東方五行大神伝   作:ベネト

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日常編


聖人君主の神社訪問

甘味処の件から3日後...

 

豊聡耳神子と大神潤香の問題に対して、直接解決される日がやって来た...1400年という時は余りにも永い...自身の生まれの違いと神子の事を考えて、会う事を拒絶した潤香と、過去の行いを悔いて潤香と向き合おうとする神子...彼女達の問題がどうなるのか...誰にも分からない...

 

暦の言う通り、豊聡耳神子の下に大神家から使いが送られる...このまま、この問題は無事に解決するのだろうか?

 

 

 

side神子

 

「とうとう...この日が来ましたか...」

 

私は仙界にある屋敷の自室から外を眺め、不安に高鳴る胸に手を抑える...

 

私がこの世に再び復活出来たのも、私の従者達の苦労の賜物だ...勿論、その従者には潤香も入っている...1400年前、私は君の姿に驚き、君を拒絶してしまった...あの時の事は後悔している...手を振り払うのではく...怯える君を抱きしめてあげるべきだった...

 

「っ!!」

 

...傷心に浸る暇はないか...今日は潤香の実家からの使いが仙界へ来るのだからね...今日は何としてでも彼女に会わなくては...

 

「太子様!失礼しますぞ!」

 

扉が開かれ、布都と屠自古が部屋に入る...そして一歩彼女達に遅れて長身の女性が入ってくる...

 

「...大神華楠だ...今回の使いとしてここへ来た次第だ...」

 

私の目の前に現れたのは、潤香の姉の一人...緑色の長い髪をした女性こと...大神華楠...確か姉妹の中で一番上の人だったな...

 

彼女は持っていた風呂敷を屠自古に渡して、私の方を向く...

 

「...約束通りの時間に参った次第だ...これから大神神社に向かう...異論はないよな?聖人君主よ...」

 

「ええ...お願いします」

 

彼女は不機嫌そうな顔をしながら私達を見つめている...何でしょう...すごい怖い...

 

「何じゃ!お主!!その顔は!!太子様に無礼だろうが!」

 

布都はが苦言を言うが、華楠は余計に顔を引きつらせる...

 

「無礼も何もないだろう...この前の甘味処でお前の従者の雷女に気絶させられて...その後の早苗との約束が全部台無しだ...お陰で私は早苗に怒られることになってしまったという訳だ...それに...この使いだと?勘弁してもらいたいものだ...」

 

華楠は真っ白な顔を紅潮させながら、体を震わせる...相当怒っているみたいだ...この前の甘味処の事件の所為か...こればっかりは私達の陣営が悪い...

 

私は彼女に頭を下げる...

 

「申し訳ない...そのような迷惑をかけるとは!」

 

「神子様!!?アタシが悪いんですから!ここはアタシが...」

 

「...そんなことをしても遅い...謝られた所で...私が怒られた未来は覆しようもない事実なのだからな...はぁ...この後どうしよ...」

 

屠自古が頭を下げようとするが、華楠が止め、彼女は明後日の方向を見つめている...何処か怒りをぶつける所が無い事に困っているみたいだ...

 

「...時間が惜しい...すぐに大神神社へと案内しよう...私についてくるがいい...」

 

私達は華楠に案内され、大神神社へと向かう...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼時の幻想郷...

 

私達は赤い鳥居が沢山並んでいる神社に到着する...外の世界でもこれに似た神社はあったな...ここが潤香の実家か...何と言うか不思議な雰囲気を感じる所だな...

 

「ここが私達の神社だ...ついてくるがいい...」

 

華楠が石段を上がっていき、私達はその後をついていく...

 

 

 

道中...特に進展もなく...神社の景色が経過するだけとなっている...華楠は特に会話をすることもなく先に進んでいるだけだ...

 

流石にも...気まずいな...少し潤香の事を聞いてみるか?

 

私は先導している華楠に向けて口を開く...

 

「そういえば...聞きそびれましたけど...潤香...彼女の容体は?」

 

「...一応復活と言ったところだな...体の傷もそのうち回復するだろう...会話をする事に関しては問題ないだろうな...」

 

華楠はそう返答し、石段を上がっていく...とりあえず...本人が話せるまで回復はしたみたいですね...残りは...彼女との対話だけみたいですね...

 

そのまま会話もなく石段を上がっていく時間が過ぎる...

 

 

 

 

 

 

石段を上がり終えると、今度は大きな池に囲まれた屋敷に到着する...

 

「ようこそと言うべきか?ここが私達の屋敷...大神神社だ...」

 

「ここが...」

 

中々立派な建物...潤香も良いところの娘だったみたいです...

