朝日が照らしこむ幻想郷にて...今日も新しい朝が来る...
幻想郷の端にある神社事...大神神社も朝の支度を始め、大神神社の居間では、当主の大神暦が欠伸をする...
「ふぁぁ...眠い...」
「はいはい!おはよう!母さん!!」
暦の娘である煌炉が、ちゃぶ台に朝食を並べる...
その後、大神家の娘達が続々と居間に来て、最後に入って来た潤香がプレゼント箱を抱え入ってくる、潤香の抱えた箱に暦が興味を見せる...
「ん?潤香?その箱は何?」
「お母様宛です...差出人は不明ですが...」
潤香は箱につけられてカードを見てこたえ、暦へ手渡す...
「私宛?何だろ?」
暦は箱の包装を剥がそうとするが、華楠が止めに入る...
「おい...幾ら何でも不用心だろ!差出人不明とか...怪しさ満点だ...」
「まさか~!私相手にそんなテロ紛いなこと起きるわけないじゃない~!」
暦は華楠の忠告を無視して包装を破り箱を空ける...
カッ!
箱は光輝き...
ボーン!!!
大神神社の一部が大爆発する...
一方その頃、命蓮寺にて...
大神神社が大爆発するのを聞いて、とある者が大笑いする...
「ひゃひゃひゃ!!かかりおったのう!!糞狐共!!」
その者は、大神神社の方向から流れる煙を眺めながらキセルを咥えている...
肩までの茶色の髪...獣耳...黄土色のノースリーブに赤いスカートを身に着け、眼鏡のかけ大きな1本の尾を持った女性こと二ツ岩マミゾウがそこにいた...
元々幻想郷の住民ではなかった彼女ではあるが、先の異変により旧友のぬえにより外の世界から呼び出された大妖怪である...
もっとも異変が早急に終わり...彼女の出番はなかったため...暇を持て余していた....
彼女は満足そうに煙の方向を見つめている...
「ぬえ坊から緊急でここに呼び出されて退屈だったが...くそ狐を退治することができたのは行幸じゃ!佐渡よりも楽しむことができるわい!!」
ご機嫌なマミゾウに対し、騒ぎを聞きつけたぬえが彼女の近くへ現れる...
「おい!!マミゾウ!!何か嫌な殺気...予感を感じとったんだけど!?」
「む?ぬえ坊どうした?」
首を傾げるマミゾウにぬえは煙の出ている方向を見てワナワナした様子で口を開く...
「...ね...念のため聞くけどさ?お前...何も問題は起こしてないよね?」
冷や汗塗れのぬえを差し置いて、マミゾウはヘラヘラ笑う...
「ん!?さっきくそ狐共の住処を爆破したところだが?」
「おま!!!な!何をやっているんだよー!!!」
ぬえの絶叫が響き、マミゾウは笑みを崩す...
「は?どうした?」
「どうしたもこうしたもねえよ!!お前今とんでもないことをやらかしたんだぞ!!!」
ぬえがマミゾウに掴みかかり揺さぶる...
「とんでもないことじゃと?タヌキの天敵である狐の住処を爆破して何が悪い?」
「アイツらは只の狐じゃねえんだよ!!!下手をすればお前消されるぞ!!」
「はっ!儂が?あははは!!馬鹿を言うな!!」
ぬえの言葉をマミゾウは笑い飛ばすが、ぬえは彼女に詰め寄る...
「大神家は伝説級のヤバい奴らの集まりなんだよ!!!私も過去にあいつ等にちょっかい出して消されかけたんだよ!!今ならまだ間に合う!!謝ってこい!!」
「ふん!断るわい!!何故狐共に頭を下げないといけないのじゃ!!それにの?儂の幻術に掛かればどんな奴でもイチコロよ!」
「あいつらに幻術が効く訳ないだろ!!!それに...あっ...」
ぬえは話を中断し、門の方を見つめる...
「見つけた...犯人みーっけ!!!」
門の所には、大神家の一人である大神銖理がいた...いつものロッカー風の服装に変わりはないが、顔にはホッケーマスク・手には電動のこぎりを持って体をユラユラさせている...
「あ...あ...来ちゃった...大神の切込み隊長が来ちゃった...」
「何を臆しておる!」
絶望した表情で銖理を見つめるぬえをマミゾウは笑い飛ばすが、ぬえは真剣な眼差しで彼女に掴みかかる!
「頼む!マミゾウ!謝って!!このままだとお前マジでタヌキ鍋だぞ!!!」
「嫌じゃ...」
「NOOO!!!」
ぎゅいいいいん!!!
悶絶するぬえを尻目に銖理は電動のこぎりを鳴らす...
「御託は終わった?じゃあバラバラにされる覚悟は出来ているよね?」
ぬえ達の方へ向かう銖理をぬえは慌てて止める...
「待って!!謝らせるから待って!!時間をくれ!!」
「...ダメ...母さんから犯人のタヌキを見つけて連れてこいと言われているんだよね...生死は問わないと言われているし...」
「ぎゃああ!?殺す気満々!!」
パニックに陥っているぬえを尻目にマミゾウはせせら笑っている...
