大神神社に突如やってきた大神家の天敵である古明地さとりとこいし...
彼女達は難癖をつけて尾をブラシさせろという脅しをかけて襲いかかってくる...
大神神社に散り散りなって逃げる大神家のメンバー...彼女達は無事に生還できるのだろうか?
残りメンバー 大神暦〇 大神華楠〇 大神境奈〇 大神煌炉× 大神銖理〇 大神潤香〇
sideこいし
狐のお姉さん達が逃げ出して、私とさとりお姉ちゃんは、彼女達を追うために長い廊下を歩く...
廊下を見る限りこの屋敷自体がとてつもなく広いことがわかる...どうしよ...
「お姉ちゃん...これからどうする?」
「心配無用よ!こいし!こういう時の為にこれを持ってきたから!」
お姉ちゃんは、大きな籠と紐のついた棒、そしてお皿の上に乗ったお稲荷さんを取り出す...
廊下にお稲荷さんを置きその上に籠をかぶせ、そして紐のついた棒で籠を半開きの状態にする...これって...よくある典型的な罠だよね?
「どう?これで大神家の皆様を嵌める罠の完成よ!」
「...今時小鳥もかからないよ」
何だろう...お姉ちゃん頭が良いはずなのに、何か予想の斜め上を行くんだよね...こんなんじゃ...いつまで経っても終わらないよ...
ガタン!!
もしゃもしゃ!!
「!?」
急に籠が閉まる?そして中で何かが咀嚼している音が聞こえる?
「かかったわ!!」
「...うそん?」
予想しない誤算だけど...これでいいのかな?私は恐る恐る籠を開ける...
「もしゃもしゃ...」
そこにいたのは、金色の尾をもった狐こと八雲藍...確か妖怪の賢者の式神だったよね?同じ狐でも違う狐だったか...
「...」
「...」
私達が言葉を失っていると、彼女は私達に気づく...
「む!お前はー!!!!」
そして私達に尻尾を逆立てて威嚇をする...
「私の煌炉をまたしてもー!!!」
何やらお姉ちゃんに怒り心頭な様子...どうしたのだろうか?
「お久しぶりですね藍さん...ブラシの技術は上がったようですね」
だが、藍お姉さんはお姉ちゃんの言葉を聞くこともなくいきり立つ...
「貴様ー!!!私の煌炉にまた手を出したな!!!煌炉が居間で白目剥いて倒れていたんだぞ!!」
「中々良かったですよ...この前よりもランクアップですね」
「うがああああああ!!」
お姉さんは頭を抱えて怒りにうちひしがれている...お姉ちゃん喧嘩売っている気はないようだけど、これは逆効果だよ
「ゆるざん!!!!」
藍お姉さんが殴りかかって来るが、お姉ちゃんはひらりと避けて彼女の尾に一ブラシする
「貴女の尾の調子はどうですかね?」
ばたん!!!!
そして藍お姉さんは声を上げることもなく、その場に倒れる
「さて...これからが本番ですよ...こいし手分けして探すわよ」
「ああ...うん」
私達はその場を後にする...
同時刻大神家西棟廊下にて...
side潤香
非常にまずい状況になりました...まさかさとり達がここへ来るなんて思ってもみませんでした...
地霊殿での悪夢が蘇ります...お母さま以外全員がやられたあの悪夢が...
私としてもブラシを食らうのは勘弁してもらいたいです...
「と...とりあえず...どこからか外に出る経路を探してお暇を...」
長い廊下を歩いていると私の尾を引っ張る力を感じる...
「まずい...この状況は非常にまずいぞ...」
そして何故か私の後をついて回っているのは私の姉の一人華楠お姉様...
何でついてくるのでしょうか?ばらけて行動した方が生存率があがるというのに...