 

屋敷を囲む池には巨大な橋が架かっており、華楠の後についてそのまま渡っていく...

 

「内部は少々広いのでな...私の後をちゃんとついてこいよ...迷子になったら面倒なことになるからな」

 

「分かっています...」

 

「屠自古~!気を付けておくのじゃぞ!」

 

「お前だよ!馬鹿!!」

 

後ろで口論している布都と屠自古はとりあえず保留にしておきましょう...

 

私達は屋敷内部へと入る...

 

 

 

 

内部は、和風の廊下がずっと奥に続いている...左右の壁には障子があり、多数の部屋があることが確認できます...

 

「本当に広い...」

 

私も豪族だったから、大きな屋敷には住んでいましたが...これは凄い...先程言っていた迷うというのも分かる気がする..というよりも...空間がおかしい気がする...

 

「潤香の部屋は奥だな...とりあえず私にちゃんとついて来ることだ...さっきも言ったが迷子になると面倒になるんでな...特に後ろの白いの...」

 

「何じゃ!!お主の世話にはならんわ!!」

 

布都が騒ぐが、華楠は耳を塞ぐ...

 

「申し訳ないが一番抜けていそうなのが、君だ...本当に迷うんじゃないぞ?これはフリでも何でもないからな?」

 

「ぐぐぐ!!」

 

布都は顔を真っ赤にしている...確かに華楠の言っていることは正しい...この子は頭は良いのですが、少々アレだから...

 

「っっ...」

 

屠自古の方は笑いを堪えている...布都が恥をかいたことに笑っているみたいだ...

 

 

「あやややややー!!!!境奈ー!!イッキイッキ!!!」

 

「境奈様ー!ドンドンいっちゃってー!!」

 

「あははは!!!アタシに飲めない酒はないわー!!!今日は無礼講よー!」

 

急にドンパチとした声が廊下に響く...何ですこれは?今は昼時だというのに宴会のような騒がしさです...

 

華楠はすぐ近くの開いている部屋を見て、舌打ちをする...

 

「ったく!!今日は客人が来るから静かにしていろというのに!!」

 

「楽しそうじゃの?だが...しかしの...」

 

「いや...流石にも昼から飲む気はしない」

 

屠自古達が苦言を言うと、華楠が部屋に近づく...

 

「五月蠅いぞ!!境奈!少し黙っていろ!」

 

彼女が怒鳴り、私達はその部屋を覗く...

 

 

そこには、黄色の長い髪をした潤香の姉と、黒髪の天狗の者と白い髪の...恐らく天狗らしい者の3名がいた...境奈と呼ばれた潤香の姉は、華楠に不機嫌そうな顔をする。

 

「何よ~!華楠~!お楽しみ中を邪魔しないでよ!!」

 

境奈は、片手に酒瓶を持って口につけている...

 

「...今日は潤香の元の主が来ている...分かるよな?」

 

華楠に諭されるような怒られ方をされた境奈は、さっきとは打って変わって大人しくなる...

 

「...それはアタシが悪いかも...もう少し抑えて楽しむ...」

 

境奈は私達を見て、口を閉じる...

 

 

 

「ひぃ!!!!この前の緑女!!!」

 

境奈は屠自古を見て、恐怖の表情を浮かべて壁際まで下がる!?

 

屠自古の方は、困惑の表情を浮かべている...

 

「な...何だよ?急に怖がり始めたけど?」

 

「気を悪くしたら悪いが...境奈は霊の類が苦手でな...この前の甘味処の奇襲では、翌日の朝までうなされていたからな...安心しろ境奈...この者は霊だが害はないはずだ...」

 

華楠のフォローが入るが、境奈は怯えたままだ...

 

「だだだ...だって!!いきなりトイレの個室から怖い顔で飛びかかって来たんだもの!!本当にトイレの花子的なものが出たと思ったんだから...怖かったんだから!!」

 

「申し訳ない...」

 

屠自古が頭を下げる...ふむ...屠自古の犠牲者がここにもいましたか...

 

 

 

 

 

「境奈~♪怖がっては駄目ですよ~!」

 

黒髪の天狗が泥酔した様子で境奈に近づき、彼女の豊満な胸に顔を埋める!?

 

境奈は急な行動をした天狗に驚いている...

 

「あ...文!!急に何しているのよ!!今は客人が!」

 

「ん~!見せてもいいじゃないですか~!私達のラブラブを...私...酔いました!このままだと襲ってしまうかもしれません~」

 

文と呼ばれた天狗は、豊満な胸にスリスリしながらとんでもない発言をし、境奈の方は顔を青くしてへたり込む...

