東方五行大神伝   作:ベネト

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日常編...神子編中間


聖人君主と従者の覚悟

大神神社に来訪した豊聡耳神子は、かつての従者である大神潤香と対面する。

 

潤香の部屋には、神子と潤香の2名だけであり、誰のフォローも入らない密室空間と化していた...1400年前のお互いの過ち、過去の事を乗り越え、彼女達は再び歩みを進めることができるのであろうか?

 

 

 

 

side神子

 

私の目の前には、こちらを驚いた様子で見つめている潤香の姿がある...以前と比べて目の下にクマがあり顔色が悪い...少し不健康そうです...腕や顔には手当があり、異変の時のダメージがまだ残っているみたいですな...

 

彼女は黒い液体の入った湯呑を御盆において、口を開き始める...

 

「お久しぶりですね...神子様...」

 

「...ああ...あの時以来ね...」

 

正直...何を話せばいいか分からない...謝罪をすればいいのか...それとも異変の事について感謝をするべきなのか...

 

私が口を開く前に、潤香が手で私の行動を制す...

 

「...失礼ですが...言葉は要りませんよ...貴女には貴女のやるべきことがあるはずです...ここで時間を浪費する必要はありませんよ」

 

まさかの拒絶とは...私としても、この言葉は聞きたくはなかったよ...

 

「どうして?君は私の為に頑張ってくれたじゃないか!だから私は...あの時の事を謝りたくて...」

 

潤香の目が鋭くなる...

 

「いけません!!あのことに関しては貴女は悪くはありません...私が未熟だった原因が積み重なった結果故です...貴女は悪くない...」

 

潤香はイライラと髪を掻く...彼女らしくない仕草です...相当切羽詰まっているみたいだ...

 

急な来訪だったから考えが纏まっていないみたいだし、私に当たり障りのない次の言葉を考えているのだろう...ある意味これがチャンスかもしれない...この子は控えめだから、私を相手に話術の強行突破もしてこないはず...

 

彼女の策が纏まる前に、彼女の意志を砕かなくては...

 

 

 

 

 

「あの...私少々体調が悪いので、失礼ですが...ここでお引き取りは可能でしょうか?この話は後日ということで...」

 

潤香が口を開く、さっそくのお引き取り宣言か...だが...その嘘は無駄だ!

 

「...悪いけど、それはできない相談だ!君の嘘には従う気はないからね!」

 

「...嘘?」

 

「君の姉から体調の件は前もって聞いている!会話をする分までは回復しているとね...それにその湯呑の中身を飲む程だし...体の調子は良いはずだ...」

 

「ぐ...」

 

潤香の顔が引きつる...分かりやすい嘘で助かった...華楠の話を聞いていて、潤香の体調が良いことは知っている...それに湯呑の入っているモノに関しても中身は分からないけど、かなり強い香りを放っている...そんなものを病人が飲むわけがない...

 

潤香の目がまた鋭くなる...

 

 

 

 

「流石ですね...私の嘘を見抜くとは...しかし...いいですか!?貴女は民を導く聖人君主なのですよ!?ここで油を売っている暇はないはずです...貴女のすべきことは!これからの未来のことです!私のことなぞ!!!」

 

...怒りに満ちた発言...私の能力で潤香の欲を聞こうにも、彼女には通用しないことは分かっている...でもこれだけは分かる...100%の本心ではないことくらい...

 

「...今私がやっていることは私の未来に関係のあることだ...今すべきことでもある」

 

「...な...何を言って?」

 

潤香がまた素に戻る...少しずつ崩れてきましたね...

 

「私は...もう1度君に従者として戻ってきてもらいたいと思っている...まだ私はこの世を知らない...知らないことが沢山あるんだ...だから世の中を知っている君の力が必要なんだ...私と共に歩んでくれないか?」

 

「...!?」

 

またもや彼女の顔が引きつる...少しずつ悲しそうな顔になってきている...

 

「...ぐ...やめてくださいよ...これ以上は...」

 

「また...私の下に来てくれるよね?」

 

私は彼女へ手を差し伸べる...もう彼女の意志は揺らいでいる...もう我慢しなくてよいんだ...潤香...

 

 

 

 

「やめてくださいよ...これ以上は...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言葉を選ぶことができなくなるから...」

 

「ん?」

 

彼女は私の手を振り払い、布団から飛び出して後退する...それと同時に彼女の体も変化し、九本の黒い尾と、頭に狐耳が生える...

 

「...ふー!...いい加減...しつこいと...私も怒りますよ?私のような穢れた獣が!貴女のそばに居られないくらい!わかるでしょうが!」

 

潤香は尾を逆立てて激昂する...言葉が乱れている...いつもの冷静な彼女らしくない、言葉の端々に悲痛な感情を感じる...態々この姿になるということは後がないみたいだ...

