思い出したのは鬼になってから   作:アステカのキャスター

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pixivとは内容が違います。すっ飛ばし過ぎました。
日刊ランキング(透明)一位だと…!?と驚きました。良かったら感想、評価、指摘お願いします。では行こう!!



第肆話

 

 

 望月愛菜は死んだ。

 

 転生した■■■■は望月愛菜を奪った。

 

 

 望月愛菜なんて存在は『原作』には存在しない。

 善逸の隣にいつも居るのは炭治郎と伊之助で、禰豆子と未来で結ばれた。善逸の隣にいた自分は空白の存在なのだ。

 

 

 分かってる。

 自分は存在するべきじゃない。

 未来を知っている。だからこそ未来を崩すべきじゃない。

 

 

 なのに……

 

 

 

 どうして涙が止まらないのだろう……

 

 

 

★★★

 

 

 

「……ここら辺よね?」

 

 

 烏の指示で鬼殺隊隊士、階級甲である胡蝶カナエは深い森の中に来ていた。鬼がこの場所に潜伏している。被害はまだないが、危険である事に変わりはない。

 

 森の中に足を運び、周囲を警戒しながら進む。

 そして、カナエの耳に奇妙な声が聞こえた。

 

 

「(……泣き声……?)」

 

 

 泣き声がする場所にカナエは走る。

 鬼が既に人に襲い掛かっているかもしれない。そう思った瞬間、より一層脚が速くなる。

 

 そして、聞こえた泣き声の場所に到着するとそこには木にもたれ掛かり、刀を抱き掴みながら涙を流してる一人の少女が居た。

 

 

「……女の子?」

 

 

 髪が長くて顔が見えない。

 ただ、涙を流しながら悲しそうな表情をしていた。着物は真っ赤に染まり、抱き掴んでいる刀もよく見れば日輪刀だ。

 

 

「ねえ、貴女………っ!?」

 

 

 涙を流しながらも声にピクリと反応する。

 顔を上げると、カナエは驚愕し少女から後退しながら抜刀する。髪は長く、眼は真っ赤に染まり、歯牙は伸びて、爪が異常な程長い。

 

 この子は鬼なのだ。

 鬼がこんな場所で泣いているのだ。

 

 

「……だ…れ……?」

「……鬼殺隊よ」

「………そう」

 

 

 少女はその場から動く気すらない。

 日輪刀だけは離さずにいるが、日輪刀を抜いたカナエに敵意すら無い。いや、むしろこれでは殺してくれと言っているようなものだ。

 

 

「………抵抗しないの?」

「……疲れた…鬼にされて……もう何もかも……」

「鬼に……された?」

「鬼舞辻…無惨……がお父…さんを…殺した」

 

 

 カナエは驚愕し、目を見開く。

 鬼舞辻無惨、鬼殺隊が長期に渡り探している鬼の始祖だ。それがこの少女の前に現れたと言うのだ。

 

 問題はそれだけではない。

 鬼舞辻無惨と口にしたにも関わらず、()()()()()()()()

 

 鬼舞辻は周到な男だ。生み出した鬼の情報を共有出来る上に一方的に殺す事も出来る。鬼が始祖である鬼舞辻と言う名前を出した瞬間、呪いが発動し鬼舞辻無惨の細胞によって喰い殺される。

 

 だが、それが発動しない。

 呪いが偶然外れた?鬼にも関わらず自我を保ち、飢餓状態に陥っていない。何より人を喰ったような雰囲気に見えないのだ。

 

 

「貴女……名前は?」

「……■……望月、愛菜」

 

 

 一瞬、前世の名前を言いかけたが、この世界に居るのは『望月愛菜』だ。望月愛菜と言う存在を奪って自分がここに居るのだから、罪悪感しかない。吐き気がしそうだ。

 

 

「愛菜ちゃん。鬼舞辻無惨の情報、知っている事があれば教えてほしいの。聞いてもいいかしら?」

 

 

 愛菜はただ気力もなくコクリと頷いた。

 

 

★★★

 

 