 

「待って...アンタ...今客いるのに!!ちょっと!!椛!!文を止めて!!」

 

境奈は椛と呼ばれた白い方に助けを呼ぶが、椛と呼ばれた白い方は、境奈の後ろへ近づいて彼女の来ているコートを脱がす...

 

「ん~...いいじゃないですか...今日は無礼講...境奈様だって言っていたじゃないですか...」

 

「無礼講の意味が違う!!か...華楠!!見ていないで助け...」

 

 

 

ぴしゃん!!!

 

 

華楠が乱暴に襖を閉める...流石にも私達に気を使ったというべきでしょうか...

 

「見苦しいところを見せた...すぐに案内する...」

 

「いえ...お気になさらす...随分と...お盛んですね...」

 

「...アレは日常茶飯事だ...もう見るのは慣れた...」

 

華楠は僅かに顔を赤くして、奥へと進んでいく...部屋の中から境奈の叫び声のようなモノが聞こえてきますが...私達は何も見なかったことにしましょう...

 

私達は華楠を追って先に進む...

 

 

 

 

 

 

 

次の廊下を右に曲がると、華楠がこちらを振り向く...

 

「潤香の部屋はこの先だ...」

 

「ええ...分かりました」

 

...少しアクシデントはありましたが、本来は潤香に会う事が目的です...私はどんな顔をして彼女に会えばいいか...

 

 

 

「あああああああ!!!!」

 

「っ!?」

 

突如響く悲鳴のような声に私達は耳を塞ぐ!!!何だこの声!?声質からして女のようだが!!聞いていると頭が割れるように痛くなる!!!!

 

華楠は耳を塞ぎながら先へ進み、声の元凶である部屋の戸を開ける...

 

「今度はアイツか!!銖理!!今は客人がいる!!下手な歌は控えろ!!」

 

私達はその部屋を覗く...

 

 

 

「銖理ー!!アンタまた!鶏肉食べたでしょー!!」

 

「ごめんっス!!!ごめんッス!!アレは影狼がせっかく作ってくれたから断ることが出来なかったんッス!!!」

 

...私達の目の前には居間で、へたり込んでいる潤香の白い姉と、白い姉の胸倉を掴んで激怒している茶色の着物に身を包んだ少女の光景...

 

「...あの子も妖怪か」

 

...一見、力を持っていなさそうな妖怪に見える...潤香の姉の1人が何でここまで怯えているのかが理解が出来ない...私は華楠の方を向く...

 

「あの...彼女は?」

 

「彼女はミスティア・ローレライ...種族は夜雀...銖理と仲良くやっている仲だ...偶にここまで来て夕飯を作ってくれるんだ...」

 

「...そうですか」

 

...ふむ...随分と長い名前の子ですね...しかし華楠は、何か話を端折っている気がしますね...ミスティアに対して何か言い辛い事でもなるのでしょうか?

 

ミスティアの方を向くと、彼女は銖理に向けて笑みを浮かべて彼女に顔を近づける...

 

「へぇ...つまり私よりも影狼の方を取るんだ...銖理~私傷ついちゃうわ~」

 

彼女のにこやかな返答に対し、銖理の方は慄いている...

 

「ひぃ!!!別にそんな訳では!!」

 

「...お仕置き...良いわね?」

 

突如のミスティアの冷え切った言葉に銖理が泣きそうになっている...

 

「待って!!お仕置きは嫌!!やめて!!!酷い事しないで!!」

 

「いいから!行くわよ!!」

 

「いやああああ!!!!」

 

ミスティアが、銖理を引っ張って外へ連行する...廊下を引きずられる銖理は華楠に縋るような目で見つめているが、華楠は手を合わせるだけだ...

 

「逝ってこい...」

 

「うわああ!!華楠姉!!!」

 

彼女達は廊下を曲がって視界からいなくなる...

 

「...あの?妹さん...連行されましたが?」

 

「いつもの事だ...気にするな...」

 

華楠は気にすることなく、先へ進んでいく...

 

 

 

 

 

再度長い廊下を進んでいく...しかし本当に広いなこの屋敷は!!そろそろ疲れてくる...

 

「あの?本当に潤香の部屋に向かっています?」

 

「ちゃんと向かっている...今日は君たち以外に来客が多いだけだ...もうこれ以上はいないだろ?」

 

「うわああああ!!!」

 

「っ!!?」

 

声のする方を見ると、廊下の奥から猛スピードでこちらへと走ってくる...赤い髪の九尾の女性が...

