大霊廟を後にした大神潤香は、母親である大神暦との待ち合わせ場所である命蓮寺へと急ぐ...
本日は命蓮寺への挨拶へ向かう日だが、彼女の顔は晴れないまま...
色々と抱えている物の疲れもあるが、それとは違う、もう1つのことが彼女にはあったのだ...
side潤香
「...はぁ」
とりあえず時間通り命蓮寺へ到着ですね...まだお母様は来ていません...あの方が時間に遅れるのは珍しいものですね...
命蓮寺に来た私は、壁に腰掛けてお母様が来るのを待つ...そして心の準備もしなくてはなりません...
「はぁ...会い辛いです」
私の心のモヤモヤの原因は白蓮様...勿論彼女が悪いのではありません...彼女と何を話せばいいのかが分からないんです...
白蓮様とは、あの時以降会っていません...あの時の私は荒んでいましたし、今更どういう顔をして会えばいいのでしょうか?
「これも試練なのですかね?」
「ごめーん!遅れたわー!」
間延びした声が響き、その方向を向くと、そこには私の母親である大神暦が現れる...
「いえ...私も今来たところですので」
「ああ...それなら良かったよ...」
お母様は着物を軽く叩いて、片手の風呂敷をぶらぶらさせる...
「...それの風呂敷は?」
「ん~?只のお祝いだよ、やっと元通りになったんだもん...私からの祝福よ」
お祝いの品ですか...それは白蓮様達も喜ぶでしょうね...
しかし...
「お酒とかそういう類ではありませんよね?」
寺では、お酒の類・肉類などはご法度です...贈り物がそれだったら第一印象が最悪になりかねません...
お母様は頬を膨らませる...
「嫌だなー!私だって色々と気を使ったんだよ?そんなわけないじゃない!」
「ちなみに中身は?」
「甘味処の饅頭だよ...ちゃんと!アルコールが入っていないのか確認済みだよ!」
良し...とりあえず贈り物としては大丈夫なようですね...
万が一にも饅頭の中身がアルコールでしたー...とだったら目も当てられませんね...
「ありがとうございます...これなら完璧です」
「うん!じゃあ!早く入ろうよ!待たせるのもあれだしさ...」
私達は準備を整えて、命蓮寺の中へと入る...
命蓮寺の境内には、1人の女性が立っていた...
茶色の紫色の混じった長い髪をし、白と黒のドレスを身に纏った方...
聖白蓮が私達を見て満面の笑みを浮かべている...
「お待ちしていました!大神家の方々!」
「うん!この度はお疲れさまだね!」
お母様が気さくに手を振ると、白蓮様は私の方を見つめる...
「そして潤香...お久しぶりです...お体は大丈夫ですか?」
白蓮様は心配そうな顔をしている...
...いきなり体の心配ですか、
昔と変わらず、優しい方ですね...
「...至って健康的ですね...白蓮様もお体は大丈夫ですか...っ?」
私が言い終わる前に、白蓮様は私を抱きしめる!
「今回の事はありがとう...貴女も協力してくれたんでしょう?」
「礼を言うほどでは...サポートだけですよ...大したことは何もしてません」
「協力してくれたことには変わりはありませんっ!!貴女の事がずっと心配でした...」
「白蓮様...」
本当に優しい方です...私のような穢れた獣にも、慈愛を向けてくれるとは...この人に出会ってなければ...私はどうなっていたでしょうか?
お母様の方を見ると、笑みを浮かべて私達を見つめている...
「うふふ...潤香良かったじゃない!貴女を思っている人はいるものよ!」
「確かにそうですね...」
お母様は更に近づき耳打ちをする...
「顔真っ赤よ...珍しい娘の顔を見れて母親としては満足よ」
「うう!」
表情には出さないように努力はしていたのですが...お母様みたいに道化にはなり切れませんね...
私達の言葉に気づかなかったのか、白蓮様は私を離す...
「...大神の方々...本日はありがとうございます...そして助けていただいた身分で申し訳ございませんが、私のお願いを聞いていただけませんか?」
「お願い?」
「ええ...とある子に会ってもらいたいのです」
白蓮様が後ろへ手招きすると、寺の中から誰かが白蓮様の前に現れる...
黒い髪に黒い服を身に着けた少女...背には触手のような赤と青の翼が6本ついている...
「えっと...」
彼女は私達を怯えるような顔で見て、言葉を濁す...
しかし...この子何処かであったような...
「...あらあら...この前の」
お母様は、笑みを浮かべている...何か知っているのでしょうか?