「ふん!それにしても糞狐の集まりにしては儂を探すのは早かったの?それなりに証拠は残さなかったはずじゃが?」
マミゾウの言葉に銖理はイライラと歯をカチカチさせる...
「私の姉には妖力の探知に長けているのがいるんだよ!!...もっともここへは来れないけどね...屋敷の修復を任されたし...」
マミゾウはヘラヘラ笑う...
「そうかそうか!!つまり糞狐共は全員は来ることは出来ないという事じゃな!ならお前さんに幻術をかけて...儂は退散するとしよう...」
マミゾウはキセルの煙を銖理に吹きかける...
妖力を纏った煙は銖理へ纏わりつく!!
「...っ」
「これでお前さんは儂を認識できなくなった!!どうじゃ?これが佐渡のマミゾウの年季の入った幻術...」
ドス...
「...は?」
マミゾウは音の方向を見る...彼女の真横には手斧が刺さった灯篭があり、それを見て彼女は顔を青くする...
「な...な...」
「小細工は済んだ?悪いけど...大神のメンバーにはそういう術は効かないのよね?」
銖理は新たな手斧を用意する...自慢の幻術が効かないと判断したマミゾウは、さっきと態度を改める...
「待て待て!!これは...冗談だ!!お前たちにしたことは謝ろう!!そうしよう!!」
マミゾウは打って変わって謝罪をするが、それは銖理が許さない...
「...散々時間はくれてやったつもりだけど?今夜の料理はタヌキ鍋がいいかもね!」
「嫌じゃー!!!」
マミゾウは尻尾を巻いて逃げ出す...
「おい!!マミゾウ!!!」
「狩りの時間だ...他の姉にも連絡を入れておいたほうがいいだろう...」
ぬえが叫ぶが既に彼女の姿は無し...銖理の方は端末を弄りながら独り言を零す...
その瞬間に...命蓮寺一帯を巨大な透明なドームが生成される...
「け...結界?」
「銖理特製の結界術...これであのタヌキは逃げられない...さて...どこまで持つかな?」
「ぜぇ...ぜぇ...」
命蓮寺の墓場の端にて...マミゾウは息を切らす...
そして空へ映る結界を見て更に顔を青くする...
「くそ!!結界まで張り追った!!これでは逃げることが!!」
辺りを見ても味方はいない...そんな彼女の後ろに近づく影が...
びゅ!
「なっ!!」
危険を感じ...マミゾウは飛んでくるモノを回避し、飛んできた物を凝視する...
彼女が見た先には、濡れている石段...飛んできたのは水だと分かったマミゾウは辺りを警戒する...
「今度は!!水?知っておる!!白蓮の弟子じゃろ?そういえばあやつも糞狐じゃったな!!いるのは分かっておる!!出てこい!!」
「...潤香の奴は屋敷で修復作業中だ...相手を見誤ったな...佐渡のタヌキよ...」
墓場の裏から現れたのは、ガスマスク着用の大神家の一人大神華楠が姿を現す...手には怪しげな色をしたフラスコを持っている...
「な?」
「驚くことはないだろう?貴様に引導を渡すのは大神家の者だ?どうせ貴様はここで終わる...」
「ふ...ふん!!鈍そうな貴様に遅れはとらんわい!!!」
虚勢を張るマミゾウだが、華楠はとある方向を指さす...
「これが数分後の貴様だ...」
「...」
華楠が指さすのは、さっきまで濡れていた石段がドロドロになっている光景...それを見てマミゾウは唖然をしている...
「な...何でじゃ!!」
「只の強烈な溶解液だ...これは私特製...無機物だろうが何だろうが溶かす代物だ...さて...まだストックもあるし...溶けてもらおうか!!」
「お断りじゃー!!!!」
マミゾウは一直線に逃げ出すが華楠は負けじと危ない液体入りのフラスコを投げる!!
「逃げるな!!貴様の所為で!!秋姉妹との約束がパーだ!!!後で怒られる私の身にもなれ!!!」
「うわあああ!!!」
マミゾウはそのまま命蓮寺の方へととんぼ返りし、墓場には肩で息をする華楠の姿が...
「はぁ...はぁ...寺の方へ逃げたか...これは好都合だ...流石にも第三者の墓場で暴れるのも...いかんからな...後で境奈にここの修復をお願いしないとな...」
華楠はドロドロに溶けた石畳みを見て溜息をつきながら...端末を弄る...
「さて...袋のネズミもとい...たぬきだな...」
華楠はフラスコを振りながら、命蓮寺の方へと足を進める...
「ぜぇ...まずい...追い込まれておる!!」
マミゾウは辺りを警戒する...大神家の刺客である銖理と華楠が徘徊しているこの命蓮寺...会ったら最後ということになる...
「おい!そこで何をしている!!」
「あ?」
マミゾウが声の方を向くと、そこには赤い髪の大神家...大神煌炉がいた...
「お主は...大神の糞狐!!」
「早く逃げろ!!!姉さん達はやり過ぎだ...私についてこい!ここから脱出させてやるから!!」
マミゾウの言葉とは対照的に煌炉の言葉は、マミゾウを助けようとしている言葉だ...
