「〝こ〝ろ〝せ〝ぇ……〝こ〝ろ〝し〝て〝く〝れ〝ぇ」
意識があるのが辛い。
闇から放たれた銃弾は婚約者であるソラウの身体を貫通し、私の心臓をかすめ肺を破り、あらゆる臓器を損傷させた。
致命傷と呼ぶにはあまりにも多すぎる。呼吸をするたびに身体中に激痛が走り、一秒毎に痛みが増す。
ショック死をしなかった私の脳を呪った。
「悪いがそれができない契約だ」
誰の声だったのか。もはや分からない。呼吸するのでさえ精一杯で、もう声など出ないが、心の底からこの地獄とも呼ぶべき苦痛から救いを求め続けた。
視界が赤い。そして暗い。早く死にたい。自死を求めるなんて生まれてこの方、考えもしなかったが、魔術師としてのプライドも愛する人も失い、苦しみだけが肉体に課されると命なんて驚くほど安くなるものだ。
霞んだ視界に剣が振り下ろされる光景が私の最期のフィルムだった。
……苦痛は終わった。
鋭い刃で頸動脈をぷつりと切られ、私の意識は永遠の闇へと葬られた。
……ソラウ。不甲斐ない私では君を幸福にすることはできなかった。来世などあるか分からんが、もし人として生まれるならば私ような馬鹿な男と結ばれる事がないように祈っているよ。
……すまなかった。
*
「……ス……ネス」
声は突如聞こえた。
「ミスターケイネス! ミスターケイネス! 聞こえますか!」
夢なのか現実なのか……はたまた世界でまだ誰も観測されていない事象なのか。
「ミスターケイネス! ……先生。本当にこの場所であっているんですか?」
「マーリン・チャイルド製の計器と女の勘を信じなさい」
ため息が聞こえる。私は死んだはずだが、なぜ聞こえる?
「とにかく聴覚は復元完了しています。再度呼びかけを行って下さい」
声は出ない。手も足も頭も胴体も全身感覚がない。だが声だけが聞こえる。誰だ。誰が私を呼ぶのだ。
「了解です。ミスターケイ……先生、思念波に微弱な反応が?」
「お手柄よ。チャック。どうやらここで間違いなかった様ですね」
私の名を呼ぶ。お前は誰だ?
「ハーイ。ミスターケイネス。多分あなたはとても混乱していると思われます。自分の肉体はなく声だけは聞こえるという状況に」
女の声だ。だが私は声が出せず、その女に応答することはできない。
「思念波の波長が閾値を超えました」
「完全にこちらに意識が向いた様ね。良い傾向だわ。一応何かの刺激でこの〝塊〟がどこかに行ってしまわないようにロックかけといて。チャック」
「了解です」
一体何を言っているのだ。
「失礼。ミスターケイネス。申し遅れました。私は日系イギリス人のサクラと申します。時計塔とご家族の要望に応えるため、馳せ参じました」
続