命蓮寺近辺にて、封獣ぬえと幽谷響子を撤退させた大神潤香は、一度大霊廟へと帰還する。
戦闘により、それなりにダメージは受けた彼女ではあるが、姉からくすねた薬で傷を癒し、まだ戦闘は続行できる余力が残っているみたいだが、異変を解決しに来た博麗の巫女一行が近づいている以上...あまり時間は残されてはいない。
side潤香
大霊廟に戻った私は、青娥と屠自古が待つ場所へ急ぐ...
焦る必要はないとは思いますが...私も全力で迎え撃たないといけないようです...私の勘ですが...今回相手する方は多数みたいですし...悠長に構えてられないわね
「あら?戻って来たのかしら?」
「潤香来たか!って!お前どうした!!」
大霊廟へ近づくと青娥と屠自古がやってくる...屠自古の方は私の姿を見て驚きの表情を浮かべ、青娥は僅かに眉間に皺を寄せている...
私は自身の姿を見つめる...ボロボロの衣服に、私の嫌う黒い九尾、半獣の姿...余程の事があったと思われてしまったかしら?
「おい!!お前怪我しているのか!!?大丈夫か!?」
「大丈夫ですよ...薬で何とかなりましたし...まだ余力があります」
私を心配する屠自古を慰めるが、青娥は私をジッと見つめたままです...
「博麗の巫女達の相手をしてきたのかしら?随分と早いお帰りね?」
「違いますよ...命蓮寺の子と少し遊んだだけです...異変解決組...霊夢達はすぐに来るでしょうね...」
「それならいいのだけど...貴女の担当区域は命蓮寺周辺よ?ここで油を売る暇があるのかしら?」
...僅かにお説教染みていますね...これくらい許してもらいたいものですね...
「それは失礼...戦闘前に気になったので様子を見に来ただけです...これくらいはいいでしょう?」
私は彼女達の後ろにある霊廟を見つめる。
幾多の霊達が...霊廟に集まってきている...
あの方に救いを求めて来たのでしょうね...この異変が終わったら、あの方も忙しくなるでしょうね...
「これで長き...眠りも解放されるというものですか」
「ああ!!これであの方が復活する!!そしたら!またお前も!あの方の下へ戻って来てくれるんだよな!!」
屠自古は嬉しそうな顔をしますが...この子は前に言ったことを忘れているみたいですね...
「異変が終わったら私は消えると言ったはずですがね?」
「は?何で!!」
「ふぅ...いいですか?あの方は民を導く為政者...その者の配下も、その方に相応しい者でなくてはなりません...私のような人外には相応しくはありませんから当たり前のことなんですよ?」
「お前...まだそんな事を!!」
「私ではなく、あの方の為に貴女は思考を巡らせるべきですよ...それと...異変後は私が協力したと悟られないようにお願いしますよ...」
「何で...そこまで...」
「いいから!これ以上は口を開く気はありません...もし私の存在は悟られることがあれば...大神の妖狐の祟りが下りますよ...」
私は彼女へそう言い、踵を返して霊廟を後にする...
もう戻ってくる必要はないでしょうね...
side青娥
「あらあら...相変わらず真面目なんだから...」
「くそ!何だよ!あいつ!!」
屠自古さんは霊廟の壁に拳を打ち付ける...潤香の言葉にイラついているみたいですが、それは潤香も同じでしょうかね?
屠自古さんと同じく、あの方に会いたいと思う気持ちは彼女も同じはず...変な気の迷いが彼女をそうさせているのかしら?
「...それとも曲がった忠誠心かしら?」
...本人は気づいているか分からないけど、今の彼女は一番危うくなっている、暴走しないといいのだけどね...
「ふぅ...世話が掛かるわ...ほら!屠自古さん!迎撃準備にかかりますわよ!」
「うう!!」
屠自古さんを宥めながら私は最後の後詰めの支度に入る...
さてと...私も本気出しますか...
一方その頃...命蓮寺近くにて...
博麗霊夢・霧雨魔理沙・東風谷早苗・魂魄妖夢の一行は少しずつ大霊廟のある場所へと近づいていた...
進むにつれて異変で現れた神霊達が大量に蔓延しているが...
「うわああああああ!!!お化けー!!!」
霊夢達の先陣を切って、狂乱と化した妖夢が霊を次々を切り刻んでいく...庭師とは言えど、剣の達人...その腕は次々と的確に神霊達を倒していく...