 愛菜が話した話では行き過ぎない程度の『原作』の鬼舞辻の情報を渡した。だが、忘れてはいけないのはこの世界は『鬼滅の刃』の世界線であっても、『原作』通りに進むかは分からない。

 

 既に善逸と出会っている時点で原作は通常通りに行かない。例えるならば、この世界の鬼舞辻無惨は全ての鬼の血気術を使えるかもしれない。不用意な情報は危険だ、鳴女の血鬼術による潜伏だって見ている訳ではないから確信を持てない。

 

 

「人を鬼…に変えて、太陽を克服…した鬼を喰え…ば鬼舞辻は……太陽を…克服する……可能性がある……」

「そんな……」

「特に…呪いが…外れてる鬼ほど……可能性は…高い……」

「じゃあ貴女も……!?」

「分からない……可能性は…あるかもしれない」

 

 

 呪いが外れてるものは珠世、愈史郎と存在するのだが、彼らは少しだけ外した方法が違う。珠世については鬼の体質を科学的に解析した上で外科手術を含めた手法で無理矢理外すと言う荒技、癌細胞を丸ごと取り除くと言った方が正しいだろう。

 

 愈史郎は珠世によって鬼舞辻以外の鬼から鬼にする事に成功した存在。だが原作ではどちらも太陽には抗えない存在だった。

 

 禰豆子については多分だが継国の血筋に当たるからだと思う。継国の血筋に存在する継国縁壱は太陽に愛された男であり、太陽の痣を持つ人間である為、鬼舞辻の細胞に打ち勝ち、太陽の性質を許容出来るから……だと思う。

 

 

 じゃあ……私は?

 

 

「(心当たりはある……今の私は望月愛菜ではなく、■■■■なら転生者だからと言う可能性が高い……から?)」

 

 

 痣がある訳でもない。継国の血筋と言う訳でもない。いや隠れた血筋はなくは無いが普通に考えてあり得ない。

 太陽に触れてはいない。今は夜だ。太陽の光を浴びても死なないかなんて確認出来ない……いや、出来るかもしれない。

 

 

「郝刀……」

「郝刀?……って何?」

 

 

 郝刀は日輪刀が赤く染まった状態の事だ。

 太陽の光に晒された時と同じ、激痛と熱による身体の崩壊を引き起こす。太陽と同じ力を一時的に使用出来るが、それには痣持ちが死ぬ間際のに引き起こす火事場の力、万力の握力で握らなければならない。

 

 

「(いや、普通に火で炙れば出来るか……)」

 

 

 どの道、生きる理由がない。

 もしこの実験で死んだならそれはそれでいいだろう。葉と薪を集めて火打ち石で火花を散らす。愛菜は痣持ちではないし、鬼の力でも万力で握ったとしても無理だろう。体温が低過ぎる。

 

 

「ちょっ、日輪刀を火で炙っていいの!?」

「鍛ったの……私だし……」

 

 

 鬼になる前は鍛治士だった。

 確かに鉄を鍛つ際、刀は熱で赤を帯びる。それは日輪刀に限らず、刀を作る工程に存在する。そして郝刀とは恐らくは、日輪刀に使用される鉄の太陽の性質を引き出したものだ。

 

 鬼には激痛と、上弦の壱すら崩す力を持つ。

 症状は太陽に照らされた時と同じ、つまりは郝刀で自分の身体が崩れなければ、太陽を克服している事になる。激痛は避けられないと思うが。

 

 

「んっ……」

「なっ……!?」

 

 

 躊躇なく郝刀は左手を貫いた。

 あの時の痛み程ではないが、身体中を駆け巡るような痺れるような痛み、身体が沸騰するような熱さに顔を顰めて大量の汗を流す。だが、それでも……

 

 

「崩れ……ない」

「ちょっ、何やってるの!?」

 

 

 カナエは咄嗟に日輪刀を取り上げた。

 幾ら鬼とは言え躊躇なく自分の手に突き刺せるものだろうか。まるで、自殺願望を持っているかのようで、その行動を止めてしまった。

 

 

「……かえ…して」

「同じ事をするなら渡せないわ」

「…しない……ただの実験……」

「自傷する実験が何処にあるって言うの!?」

 