「...」
「さぁ!!早く!!私についてこい!!さぁ!!早く!」
煌炉が手を伸ばすが、マミゾウは怪訝そうに見つめている...
「おい...糞狐...お主...演技が下手じゃな...」
「...何を言っている!早くしないと私の姉妹が!!」
煌炉は手を伸ばすが、マミゾウは距離を取る...
「ふん...お主は嘘がつくのが下手...演じているのがバレバレじゃ...それに...その袖に何を隠し持っておる?」
「...」
マミゾウの言葉に煌炉は袖を抑える...その行動を見てマミゾウは確信する...
「儂に騙しごとで挑むのはお粗末だったな...大神の糞狐!!」
「...あは♪すごいね!やっぱり騙しごとは私には合わないね!」
煌炉は袖を捲る...
彼女の右腕には...大きな骨切り包丁...煌炉はブラブラと手を振りながらマミゾウへ近づく...
「全く...華楠姉さんと銖理の3名で仕留めようと思ったのに...あの二人は何をしているんだ...私がこんな回りくどいことをしなくてはならなくなったじゃないか...」
「お主も中々の豪胆じゃの?...その包丁で儂を仕留めようとしたのか?」
「いや?...私の仕事は後処理だ...家では家事担当でね...タヌキ肉を解体しようと...」
「もういい!!このサイコパス共が!!!お主らがそれだけ危険か!身をもって理解したわ!!!」
マミゾウは大神家の者達の危険性を今頃理解する...
だが...時すでに遅し...
ぎゅいいいいん!!!
「はいはい!見つけたー!!」
電動のこぎりを持った銖理....
ジュウゥ...
「追い詰めた...考えてみたら...11時に!幽香とティータイムだったではないか!!遅刻確定...半殺し確定だ!!!どうしてくれる!!」
危ない液体を撒き散らしながら、現れる華楠...
ぞりぞり...
「役者は揃った...どうする?」
骨切り包丁で自身の爪を磨いている煌炉...
大神家3名がマミゾウを囲み、迫りくる死にマミゾウはへたり込む...
「待て!悪かった!!もう悪ふざけはせんから!!!」
マミゾウの言葉に銖理が電動のこぎりを振り上げる...
「懺悔は済んだ?大神を舐めたこと...悔いながら絶望しろ!!」
ぎゅいいいいん!!!
「嫌じゃー!!!!!」
銖理がマミゾウに向けのこぎりを下ろす!!!
「...?」
ぎゅいいいいん!!!
「ここでは殺生は禁止ですよ!」
マミゾウが目を開けるとそこには電動のこぎりを真剣白羽どりをしている聖白蓮の姿...
辺りの者はその光景を見て目を見開き...
電動のこぎりを操っている銖理も驚愕している...まさか電動のこぎりを止められるとは思っていないだろう...
「は?止めるとか...嘘でしょ?」
「止めていただけると助かりますよ...銖理さん...」
「...う」
白蓮の言葉通り...銖理は電動のこぎりの電源を切り、制裁をやめる...
15分後...今までのことが白蓮に話される...そして...
「申し訳ありません!!大神の方々!!!」
「...」
頭を深々と下げる白蓮と強制的に頭を下げられているマミゾウの姿...
流石の大神家の者達もその姿をみてタジタジになる...
「いや...君が頭を下げる必要はない!そこのタヌキを渡してくればそれで...」
「駄目です!!このヒトもここの一員です!!!だからどうか!!!」
白蓮の頼みに華楠は口を閉ざす...彼女としてもどうすればいいか分からないのだろう...
「...いいよ...今回は撤退しようよ...二人とも」
端末片手に口を開く煌炉を華楠と銖理は不服そうな顔をする...
「何故っスか!?煌炉姉!!!銖理たちの屋敷爆破されたんッスよ!!!」
「それに母さんからの命令はどうする気だ?お前の一存では決められないぞ...」
「...その母さんが良いと言ったからだよ...緊急連絡で私達は早く帰って修復の手伝いをしろって訳...」
煌炉は煙草を吹かしながら、端末を爪で弾く...
「...まじ?」
「おい...母さんが一番怒っていたじゃないか...」
「メールには...白蓮には潤香がお世話になったから、今回は大目に見る♪まぁ...今回私達を向かわせたのは次はないという警告だけどね~♪」
煌炉はメールの文章を読んだ後、マミゾウをジッと見る...
「P.S...次やったら、ぶんぶく茶釜の刑にするから...以上だ...」
煌炉は端末を懐にしまい、門へ向かう...
「何か腑に落ちないッス...」
「私はこの後どうすれば?流石にも...殺されたくは...」
意気消沈した華楠・銖理も煌炉の後へついていき、命蓮寺を後にする...
「...少し貴女には説法が必要です!」
大神家が去った後、白蓮はマミゾウの襟首をつかみ引きずる...その顔は笑顔に見えるが、どこか黒い笑みに近い...
「...お手柔らかにの?」
堪忍したマミゾウは抵抗もなく寺の中へ引きずられる...
これにて...早朝の狐と狸のイザコザもこれにて無事終了する...
今年最後の投稿です!
ではこれにて