東方五行大神伝   作:ベネト

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次は魔界ー魔界ー


魔界と紛失物

幻想郷の空を飛んでいた宝船は、コントロールを崩して他の次元へと転送される...

 

次に船がやってくる場所は...夕暮れの空が印象的な空間...

 

アクシデント続きな、この異変ではあったが幸運なことにも着々と準備は進んでいた...

 

船はその空間の地面へと不時着し、中から意気消沈したナズーリンと潤香が這い出てくる...

 

 

 

 

sideナズーリン

 

「はぁ...はぁ...目的地に到着だ...」

 

墜落した船から這い出て、私は近くの岩に腰掛ける...

 

紆余曲折あったが...何とか計画通りだ...残りはご主人に宝塔を渡して一件落着だ...

 

「...空の旅はもうしません」

 

潤香の方も疲れた様子で岩に腰掛ける...疲れ切っているみたいだ...もう少しなんだから頑張ってもらいたいよ...

 

彼女は辺りを見回している...

 

 

「...ここは?幻想郷ではなさそうですね?」

 

「...魔界というところだね...あの方が封印されている空間と言えばいいかな?」

 

「じゃあ...残りはその宝塔を使えば...む...」

 

「...?どうした?」

 

潤香は急に言葉を切り、船の方を見つめている...

 

彼女の視線の先には、船から転がってくる...大きな緑色のボール?

 

 

「何かの部品か?でも何だか毛玉にも見えるけど...」

 

「ええ...まぁ私には見覚えが...」

 

潤香の方は、気まずそうな顔をしている...

 

何か聞こうとすると、そのボールは、もぞもぞと動き出し開き始める...

 

「ふはぁ!!」

 

「怪我はないか?」

 

中からは緑色の髪をした者達2名が出てくる...

 

1人は格好からして巫女だと分かるが...もう一人は!?

 

 

 

 

 

「...あ...あれ?」

 

もう一人は...色違いの潤香?

 

...着ている物は全く違うが...顔は彼女と瓜二つだ!!

 

それに、緑色の9本の尾だと?さっきのボールかと思っていたのは彼女の尻尾だったのか!?

 

「なぁ潤香...あの方は?」

 

「...私の姉の1人です」

 

...把握した...なら似ているのも頷ける...狐の格好をしているのも頷けるわ...

 

彼女達を見ていると、向こうも私達の存在に気づく...

 

 

 

 

 

「あら?潤香さん!」

 

「潤香!?何でお前がここに?」

 

2名は驚きの表情を見せ、潤香の方は気まずそうに眉を顰める...

 

「少々...色々とありましてね...この異変に協力している次第です...」

 

「潤香さんが!?どうしてです?」

 

巫女の方は困惑の表情を見せ、少しだが戦闘体勢になっている...

 

 

「...色々とあるんですよ...長い時を生きているとね...後...警戒しなくても大丈夫です、直接は手を出していないのでね...にしても早苗は分かりますが...何で華楠お姉様までここに?」

 

早苗と呼ばれた巫女は、華楠と呼ばれた潤香の姉の方を向く...

 

姉の方は気まずそうに指を弄っている...

 

「諏訪子様達に早苗の様子を見るように頼まれたのと...私自身も心配でついてきた...という感じで」

 

「なるほど...理由は分かりましたよ」

 

潤香は目を閉じて2人に向き合い両腕を広げる...

 

「...先に言っておきますが...今回の異変は危険はありません...そのことだけ分かってもらいたいのです...」

 

「危険がない?でも私達はいつの間にか、こんな変なところに来てしまいましたが?」

 

早苗は大げさに辺りを指さしている...

 

「この空間は魔界というところらしいです...今回の異変は、この魔界に封印された、とある方を救出するために起こされた異変です...只それだけの事なのですよ...」

 

「うう...そうなのですか?...私の初デビューが...妖怪退治したかった...」

 

...早苗は意気消沈でもしたのか、項垂れている...

 

しかし?最後の方、物騒な言葉が聞こえたような?

 

潤香は華楠の方を見つめる

 

 

「お姉様も分かって頂けると助かります...」

 

「...理由は分かったが...その封印とやらは、どうする?幾ら大神でも、それは専門外だぞ?」

 

「それは心配いらないさ...こっちには宝塔に飛倉の欠片がある!あとはご主人に渡せばOKだ!」

 

「ほう?で?潤香?この子は味方でいいんだよな?」

 

華楠は私をジッと見つめている...

 

 

「うう...」

 

何故か冷や汗が出てくる...そういえばこの人も潤香と同じく狐だったな...

 

つまり私の天敵ではないか!!

 

「うぐぐ!!」

 

狐はネズミを食べる!!お稲荷さんが好きだという逸話があるが、それは稲荷神に奉納する時ネズミの死体を捧げることが宜しくないという理由で代替品になったに過ぎない!!

 

「おい?何で怯えているんだ?」

 

華楠は困惑したようで潤香の方を向く...

 

「...ネズミは狐に食べられますからね...我々と相性が悪いのですよ」

 

「...成程な」

 

華楠は困ったように手を口に当て、チラと早苗の方を見た後、再び私の方を向く...

 

 

「ネズミを食そうなぞ、したことはないから安心しろ...」

 

「うう...嘘ではないよな?」

 

私の言葉に華楠は不服そうな顔をして腕を組む...

 

「少々ネズミには嫌な思い出があるんだよ...」

 

...嘘偽りはなさそうだが...何か嫌な感じがするな...

 

 

「...とりあえず話は纏まったはずです...早く向かわないと、霊夢と魔理沙が私達よりも先に動いてしまいますよ?」

 

潤香が話を切り出し、華楠は彼女の方を向き、早苗は悔しそうな顔をする...

