×月○日...
地霊殿へ向かう道にて、とある者達の人影があった...
緑色の髪を靡かせている大神家の者こと大神華楠...
黄色の髪を靡かせている大神家の者こと大神境奈...
白い髪を靡かせている大神家の者こと大神銖理...
大神家の者三名が地霊殿を目指していた...
しかし、どの者も顔色が悪く...足取りが重いまま道をゆっくりと進んでいた...
side華楠
「...何で私達がまたあの危険地帯に行かねばならないのだ...」
「同感ね...偶には意見が合うじゃない~」
「...銖理も行きたくはないッス」
皆が愚痴を言いながら溜息をつく...
そう...私達は現在...足取りが重い状態でとある場所へと向かっている...
そこは、地霊殿...数日前...少しアクシデントがあった場所だ...
余り良い思い出ではないな...その時を思い出して私達も気が重い...
「...ねぇ?帰らない?」
「駄目だろ...このお稲荷はどうなる?」
境奈の言葉を私は否定する...私だってあんな思いは嫌だ...でもせっかくの仲間だし...こういうことは大切だ...親しき中にも礼儀ありというだろう?
私は銖理の方を見る...
「..重いッス!!」
銖理の方には大きな風呂敷がある...
そう...これは地霊殿へのおすそ分けだ...
同じ幻想郷の仲間である以上これ位はしないと、こちらとしても何かダメだ...
「うう...ブラシにトラウマがあるのに~!」
境奈の言葉に私も頭を抱える...
地霊殿モフモフ事件...
さとりの過剰なサービスの所為で...母さん以外の大神家の者は全員...彼女のブラッシング技術によって昇天してしまった...
私達は仮にも人間であり、妖狐でもある...妖狐の状態でのさとりのブラッシングは...耐えることなぞできるわけがない!
「はぁ...とりあえず...屋敷の奴に渡せばいいだろ?それでブラシされる危険がないんだ」
「...確かにッス」
対抗策を考えながら私達は地霊殿へ続く道を進む...
いざとなったら覚醒妖狐の姿を使ってでも切り抜けるしかないだろうな...
地底への道を進んでいくと、あっという間に地霊殿の前へとたどり着く...
只...これを渡すだけのお仕事だ...只それだけのことだが...何だ?この手の震えは?
この私が恐怖を感じているだと?
妹達の方を見ると、体を震わせている...
「ねえ?...本当に帰っちゃダメ?...何か昔...文にボコられた記憶が蘇ってくるんだけど...」
「...銖理は...おじいにスクラップにされた記憶が...」
やはりそうか...やっぱり姉妹だよな...私も幽香に初めて殺されかけた記憶が蘇ってきたところだ...
全員昔の敗北記憶が蘇ってきたみたいだ...
だが!私達は誇り高き大神家の血族!!たかがお稲荷を渡せなくてどうする!!
ぱっとやって!すぐ終わりだ!!!さっさと済まそう!!!
私は地霊殿の扉をノックする...
「...はいはいー!待ってね!!」
ノックしてすぐにドタバタと足音が聞こえてくる...
...残りは、この人物にお稲荷渡して終わりだ!!
こんな簡単な仕事を出来なくてどうする!!大神華楠!!後ろには頼もしい妹達がいるのだ...負けるはずがない!!
「はいはいー!どなたー...って!!狐のお姉さん!!」
出てきたのは、黒い帽子を被った少女こと...さとりの妹のこいしだ...
私は手早くこいしに風呂敷包みを渡す...
「おすそわけだ...これからも宜しくな」
「う...うん...ありがとう」
こいしは風呂敷を抱えて私に会釈する...
よし!!!これで完璧だ!!残りは...無事に帰還することだけだ!!!
「...じゃ!失礼する!」
私は敬礼をして、その場を去ろうとするが服を掴まれて留まる...
「ん!?」
「...せっかくだからさ?お茶でも飲んでいけば?お姉ちゃんも喜ぶよ!?」
...こいしが...私の服を掴みながら満面の笑みを浮かべる!!
この顔は...いけないことを考えている顔だ!!!
「いや...失礼する...他にもやることがな...」
「いえいえ...気にしないでー!!お姉ちゃんも喜ぶよー!!」
私が去ろうとしても、こいしは私を引っ張る!!!
「離せ!!この後用事が!!」
「ならそれはキャンセルしてー!お姉ちゃんが喜ぶから!」
くそ!!やはり逃がさない気か!!!
確実に屋敷内に引き込まれたらブラッシングが!!
