一組のクラス代表決定戦に巻き込まれるような形でISとの対決が決定してしまった073。本人としては戦う事に関しては全く忌避感はない、彼にとって戦う事は使命であり課せられた仕事。その対象が今回ISを使用するというだけである。問題なのは純粋に束にどこまでの武装の再現が済んでいるのかを確認しつつ自分が扱い慣れている物は使えるのかというもの、使えなかったらそれはそれで手を考えなければならない。最悪の場合相手の武装を奪い取って使う事も視野に入れなければならない。
「博士、武器の事でお聞きしたい事が」
「大丈夫、特に要望が強かったこれも出来てるよ。ごめんね遅くなって」
投げ渡された物を確認するとそれは073が特によく使用していたもの、懐かしい感触と形状に思わず安心感が出てくる。命中精度も優れているセミオートスナイパーライフルで彼はそれを好んでいた。近距離でも十二分に効力を発揮する。それを背中に背負おうとするがISの機能を使ってそれを収納する。直後にまたもう一本の銃が投げ渡された。
「それは束さんのオリジナルだよ、色々参考にさせて貰いながら作ってみたライトマシンガンだよ」
束お手製のそれを構える、ドラム式のマガジンが特徴的なそれは即座にHUDとリンクして武器の情報も流れ込んでくる。それらを見ながら構えながら感触を確かめていく、そしてそれも収納しておく。
「有難う御座います博士」
「いいのいいのこれぐらい、例の試合はもう1週間後だもんねぇ」
1週間後、073は一夏そしてセシリアと対決する事になっている。本来彼は戦うべきではないのだろうが千冬の希望、束の許可もあるので臨むのみとなっている。しかしその日まで073はそこまで大した事はせずにすべき事をしながら再現してくれた銃器の感触を学園の施設の一部を借りてテストなどをしながら過ごしていた。そして遂にその日が訪れた。
「ぁぁぁっ~やばい緊張してきた……山田先生に色々補修とかISの訓練とかお願いして頑張って来たけどやっぱり本番となると緊張するぜ……」
試合の行われる第三アリーナのピット、そこに一夏にその幼馴染にして束の妹である箒、そして073の姿があった。073は同じく一夏と対戦する者だが落ち着き払っている、そんな彼は専用機が遅れているのか全く来ない事と本格的な試合を目の前にして緊張してしまっている一夏を見つめていた。新兵を見ているようでその姿は何処か懐かしい。
「落ち着け一夏、スパル先生を前にみっともない。あの人を見て見ろ、あの歴戦の勇者のような堂々たる姿を……男ならばあのようにして待った方が格好がつくというものだぞ」
「いや無茶言うなよ箒ぃ……先生は長い間軍の特殊部隊に居たって千冬姉が言ってたんだぜ……そんな人と同じようになんて出来ないって……」
「だが慌てていてもしょうがないだろう、此処は深呼吸をだな」
箒は今日まで一夏の勉強の手伝いや鈍ってしまっていた身体の感覚を取り戻す目的で剣道などをして体と精神を磨いてきていた。彼女は献身的に一夏を支えながら彼が真耶との訓練の際にもスパーリング相手として活躍をしていた、一夏も一夏ですさまじい集中力を発揮してそれらに取り組んだ結果、2週間の成果としてはかなり大きなものになったと真耶のお墨付きを得ているとの事。
「あ、あのスパル先生……こう、緊張を無くす御呪いというかそんなの無いですかね……」
「おい一夏そんなものを聞くのか、失礼だろ」
「そんなのって軍人さんっていうのは結構ジンクスとかゲン担ぎをするもんなんだぜ」
スパルタンとして生きてきた彼はそこまでゲン担ぎに頼った事は無い、信じられるのは自分が会得してきた技術とそれらを如何に発揮するかという事のみ。故に一夏に頼られても困ってしまう。
「すまんがゲン担ぎは余りやった事が無い」
「そ、そうなんですか!?」
「だが今日まで懸命に訓練を重ねてきた、違うか」
「も、勿論です」
先程の言葉でそれは分かっている、ならば後はどうやって自信に変えるだけ。自信への変え方は人によって異なってくる、自分のやり方を伝えた所で妙な感覚になってしまうのみ。自覚させるしかない。
「今日まで努力しただろうがそれはオルコットも同じ、今回に限らんが勝負の分かれ目はそれを本番でどこまで引き出せるか」
「何処まで、引き出せるか……」
「お前は一人で努力をしたのか、違うだろう。誰とどんな努力を重ねたのかそれをよく考えてみると言い」
一夏は思わず箒を見つめた、そして専用機の受領に向かってくれている為に居ないが、真耶も一夏に訓練を付けていた。そこで一夏は気付けたかもしれない、今の自分を作ったのは自身だけではなく幼馴染と親切な先生が居たから形作る事が出来たと。自分が情けない戦いをしたらそれは箒や真耶への恥にもなってしまう、だからこそ自分は教えて貰った事をすべて出し切らなければいけないと強く意識する。すると不思議な事に緊張が消え失せ、闘志が溢れて来た。
「緊張、しなくなってる……」
「誰かの為になら頑張れる、成程な」
そんな彼の肩を軽く叩いて073は間もなく始まるであろう試合に備える事にした、恐らくこの調子では自分が先に出るのが適切なのだろう。
「織斑女史、宜しければ自分が先に試合を行いますが」
『フム……そうだなアリーナの使用時間の事も考えるとそちらに出て貰った方が良いか。そして織斑、お前のISも到着したらしい、
「分かりましたっ、あのスパル先生、有難う御座います、あと頑張ってください!!」
背後では漸くやって来た自分の専用機となるISを気にしつつも声援をかけてくる一夏、そんな彼に応えるかのように腕を軽く上げて応える。そしてその手にライフルを出現させて握り込むとISの機能を起動させて浮かび上がる、そのまま軽くスラスターを吹かしながらアリーナへと飛び出していった。
人類対コヴナントの艦隊戦
地上戦では辛勝を勝ち取れているが人類は艦隊戦は敗北をし続けている。人類とコヴナントのキルレシオはおおよそ3~5倍である。コヴナント艦のプラズマは容易にUNSC艦艇を轟沈させうる火力を持っているが人類側はまずシールドを破壊し、その上で装甲を削らなければならないためその間に撃沈されてしまうからである。
尚、これらのセオリーを無視して戦力的に劣る状態から敵を撃破した英雄も存在する。その英雄は駆逐艦を敵艦へぶつける事でシールドを破るという常軌を逸した行動を取ったという。駆逐艦は鈍器。
因みにその英雄の娘は非武装の輸送船でコブナントの艦を撃墜している。
その方法とは輸送船を敵艦に突っ込ませて大気圏に突き落とすという、最早狂気染みた方法である。この親子は船を鈍器と思っているのだろうか。
この英雄らはハルゼイ博士の元夫と娘である。