紅葉が散り、冬が近づいてきた幻想郷...
幻想郷の端に存在する神社こと、大神神社ではいつも通りの日常生活が行われていた...
「ふんふーん♪」
「あ...華楠~ソース取って」
「ああ...」
「今日の味噌汁...ちょっと失敗したかも」
「そう?煌炉姉?」
「ずずず...」
いつも通りの家族が揃った朝食の最中である...いつも通りの平和な時間が流れていた...
この時までは...
side暦
ピンポーン!!
「ん?」
玄関のチャイムが鳴り、私はその方向を向く...こんな時間にここに来訪者とは珍しいものだ?
「客か?私が応対しよう」
「んにゃ...私が近いから私がやるよ」
私は居間から出て玄関の方へ向かう...
「はいはーい!どちら様?」
私は玄関の戸を開ける...
「おはようございます!暦様!」
「やっぽー!狐のお姉さん!」
玄関の前には、悟り妖怪こと古明地さとり・こいしの2名がいた...
「うん!おはよう!じゃあ!」
ぴしゃん!!
かち...
私は戸を閉めて、鍵をかける...自身に尾がついていないことを確認する...
「...嘘だ」
何でこんな朝早くにあの2人が!?何でわざわざ神社まで来た?まずい...嫌な予感しかしない!
地霊殿での悪夢が蘇る!!屋敷中を追い回されてブラシをされるというあの悪夢が!!!
冗談じゃない!!私はともかく...娘たちはブラシを食らって全滅したというのに!!
がしゃん!!!
「おわ!?」
突如戸に破砕音と共に穴が開く...私の目の前には巨大なブラシが眼前に...
「酷いですね...暦様?せっかく来たんですし入れてくださいよ?」
穴の中からさとりの腕が飛び出し戸の鍵を解錠する...
「な...何でここに?」
「まぁ...少々言いたいことがありまして...宜しいですよね?」
「...どうぞ」
私は彼女達を居間へと案内する...
居間へと案内すると場の空気が凍り付く...もちろん私の娘たちが唖然とした表情でさとり達を見つめている...
「...何で?」
「嘘でしょう?」
「あの時の悪夢が蘇ります...」
「はぁ...」
「...」
娘たちは何で迎え入れているんだと言いたげな目を私に向けるが、私は悪くない!!
私はもと居たところに座り、さとり達を見る...
「んで?何の用かな?できれば手短にお願いしたいな~」
「暦様!!今回私は怒っています!!」
さとりは急に私に向けて言い放つ...
「えーと?さっきの件かな?ごめんね~急に来たから勝手に手が...」
「そういうことではありません!この前の異変の時!こいしを虐めたというのは本当ですか!?」
...虐めた?
娘達は一斉に私の方を見る...
「何をしたんだ?」
「ほら...何をしたのよ?早く謝りなさいよ?」
「謝罪を要求します...お母様」
「記憶にありません...」
この前の異変でこいしを虐めた?それはない!!それどころか彼女に負けたら強制的に地霊殿行きだったのだもの!!逃げるに決まっている!!
あの時の勝負はドローだったもの!!私の逃亡で勝負がついたはず!
「うえーん!お姉さんに虐められたよー!!」
こいしは顔を隠しながら棒読みで言う...手で顔を覆っているが...笑いをこらえているようだ...私にはそういう手は通用しない!
「こいし!泣いているのね?」
「泣いてるよー」
さとりが確認し、彼女は返答する...本気で泣いている子が泣いてるって言わないから!!
「私の可愛い妹によくも!!貴女にブラシを要求します!!これは私達に対する慰謝料です!!いいですね!!」
さとりが私に向けて言い放つ!!
やっぱりブラシが目的か!!!この子達~!難癖つけてここに強襲しに来たのね!!
「見た?ほら!!言いがかりだよ!見てよ!」
私は娘たちの方を見る...
「うむ...仕方ない...母さん一人のブラシで済むなら問題はない」
華楠が言い放つ...
「は?待って...華楠!!何を言っているのよー!!」
「そうね~...今回の件は母さんに落ち度があったから責任はそうよね?」
境奈...貴女まで!!