だが!!私には頼りになる妹達が!!
「境奈!銖理!手を貸せ!!」
私は後ろを振り向き助けを求める!
「...?」
「36計逃げるになんたら!!」
「ぐっばい!ならー!!」
私の目に映るものは...妹達が尻尾を撒いて逃げる姿だ...
「ふざけんな!貴様ら!!私を囮にする気か!!!」
仲間なのに!家族なのに!!!!こいつら...何て酷いことをっ!!
薄情者め!!!こいつら痛い目に遭え!!!私と同じ苦しみを味わえ!!
私を掴んでいるこいしが境奈達が逃亡している姿を見て叫び出す...
「あー!!他のお姉さん逃げちゃう!!!お燐・お空捕まえて!!」
「うにゅ!」
「はいはいー!」
こいしの号令により、草むらからお燐とお空が飛び出して境奈・銖理を捕まえる...
「ぎゃああ!!離せー!!!ブラシは嫌だー!モフモフは嫌だー!!」
「うにゅ!!ダメ!!!さとり様が悲しむもん!!」
「やめて...離して...私は生きたい!!」
「大丈夫だって!死にはしないからさー!」
2人は、もう逃げられないようだ...
...死ぬときは一緒だぞ?私だって独りは悲しいからな?
「「「あー!!!!!!!」」」
抵抗も空しく私達は地霊殿へと連行される...
私達は地霊殿の中へ縄でぐるぐる巻きにされて一室へと通される...
最悪だ...只お稲荷を渡すだけだというのに...何てことを!!
「...はぁ...華楠を生贄に捧げて生還する計画が~」
境奈はとんでもないことを口にする!!!
こいつ...後で殴る!!
「後で覚えてろ...」
「ふん!その後があるか分からないけどね?」
境奈はこいしの方を見つめている...
こいしはぴょんぴょんと跳ねながら、私達に近づいてくる...
「お姉さん達!再び地霊殿へようこそ!今回も前回と同じようにおもてなしするからね!」
「しなくていいッス...」
銖理が反論するが、こいしがずいっと身を近づける...
「ん~!何か言った?」
「...いや...なんでも」
銖理はそのまま黙る...
何か言えばいいのに!!
「ん~!?何かお姉さん達ご機嫌斜めだね!?...どうしたのかな?」
こいしは私達を順に見つめるが、言えるはずがない...
万が一変なことを言ったら私達はブラッシングされる!!
「...」
「...」
「...」
私達が黙っていると、こいしは微笑みながらブラシを手に持つ!
「「「!!?」」」
ブラシを見て反射的に私達は身を震わせるが、こいしはそれを見た後ブラシをしまう...
「...やっぱり...ブラシで酷い目にあったんだね?ごめんね?」
こいしは何故か私達に頭を下げる...
そして辺りにいたお燐・お空もこいしの方へ向かう...
「こいし様!!頭を下げなくても!」
「うにゅ!!こいし様を虐めるな!!」
...何故かお空からは非難の目で見られるが...私達が何をした?
しかし...この光景を見て私の良心が痛むのも確かだ...
「いや?頭は下げなくてもいいが?せめて解放してくれ...これでは身動きが取れん」
「...分かったよ...でもせめて話は聞いてね?」
こいしがお燐に指示すると、私達に巻かれた縄が解かれる...
「これで自由の身ね!!帰るわよ華楠!」
境奈は帰ろうとするが私は止める...
「待て...せめて話は聞くべきだろ?」
「...やっぱそうなる感じ?」
「...銖理も...ッスか」
私達は大人しく、その場に立っているとこいしは私達が逃げないと判断したのか...口を開く...
「...実はお姉ちゃんを元気づけてもらいたいんだよね?」
「...さとりをか?何かあったのか?」
...正直私達は地霊殿の事件の後半の記憶が全くない...気づいたら自室の布団の中だったからな...
故にさとりがどうなったか...分からないのが現状だ...
「まさか?母さんと戦って負傷したとか...そんな感じかしら?」
境奈の言葉にこいしは首を横に振る...
「ううん...無傷だけど...何かショックがあったみたいで...」
こいしは後ろの扉を見つめる...
この部屋にさとりがいるのか...
だがこいしの言葉を信じるならば...さとりに元気が無いのは確かだろうな...
現に私達はまだブラッシングされていないし...さとりが気づいたら確実にモフモフされるだろう...
とりあえず...やれるだけやってみるのも手だな...