彼女のおかげでこの異変も大分楽になったようだ...
side霊夢
「...妖夢を連れて来て良かったわ」
私達の先には、次々と現れる霊を撃退する妖夢の姿...
彼女がこの異変に乗る気ではなかったのも、これが原因ね...半分は幽霊だというのに霊に怯えるってどういうことよ?
「楽でいいな♪」
「このままこの異変も楽勝ですよ!!早く黒幕倒して終わりですね!!」
魔理沙・早苗は後ろで悠長なことを言っているわね...
「そうなれば良いのだけどね...」
...確かに、こうも進みが早いと気が抜けるのは分かるけど...さっきから嫌な予感がするのよね...
さっきの場所で感じた妖気は完全に潤香の奴の物...まさか彼女が今回の事に関わっているとなると話は一気に難しくなるわ...
大神潤香...幻想郷のパワーバランスの一人である大神暦の娘の一人...
空狐である暦の娘達は人と妖怪の姿の2つを持っているけど、彼女の場合は人間の姿のままを維持している...感じる妖気は彼女の体から時折漏れ出す程度...
それに...実力者揃いの大神家の娘の中では、行動するような人ではないから本人の実力が分かっていない...
魔理沙は過去に彼女との戦闘で勝ったとか言っていたけど、彼女が本気を出していたかどうかすら怪しいものね...
「...っと」
いつの間にか命蓮寺の近くまで来たわね...そろそろ異変の黒幕がいるかもしれないでしょうし立て直さないと...
「妖夢!一回止まりなさいよ!」
「ひぃぃぃ!!!!」
私は先陣を切っている妖夢へと叫ぶが彼女は一心不乱に刀を振り回している...私の声が聞こえていないみたいだ...
「妖夢!!止ま...」
「刃物を振り回していると危ないですよ...」
急に響く声に私達は動きを止める...妖夢が振り回していた刀も目の前の霧に触れて動いていない...
「ろ...楼観剣が動かな...」
「ですから...危ないと言ったはずですが?」
霧が集まり、黒い長い髪の女性の姿へと変わる...
同色のフォーマルな服装をした人物こと...大神家の一人...大神潤香が姿を現す...
只いつもとは違う点があるわね...いつもは人間の姿なのに、今の彼女は頭には黒い狐耳...長い黒い9本の尾を持った姿をしている...
彼女の左腕は装甲のように氷結しており指で妖夢の刀を止めている...
この状態の彼女は初めて見るわ...そしてこの異常な妖気も...
「な?何で潤香が?」
「潤香さん!何で?それにその姿は!!」
「銖理さんと同じ...半獣の姿をするなんて」
普段の潤香を見慣れている魔理沙・早苗・妖夢は驚きの表情を見せている...
彼女達の視線が気になったのか、潤香は片手を顔に当てて溜息をつく...
「はぁ...やっぱりそういう反応ですよね...私自身もこの姿は見せたくはないのですがね...この状況ですし致し方ないです...」
「確かに珍しいわね...アンタがその姿になるなんてね...」
彼女の体をよく見ると、所々傷があるわね?着ている物も良く見たらボロボロだし...さっきの場所を見る限り、やっぱり誰かと戦っていたのかしら?
「誰かと戦ったみたいね...」
「ええ...命蓮寺の妖怪と少しですがね...流石の私も苦戦を強いられました...この状況...賢い貴女なら...もうお分かりですね?」
潤香はハイライトの無い目で私をジッと見つめる...やっぱり暦の娘ね...切羽詰まった状態になると暦と同じ目をするわ...
「一番最悪の想定だけどね...」
「一番最悪の想定って...ま...まさかだけどよ?」
魔理沙が不安気に私を見つめる...もう分かっている癖に...
「はぁ...見てわかるでしょう...今回の異変の協力者が潤香というわけよ...」
「...や...やっぱりか」
「ええっ?」
彼女達からは感嘆の声が聞こえる...
過去の異変でも他の大神のメンバーが協力しているのはあったし...今回が彼女だった...ただそれだけよ...
潤香の方からは鉱物が当たるような拍手の音が聞こえる...