「責任にはそれなりの罰を...大神教第998条にも書いてありますし...」
潤香ー!!適当な戒律を作っているじゃないわよ!!
「左に同じく...」
「右に同じく...」
煌炉!銖理!貴女達まで私を売るというの!!この親不孝者!!
「ぐぐぐ!!!」
「これで良いだろう?だから私達は無罪放免で...」
「駄目です!華楠さん!!娘の貴女達も連帯責任です!!」
さとりからの無情な死刑宣告と共に娘たちの顔が、さっきとは打って変わって青白くなる...
「な?」
「は...はぁ?」
華楠・境奈が困惑の表情を浮かべるが...問題はない...やっぱり全てはフェアでなくては!!平等万歳!!
「というより...ブラシを行えるわけないでしょう?私達今は人間の姿だし...このままを維持すれば問題ないし...」
銖理の言葉に私達は彼女の方を向く!!
そうだ!今の私達には尾がない!!さとりには悪いけど尾のない私達をブラシはできない!!これで万事解決!!
「ははは!!考えてみればそうだよね!!さとり!悪いけど今日のところは...」
「許すわけないでしょう?」
さとりがスイッチを取り出してそれを押す...
「!?」
それと同時に急な脱力感に襲われて私達は床に伏す...何でこんな?
「...!?何で?」
私は娘たちの方を見て口を押える...
娘達の姿は9本の尾を持つ半獣の姿...何でこんな姿になったか分からない...どうして?
「あ...貴女達...こころ変わりでもしたのかしら?」
「そんな訳あるか!!母さんだって自分の姿を見てみろ!」
「...はい?」
鏡で自分の姿を確認すると、そこには尾が4本生えた天狐の姿の私の姿が!?
「何で!?」
「ふふふ...驚いているようですね...中々良いですね貴女の姿は」
「な...何をしたんだ!?」
華楠が叫ぶと、さとりは笑い始める
「少し小細工をさせてもらっただけですよ...現在この大神神社の一帯は結界で覆われています...これで存分にブラシができるというものです」
「結界?貴女にそれができるわけ...」
この子は妖怪!能力だって心を読む力でしかない...こんなことできるわけが...
「博麗の巫女にお金を積んでやってもらった次第です...少々高くつきましたがね」
「ぐぐぐぐ!!?」
霊夢の奴~!さとりに協力しやがって~お金を積まれたからって、よくもこんなことをー!!
「事前の対応はばっちりです...大神家の皆様の能力遮断は厄介ですからね...直接はともかく...範囲で封印されたらそれも無力、これで貴女達の姿も私の思いのまま、それに暦様...貴女の協力も感謝しているのですよ」
「は?」
協力?何のこと?
娘達の方を向くと彼女たちは非難がましい目で私を見つめる!!
「協力って何だ!?」
「何をしたのよ!答えろ母さん!!」
「この際貴女をここで...」
何か殺気じみてるー!!!味方がいないー!!!
「記憶にありません!!!!本当です信じてください!!!」
「物的証拠もあるのですよ...暦様」
さとりは懐から何かを取り出す...赤と青の千切れた鎖?
「...あれ?何か既視感が?」
「既視感も何も母さんのゲノムチェーンじゃないかー!!!何であれを持っているんだ!」
...そうだ私の能力で作った鎖!!何で彼女が持っているの?
「以前の地霊殿での異変の時、貴女はうちのお空と戦いましたよね?その時あの子が引きちぎった残骸です...これを研究し貴女達の体をいとも簡単にコントロールできる道具を作ったまでです」
さ...最悪だ...確かに私のゲノムチェーンならば、私達の能力遮断を無効化できる...あの時ちゃんと回収しとけばよかった!!!
「ま...待った!!流石にもこれは中止しろ!!前例がないものを試すんじゃない!!何の危険があるか分からない!!」
華楠が中止するように言うが、さとりは首を横に振る...
「ちゃんと実験はしましたよ...ちゃんと体には害のないことは証明済みです...それに暦様...貴女という被験者が居たおかげで良いデータが取れたというものです」
「は?」
被験者?そんなことした覚えがない...
