「誰が不人気だ!!」
秦野こころの決闘が終わった深夜...幻想郷の竹林にある夜雀庵では、大神家の一員である大神銖理がカウンターに座って酒を飲んでいる...
いつも以上の機嫌の悪さと、普段の恰好と違う彼女を見て女将であるミスティア・ローレライは心配そうに彼女を見つめていた...
sideみすちー
「...荒れているわね」
銖理を遠目に見ながら私は食器を洗う...
前の異変の後から銖理は変わったわね...ここまで荒れているのは見たことがないわ...今回の件が効いたのかしら?
「みすちー...もう一杯...」
銖理が盃を私に近づけてくる...いつも以上にペースが速いわ
「少し飲みすぎよ?明日に響くわよ?」
「ん!!」
私が酒を注ぐと彼女はそれを一気飲みする...
「ふふぁ...どうせ...私は人気はありませんよーだ...全部持ってかれた...」
彼女はうなだれるようにカウンターに突っ伏す...
「人気云々ではないわ...ライブはどうするのよ?銖理のイベントを楽しみにしている人はどうするのよ?」
「ライブ?そんなイベント忘れてしまった...しばらくは休業...母さんの仕事の方に重点を置く...」
私の言葉も届かず、彼女はやさぐれる...もう...私が楽しみにしているのになんてこと!!
「むむむ!!」
「悪いとは思っている...でも今は無理なんだよ」
銖理から頭を下げられる...
「今は無理って?」
銖理は迷ったような顔をするが口を開く
「今の私は...前のように歌えない...今更やったところで前の劣化ライブしか行えないんだ...」
「どうしたのよ?おかしいわよ?そこまで後ろ向きなんて?」
「あの時の敗北が堪えたのかな...以前の歌い方が出来なくなった...声が思ったより出ない...調子が上がりきらなくなった...どうしてだろう...こんなんじゃ...無理」
銖理はカウンターに頭を軽く打ち付ける...
...一種のスランプ...多分精神的なものね?前の異変の時に白蓮に酷く負けて、元々のファンが移ってしまったのが原因かしら?
「...それに関しては私が言うことではないわね...しばらく休んでみた方が先決ね」
「時間が解決してくれればいいんだけどね...」
銖理はカウンターを立ち、お札を置く...
「お勘定...釣りはいらないよ...今日は寝る」
銖理が出ていこうとするが私は彼女を止める...
「待って銖理!!泥酔しているだから今日はここに泊まりなさいよ」
「...でも...まだ開店時間だし?」
「奥の部屋使っていいわ!とりあえず寝なさい!」
「...感謝するよ」
大人しく銖理は奥の部屋へと進んでいく...しかし...この状態の銖理は何起こすか分からないわね...彼女が何を起こすか分からないから私が面倒を見ないとね...
「うおい!空いているか?」
「はいはい!ただいま!!」
新たなお客さんがやってきた!とりあえずは目の前の仕事を優先しないとね...
同時刻...八雲家
「煌炉~♪」
深夜の八雲家にて、八雲藍がスキップしながら風呂場から出てくる...彼女は寝間着用の着物の姿で煌炉の部屋へと移動する...
「今日は煌炉が来る日だ~♪そして私の日だ~♪」
煌炉の部屋にたどり着いた彼女は戸を開けて中へ入る...
部屋の中には、布団が敷いてあり、そこには大神煌炉が寝息を立てている...それを確認した彼女は満足気な顔をする...
「流石にも寝ているな...私の仕事が終わらなかったのだから仕方がない...だが...お前の温もりはちゃんと味合わせてもらうぞ~♪」
藍は毛布をめくる...
「zzz...」
「すぴー!」
「う...うがああああああー!!!!!」
彼女が見た光景は...煌炉に抱き着いて眠っている八雲紫の姿...その光景を見て彼女は頭を抱える...
「今夜は...私の番だというのに!!!」
藍は血走った目で壁にかかっているカレンダーを見る...
カレンダーには藍・紫と日付事に書かれており、今日の日付には藍と大きく書かれている...
どうやら煌炉が来る日に交代で布団に潜り込んでいるようだ...今日は藍の日だというのに紫が間違えてしまったのだろう...
「うううう!!!」
藍はしばらく辺りを右往左往していたが、意を決したのか押し入れに向かい、煌炉たちが眠っている布団の横に布団を敷く...
「今日は私の日だから紫様でも駄目です!」
藍はそう言い、紫を抱きかかえ隣の布団に寝かせた後、煌炉の入っている布団に潜り込む...
「~♪」
煌炉をしばらく抱いた後、彼女が眠りにつく...
30分後
「へっくし!!」
大きなくしゃみをして紫が飛び起きる...彼女は辺りを見回して自分の状況を理解する...
「あ...あれ?何で煌炉が藍のところに?」
紫は目をこすりながら、壁にかかったカレンダーを見る...もちろん今日の日付には藍の名が書かれている...だから今日のイベント?には藍が煌炉のとなりに寝てても良いはずなのだが...
「...」
紫は黙ってカレンダーを壁から引き剥がして、ゴミ箱へと入れる...