 

「...潤香」

 

「私は...見ての通り半獣人です...貴女の隣にいる訳にはいかないのです...貴女の新しく入門するお弟子さんが私を見たらどう思います?」

 

「...」

 

「少なくとも不信感を覚えると思いますがね...私のような者がいるわけには行きませんもの!!」

 

「...」

 

「そうでしょう?貴女だってそうでしょう?やったことはどうであれ!幾ら善行を積んだところで!私は化け物!貴女は聖人!貴女とは住む世界が...」

 

 

 

 

 

パン!!

 

 

 

 

 

私は潤香の頬をはたく...

 

「...!?」

 

彼女は叩かれた所を手で押さえ、驚いた顔で私を見つめている...

 

「これ以上...自分を卑下しないでよ!君は君が思っている以上に素敵な人だ...そんな君を化け物呼ばわりは私が許さない」

 

...これ以上...彼女が卑屈になっていくところは見ていられなかった...

 

私は彼女の着物の襟首を掴んで彼女を引き寄せる...彼女の目が泳いでいるのが見て分かる...怯えている...私に対して怯えているようだ...

 

「私の選んだ従者が...自身を卑下するとは何事だ...私は人を見る目はあるんだ!」

 

「...神子様」

 

「君が...幾ら自身を否定しようが!私がそれを否定する!!君は生まれは確かに特殊だけど!私の自慢の従者に変わりはない!大神潤香!これは私からの命令よ!もう一度!私と共に歩んでくれ!!」

 

私の言葉に潤香は、脱力してその場にへたり込む...

 

 

 

 

 

 

 

 

「...あはは...あの時のように拒絶してくれれば...私の未練は消えたはずです...ですが...やはり...未練というのは...そう簡単に消えるものでは...あり...ませんっ!」

 

 

 

 

 

 

潤香が顔を上げると、彼女は大粒の涙を流していた...いつもの凛としていた彼女の顔とは違い、まるで迷子にでもなった子供のように泣きじゃくっている...

 

 

 

「...潤香」

 

「ううう...うう!!...もう一度...私を従者として置いて頂けるのですね...」

 

「ああ...今度は一緒に歩んでいこう」

 

私は潤香を抱き寄せて、震える彼女の肩を優しく叩く...

 

「うう...うぁぁ...神子様!神子様!」

 

「そういえば...言いそびれてしまったね...私の為に待っててくれてありがとう...」

 

「う...うう...うぁ...うわぁぁぁぁぁ!!!!」

 

潤香が声を上げて泣き叫び、それと共に彼女の体から欲が漏れてくる...

 

(...神子様...神子様っ!)

 

(良かった!私はまた傍に居られるのですね!)

 

(貴女と共に歩んでいきたいです!)

 

愛・安堵・喜び...それに対して飢えているみたいだ...随分と待たせてしまったみたいだ...

 

「...今度は離さない...絶対にね...ずっと一緒だよ」

 

私は彼女の体を強く抱きしめる...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃...大神家居間にて

 

物部布都・蘇我屠自古の前には大皿に盛られた大量のいなり寿司が待ち構えていた...

 

「...おお!!!これは美味しそうじゃな!」

 

「いや...そうじゃないだろ?量が尋常じゃないぞ?」

 

屠自古は積まれた稲荷を見つめる...もはや彼女の背を越えた量だ...いくら亡霊である彼女とはいえ、限界は当然ある...

 

暦は彼女達の反応を見て、首を傾げている...

 

「ん?多かったかな?亡霊って、沢山食べるイメージがあったからさ?」

 

「いやいや!?これはデカ盛りってレベルではないでしょ?」

 

「ん?彼女なら、これ位ペロだよ?」

 

「嘘でしょ?」

 

困惑する屠自古を尻目に布都は黙々と食べ始めている...

 

「...うむむ!!これはうまい!!大神の母よ!!全て食べて良いのか?」

 

「お前は全部食べる気なのか...」

 

「うん♪好きなだけお食べ!残してもうちには狐が多いからね♪それに...」

 

暦は屋敷の奥を見つめて嬉しそうな笑みを浮かべている...

 

「My lucky day...娘の幸運な日だもの...親としては嬉しい日はないよ♪」

 

「ん?何て?全部聞き取れなかったが?」

 

何やかんやで、お稲荷を食べている屠自古は口にご飯粒をつけながら聞き返す...

 

「気にする必要はないよ♪トジー♪大神家のおもてなし!沢山味わってよ♪」

 

「...おう」

 

彼女達は続けて食事を開始する...

 

ことはさておき、1400年に続く問題もやっと解決された...

 

彼女達の未来も明るいものになるだろう...

 

 




次...ギャグ

ではこれにて
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