また娘達の方を向くと、もう...怒っているとしかいえない顔をしている
「何度協力すれば気が済むんだー!!」
「母さん!謝って!!!謝ってよ!!!!」
「この際お母様を縛り付けて...」
「...動けないようにボコって終わりでいいじゃない?」
あああ!!もう!味方がいない!!!
「知らない!知らない!!知らないもん!!!!私悪くない!被験者になった覚えはない!!!」
身に覚えがない!!私自身ゲノムチェーンを体に打ち込むことなんてほとんどないというのに!!
さとりは不適に笑い始める...
「こればかりはもう一人協力者がいたんですよ...二ツ岩マミゾウさん...この方の名前に覚えは?」
「何であのタヌキが?」
何であいつの名前が...あいつとは面識は殆どないし、会ったのも前の異変...
「あ...」
前の異変のことを思い出して、私は全てを理解する...
「あ...って何だ?母さん...身に覚えが?」
「うん...そういえば前の異変の時にあいつにゲノムチェーンを差し込まれて...一時的にあいつの術が私に効くようになっちゃったんだよね...多分その時...」
あの時...確かにそうだ...あいつの幻術は私達には効果はないというのに、あいつの道具を食らって無効化にされた...その後ボコボコにされたのも覚えている...
「とりあえず?理解はできましたか?」
「うん...分かったけど...分かったけどさ!!」
正直ブラシは嫌だ...絶対にこれだけは回避しないといけない...とりあえず...打開策を考えねば...
「...」
「...」
「...」
「...」
周りにいる娘たちも冷や汗ダラダラで目を泳がせている...
「ずー!...で?ブラシでしょう?さっさとやったらどう?」
「!?」
第一声を放ったのは煌炉!!彼女は特にこの状況に怯むことなく、お茶をすすっている...
「こ...煌炉...何でアンタ平気なの?」
境奈の言葉に煌炉は鼻を鳴らす
「ふん...もうこっちはブラシされようがどうでもいいんだよ...毎回毎回...藍に捕まってブラシされて、ある程度は耐性がついたんだよね...」
「お...お前...何勝手に一人耐性作っているんだ!ずるいぞ!!」
「そうだよ!...何で煌炉姉!!」
他の姉妹から不平不満の声が上がるが、煌炉は我関せずといった態度をとっている
「これは私の努力だ...必死に耐えて...ある程度はブラシ食らっても大丈夫になったんだよ...分かるか!?さとり並みのブラシ技術を持った藍に毎回ブラシされている私を!!幾ら何でも批難される覚えはない!!」
何故か半ギレ状態になっている...彼女なりの努力ね...
そして煌炉はさとりに近づく...
「とりあえず...手早くお願いね...この後人と会う約束をしているから...」
「ふふ!潔いのは喜ばしいですよ煌炉さん...」
さとりはブラシを出して煌炉の尾に当てる
「でも...」
「ん?」
「藍さんが私並みになった?それは違いますね...私のブラシ技術は...」
さとりは煌炉の尾にブラシを一撫でする...
「ふぎゃ!?」
煌炉はその場に倒れる...
「え?」
煌炉が倒れた?何で?耐性があったんじゃないの?
「日々私のブラシの技術は進化しているのです...一緒にされては困りますね」
耐性持ちがやられたー!!!煌炉でこうなるということは私達は只ではおかないじゃないの!!!
「総員撤退!!」
「いやああああ!!!」
「嫌だー!!!」
「うわああああ!!!」
その光景を見た娘達が散り散りになって逃げだす!!!
「待ってー!!置いてかないでー!!!」
私も屋敷の奥へと逃げる!!!まさかまたあの悪夢が再来するなんて!!ついてない!!
sideさとり
「逃がしませんよ」
私は奥に向かいながらトランシーバーを取り出して、通話を開始する
「お空・お燐...屋敷の外の警備は任せたわ」
(うにゅ!!任された!!)
(はいはーい)
外の警備は万全...残りの方々をこの屋敷内で追い詰めればこの計画は完璧となる!
「こいし!行くわよ!!根こそぎブラシをするわよ!」
「OK!お姉ちゃん!!」
私達は屋敷の奥へと向かう...さて狐狩りの時間です...今度こそ貴女にブラシを!!
次回逃走中
ではこれにて