宝船の出現と新たな冒険者
地霊殿の異変から時が過ぎ、幻想郷に春が訪れる...
それは、幻想郷の新たな一年の始まりであるが、新たな異変の始まりを告げる知らせでもあった...
前回の異変である地底にて...それは幻想郷の空へと向けて上昇していた...
大きな木造の船...それは...地底から飛び出して、今!幻想郷の空へと飛び立つ...
その異変に気付いた者達は次々とそれを追っていく...
一方とある時...
幻想郷の妖怪の山にある神社こと、守矢神社の長い石段を上がっている女性がいた...
彼女の名は大神華楠...幻想郷の外れにある神社の者であり、ここの巫女の東風谷早苗とは色々と説明し辛い深い仲であった...
華楠は、荷物を持ちながら息を切らし、必死に山頂を目指す...
「...ああ!!本殿はまだか!!幾ら何でも...長すぎだろ!!」
華楠は、やや文句を愚痴りながら上へ目指して山頂へたどり着く...
「荷物が崩れる可能性があったから...歩いてきたが...不便だ...今度からは...飛んでこよう...」
額の汗を拭い彼女は境内を目指し中へ入る...
「失礼する!早苗!人里の限定スイーツがあったから食べよう!!」
そう言って中へ入る華楠だったが、中の様子を見て体を硬直させる...
彼女の目の先には...
居間のちゃぶ台を囲って項垂れている...ここの神社の神こと、八坂神奈子と洩矢諏訪子の2名がいた...
「ああ!!心配だよ~!!!やっぱりまだ早いよ!!」
「ついに!この日が来てしまったのか!!」
普段とは違う2柱を見て華楠は、そっと彼女達に近寄る...
「あの?諏訪子様?神奈子様?どうしましたか?」
華楠の声を聞き、2柱は彼女の方へ振り向く...
「華楠!!そうだ!!彼女が居れば!!」
「よく来たー!これで窮地は脱することができるぞ!」
2柱は華楠の手を握るが、話を読めていない華楠は、不安そうな顔をするだけだ...
「あの何が起きました?私に出来ることなら...何でも...」
華楠の言葉に2柱は同時に言葉を発する...
「「早苗が!異変の解決に向かったんだ!」」
「...は?今...何と?」
華楠は冷や汗をかきながら再度尋ねるが...2柱の言葉は変わることがない...
「「早苗が!異変の解決に向かったんだ!」」
「...!...馬鹿な...かはぁ!!!」
華楠はその言葉を聞き胸を押さえて倒れる...
「「か...華楠ー!!!」」
少女...蘇生中...
「失礼しました...」
心肺蘇生に成功した華楠は、2柱の話を落ち着いて聞くことにした...もっとも...その顔は青くなっているが...
「うう!!日頃から妖怪退治がしたいとか言っていたけど!!幾ら何でも...あの子には実戦経験が無いんだ!!心配だよ!!」
「何故異変が起きるんだ!!くそ!!異変の馬鹿野郎!!!」
2柱は色々は話すが華楠は首を捻るだけ...
まだ彼女は異変が起きたことを知らないのだ...
「い...異変?何で!!そんな異常なこと...まだ私は知らない!!!」
「知らないの!華楠!!」
「外を見ろ!外を!!」
2柱は華楠を庭へ押し出す!
そして華楠は上空を遠くの空を見上げる...
「...あ」
華楠の視線の先には、遠くの空を飛ぶ巨大な船...
それは、ゆったりとした速度で幻想郷の空を泳ぐように飛んでいる...
「...まさか...あれが?」
華楠の言葉に2柱は頷く
「異変だよ...早苗はそれの解決に向かったの!」
諏訪子の言葉に華楠は頭を抱える...
「何故!!あいつには早い!!何故止めなかったんです!」
華楠の言葉に2柱は目を背ける...