「あの華楠お姉様?付いてこられると見つかる可能性が...」
「待て!!この状況で一人になるのは嫌だ!!また地霊殿の時のようにブラシをされるのは御免だ!!」
「ですからそのリスク回避を...」
「ブラシに耐性があった煌炉が昇天しているのだぞ!!耐性のない私達が食らったら取り返しのつかないことになるのは分かっているはずだ!!ここは協力しよう!!」
「あー...」
確かに唯一耐性のあった煌炉お姉様が脱落したのは私達としても恐怖が強まることになりましたね...これで前回よりも力を増したさとりにやられるのは耐性のない私達にとっては死活問題です...
「とりあえず...外に出ましょう...この屋敷の外に出れば少なくとも能力は使えるはずです...これでならブラシされるリスクは軽減されるかと...」
「ああ!分かっている!...全く...広すぎる屋敷があだになったな...ん?」
くい...くい...
華楠お姉様の尾の1本が後ろに引かれているようだ?
「ん?銖理か?」
華楠お姉様は後ろを向き、私はそっと横から彼女の後ろを見る
「えへへ!!緑のお姉さんに黒いお姉さん発見!!」
「...」
「...」
後ろにいたのは古明地こいし...最悪です...鬼が華楠お姉様を捕まえてしまいました...
「では私はこれで...」
ここは華楠お姉様に任せて私は離脱を図る...
「待て!!見捨てるな!!」
だが華楠お姉様が私の尾を掴み離脱を妨害する!!
「は...放してください!!!このままでは私まで被害が!!」
「待て!家族を見捨てるのか!!!?現在進行形で私が死の淵に向かっているんだぞ!!頼むから助けて!!」
華楠お姉様が更に私の尾にへばりつく...これでは逃げることが!!
「貴女、長女なら若い世代である末っ子に未来を託すべきです!!!私はこんなことで終わりたくはないですよ!!」
「何が若い世代だ!!!!お前と私の年の差は1年もないだろうが!!!」
「この!!」
私は力づくで尾を掴みながら廊下を進んでいく!!!私の尾をつかんでいる華楠お姉様、お姉様の尾をつかんでいるこいしが引きずられる形となっている...
「おま!!どこにそんな力が!!」
「黒いお姉さん!!地味に痛いから止まって!!」
「嫌です!拒否します!!」
このまま逃げ切ってやる!!こんな場所で終わってたまるか...終わってたまるかー!!!!
「姉妹喧嘩は醜いですよ...」
「っ!?」
私の目の前に...ブラシという凶器をもった古明地さとりが...
「あああ...何ということだ...」
私の尾にへばりついていた華楠お姉様も力なくうずくまっている...この距離では...もう逃げることが...
「お姉ちゃん!!早くやって!!!もう持たない!!」
「分かっているわ、こいし...すぐにこの2名を仲良くさせてあげますからね...」
私の眼前にブラシが振り下ろされる...
そして...目の前が真っ暗に...
同時刻...大神家の一室では...
窓という窓に板が打ち込まれた和室...この部屋の主である大神境奈は唯一廊下へと繋がる戸にも板が打ち込まれようとしていた...
side境奈
「はぁ...はぁ...これで封鎖完了...」
目の前の戸に板の打ち込みを終わらせてアタシは金づちを畳へと投げ捨てる...
これでアタシの部屋は完璧に密室になった...窓は封鎖、目の前の戸も封鎖...これでネズミ一匹入ることは不可能となったわ...
「とりあえず...部屋に籠城しておいたほうが良いかもね...下手に動くと見つかりそうだし...」
窓の隙間から庭を眺める...庭には辺りを右往左往している、古明地さとりのペットこと霊烏路空と火焔猫燐がいる...
能力が使えれば何とか逃げることが出来るというのに...これじゃどうしようもないわ...
アタシは部屋の隅っこに座る...とりあえず...今は何もしたくない...
ピコーン!!
「!?」
コートの中から電子音が?慌ててポケットを探るとアタシの通信機が鳴っている!
「発信者は華楠?どうしたのよ?」
アタシはコールボタンを押す
「何よ!?華楠!!アタシは今籠城中!」
「どーも境奈さん...やはり自室で籠城中でしたか...」
「!!!!!?」
か...華楠じゃない...この声...さとり?何で彼女が華楠の通信機を持っているのよ!?