「ご名答...お見事です...」
「前回の異変ならまだしも...大神で一番まともだったアンタがまた異変に協力なんて...どういう風の吹きまわしよ?」
前回の異変は戦闘こそは行わなかったけど潤香は異変に協力していたわね...
潤香は目を閉じて両腕を広げ笑みを浮かべる。
「前回も今回も...私の大切な人の為...只それだけなんですよ...」
「大切な人?」
「ええ!!前回は私を救ってくれた白蓮様...そして今回は私の事を認めて下さった、あのお方...ああ!!あのお方も1400年という長い時を越えて復活します...この日とどんなに待ちわびたことか!!」
...いつもよりも饒舌になっているわね?話の所々に彼女の喜びが感じられるわ...
「...白蓮と同じように封印でもされているのかしら?」
「いえいえ...白蓮様とはまた別です...あのお方は死という生きる上で避けることが出来ない絶対不可能の壁を乗り越え!現世に蘇るのです!!民を統治する生きる伝説が!!!」
死からの復活ね...何かの術でも使ったのかしら?
聞く限り...潤香だけの単独の異変ではないわね...幾ら彼女でもそのような術は使えないだろうし、他にも協力者がいるみたいね...
「他にも厄介そうなのがいそうね...」
「...少し話過ぎましたかね?いけませんね...私としたことが少々気が高ぶってしまいましたか...」
潤香は元通りの顔に戻して氷結した腕を私達に向ける...
「やる気なのか潤香!!幾らお前でもこの人数は!」
「私だって華楠さんの妹さんを傷つけたくはないですよ!」
魔理沙・早苗が説得に入っているけど...妖夢が首を振る。
「どうやら無駄みたいですよ...潤香さんもやる気満々みたいです...この人数を相手にする気ですね」
「そうみたいね...」
確かに潤香が実力者とはいえど、4対1は幾ら何でも分が悪いはず...
でも...彼女には私達を相手に出来る余裕があるみたいだ...少しずつだけど...彼女の妖気が増してきている...
「ええ!!皆さん纏めてかかって来なさいな...それの方が私としても都合がいいわ...」
彼女は笑みを浮かべながら、辺りを右往左往する...
「正気?幾らアンタでも私達を相手にするなんて...」
「勝つ必要何かありません...時間を稼げればそれでいいのですよ...私の役目は時間稼ぎ...それが出来れば充分私にとっての大義になるのですよ!!」
...時間稼ぎが目的か...ここで時間を浪費するわけにはいかないわね...
「成程それがアンタの目的ね...なら...押し通るまでよ!!」
私は彼女へと札を放つ!
札は潤香に触れると爆発し、辺りに煙を発生させる!余りこれも持たないわ!
「魔理沙!!早苗!!アンタらは先に行きなさい!!ここは私達でやるわ!!」
「!!?...分かった!」
「はい!!」
彼女達は命蓮寺方面へと飛び立つ!!
「させるわけないでしょう?」
「!!?」
突如彼女達の目の前に氷結した結界が現れて行く手を阻む!!
結界は連結して私達の周りを囲みバトルフィールドのように展開される...
煙が晴れて潤香が顔を出す...多少のダメージは与えたかもしれないけど、ピンピンしているわね...
「大神五行結界・水行...強行突破される可能性もあったので念のため貼っておいて正解でした...」
「こんなの私の弾幕で!!」
魔理沙が結界に向けて光弾を放つ!
ドォン!!!!
光線は結界へと直撃するが、ひび割れ所か傷一つすらついていない...
「は!?堅!!」
「無駄ですよ...私の妖力を念入りに込めた代物です...貴女方では破壊は不可能かと...」
潤香はせせら笑っている...流石慎重な性格だけはあるわ...準備は念入りみたいね。
(博麗の巫女・守矢の巫女...もし私が変な気を起こしたら...その時は私を退治してくださいね...)
ふぅ...そういえばあの時潤香に言われたわね...ならお望み通り退治と行かなくても止めてあげるわよ...
「仕方ないわね...皆...やるしかないわ!!」
「そうみたいだな...」
魔理沙達もスペルカードを構えて潤香と対峙する...
その状況を見ても潤香はせせら笑いをやめることはない...
「そうです...そう!!それでいいのですよ!!私も大神暦の娘...全力で行きますよ!」
潤香の周りにスライム状の水弾が多数出現し私達に向け放たれる...
次回潤香戦
ではこれにて