「...いや...早苗の奴が...(私の初異変の開始です!!)とか(ちなみについて来ないでくださいね!!諏訪子様と神奈子様...私一人で解決します)とか...言われちゃって...」
「あいつのお披露目だから...私達も何も言えなくてな...」
「何てことを...」
華楠は頭を抱えるが諏訪子は彼女の手を握る
「動けない私達だからこそ!よく来てくれたよ!!私達の代わりに早苗を守って!!」
「...え?」
「だからこそだ!私達は早苗に来ないように釘を刺されている!だから華楠!お前が行くのだ!」
「この私がか?」
華楠は困惑の表情を浮かべるが、諏訪子は彼女の頭を撫でる
「華楠だから頼めるんだよね...あの子と友達だった華楠なら...早苗を守ってくれるとね」
「嫌なら...他のに任せるが?」
2柱の言葉に華楠は立ち上がる...
「...嫌とは言っていない!!早苗の傷つく所を見るくらいなら!私は何でもやり遂げて見せる!早苗ー!!!」
華楠は境内に飛び出して、宝船の方へと飛び立つ...
「「いってらっしゃーい!」」
残った2柱はハンカチをフリフリさせて彼女を見送り、華楠の残したお土産に目をつける...
「...華楠の話なら...人里限定とか言っていたね?」
「ああ...ちゃんと...4人前あるな...2人の分は冷蔵庫へやっておこうか...」
2柱はそのまま、神社の奥へと歩を進める...
守矢神社の巫女のために奮闘する者...大神華楠...彼女のミッションが始まりを告げる...
一方同時刻...
とある道を、大神家のメンバーの一人、大神潤香が歩を進め、手に持った風呂敷を大事そうに抱えている...
「香霖堂まで...もう少しですね」
潤香がつぶやく香霖堂とは、幻想郷で唯一と言って良い道具屋...大神家のメンバーが服の修繕などでお世話になっている店である...
「これの修繕できますかね?」
香霖堂に辿り着いた潤香は抱えた風呂敷を大切そうに撫でた後、戸を開けて中へ入る...
「お願いします!!宝塔返してください!!」
「えー...でもなぁ...」
「...あら?」
店に入った彼女は目の前の光景を見て困惑の表情を浮かべる...
潤香の目の前には、香霖堂の店主である森近霖之助に土下座をしている、少女の目が映っていたからである...
少女は灰色のショートヘアをしており、頭には丸い耳...そして尻には長い灰色の尾がありボロボロの焦げた服を身に着けている...人間ではないことを彼女は瞬時に理解した...
入り口で固まっている彼女に霖之助は気づいたのか...助けを求めるような表情を浮かべる...
「ああ!!大神の君!丁度良かったよ!この子を何とかしてくれ...」
「え...ええ...何かありましたか?」
「この子にこれを譲ってほしいと頼まれてね...」
霖之助は左手に持つ装飾の入った小型の灯篭のようなものを見せる...
潤香はそれに見覚えがあったが、頭を振って少女を見る...
「...あら?」
「...げ!?」
潤香と少女の目が合うと少女は潤香を恐れるかのように壁まで引き下がる
霖之助はその様子を見て、眉を顰める...
「おや?知り合いかい?」
「...ええ...まぁ昔に少しありましてね」
潤香は蹲る少女の方へ向かう
「お久しぶりですね...ナズーリン...あの時以来かもしれませんね」
ナズーリンと呼ばれた少女は、潤香を見て溜息をつく...
「はぁ...何で君と遭遇するんだ...ことは一刻を争うというのに...」
ナズーリンの言葉に潤香は首を傾げる...
「...何かありましたか?」
「ああ...彼女の封印を解くために私達が動くことになった」
「封印?まさか...彼女というのは?」
「...君を拳一つで降した彼女に決まっているだろう?」
ナズーリンの言葉に潤香は驚きの表情を浮かべるが、少しずつ笑みを浮かべ始める
「そうですか...それは行幸ですね」
「確かに行幸だ...この前の異変で他に封印されていた奴らも解放されたし残りは彼女だけだ...まさかとは思うが...協力してくれるのか!?」
ナズーリンは目を輝かせており、潤香は頷く
「...ええ...私に出来ることなら何なりと...で?何に困っているのです?霖之助さんとトラブルみたいですが?」
「ああ...実は...私のご主人が宝塔を紛失してな...あの店主に拾われてしまってね...返す返さないのトラブルが起きたというわけだ」
「君の物である証拠はないだろう?うちの商品だから仕方ないだろう」
「...成程ね...だから揉めていたというわけですか」
潤香は宝塔の置かれていた場所にある値札を見つめる...
