一輪が撃破された同時刻...宝船内の通路には茫然とした表情を浮かべているナズーリンの姿があった...
その表情は蒼白であり、彼女もまた...今起きていることについて理解が出来ず脳が追い付いていなかった...
それもそのはず...彼女の眼前には、お札が額に突き刺さった状態で気絶している潤香の姿があるからだ...
sideナズーリン
「...」
「...何が起きた?」
何故か私の後方にいた潤香が倒れているのだもの!!
さっきまで何ともなかったのに!
つか!何で伸びているんだ!こいつは!!
「...はっ」
良く観察すると潤香の額にはお札が突き刺さっている...
まさか...これが原因か?
「これって...あの紅白の巫女の札!...まさか外から攻撃してきたのか!?」
私達がいるのは船の奥!入り口からここまで来たの言うのか?こんな離れ業...できるわけが...
「って!潤香起きろ!!!お前がノックダウンしたら!戦力がー!!!」
私は必死に潤香を揺さぶる!
彼女がこのままでは...外にいる一輪がサポートが受けられない!
それどころか!私を含めた他の2人のだって...あの巫女を止められるかどうかもわからない!!!
これ以上戦力を削ぐわけには!!
「起きろー!!!戻ってこいー!!」
揺さ振りを激しくすると、潤香についていた札が取れ...彼女は目を開け始める!
その表情は虚ろで...目に光が宿っていない!!
「...う?...うう」
「大丈夫か!潤香!これ何本に見えるかい?」
私は2本指を立てて彼女に見せるが、彼女は虚ろな目でそれをボーっと眺めている...
「...6ですか?」
「6!?」
正解は2本なのに!彼女にはどういう光景が映ってるんだ!?
潤香の奴やっぱり駄目だ!目が座っている!!お札が直撃した所為なのか...
これでは戦力にならないじゃないか!
「うう!!」
「...どうしたのよ?ナズーリン?ちゃんと仕事は進んでいるかしら?」
...船の奥を見ると、そこには白い船員服に身を包んだ少女が柄杓を振り回しながら近づいてくる
...彼女の名は村紗水蜜...私の仲間の一人だ...
亡霊であるが...あの方の教えを受けた大事な仲間だ...
彼女は私を見た後、後ろにいる潤香を見つめる
「あら?新入り?」
「...新入りってワケにはないが...協力者だ...ちょいと怪我しているんだ...手を貸してくれ」
「あいよ~大丈夫?」
村紗は潤香に近づき手を差し伸べるが、手が急に止まる...
「...え?...この人は!?」
「...うう...海兵さんが3人?」
村紗は潤香から距離を取って頭を抱える...
「う...うう!!うううー!!」
「どうしたんだよ...船長?」
私の言葉を聞かずに村紗はその場にへたり込む...
「...い...いやだ...嫌だー!!!寒いの嫌ー!!凍りつくのイヤー!!!聖のお尻ぺんぺん嫌だー!!」
「どうした船長!?」
「私はちゃんと反省したんだ!!悪くない!!私は悪くないんだー!!」
「落ち着け!」
暴れる村紗を抑えるが、彼女は私の制止を振り切って窓を開ける
「サラバダー!!」
「はぁ!?」
何故か彼女はそのまま飛び降りる!!!
一体何があったんだ!!
「船長ー!!」
手を伸ばすが...彼女は真下の森へと転落する!!!
くそ!!!早くも味方が1人になってしまった!!!
「ああ!もう!!」
「誰かいたんですか?...うう...視界がぼやけます...」
「君は回復に専念してくれ!!私はやることがあるんだ!!」
「...後数分下さい...それまでには...」
私はそのまま船の奥へ進む!
村紗がリタイアしたとなったら...この船は誰が操縦するんだ!?
彼女曰く、自動操縦だといっていたが...万が一ということもある!!
操舵室に辿り着き私は舵を確認する...
「...ええと...目標は魔界...船のモードは...自動か...ホッ...」
胸を撫でおろして、その場へ座る...
とりあえず...村紗の奴がいなくても問題はないみたいだ...
目的地まで到着すれば良いんだ!!
びゅ!ドガシャーン!!
「...はぇ?」
破砕音がして...舵の方を見ると、先ほどまで舵だったものは、只の木製のゴミと化していた...
どうしてこんなことに!!何で次から次へと...アクシデントがっ!
「...な...何でこんな!!ひ...酷いよ...私が何をしたんだー!!」
「元通りです...って?どうしました!?」
回復した潤香も操舵室につき、私に廊下の方を指し示す...
「大丈夫ですか?先ほど入り口の方から光弾のようなものがこちらへ....」
「知っている!!見ろこれを!!」
舵だったものを指さすと潤香は目を凝らす...
「...何です?この木材は?」
「舵だよ舵!!これじゃ船をコントロールすることが!!」
「だ...誰か船の責任者を早く!」
「さっき飛び降りたよ!!私達だけで何とかするしかないんだ!!」
「...私達だけで?」
私達は青い顔で舵だったものを見る...
何とかするといっても...舵がこれではどうすることもできない...
ビー!ビー!ビー!
「!?」
「な?」
途方にくれていると、船内が赤い警告灯がつき、そこら中からアラートが鳴り始める!
(警告!自動操縦OFF!コントロール不能!!コントロール不能!!指示マニュアルに沿って操作を行ってください)
「自動操縦OFF...コントロール不能ということは?」
「...運転しないと...墜落ですね!」
...