 

確か、あの人も潤香の姉でしたね...今回の人は九尾の姿になっているから大神家の人が只の人ではないことが分かる...

 

華楠は走ってくる潤香の姉を睨む...

 

「煌炉!!廊下を走るな!客前だ!!」

 

「姉さん助けて!!何も聞かずに私を助けて!!」

 

「...何だ?」

 

煌炉と呼ばれた潤香の姉は、華楠のと追いかけにも答えずに後ろに隠れる...一体何があったのでしょうか?

 

そして廊下の奥から、更なる声が...

 

 

「煌炉ー!!どうした!!?ブラシの時間だぞー!!!」

 

廊下の奥からやってきたのは、同じく金色の9本の尾を持った狐...青い導師服に身を包み、片手にはブラシを持っている...こちらの方は、潤香達とは似ていないから姉妹ではないみたいですね...

 

金色の九尾は私達を見つけてこちらへ走ってくる...

 

「見つけたぞ!煌炉!ブラシの時間だというのに何で逃げるんだ?」

 

「だから!藍!!ブラシはNGになったって言っているじゃない!」

 

煌炉は華楠を盾にして、藍と呼ばれた九尾に言い放ち、藍と呼ばれた九尾は不服そうな顔をする...

 

「む...私のスキンシップを無碍にするのか...華楠!そこをどけ!煌炉が良く見えん!」

 

「どきたいが...煌炉が私を掴んでいるから離れられんのだ!それに!私の目の前でブラシを振るのはやめろ!私もブラシはNGなんだよ!」

 

華楠は何かに怯えているのか、顔を青くしている...

 

煌炉は華楠の背後から顔を出す...

 

「そうだよ!NGなんだって!!藍だって、さとりのブラッシングを受けて昇天したじゃないの!」

 

その言葉に藍は、悔しそうな顔をする...

 

「...確かに私は、さとりにより昇天させられた...だが!幻想郷ブラッシング技術1位の座はアイツには渡さん!!私はその悔しさをバネにして!更なる高みへと向かうんだ!そして...今の私は自慢の尾をブラシをして前より更なる高みへと近づけた...前の私とは思うなよ?」

 

藍は力説するが、煌炉は顔を真っ青にする...

 

「つまり技術がさとり並みに上がったってこと?勘弁して...何回も快楽地獄に突き落とされるのは私はごめんだ!私は逃げる!!」

 

煌炉は華楠を突き飛ばし、逃亡を図る...足が速いな...既に廊下の奥だ...

 

「煌炉!逃げるな!!」

 

藍が叫ぶが煌炉が止まることはない...

 

「あはは!!いくら藍でも!私を捕まえることは絶対に出来ない!私は大神家最速!!捕まえたいのならば!私を嵌められる策でも持ってくるんだね!!」

 

煌炉は高笑いをしながら更に奥へ逃げる...

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁい!ゆかりん!登場よ~!」がし...

 

「ふぐぉ!?」

 

遠目で良く見えないが、声が聞こえた瞬間に空間から手が飛び出し、煌炉の脚を掴み彼女を転倒させ、煌炉は顔から廊下に突っ込み悶絶してながら廊下を転げまわる...

 

「痛い!!...ダメだ...逃げなくては...昇天させられる訳には...」

 

煌炉は負けじと廊下を這うが、空間から飛び出した手が彼女の逃亡を妨害する...

 

「駄目よ!逃げちゃダメ!!綺麗になりましょ♪私としても面白いし♪」

 

空間から、長い金髪の女性が現れて煌炉の下半身にへばりつく...

 

確か...あの女性は幻想郷の創設者だな?こうも簡単に姿を見れるとは思わなかった...

 

「放せ!紫!!私は!ブラシは嫌だ!!あのような快楽地獄は嫌だ!!頼むから!私を開放しろー!!!」

 

煌炉が叫ぶが、紫はつまらなそうな顔をする...

 

「嫌...それは面白くないもん!!ゆかりんは面白い方を選ぶわ!藍!早く捕まえなさい!」

 

「感謝します!紫様!」

 

藍は身動きのとれない煌炉を捕縛する...煌炉は足掻くが、藍が力づくで馬乗りになり彼女を大人しくさせる...

 

「ふふ...これで身動きは取れないな♪」

 

「待って...勘弁して...藍!長い付き合いじゃないの!偶には私の事を優しくしてもいいでしょ?」

 

「ん~?駄目だな!私は私の欲望に勝てないからな!さてさて...ブラシの準備を~♪」

 

藍は煌炉の頭にキスをする...

