変に筆が進んだので初投稿です。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ゛! ゛ わ゛っ゛か゛ん゛な゛い゛い゛い゛い゛! ゛! ゛」
放課後の疎らになった教室の片隅で藤◯竜也もかくやな少女の叫びが木霊した。
出席番号1番相川清香。現在絶賛悶絶中である。
頭をわしゃわしゃしながら、スマホのバックキーを長押しして書きかけの文章を消しとばす。IS学園に住まいを移してから1か月。全くもって音信不通と化している現状をどうにかできないかとメールをブン投げることにした。
もちろん、電話の方が手っ取り早いがいざ電話した所でまともに会話になるかどうか怪しかった。緊張やらなにやらで無言で死にそうな気がする。
推しの選手に応援してますとか言うのは容易なのに何故ここまで違うのか。ここまでテンパるのか自分自身でも理解ができない。
流石にこの発狂ぶりを見兼ねたか、腰まで伸びた金色の髪をたなびかせた同級生が声を掛ける。
「一体どうしたんですの……そんな突然錯乱して」
「ハッ……オルコットさんいつの間にッ」
我に返った清香は同級生……セシリア・オルコットを前に身構える。見られたか、いや別に見られても問題は無いが男と付き合っているのは現状だれも知らない。
完全にあきれ顔のセシリアに清香の頬が引き攣った。
「いやぁ〜1月くらい音沙汰無しの外の友達にメールでも送ろうかなぁって。でもどう書けばいいのか分かんなくて」
付き合っていることは伏せて一応話す。アレだけ様子のおかしい発狂をしておいてなんでもないは流石に無理がある。
それにこの美貌で浮ついた話もあるのではないか。あるに違いない。
「あら、お友達にですの?」
「ホラ、下手にIS学園の授業内容とか流すのダメらしいしそれに入学してずぅーっと音信不通だし……」
よくもこんなに口が回るなぁなんて思いながら清香は捲し立てるように喋る。こんな早口で喋ったのは遊びで早口言葉を試した時以来だ。
そんな彼女に、セシリアは顎に手を当ててじーっとこっちを見ていた。
「えっ、何? どしたの?」
「その様子、もしかして殿方に?」
「……ぎくっ」
図星。
よくよく考えたら唯一の男性生徒である織斑一夏に喧嘩を売った人間だ。けしからんと怒られそうな気がする。
清香が覚悟した矢先セシリアは黙り込んだ。
──あれっ
「同じクラスメイトで苦しんでいるのを助けるのもまた、代表候補生の役割。もし必要でしたら、助言くらいなら出来るかもしれませんわ」
なんて、胸を張る。それは多分彼女の為に存在する仕草なのかもしれない。その辺の同級生がやってもただの虚勢にしか見えないが、このセシリア・オルコットなら出来るような。そんな根拠のない確信ができていた。
メール作成の手助けに代表候補生もクソもないとかそんなツッコミは忘却の彼方へ追いやる。
まぁそれはさておいて、意外と優しい提案に清香は持ち上がった肩が底までストンと落ちた。でもありがたい。セシリアはあの英国の代表候補生。きっとエレガントでスペシャルなアイデアを持っているはずだ。
清香はホッと胸を撫で下ろしながらスマホを机の上に置いた。メールのまっさらな入力フォームと二人とも睨めっこを始めた。
「ちょっと、打ち込んでも?」
「どぞどぞー」
許可を貰ったセシリアはスマホを持ちぽちぽちと、打ち込んでいく。打ち込み方が丁寧な手つきで育ちの良さが伺える。
これはいけるのではないかと期待しながら打ちこみ中のスマホを後ろから覗きこんだ。
拝啓、家坂湊さま
青葉若葉のさわやかな季節となりましたがいかがお過ごしでしょうか?
多用に取り紛れ、ご無沙汰いたしまして誠に申し訳ございませんわ。
さてひと月ぶりと相成り得ましたが、高校生活の方はやることが多く大変ですが、わたくしはさまざまな学友に支えられこの学園生活にも慣れて参りましたわ。
色々焦ることもございましたが学友とぶつかり合い、学ばされることも多くございました。
いつかまた、成長したわたくし自身を見せられると思いますわ。
差し支えなければまた、近況をお送りいたしますね。
ん?
──文章までお嬢様口調ッッッ!? っていうか突然出て来た織斑君&オルコットさんんんッッッ!?