「な...な...」
「ふむ...どうやらこの部屋の中にいるようですね...」
こんこん!
戸がノックされる音が聞こえる!!あの子...今そこに!!
「ああ...あああ...」
「ふむ...戸が開きませんし...何かで押さえていますか...なら今から失礼しますね」
どごぉ!!!
破砕音と共に戸から大きなブラシが飛び出てくる...
「あ...悪夢だぁ...」
そして戸の穴からさとりが首を出してアタシの方へ笑いかける
「見つけましたよ!境奈さん!」
「ぎゃああああああ!!!!!」
それと同時にアタシの視界が真っ暗になる...ブラシか恐怖か...もう知らない...
同時刻...大神家地下にて
その暗く複数のモニターと何やら使い方の分からない機器が多数混在している一室では、大神家の一員である大神銖理がモニターを見て溜息をつく...
side銖理
「華楠姉...境奈姉...潤香が散ったか...」
モニターを眺めながら私は今後の身の振り方を考える...
とりあえずセキュリティールームに逃げ込んだのは利にはなったけど、いつまでも籠城しているとなると境奈姉の二の舞いになりかねない...
早くも私の姉妹達はブラシの餌食になってしまったらしい...残るは私と母さんの2名だけ...もう少し時間を稼いでくれたら良かったのに...うまくいかないものだ
「まぁ...いいや...私はとっとと逃げるだけだし」
モニターを見る限りさとりは境奈姉の部屋、ペット達は庭...こいしは遠くの廊下を歩いている...私のセキュリティールームからは遠いところにいるようだ...
私はモニターの前にある脱出ボタンを押し、壁にできた脱出口を眺める...
「まぁ...この屋敷改造したの私だし...こういう恩恵があってもいいかもね...後は任せたよ母さん」
私はその場から退散する...
出口は人里...さて...事が収まるまで、どこに身を隠そうかな?
同時刻...大神家厨房にて...
誰もいない厨房...端に置かれている戸棚が開き中から大神家当主大神暦が姿を現す...
「...どうしよ」
戸棚から出て彼女は辺りを確認する...
早くも暦以外の子供達はさとりの餌食になってしまったようだ...早すぎるこの状況...何でこんなことになってしまったのだろうか?
「助けー助けは~...ん?」
暦は通信機を取り出して残りの生存者である銖理の位置を確認する...
だが彼女の居場所は大神神社から離れて人里周辺を指している...
それにより銖理が逃亡に成功したことを知った暦は天を仰ぐ...
「あの子!?一人で逃げたなー!!!脱出口があるなら私も連れて行ってよ!!」
彼女は重い足取りで厨房を出るが、廊下の奥からこちらへとやってくる人影を見て立ち止まる...
「暦様ー!!!!!」
そこには大きなブラシを持って走ってくる古明地さとり...まさに、その姿は大きなこん棒を持って走る鬼のような姿...
「ぎゃあああ!!?鬼ー!!!」
がっしゃーん!!!
暦は窓を突き破り外へと避難する、そして入り口の方へ走るがその方向には...
「見つけた!!大神のお姉さん!!」
「うにゅ!!」
彼女に立ちふさがるはお燐とお空...絶対絶命のピンチだが、暦は足を止めない...
「ええい!どけい!!」
スパーン!!
彼女は懐から厨房から持ち出したであろうパイを取り出し、二人の顔めがけて炸裂させる!!
「ふぎゃあああ!?」
「見えないよー!!!?」
顔がパイまみれになった二人は辺りを右往左往し、暦は二人の横を突き進み門の外へ!!
「これで私は自由だー!!」
結界の外に出た彼女は幻想郷の空へと飛びあがりその場から離脱する...
だが、あきらめないのが古明地さとり...
「逃がしません!!ここまで追い詰めたのにー!!」
大きなブラシを持ちながら、彼女は暦の後を追尾する...
「ちょ!?しつこいよ!!」
「貴女の尾をブラシするまで帰れません!!!」
「あああもう!!!!」
二人の空中戦がしばらく続く...