 

 ごもっともである。

 

 

 

★★★

 

 

 郝刀は存在した事が分かった以上、『痣』についても恐らく存在する事が分かった。だが、問題が二つ発生した。鬼である私には郝刀に至らすまでの体温が無い。痣を持つ人間の体温は約39度、心拍数200以上となっている。それは痣持ちをきっかけに痣が伝染すると言うのだが、原作に於いて最初の痣持ちは竈門炭治郎だ。

 

 二つ目、と言うか此方の方が問題なのだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それがどう言う意味か、理解出来ない訳が無い。

 

 

「…太陽を……克服してる?」

「!?」

 

 

 郝刀は言わば太陽の性質を纏った刀だ。

 それで鬼の細胞が崩れないのは、太陽を克服してる可能性があるからだ。郝刀自体が存在してない訳じゃない。鉄が吸収し、赤く帯びるのは訳1000度、軽く炙った程度じゃそうはならない。

 

 郝刀自体は本物だ。

 だが、それでも崩れない細胞と言う事は……

 

 

「……死ねなく…なった……」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()

 太陽が出ている時に、自分が照らされても生き残るならそれは最早、太陽を克服した事になる。そうなれば鬼舞辻無惨を含め、多くの鬼が自分を狙いに来るだろう。

 

 

「(早めに、珠世さんを探すしかない)」

 

 

 何はどうあれ、生きなければいけない理由が出来た。

 太陽を克服したなら私は死んだ方が早いかもしれない。だが、既に善逸の人生を狂わせた以上、『原作』通りに進むかも分からない。

 

 

「……一つ、頼みが……あります」

「?」

「今から、私の血を……渡します……それが、何かの…鬼を人に戻すきっかけ……になるかもしれません」

「!?鬼を……人間に?」

「……医学に、詳しい人に……渡してください」

 

 

 何個か瓶を持っていたのは僥倖だった。

 望月愛菜ではなく、『原作』を知っている■■■■だったから持っていた。上弦、又は下弦の鬼の血を採取する為のものだ。それに、胡蝶しのぶは薬剤に精通し、鬼を殺す毒を生み出した。ならば、この血が何かの手がかりになるかもしれない。

 

 

「……それを、私に託す理由は?」

「……貴女は、私を…殺さなかった」

「!」

「理由は……それだけです」

 

 

 カナエは愛菜の血が入った瓶を受け取る。

 愛菜も立ち上がり、日輪刀を鞘にしまって荷物を背負う。どうやら簡単に死ねなくなった。『原作』三年前の今、自分に出来る事は生き延びて自分の知る限りの人間を救う。

 

 それが、1番自分を人間に戻す為の近道だ。

 

 

「……愛菜ちゃんは…どうするの?」

「旅を…します。それで…人間に戻る…方法を…探します」

「そう、分かったわ」

 

 

 それを止める気も斬る気もしない。

 ただ悲しい顔をしながらも彼女は愛菜に名を告げた。

 

 

「胡蝶カナエ」

「……?」

「それが私の名前、困った事があったらいつか頼ってね」

「……貴女は…優しいんですね」

 

 

 それも()()()()()事だけど。

 鬼は病気みたいなものだ。けど、それ以上に鬼が太陽を克服した鬼には狙われる。鬼殺隊に守ってもらうのも手だ。だがそれは今じゃない。

 

 背を向け、赤く染まった着物の腰に日輪刀を差し、振り返ると愛菜はカナエに別れを言う。

 

 

「また、会えるといいですね……カナエさん」

「うん。……またね愛菜ちゃん」

 

 

 二人は互いに別の方向へ歩き出す。

 カナエが鬼を殺さなかったことは隊律違反ではある。だがどうしても、あの鬼だけは眼を背けたくなる程、悲しい顔をしていた。

 

 人を喰わない。太陽を克服するかもしれない鬼。

 鬼舞辻無惨に会って鬼にされた彼女は自分を傷付ける事すら厭わない。カナエは少しだけ悲しい顔をしていた。

 

 

 

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