慌ててセシリアの方を見ると完全にあっちの世界に行ってしまっていた。
「一夏さん……」
で、トリップしているセシリアが呼んでいる一夏というのは織斑一夏。当人がいま教室にはいないのだが、唯一IS学園での男子生徒だ。多分この文章はセシリアの心境とか色々出てきているのだろう。で、完全にこの人一夏に惚れている。
ちょっと、セシリアに対する見方が変わった気がした。ちょっと前までは怖い人だとぶっちゃけ思っていた。
──そっか。代表候補生なんて国を背負ったとはいえわたしと同じ学生だもんね……
どんな凄い肩書や権力を持ったとしても15と16の生徒なのだ。
とは言ってもあんなホームルーム中に派手に対立していたのに一体どんな心境の変化があったのやら。
まぁ、それはそれとして。
「オルコットさーん」
「ひゃぅっ!?」
声を掛けるとあっという間に戻って来た。人のメールで一体なにやっているのか。肩を跳ね上げて最後の名前の所を即座に消した。流石に危ないと思ったようだ。
お嬢様口調だったりやたら堅いのはさておいて、メールの文言のヒントになるのには違いなかった。
「にしても……織斑君の事が。へぇ~」
意外だ。ちょっと前はけちょんけちょんに貶していたハズなのに。
いやよいやよも好きよのうちってか。
「わわわわわっわたくしは別にそのような!!!!」
「内緒にしとくよ~もうスミに置けないなぁも~」
凄まじいほどの親近感を覚えながら、スマホを返してもらう。骨組みはそのまま文体とかを直して自分の近況に置き換えるだけだ。
セシリアに深く感謝しながら清香はセシリアに差し出されたスマホを受け取っ──
「「あ」」
喉の奥から短い悲鳴が出た。
最近のスマホはどいつもこいつも巨大化しているからいけない。それを選んだ自分にも問題があるが。
──機種変してたとき家坂君も愚痴っていたなぁ、iPh○neも初代SEサイズにもどれーとか。
いやいやいやいや。そんな思い出話に耽っている場合じゃぁない。
今置かれている状況を率直に言おう。
送 信 ボ タ ン を 間 違 っ て 押 し た 。
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ゛! ゛」」
「わわわわわわわわ修正する前に送っちゃったよ!!!」
「まままままままま拙いですわよ! これではわたくしが貴女の殿方に送った形になってしまいますわああああああああああああああああ」
不測の事態にパニクっているのかセシリアは完全に目を回しており、対して清香も滝のように汗を流していた。
「そ、そう言えば突っ返しとかできたっけ!?」
「そんなのチェックに引っ掛かった時だけですわよっ!!」
そして清香のスマホから発信された文言は特に情報漏えいもクソもない当たり障りのない内容だ。引っ掛かる望みはまずチェック担当がやらかさない限り──無い。
顔芸気味に引き攣った顔で悲鳴を上げるしかなかった。
──だめだこりゃ
「騒ぎ過ぎだ馬鹿者!!!」
騒ぎを聞きつけて外からやって来た担任教師の出席簿が脳天を直撃したのは言うまでもない。
そして入れ替わりに彼からのメールが飛んできたのは担任教師のお説教が終わってからのことである。
◆◆◆◆◆◆
打って変わって数日後。
湊とその弟はスマホの画面を見て怪訝な表情に変わった。まるで別人のようなお嬢様口調の文言に「学ばされることも多くございました(意味深)」というフレーズ……
「この文言……ヤられてますね。お姉さまに」
弟の無情なおちょくり文句が湊の琴線に触れた。
「信じて送り出した彼女が女子校のお姉さまの百合調教にドハマりして、レズ顔ダブルピースビデオレターを送ってくるなんてって誰が現実になれつったチキショーめぇ!」
「ビデオレターは無えぞ!! 落ち着け兄貴!」
弟の肩を掴んでシェイクシェイクシェイク。錯乱し切った湊の耳に弟の叫びは届かず、すごすごと部屋の片隅に逃げ膝を抱えてどんよりとした空気を醸成していた。
「やらかした……もうちょっと早く送るべきだったよちきしょーめぇ……」
完全にダウンした兄の惨状を横目に兄のスマホを閉じて持ち主に返す。これ以上おちょくってもお互い面白くないと思ったのだろう。だが、次の瞬間別のメールがもう一通入って来た。
「あれ?」
送り主は同じ清香だ。そして──お嬢様口調の文言ではなかった。
家坂くん
1か月くらい連絡出来なくてごめんね
色々バタバタしてたのと、どんな文章を送れば良かったのかわかんなかった。でも友達と一緒に作ってなんとか送ることができました笑
多分先に変なメールが来たと思うけど、アレ、友達と一緒に書いたんだよ
ほんとならあの文から自分の作って行く予定だったんだけど事故でやっちゃった……(;´・ω・)
こっちは色々覚える事は沢山あるし、フツーの勉強に加えてISとか色々やることは沢山あるし先生きびしいけど、友達もいっぱい出来たし楽しいこともいっぱいあるしまだまだ頑張れると思う
何かあったらまたメール送るね
いつかまたいっしょに出かけられるといいな
またね 好きだよ
時系列はクラス代表決定戦後~クラス対抗戦の間。
このセシリアさんはサンデーGX版の出来事も入ってます。だからあんなベタ惚れ状態なんです……
ややこしいのですがメール受信までのタイムラグが発生しており順番としては
湊送信→数日後清香が送信→入れ替わりに湊のメールを清香が受信→数日後湊が清香のメール2通受信という言わば入れ違いとなっています。
付き合ってるのに苗字で呼んでる問題とかまだまだ課題はあるようですが、それはまた別のお話……
モブヒロイン流行れ流行れ……