 

「霊夢達がいるのか?」

 

「うう!!先を越されました!」

 

「ええ...先ほど狙撃されましたし...ここで話しているのも...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どかーん!!

 

 

「あああああああ!!!ナズー!!ヘルプミー!!!」

 

突如聞こえた爆発音に、聞きなれている、とある人物の声が魔界の空に鳴り響く...

 

私達はその方向を見つめる...

 

 

「この声ご主人?」

 

「これは派手にやっているな...」

 

「向かいましょう!!」

 

私達は、爆発音が響く方向へと足を進める!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、私達が辿り着いたその場所には...

 

 

 

「待ってください~!!準備が整っていないんですー!」

 

...博麗の巫女と白黒の魔法使いに土下座をしている...私のご主人こと...寅丸星...

 

さっきの爆発があったとはいえ、まだ無傷だ...

 

 

「ほら...次のボス出しなさいよ」

 

「待ってください!!まだ宝塔がないと封印が解けないんです!!」

 

ご主人は慌てたような顔をし、白黒は何か哀れな者を見ているような目をご主人に向けている...

 

「はぁ...何か弱い物虐めしている気がするな...」

 

「うう...宝塔さえあれば...すごく強くなるのに!!」

 

...くそ...話し込んでいた所為で宝塔と欠片が遅れてしまった...だがまだ間に合う!!

 

私はご主人の下へと走り出す!

 

 

 

 

 

 

「ごしゅじーん!!」

 

私の声にご主人がこちらを向く!

 

「な...ナズーリン!!来てくれたのですね!」

 

「宝塔を受け取れー!それー!!」

 

ご主人に向けて宝塔を投げる!

 

それは綺麗な弧を描いて、ご主人の手に収まる...

 

「よし!!」

 

残りは、ご主人が封印を解けば万事解決!!

 

ご主人は立ち上がり、彼女達と対峙する...

 

 

 

 

 

「さて...お待たせしました...この寅丸星が、この宝塔の裁きの光を持って、貴女たちのお相手をしましょう!!」

 

「!?」

 

何故かご主人は、スペルカードを手に取る!

 

な...何で戦いに持ち込むんだよ!!何で封印解除しないんだよ!!

 

私の後ろに来た潤香達も苦笑いしている...

 

「物事にはトラブルがある...そう思いたいです...」

 

「これも作戦の1つだろ?」

 

「でも...これは~...」

 

「あのバカー!!要らんところで調子に乗ってー!!」

 

博麗の巫女たちは、調子に乗っているご主人を見て困惑している...

 

「何?急にやる気になったけど?」

 

「さっきとは打って変わってだな?」

 

「このまま聖を滅しそうな者を通せませんからね...さぁ!!正義の光に撃たれて落ちろ!」

 

ご主人が宝塔に霊力を込め、光が発射される...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はずだった...

 

 

 

 

「へぇ...何かの魔道具か?」

 

「...あれ?」

 

ご主人の手からは、宝塔が無くなっており、代わりに白黒の手に収まっている!!

 

開始早々にスラれやがったー!!秒速で宝塔を奪われるだとー!!

 

「す...すごいです魔理沙さん!あっという間に盗むなんて!」

 

「見えなかったな...本当に魔法使いなのか?」

 

私の後ろでは、その腕前に感想を述べている早苗と華楠の姿がー!!

 

私はぶつけ様のない怒りを抑えて、彼女達の方を見る!

 

「ぐぐ!!皆で取り返す!!それしか方法は!!」

 

「ああ!でも...」

 

早苗が前方を指さす...

 

彼女の指す方向には、潤香が博麗の巫女の方へ向かっている姿だった...

 

巫女達の方も彼女の存在に気づく...

 

 

 

 

「潤香...アンタもこの異変に参加していたのね...」

 

「ええ...否定はしませんよ」

 

潤香は澄ましたような顔をしている...

 

「意外だな...大神の中では、一番大人しそうなお前が参加するなんて」

 

「ヒトは見かけによらない...そういう言葉があります」

 

 

「...アンタが今回の異変に参加した理由って...ここに封印されている奴が知り合いだからでしょう?」

 

巫女の言葉に潤香は目を開く...

 

「...おや?どこからそれを?」

 

「...一輪って奴よ...聞いた話だと...彼女が言っていた姐さんって人に命を助けられたんでしょ?」

 

「...ええ...その通りですね...確かに私はあの方に命を助けられました...しかし...ヒトの過去を口に出すことは、あまり褒められたことではないですね...」

 

潤香は白黒の方を見る...

 

 

「魔理沙...それを星に返しなさい...これでは封印がいつまで経っても解けません」

 

「ええ?でもよ~」

 

魔理沙と呼ばれた白黒は巫女の方を心配そうに見つめる...

 

「...魔理沙返してあげて...でも潤香!こいつに襲わないように言ってよ!」

 

「ええ...ちゃんと伝えます」

 

潤香は笑みを浮かべて魔理沙から宝塔を受け取り、ご主人へ宝塔と欠片を手渡す...

 

 

「潤香~!ありがとうございます!」

 

「星...戦闘は絶対に禁止ですよ...封印の解除をお願いします」

 

「わ...分かっていますよ...」

 

 

 

ご主人は宝塔を欠片を持って、それを虚空へ向けると宝塔の光が空を照らし、封印の解除が始まる!

 

色々とあったが...長年の苦労も、やっと終わるというものだ...

 

 




何とかここまで...

次終わったらギャグ多めな日常編でもやりますか

ではこれにて

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