 

そして対称的に紫の方は面白くなさそうな顔をする...

 

「ちょっと!ずるいわよ藍!!それに!ゆかりんも!煌炉をブラシしたいわ!!」

 

紫もブラシを持ってブンブン振り回している...

 

「...煌炉の尾を1本あげます...これでいいですよね?」

 

「わーい♪」

 

藍と紫はブラシを煌炉へ向ける...煌炉の顔はどんどん絶望に満ち、青くなっていく...

 

「待って!誰か!姉さん!助けてー!!」

 

煌炉の絶叫も空しく...彼女は紫達にブラシされてしまう...

 

華楠は、それを見て顔を背ける...

 

「...無力な姉を許してくれ...ではな...」

 

華楠は踵を返して更に先へ進んでいく...

 

「ふぁぁぁ...だ...だめ...」

 

「煌炉~♪気持ちいいか?」

 

「わーいモフモフよ~♪」

 

...紫達は煌炉で遊んでいるみたいだ...というより...あれが妖怪の賢者なの?随分とアレな気がする...

 

私達は華楠を追い、先へ進む...

 

 

 

 

 

 

 

 

「...もうそろそろだ...潤香の部屋は目と鼻の先まで来た...」

 

「もうアクシデントは起きませんよね?」

 

「安心しろ...もう他の客はいないだろ?」

 

華楠は私達を先導しながら答える...紆余曲折でしたが、やった彼女に会えるというもの...長かったな...

 

私達が次の廊下を曲がると、拍手のような音が廊下に響く...

 

 

 

 

「はいはーい!よく来たね!聖人君主様♪」

 

廊下の奥から現れたのは、白と黒の着物に身を包んだ金髪の少女こと...潤香の母親である大神暦...この前より、身長が一気に縮んでいる?

 

「母さん?何でここに?」

 

華楠は困惑した表情で彼女を見つめている...

 

「ん~?早苗が華楠に会いたいって言ったから伝えに来ただけだよ?」

 

その言葉に華楠は顔を青くする...

 

「...早苗は怒っていたか?」

 

「いや?...只チーズケーキ作って来たから居間で一緒に食べようとか言っていたけど?」

 

「...早苗~♪」

 

華楠は嬉しそうな顔をして、来た廊下を戻っていき姿を見せなくなる...

 

暦は私達の前に来て、笑みを浮かべる...

 

「ここからは私が案内役...とは言ってももう潤香の部屋だけどね?」

 

暦はとある障子を指さす...ここが潤香の部屋?...この中に彼女が?

 

「...っ」

 

「ん?まさか怖気着いた?」

 

暦は私をジッと見つめる...

 

...ここまで来て怖気着く訳にはいかない...私はもう!過ちを繰り返さないと決めたのだから!

 

「まさか!さあ!失礼する!」

 

私は障子を開ける!!

 

 

 

目に映るは、畳張りの和風の部屋...机と本棚などの家具だけが揃っている寂しい空間...

 

その中央にある布団に彼女はいた...

 

長い黒髪をし、白い寝間着用の着物を身に着けた...大神潤香が...

 

顔や腕には包帯が巻かれており、痛々しい...湯呑を片手に彼女は何かを飲んで私達の方を向く...

 

「...ずず」

 

彼女はクマの入った目で私達をしばらく見た後、口に含んでいた黒い液体を吐き出す!

 

「げほ!!?み...神子様!!?それに他の方々まで!?な...なんで...」

 

...?潤香の驚き様?私が来る事を知らなかったのか?

 

暦の方を見ると、笑っている...

 

「あはは!!サプライズ!私からの軽いドッキリだよ!潤香!」

 

やはり伝えていなかったのか...真意はよくわかりませんが...この母親...油断なりませんね...

 

「は...はぁ?」

 

潤香は狼狽えており、暦は私を見る...

 

「じゃあ!私達は退場して...残りは若い二人に任せましょうか!」

 

暦は布都と屠自古の背を押す...

 

「え?我ら退場なのか?」

 

「太子様...アタシ達外で待ってますから!」

 

「ん~?従者の二人は居間でお茶でも御馳走するよ♪ついて来て♪」

 

暦達は部屋を後にし、ここには私と潤香の2人が残される...

 

「...」

 

「...」

 

...これから彼女と話す...私は彼女を説得できるのだろうか?

 

いや...考えている時間はない!私はもう誰も失う訳にはいかないのだから!!

 

私は彼女の下へと向かう...

 

 

 




神子様編まだ続きます

ではこれにて

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