「お母様...この子は?」
「...覚えていないのかしら?貴女が遥か昔に鵺の討伐の時に相手した子だよ」
「あ!」
...そうだ!!この子は...陰陽師時代の私が退治するはずだった妖怪!!
結局...白蓮様と戦うことになって...終いには、この子に刺されて重傷を...
「そういえばそうでした...」
「潤香も忘れていたみたいですね...」
白蓮様はぬえの頭を撫でている...しかし...寺とこの子...何の関係があるのでしょう?
「今度から命蓮寺に入った新しい子です!ほら...ぬえ...」
白蓮様はぬえを前へと出す...ぬえの方は私達を見つめて頭を下げる...
「...遥か昔...迷惑かけてごめんなさい」
「!?」
「え?」
急な謝罪で私達は怯む...昔の事で謝罪されても、どうすればいいか?
「え...えっと...私の方こそ...殺しそうになって申し訳ありません」
とりあえず...私も謝罪しましょう...
白蓮様の方は満面の笑みを浮かべている...
「過去の柵がなくなって良かったです!!さぁさぁ!!中へどうぞ!」
白蓮様は私達の背を押して、命蓮寺内を案内する...
命蓮寺内...
中はお寺らしい造りになっている...昔の時と変わりはないみたいですね...
「懐かしいでしょう?潤香」
「ええ...少しだけでしたが覚えていますよ」
...この雰囲気は好きです...静かですし心が安らぎます...
「ふふ...これからは時間がある時に来てください、いつでも歓迎しますよ」
白蓮様は笑みを浮かべて、戸を開ける...
「イッチリーン!イッキ!イッキ!!」
「ごきゅごきゅごきゅ!!」
「今日は無礼講ですよね!!久しぶりにお肉食べていいいんですよね!!がぶぶ!!」
「気持ちは分かるが...多分ダメだと思うが...ごきゅ...」
戸を開けて私達の目の前には、宴会を開いている命蓮寺の他のメンバーである、村紗水蜜・雲居一輪・寅丸星・ナズーリンの計4名...
お酒を飲む・肉を食す...開幕早々破戒行為を見ることになるとは...
「イッキ!!...あ」
「ご...ごほ!!げほげほ!!!」
「がぶ...んー!!!!」
「...これは違うんだ!!」
4名は私達の存在に気づき、体を硬直させる...
それもそのはず...白蓮様の額に青筋が立っているのですから...
「これってやばい感じ?」
「ええ...白蓮様...怒っています」
「え?アレ駄目なの?」
お母様、私、ぬえの3名は白蓮様から距離を取る...
濃厚な怒気を感じる...
「まさか...開始早々破戒行為をするとは...貴女達は神仏に仕えるという気持ちが皆無である...」
「ち...違う!!あ...あれは一輪が勝手に!!聖の復活のパーティーしようっていうから!!」
「はぁ!?」
村紗は一輪に罪を擦り付けようと姑息な手にでている...
「お寺の仲間を贄にしようという気ですか?お尻ペンぺンされたいのですか?」
「いやだー!!!」
村紗は発狂する...お尻ペンペンがそんなに嫌なのですかね?
「ね...姐さん!!こ...このお酒は度数が低いから!!いつもよりはマシだから!!」
「度数は関係ありません!!」
「スミマセン!!」
一輪は土下座をする...余計なことを言わなければいいのに...
「ひ...聖!!これには深い訳が!」
「...どのような訳ですか?」
「...いえ何も」
星の方は、潔いですね...嘘を言うとまた嘘をつかなければいけませんからね...
「...」そろり...そろり...
ナズーリンの方は、この場から逃亡しようとしている...
「ナズーリン...どこへ行くのです?」
「いえ...厠に」
「後になさい...」
逃亡失敗...これは後が怖いです
「...大神家の皆さま...申し訳ありませんが今日の所は御引取をお願いできますか?弟子の教育をしなければなりませんので...」
白蓮様は笑みを浮かべて私達を見るが、この笑みが恐怖を増大させる...
「う...うん!!じゃあ!お土産置いておくね!!じゃ!!」
「ではまた今度!!」
私達は命蓮寺をダッシュで後にする...
「怖い!怖い!!あの人が住職か...」
「ええ...ですが...元気そうで何よりですよ...」
寺から悲鳴のような声が聞こえた気がしますが気にしません...私達が悪い訳ではありませんから...
命蓮寺での少しだけのお話でした
ではこれにて