「あら、貴方がお先ですのね」
少女はまるで本当に戦えるのかと懐疑的且つ笑うような感情を込めながら言った。向かい側のピットから出現したのは自らが見慣れているISなどではなく逆の方向性を言ったそれに近かった。全身を覆ったスーツにその上から数多くの鎧が覆われている美しさがないそれを嘲笑うようにしながら少女、セシリアは先に戦うのが一夏ではなく073である事を口にする。
「織斑のISは先程到着したばかりだ、流石に初期化と最適化をさせていない状態では出撃させられないという織斑女史の判断だ」
「当然ですわね、完全初期設定なISで私が負けるなどあり得ませんわ」
彼女は地上に降りながら銃を構えている073を見つめながら話す、だが同時に073の意識は既に切り替わっていた。普段の護衛から完全な戦闘状態への移行、内部の切り替えが終わっている。同時に既に始められているスタート開始までのカウントダウン、それらの確認を終えた。
「言っておきますわ、私は貴方のような男性から教えを乞う事を容認しきれておりません。授業内容などは優れた一品ですがそれは貴方とは別ですわ、よって身勝手ですが私自身の手でどれ程の強さなのかを確かめさせて頂きますわ!」
「好きにやってくれ」
その様な言葉が来るというの千冬から前もって言われているので大して気にもしないし、家庭環境などの影響でそれらの思想を持つのも致し方ないとは思う。寧ろ彼女はそれをあまり表には出さないほどに理性的、今は戦闘前の高揚感から出てしまっているのだろう。そして直後、開始の合図がなった。普段と同じ、トリガーを引いて相手を仕留める、だけの筈が―――。
「キャアァ!?」
自らがトリガーを引くよりもずっと早くに被弾した、自らのIS"ブルー・ティアーズ"が被弾していた。だが彼女も放つ、レーザーを撃つ。だがそれらを073は地に足を付けたままの状態で疾走してそれらを避け続けている。
「当たらない……!?」
スパルタンが生きた戦場で戦ったコブナント、それらが使用してきたのは基本的にプラズマ兵器。それらが無数に降り注ぐ中を縫うように的確に相手を探知して追尾するような銃まで存在していた。それらに比べれたら単純に偏差射撃のレーザー程度など恐怖ではない。
「クッ、なんて速さ……!?」
073の疾走する速度は80キロ程度だろうか、空を駆けるISにとってそれらは大した速さではないだろうがそれらの速度を出して移動する人間となると話は違ってくる。その事を計算に入れて射撃をする、だが相手はそのコースを的確に読んでいるのか最低限の動き、四肢を動かすタイミングをズラして回避を行っている。そしてあの速度の中で同じように移動し続けている自分に的確にライフルを放ち当ててくる。しかも、その殆どが頭部付近。
「これは、もう微塵も油断も慢心も捨てるしかありませんわね。行きなさい、その名を示しなさい!!」
彼女のISの
「(操縦者の思考で操作、それらを用いた攻撃……成程、第3世代型という奴か)」
空中を蹴るような跳躍を繰り返しながら、各部に外付けされたスラスターを吹かす事で姿勢制御を行いながら073は背後に回ったそれへと向けてトリガーを引いた。それは吸い込まれていくように背後の死角に回り込んだようなティアーズへと命中した。そして背後に向けた銃のトリガーを引いたまま角度を掛けて残ったそれをも撃ち落としていく。
「ま、まさか、そんな……ティアーズが一瞬で……!?」
ミョルニルアーマーはモーショントラッカーにより、周囲360度の動く物体を探知できる。そしてスパルタンはそれらを十全に活かせるような訓練と実戦を繰り返してきた。全方位敵だらけな戦場も経験した事がある073にとって背後に敵がいるなんて事は驚く事ではない。加えて彼はそれで終わらない、続けて元のライフルを出現させると彼女の腰部当たりのそれを狙って撃ち抜くとそれは爆発を起こしながら脱落していく。恐らくミサイル系の発射機構だったのだろう。
「虎の子は落とした」
彼の冷静な指摘がセシリアの思考を支配する、彼女は言った。強さを見せて貰うと、その結果の果てが自らの切り札を僅かな時間で全破壊するという行いで証明されてしまったのである。圧倒的な強さ、自らの中に合った価値観の男とはまるで相反する絶対的な強さを内包した強者、それが目の前にいる存在だと認識せざるを得ない。それらの素直な驚嘆と称賛そして―――敬意で溢れかえった彼女は空いた手にブレードを握り、レーザーライフルを持ちながら叫ぶ。
「まだ、まだまだ私は戦えますわ。貴方に強さを見せて欲しいと言ったのです、私も貴方に私の強さを見せる義務があるのです!!!」
「十二分に見た、セシリア・オルコット。君は強い、そしてもっともっと強くなれる存在だ」
「いえもっと、もっと私を見てくださいもっと、深くまで!!!」
結果を言うなれば、セシリアの惨敗だった。開始直後に彼女は切り札を出し惜しみせずに使用したが073はそれらに即座に対応しながら撃墜し彼女に付随している隠し玉すら看破し射抜いた。彼女は彼に弾丸を命中させる事が出来なかった。例え自らの切り札が無くなろうとも最後まで戦う意志を見せた彼女はライフルとブレードを構えながら戦闘を継続した。
そして最後には彼に一太刀を入れる事に成功しながら敗北を受け入れた。
惑星リーチ
数ある植民地惑星の中でも最重要に類する星。
豊富な地下資源に恵まれた事から民間軍事問わず宇宙船の造船拠点となり、併設する形で軍事施設も発展した。
UNSC、国連宇宙司令部の海兵隊本部はリーチにあり、またスパルタン2計画の本拠地もリーチであった。
人口も地球並みに豊富であり、あらゆる意味でリーチは中心だった、人類にとってはリーチは最終防衛ライン。
それ故に警戒網、戦力共に絶大なものが準備されていたのだが……
073はリーチにて戦死した事になっている。