彼女の目には0が多い値札が目に映っており、潤香は霖之助の方を見つめる...
「霖之助さん...いくら何でも高い気がしますが?」
「いやいや!ぼったくりではないよ!!これの価値に値をつけたんだ...」
潤香は内心溜息をつく...それは値段が高いということではなく...霖之助の目利きの正確さに溜息をついている...
何故こういう時に限って良い仕事をしてしまうのだろうと...そう彼女は思っていた...
霖之助が見つけたこの宝塔は、価値のある法具...こんな値段がついてもおかしくはない...
「とりあえず!僕はこの値段でしか売らないよ!幾ら大神家の君でもこればかりはダメだね」
「ふぅ...とりあえず私が立て替えますので...」
潤香は懐から袋を出してそれをカウンターに置く...
「え?」
「多分足りるとは思いますが...念のため数えて下さい」
「あ...ああ...」
霖之助は袋から金貨を取り出してそれを数えていく...
それを見たナズーリンは潤香に近づいて耳打ちをする...
「お...おい!幾らなんでも大金じゃないか!」
「別に構いません...私も過去にあの方にお世話になりましたし...こうした方が話がスムーズに進みますから」
彼女達が会話していると霖之助が勘定を終わらせる
「...確かに受け取ったよ...何か悪いね」
「いえ...ビジネスですからね...仕方ありません」
潤香は霖之助から宝塔を受け取り、それをそのままナズーリンに渡す
「...これでお願いしますね」
「ああ!!恩に着る!!これで話が進むというものだ」
「ええ...あの方の封印ですか...ということは異変になりますね」
潤香の言葉にナズーリンは目を背ける...
「すでに異変として...紅白と白黒にやられたばかりだ...うう!不甲斐ないよ」
ナズーリンは焦げた服を叩くような仕草をし、潤香は彼女の話を聞いて爪を噛む...
「博麗の巫女...博麗霊夢と...普通の魔法使い...霧雨魔理沙ですか...」
「知っているのか?」
「...ええ...知りあいですね...良ければナズーリン...私もこの度の異変の手伝いをしましょうか?」
「いいのかい!!でも...知りあいだろう?」
ナズーリンは心配そうな顔をするが、潤香は左胸に手を当て目を背ける...
「...確かにそうですが...あの方も大切なのは事実ですからね...ですから心配は無用...精一杯サポートはします...」
「助かる...では向かうよ...時間が押しているんだ」
「ええ...その前に良いですか?用事を片づけなくては」
潤香は持っていた風呂敷を霖之助に渡す...
「霖之助さん...これの修繕をお願いしますね?」
「...ああ!分かったよ...流石にも大金もらったから...これはサービスで...」
潤香は口に人差し指を当て、ジェスチャーをし彼に注意を促す...
「サービスは要りません...ビジネスはビジネス...色々と未払いがあって困っているみたいじゃないですか」
「ああ...悪いね...確かにそうだ...」
霖之助はバツが悪い顔をするが...潤香はすぐに元通りの澄ました表情へ戻る...
「その代わりお願いしますよ...私の大切なものですからね」
「ああ!任せてくれ!!」
霖之助の言葉を聞き潤香は、カウンターを離れ外で待つナズーリンの方へ向かう...
「では参りましょうか...」
「頼むよ...大神家の退治屋...」
「それは過去の話です」
彼女達は香霖堂を後にし、異変へと向かう...こうして大神潤香のミッションが始まりを告げる...
とりあえず完成です
楽しんでいただけたら幸いです...
ではこれにて