そして眠っている藍のところへと向かい、彼女の尾を引く
「カレンダーのことなんて知らないわ!!私の眠りの邪魔は許さないわ!!」
紫は無茶苦茶を言いながら藍の尾を引くが彼女は微動だにしない...
「らーん!!!ええい!邪魔よ!!」
紫はスキマを展開し、藍をその中へと落とす...それを見届けた彼女は満足気な顔をして煌炉の布団へと潜り込む...
「...ぬくぬく~♪」
しばらく煌炉を堪能した彼女は眠りにつく...
同時刻...妖怪の山...
妖怪の山の大滝の近く...そこにはそこを警備している犬走椛の姿があった...
「うう...寒いな...深夜の見張りなんてやってられないよぉ...」
寒そうに手に息をかけながらボヤク彼女は遠くの景色を眺める...その方向には射命丸文の自宅があり彼女は能力を使ってじっと見つめている...
「文様と境奈様はいちゃいちゃですか...全く...ずるい」
椛が見た光景は...文の自宅にて境奈の衣服を剥ぎ取って馬乗りになっている文の姿...文の表情は意気揚々としているにかかわらず、境奈は恐怖に満ちた顔をしているが...
「はぁ...境奈様胸が大きいなぁ...あそこに顔を埋めたい...」
ザバーン!!!
「ひう!!!!」
その光景をぼーっと眺めている椛だったが突如響く大きな水の音に驚く...
「な!?何?侵入者?」
彼女は波紋がたつ、川の水面に刀を構えて近づく...
「うがあああ!!!何故だ!!!」
「!?」
川の中から飛び出したのは、怒り心頭の八雲藍の姿...彼女はその光景に慄いており、藍は辺りを見回して自分の状況を理解する...
「私は...煌炉の布団の中にいたというのに!!さては紫様...あの人の仕業かー!!!」
藍は椛に意も介さず八雲家方面へと走る...
「...え?何?」
それを茫然と眺めている椛を置いて...
八雲家...
「この寒い時期に...川に落とすとはー!!」
屋敷の塀を乗り越えて、藍は八雲家の庭に着地する...彼女はそのまま屋敷へ入らずに倉の中へと向かう...
「今日は私の日だというのに!!」
藍は蔵の中から投石器を引っ張り出して庭にセットする...
そして煌炉の部屋へと入り、眠りについている紫を抱えて投石器にセットする...
「おらぁ!!」
投石器のスイッチを押し、投石器が作動する...紫の体はいともたやすく幻想郷の夜空へと消える...
同時刻...妖怪の山...
妖怪の山の大滝...そこには先ほどと同じく犬走椛が体育座りをしながら文の自宅を眺めていた...
「はぁ...いいな...」
彼女の視線の先には、境奈に覆いかぶさっている文の姿...境奈は必死に抵抗して脚をばたつかせていたようだが、とうとう力尽きたのかその脚重力に従い畳へと落ちる...
「...終わったようですね」
ガサガサガサ!!!
「ん!?」
突如の木の鳴り響く音に彼女は驚く...そして林の奥から葉っぱまみれの八雲紫が姿を現す
「ええ?今度はこっち?」
「藍...よくもこの私の眠りを妨げたわね...こうなったら戦争よ!!戦争!!あはは....ゆかゆかゆかー!!!!」
意味不明なことを叫びながら紫は八雲家方面へと走り出す...
「...能力使って帰ればいいのに」
茫然としている椛を置いて...
八雲家...
「八雲ゆかりん!帰還したわ!!」
八雲家の塀を乗り越えて紫は庭に着地する...
「しゃおら!!!」
「あぶな!!」
そして突如の不意打ちを躱して、彼女はその者を見据える...
そこにはびしょ濡れ状態の藍が息を切らして立っていた...
「紫様...」
「藍!!どういうことよ!!何で私の邪魔をするのよ!!」
「今日は私の日でしょうがー!!!私の邪魔をしたのは貴女じゃないですかー!!」
怒り心頭の藍に紫はわずかに慄く...
「ゆかりん!そんなの知らないわ!!!主のことは絶対なのよ!」
「幾ら主でもこれ以上の狼藉は手を出しますよ!!ふしゃー!!!!!」
自分の主に向けて獣のような威嚇をする八雲藍...
「ゆ...ゆかりん!!ゆかりん!!!ゆかりん!!!!!」
そして負けじと訳も分からない威嚇をする八雲紫...
そんな二人の不毛な争いは明け方まで続くのであった...
そして翌朝...
「...!...ふぁぁ」
八雲家にて目を覚ました煌炉は布団から起きて伸びをする...彼女は目をこすりながら布団の中をめくる...
「...すにゃ~すにゃ~」
布団の中には橙がおり、煌炉は彼女の頭を軽く撫でる...
「あらら...寒かったから来ちゃったのかな?」
彼女は彼女を起こさないように部屋を出る...
「うぇ!!?」
部屋を出た矢先、庭の方を見た彼女は驚きの表情を浮かべる...
庭には真っ白な状態で倒れている、八雲紫と八雲藍...
「な...何だこの状況は!!!ちょ!!紫!藍!!」
煌炉は慌てて彼女達を助け起こしに行く...
もちろん...紫・藍は風邪をひき...煌炉が看病することになったのはいうまでもない...
次回も日常編、すぐにできるかも
ではこれにて