...墜落?
「うわああああ!!!探せー!!マニュアル探せー!」
「どれですか!マニュアルは!?」
私達はそこらへんの物をひっくり返して指示マニュアルを探す!!
自動操縦が解除されただと!?舵が破壊された所為か!!?...このままでは船が墜落する!!
「いいからそれらしい物を探せ!探せー!!そして村紗ー!操舵室位掃除しろー!!」
...もうヤダ...何でこうも前途多難なんだ...
この異変...成功しないんじゃないか?
一方その数分前...
操舵室のハプニングの数分前...宝船通路にて、こちらでもハプニングが起きていた...
通路には、東風谷早苗と大神華楠の2名がおり、華楠は青い顔をして正座をし早苗は鬼の形相で華楠を見つめている。
side早苗
「...これはどういうことですか?華楠さん!!」
「ひっ...これには深い訳が!!」
私の目の前には、怯えた表情をした華楠さんがいる...
数分前に発見しました...どうやら隠れて私についてきていたみたいです...
私の初異変デビューで誰の力も借りずに解決しようと思ったのに!
「神奈子様・諏訪子様の差し金ですか?あの2柱には手助けはいらないと言っておいたのに!」
「うう...確かにあの方達に言われてついてきた...私も心配で...勝手について来たことは謝る...」
沈んでいる華楠さんを見て内心溜息をつく...彼女は、あの方々に言われて心配でついて来たのでしょうが...少しは私の力を信頼して欲しいです!幻想郷に来て早数年!少しは力をつけたつもりです!!
「私の力が弱いから...ついて来たんですか?」
「...弱いというわけではない...だが...万が一ということもあるし...」
華楠さんは...目を泳がしている...
この表情はっ!私の事を信頼していないんですね!!
「私だって修行して強くなったんです!!」
「それは認めるが...」
「なら!認めてください!!」
ふと...前方を見るとカラフルなUFOらしき物体がフラフラ飛んでいるのを確認する...
的には丁度良い!!
「見ててください!」
私は光弾を発射し、UFOを打ち抜く!!!
UFOは跡形もなく消滅し、光弾は先の通路をそのまま直進していく...
「どうです!?私の力分かりましたか!?」
後ろを向くと、華楠さんは微妙な表情をしている...
「...確かに君の力は認めるよ...早苗は強くなったそれは本当だ...」
「...じゃあ何です!?その顔は!」
華楠さんは寂し気な顔をして口を開く...
「戦いは強さだけでは勝敗は決まらない...力だけでは本当の勝利を掴むことはできない...」
「...?」
「...早苗の力は認める...だが持った力に慢心だけはしないでくれ...勝負というのは...力だけではない...何気ないことが勝負の行方を変えることだってあるんだ...」
「...う」
...力だけではない?...私は...私の奇跡を信じているだけです!!華楠さんと力を合わせて戦えることを信じて!
「...それくらい分かっています...私だって!貴女と共に力を合わせて戦えるようにと!」
「...努力は認める...実力も認める...だがな?」
華楠さんは言葉を詰まらせて目を閉じる...
「...早苗が傷つく姿だけは...私は絶対に見たくない...これだけは分かってくれ」
「...」
華楠さんの表情...無理に笑みを浮かべている気がする...
...これでは...私が...
「...む...むー!」
ぼふ...
私は彼女へ近づき胸に顔を埋める...
「さ...さなえ?」
華楠さんの困惑した様な声が聞こえますが無視です!!
「...これは勝手について来た罰です!」
「...分かっているが...場所を考えろ?仮にも敵の本陣だぞ?」
「...つれないです」
私は華楠さんから離れてお祓い棒を向ける
「なら!帰ったら私と寝てください!拒否権はないです!私のデビュー戦を勝手に手助けしたんですから!!」
「なっ!?...わ...私は手助けはしていない!只見守っていただけで」
ビー!ビー!ビー!
口論していると船内が赤い警告灯がつき、そこら中からアラートが鳴り始める!?
「...セキュリティーが発動しましたかね?」
「...いや...セキュリティーというよりは...警告音のような気がするが?」
がたたたたた...
...船内が揺れ始めている?まさかと思いますが?
「...まさか墜落するということはありませんよね?」
「...いや...あってもおかしくはないな...外の世界の飛行機だって100%安全ではないしな...」
...
...墜落ですか
「うわあああ!!どうしましょう!?」
このままでは、上空から幻想郷の地へと真っ逆さまです!!
まだ私は花の乙女!この若さで死にたくはありません!!
「どどど...どうすれば!」
「...落ち着け早苗!君だけは私が助けてみせる」
華楠さんは九尾の姿になり、私を抱きしめる!?
「華楠さん?」
「衝撃だけは何とかなるな...」
華楠さんは尾で私達を包み込んで球体状態になる...
「狭いのは許してくれ...だがこれで安全なはずだ」
「...確かに安心できますね♪」
私は華楠さんに抱き着いて温もりを感じることにした...
これは少しの間の休憩です!
...華楠さんの気持ちは分かりました...ですけれど...私の事も信じてくださいね?
幻想郷の空...
操縦不能になった宝船は、フラフラと下降しながら空に出来た黒い空間へと進んでいく...
宝船は、その空間へ入った瞬間に跡形もなく消え、黒い空間も消滅する...
この異変もラストスパート...この先の運命を決めるのは神でも分からない...
戦わずして4ボスクリア...
ではこれにて