「...でもね貴女は殺さないわ...銖理を愛した同士だし...仲良くしましょうよ♪」
「へ?」
女将さんは店の看板を閉店にして奥の部屋の戸を開ける...
「今日は閉店...奥の部屋に銖理がいるわよ♪一緒に楽しみましょう♪」
「...でも私は銖理を痛めつけるのは」
女将さんは首を横に振る
「痛めつけないよ?言ったでしょ?お仕置きって」
女将さんは私の耳に口を近づけてある言葉を言う...
それを聞いて私の顔が熱くなるのが自分でもわかる...
「っ///それって!!」
「お仕置きよ♪」
お仕置きって...そういうこと?
...そうなると少し気になる。
「さぁカモン!」
「え...ちょ」
私は女将さんに手を引かれ暗い暗い奥の通路を進む...
ごめん銖理...欲に忠実な私を許して...
天狗の山...
とある一軒家のある一室...
その部屋の中央の布団の中には包帯でぐるぐる巻きにされた大神境奈の姿とその横で手ぬぐいを絞っている射命丸文の姿がそこにはあった...
境奈の妹である煌炉の爆撃をもろに浴びた彼女であっても重症は避けれなかったようだ...
「うー...うー...」
うわごとを繰り返している境奈を見かねてか、その家の主である文は満面の笑みを浮かべて手ぬぐいの水を絞る。
「痛みますか?境奈?」
「...何で満々の笑みを浮かべてるのよ?」
布団の中から境奈は文に向けて指を向けるが体に痛みが走ったのか...すぐに腕を引っ込める...
「弱っている境奈というのも中々絵になりますからね...」
「...変態が」
境奈のつれない一言に文は頬を膨らませて彼女の体を抱きしめる
「もう!そんなこと言う境奈はこうです!」
「うぎゃああああ!!痛い!痛い!!触れないでー!!」
境奈の絶叫が部屋に響き...文は済まなそうに抱きしめるのをやめる...
「あやや...大神家の血を引く境奈であっても傷の治りは遅いみたいですね」
「...アタシはデリケートなの!他の奴らと一緒にするんじゃないわ」
境奈はフンとそっぽを向き、文は手ぬぐいを彼女の額に置く...
「しかし...何で煌炉と戦いをしたんですか?今回の異変は大神は全く関係なかったみたいじゃないですか?」
「...しらん!巻き込まれただけよ」
文達が話をしていると部屋の戸が開く...
「文様ー!にとりからきキュウリもらってきましたよー!」
かご一杯を両手に持った犬走椛が部屋に入り、境奈の方を向く
「境奈様?お怪我の具合は?」
「...文が抱きしめた所為で傷が開いた...ムゴォ!!?」
刹那...境奈の口にキュウリが入り込み彼女の言葉を紡ぐ...
「新鮮なお野菜ですよ~!一杯食べて治しましょうね~!」
「むごごっごご!!」(口に詰め込むなー!!)
小休止...
何やかんやで呼吸困難を免れた境奈は文にげんこつを食らわしてキュウリを不機嫌そうな顔をして齧る...
「ぼり...ぼり...」
「うう...境奈が殴った」
「...今のは文様が悪いですよ」
「おだまり!椛!これも私の愛情表現です!」
「どこが愛情表現ですか!」
「はぁ...やめときゃよかった」
口喧嘩している文と椛を尻目に境奈は窓の外を見つめて溜息をつく...
八雲家
八雲家の一室の布団の中では大神煌炉が静かに寝息を立てている...
煌炉の狐耳がぴくぴくと動き彼女は目を開ける
side煌炉
「...ん?」
目を開けると見覚えのある天井...
ここは八雲家?
...何故布団の中?
確か...私は...
思い出そうにも記憶がごっちゃになっているな...整理しないと
「ああ...そうだった」
境奈姉さんと戦ったんだったな...
結局引き分けに終わったけど...私としては充分な働きは見せたはずだ...
「...もう少し寝よ...何か...だるい...ん?」
「起きたか!煌炉!」
布団の中に藍がいた...
頭が働いてなかった私は絶叫して部屋の隅に避難する...
「いやあああああ!!!」
「む!久しぶりだというのにそれは酷いぞ...」
藍は不服そうに落ち込む
「はぁ...はぁ...ごめん...寝起きだからびっくりした...」
「...まぁ!いいか!煌炉♪」
藍は私に抱き着く...
ふと藍の顔を見ると絆創膏が貼られている...
「藍?どうしたの?それ?」
「ん?お前のお母様から受けた傷だ...まぁ大したことないがな」
...母さん何てことを
「...何かごめん」
「謝る必要はないぞー♪さぁ!これからひさしぶりのスキンシップ...」
ジトー
視線を感じその方向を見ると襖の隙間からこちらを恨めしそうに見る紫の姿があった...
「...ゆ...紫様」
「...どした?」
「二人そろって楽しそうね...」
紫は体育座りをしながら畳の目を数えている...
その光景を見た藍は紫の方へ向かう
「ゆ...紫様!別に仲間外れにしたわけではないですよ?抜け駆けでもありませんから!!」
「...思いっきりフライングしてたじゃない...いつの間にか煌炉の布団の中に入ってたし」
藍は必死に弁明する
「これはこれです!誰だって入りたくなりますから!故に私は悪くありません!」
「...もはや開き直ってるな」
紫はユラリと立ち上がり私の方へヨロヨロと近づき両肩に手を乗せる...
「そうよね...誰でもそうなるわよね...なら!私がこれしても悪くはないわ!」
びり!!
紫は私の寝間着を剥ぐ!!!