しばらく逃亡が続くと、暦は急に降下し始めて、とある場所へと向かう...
その場所は博麗神社...その光景を見てさとりの口元が緩む...
「ふふ...博麗神社へ助けを求めましたか...だが残念ですね...霊夢さんは私の協力者なのですよ」
大神神社の能力封じの結界を作った霊夢もさとりの手の内...安心したさとりも降下し、博麗神社の境内へと着地する...
「うわああ!!来たー!!」
暦は神社の方へと逃げ出す...だが逃げ場所はないというのに...
「暦様!!負けを認めてください!!」
さとりは暦をロックオンしブラシを構えて飛び掛かる...
「まだ負けてない!!!可能性がある限り私はあがく!これが私の最後のあがきだー!!」
暦は着物の袖から、札束を取り出し、賽銭箱の中へと無理やり入れる...
がっ!!!
何がが衝突する音が辺りに鳴り響く...
博麗神社の境内には、ブラシを振り下ろしたさとりとブラシをお祓い棒で受け止め暦を守っている霊夢の3名の姿が映りだす...
「ぎ...ぎりセーフ...」
「な?霊夢さん!?何で暦様を守っているのですか!?」
さとりが後ろに後退すると、霊夢はお祓い棒を担いで鼻で笑う...
「新しい依頼主が来たからに決まっているでしょう?契約の話を聞くまでは手を出しては困るのよ...」
霊夢は暦の方を向く
「この神社に大金を払うということは何かの頼みがあるのでしょう?暦?」
「話が分かって助かるよ!!私の頼みはね!!私の身をさとりから守って!!」
暦が高らかに宣言すると、霊夢がさとりの前に一瞬で近づく...
流石のさとりでも霊夢が至近距離にいると後退りし始める...
「分かったわ...じゃあさとり...悪いけどアンタ...ここで一回休みね」
「れ...霊夢さん!私は目的の為に貴女に資金の提供をしたじゃないですか!!裏切るというのですか!!」
さとりが叫ぶが霊夢は悪びれもなく頭を掻く...
「アンタの資金の件については、能力封じの結界の作成でしょう?それで終わりよ...それ以外のことに関しては私の管轄外...分かる?」
「せ...せっかくここまで追い詰めたのに...」
さとりは暦の方を見るが、暦はすでに神社の鳥居をくぐってこちらを見て笑っている...
「じゃあ!後は任せた!!」
「OK!」
霊夢が暦に向け親指を立てるとさとりは天を仰ぐ...
「ち...ちくしょー!!!!!」
ドカーン!!
さとりの叫びと共に幻想郷の空に花火が上がる...
それを見送った暦は博麗神社の階段を下りながら通信機を取り出す...
「...もしもし?銖理?無事ー?酷いよ一人で逃げてー!!」
(悪いとは思っているけど...あれが唯一の手段であって)
暦は通信機で銖理に文句を言いながら笑みを浮かべる...その顔は黒い影を堕としている...
「うん...悪いと思うならさ...近日中にさ...ゲノムチェーンを違法複製している工場を閉鎖してくれない?やり方に手段は問わないからさ?ねぇ?」
通信機から聞こえる銖理の声はドンドントーンが落ちていく...
(え?これから?にとりの所だよね?...幾ら何でも暴力は)
「手段は問わないよ?ねぇ?仮にも幻想郷のパワーバランスの私達が...ブラシで壊滅しちゃダメでしょう?分かるでしょう?」
(あう...)
暦の声のトーンは穏やかに聞こえるが、どんどん銖理の声のトーンが下がっていく...大神家の一員であるだけ暦のことを理解している彼女は焦り始めているようだ...暦が激怒していることに...
「近日中...分かった~?」
(...)
プツン...
銖理からの通信が切れ彼女は通信機を懐にしまい、博麗神社から打ちあがっている煙を見つめる...
「流石にも...戯れどころの話じゃなくなったか...全く面倒をかけさせる...」
暦は髪を靡かせながら大神神社方面へ向かう...
次回に続く...
ではこれにて