「一応診るが?...期待はするなよ...」
私は後ろの扉を開けて中へ入る...
「...!?」
そこにいたのは...
部屋の真ん中にある椅子に座り、真っ白になって項垂れているさとりの姿があった...
「...確かに元気ないな」
「ね!?元気ないでしょう!!」
こいしが、必死に指を向け...お燐・お空はハンカチで目頭を押さえている
「うう!さとり様ー!」
「うう...おいたわしい!!」
銖理・境奈はさとりが戦闘不能だと気づいたのか胸を撫でおろしている...
「...問題はないみたいね?しかし真っ白じゃない?」
「色を吸われたッスか?」
「おい...何でこうなった?...私達は一方的に逃げるだけだったぞ?」
「...私も良くは知らないけど...何かうわ言で...私の夢が潰えたとか...伝説の狐の尾がー!とか?ブラッシングできないー!とか言ってた...」
「...何となく察しはついた」
...つまりショックの原因は母さんの尾が存在しないことだろう?
母さんは妖狐の中では最高位の空狐...そこまで行くと尾は持ち合わせていない...当たり前だろう?
...正直どうでもいいが...そこまでショックを受けることなのか?
「確かに母さんには尾はないな...空狐だし...当然だろ?」
「...確かにない物にはブラッシングは出来ないッス!」
「だから伝説じゃないかしら?」
「...っ...げふあ!!!」
真っ白になったさとりが椅子ごと後ろへ倒れる...
「な...なんてこと!!さとり様に謝れー!」
「うにゅ!!燃やされたいの!?」
お燐・お空の双方から非難の目で見られる...
何か地雷踏んだか?
「...だがどうすることも」
「銖理も言ったように...ない物にはどうしようもないわ...」
「...まぁ...完全に不可能ではないッスけどねー」
「...ふ...不可能では...ない?教えて下さい!銖理さん!!」
刹那...さとりが起き出して銖理に詰め寄る...
この動きは私でも追えなかった...
「ひょええええ!!?命だけは勘弁ッスー!!!」
「そこは良いですから!!!不可能ではないことを教えてください!!!」
さとりは銖理を揺さぶる...
銖理は揺さぶられる度に、顔がみるみるうちに青くなり、白目を剥き始めている!!
「ぶ...ぶくくく...」
「いえー!!不可能を教えてくださいー!!」
さとりは更にガクガクと揺さぶる
「待て待て!!誰か止めろ!!!銖理が死ぬ!!」
「もうやめてー!!銖理が死んじゃう!!」
「お姉ちゃん!!白いお姉さんが死んじゃうよ!!」
「さとり様!もういいです!!」
「うにゅ!!」
こいし達はさとりを引き離す...
「...お...教えてください!!暦さんの尾をブラッシングする方法はあるんですか!?」
...まだ問い詰めるのか!?
銖理はもう何もできないというのに!!
「銖理!!」
「あ...ああ...空狐の姿もあれば...天狐の姿もある...天狐の時を狙え...ば...」
銖理はそのまま果てる...
「くっ!!撤退だ!」
「銖理ー!!!お姉ちゃんがついているから!!!」
私達は、その場から逃げ出して地霊殿を後にする!!!
ここへ来るのはこの問題が解決してからにしよう!!話はそれからだ!!!
sideこいし
「...ああ...お姉さん達が」
屋敷の外を見ると一目散で逃げるお姉さん達の姿が見える...
やっぱり怖かったのかな?お姉ちゃんめ...能力を使わなくてもトラウマを植え付けることに成功しているじゃない!!
お姉ちゃんの方を見ると笑みを浮かべている...
「...天狐の姿?...そういえば...初めて会った時の暦さんには確かに尾が!!ふふふ...私としたことが...肝心なことを忘れていましたね...」
「お...お姉ちゃん?」
お姉ちゃんは私の声に気づかず...両手を広げ笑いはじめる!
「つまり!私の夢は終わっていないということです!!暦さんの天狐の姿を狙えば!!うふふふふふ!!!」
「駄目だ...このお姉ちゃん...全く懲りてない...」
お燐・お空の方を見るが、彼女達も笑みを浮かべている
「やったー!さとり様元気になったー!」
「...ふふふ...あわよくば...神様の死体にありつけるかもね」
...お燐の邪な考えは聞かないでおこう
「...はぁ...今度...菓子折りもっていこう...本当にごめんね?大神のお姉さん方!」
私は地霊の空へと手を合わせる...
とりあえず日常はここまで!
次回異変
ではこれにて