「はぁぁぁ?何やってんのお前!?」
胸を隠そうとすると藍が尾をブンブン振りながら私の腕を掴み羽交い絞めする...
「...諦めろ♪」
「...あの...私寝起きなんです...まだ気分が優れないから寝させてください...」
私が懇願しても紫は私の下の寝間着を脱がす...
「却下するわ!ゆかりん!悪くない!悪いのは煌炉だもん!!」
「...何で私が...私が何をした?」
昏睡から覚めて...すぐにこれか...
はははは...私が何をした...
そうして私は考えるのをやめる...
太陽の畑...
幻想郷にある広大な向日葵畑の中にある一軒家...
その一室では現在進行形で折檻が行われていた...
まずベットの上に立ち不機嫌そうな顔をしている風見幽香...
そして床に縄で縛られて正座している、大神華楠・秋静葉・秋穣子の計4名...
まさに現在進行形で3名は絶対絶命の危機にさらされていた...
side穣子
「...これはどういうことかしら?」
幽香が持っている物は...私達と華楠のあられのない姿が映っている写真...
何でこんなものがあるのか私は知らない...
でもやばいことをしてしまったことは分かる!
「...」
「えっと!それはですね!そう!お酒の弾みでそうなってしまったのよ!!そう!事故よ事故!!」
必死にお姉ちゃんが弁明しているけど、嘘ついてる...私達は素面で華楠を襲ったというのに...
幽香は写真を机に置いて笑みを浮かべる
「そう...お酒の弾みね...私...嘘は嫌いよ?」
「ごめんなさい!嘘つきました!」
...あっという間にばれる嘘
更に立場が悪くなるというのにっ!
「理由は?」
「華楠が好きだったからです!!」
「...左に同じく」
幽香は私達が嘘を言っていないことがわかると顔を赤らめて目を背ける...
「...正直に言うことはいいことよ...私が怒っているのは...そう...それをちゃんと私に報告しなかったことよ」
「...すみません!報告し忘れました!」
「...」
嘘だ...絶対この写真を見て怒り狂ったに決まっている!
丸で獲物を取られた肉食動物のような形相で私達の家に強襲かけてたし...
幽香は咳払いをする
「し...しかし華楠も華楠よ...やったんなら秘密にしなくても...華楠?」
「?」
華楠の方を見ると天井を見上げてぼーっとしている...
さっきから何もしゃべってないし...何というか抜け殻のようになっている...
精気もないし...体の中のエネルギーも枯渇している気がする...
お姉ちゃんは華楠の体を頭でつつく
「華楠!幽香が聞いてるわよ!」
「...殺して?」
「ええっ!?」
華楠の第一声に幽香は驚いた顔をする
「...もう...この世に未練はない...すぐに消えてしまいたい...ぐすっ」
目に涙を溜めて華楠は幽香に訴える
幽香の方も華楠の言葉に慌てている
「ま...まちなさい!!別に悪気があったわけではないでしょ?」
「...消えたい...消えたい」
黒いオーラが華楠から噴き出しており、縄で縛られている私とお姉ちゃんは部屋の隅へと飛び出す!
「どうしちゃったの?」
「...何?絶望感漂っているじゃない」
これはやばい感じかも...
「殺して?」
「待ちなさい!早まるんじゃないわ!!」
華楠は幽香の方を見て殺意がないのが分かると縄抜けをしてテーブルにある果物ナイフを手に取る...
幽香は慌てて華楠を羽交い絞めする
「ちょ!何してるのよ!!」
「いやだ!離せ!死なせてくれー!!!」
華楠もあがく!
まずい!このままでは華楠が自殺してしまう!!
見た限り今の華楠には精気を感じない!
あの状態だったら彼女の持つ不死の力は意味をなさない!
本当に彼女が死んでしまう!!
幽香の方は救いの目をこちらへ向ける
「貴女たち手を貸しなさい!!」
「...どうやって?」
「...右に同じく」
現在私達は縄で縛られてミノムシ状態...
手を貸すことすら物理的に不可能だというのに...
「華楠みたいに縄抜けしなさいよ!」
「「無茶いうな!!!」」
「後生だから!死なせてー!!!」
華楠が暴れる!
このままでは幽香がもたない!!
「貴女たちの大好きな華楠が死ぬのよ!!それでいいの!!」
「...それは嫌」
「同じく」
私達は何とか立ち上がる...
華楠を死なせるわけにはいかないわ...
「穣子!私に続きなさい!!」
「ok!」
お姉ちゃんが先陣を切り、華楠のお腹にロケット頭突きを食らわせる!
「ぐほ!!!」
華楠は苦しそうに身をよじりベットの上に倒れる!!
ナイフは床に落ちている!!
「とどめ!!!」
私はその状態の彼女のお腹に全体重をかけた、のしかかりをする...
よし!これで制圧完了!!
小休止
幽香が私達の縄を解きとりあえず私とお姉ちゃんは自由の身となる...
華楠はベットの上で体を丸めて嗚咽を漏らしている...
「ぐすん...ぐすん...」
「...うわぁ...どうするの?」
「付き合い長いけど...この状態の華楠は見たことないわ」
「八方塞がりね...」
何とかなったけど、また華楠が自殺でもしようとしたら堪ったものではないわ...
とりあえず...枯渇しているエネルギーをどうにかしないと...
幽香やお姉ちゃんの方を見ると同じ考えだったのか頷く...
「私達の力を華楠に流し込むわよ...とりあえず立ち直るまで自殺を繰り返しても大丈夫なようにね...」
「今が秋だったら...本調子なのに」
「...ぼやいても仕方ないよ...お姉ちゃん」
私達は協力して華楠に力を流し込む
以上大神家の軽い不運でした
ではこれにて