コヴナント艦の防御力
コヴナントの軍用艦艇にはエネルギーシールドのみならず『ナノラミネート積層プレート』と呼ばれる耐熱性に極めて優れた超高密度金属を何十層にも重ねた装甲を艦のほぼ全周囲に張り巡らせている。
このため、シールドの無い小型艦ですら核兵器とMACガン*1。以外では大したダメージを負わない。超大型空母に至っては装甲の厚さは30mを超えていると言われている。
「済まなかったオルコット、初のIS戦故に加減を知らなかった」
「い、いえ私としては加減をする事無く戦って頂けただけで嬉しい限りですわ」
「助かる」
試合後、全てを出し切って疲労故か腰を下ろしてしまった彼女を抱き上げた073は彼女が待機していたピットへと入りながら彼女への謝罪を口にしていた。束の下で過ごしていたとはいえ今回が初の対IS戦闘だった彼はあまり手を抜く事は無かった。完全な全力という訳ではないが、少なくとも意図的に手を抜いたという事は無かった。どの程度で戦えばいいのか分からなかったがそれがセシリアとしてはそれは嬉しい事でもあった。そして腰を落ち着ける場所へと降ろされたセシリアは狼狽える。
「あの……私は、私は……」
気まずそうにも言葉を詰まらせてもごつかせてしまう口、当初の彼女は完全に073を馬鹿にしていた、下に見ていた。その結果があの大惨敗である。認めない、確めさせて貰うと上から物を言っていたので謝罪をしたいが非常に情けなく恥ずかしかった。怒られてもしょうがないという恐怖もあったがそれ以上の物があった。束へと報告が行くのではというものだ。
073が束によって送り込まれてきたことは周知の事実の筈なのに、彼女は自らのプライドだけでそれに反抗した。それが束を通じて母国へと抗議されたら一体どうなるのだろう、代表候補の座を奪われるだけでは済まないかもしれない。表現のしようもない恐怖が渦巻き言葉すら発せなくなった所へ頭を優しく撫でる感触があった。顔を上げてみるとそこには膝を曲げながら視線を合わせた。
「お前は凄かった、あの遠隔操作武装は基本的に死角に回り込んでいた。それは相手への足止めだけではなく意識の基点にも成り得る。それを続けていけば唯一無二の存在になる事は夢ではない」
「あっ……有難う、御座います」
「それとオルコット、博士へと報告するつもりは毛頭ない」
まるで自分の心を見透かしているかのような言葉に驚いた、メット故に表情を見抜く事は出来ずどんな感情を浮かべているのかすら分からないがセシリアには彼が少しだけ微笑んでくれているように感じた。
「君からすればスパルタン-S-073は篠ノ之 束博士から送り込まれた完全に不明瞭な存在、それがどのような存在なのかを確かめたいと思うのは当然、そして君自身は代表候補生、何れ国を揺るがすかもしれない力を持った相手の力を見ておきたいと考えるのもいい判断だ」
違う、そこまで考えていない。彼女の中にあったのは単純に男だから認めないという幼稚な考えだけだった。彼女の父がそうだったように男というのは情けない存在という意識があった、それらに従ったまでに過ぎないのに何処まで自分を褒めてくれていた。自分の行い、内面を評価し称賛してくれた、失礼な事を言ったのにも拘らず一対一の形をとって正当な評価を。
「織斑女史から女尊男卑思想からのやっかみは気を付けろと言われている、それに他人が下す評価を一々気にするつもりもない」
「それ、でも……申し訳ございませんでした。私は先生にあれほど失礼な事を……」
それでも気落ちし謝罪する彼女に073は内心で焦りを見せていた。彼自身教鞭をとった経験なども無い上に同年代の女性ならば相手にした事があるが少女相手なんて全くない。
「ならばこれから気を付ければいい、君は国家代表を目指している。なった場合国の顔になる、その場合外交なども考えていく必要がある。その練習と反省だと思い、次に生かせばいい」
「ッ―――はい、有難う御座います……」
「よし、ならば次からは気を付けてな」
そう言いながら立ち上がった073は千冬へと向けた通信回線を開きつつ内心でホッと胸を撫で下ろしつつ自分は教職に向いていないなと思う。
『織斑女史、そちらは終わったのでしょうか』
『後少しという所らしいが……先程の様子ではオルコットのISはパーツの交換や修理が必要だろう、この後の試合は中止だな……』
『私が試合をするのでは』
『単に私がお前の実力を見たかっただけだ、それに何方かと言えばオルコットやクラスにお前の力を見せ付けるためだ。織斑との戦闘はそこまで必要ない』
という事になってクラス代表決定戦は数日後に延期される事になったのだが、一夏は一夏で専用機に慣れる時間が取れると心から安堵するのだが、慣れる為の時間中に自らの専用機がまさかのブレード一本のみという修羅仕様の機体であった事に阿鼻叫喚になったりしたのだが、それはまた別の話。
「レイ君、君ホント凄かったんだね……データでアーマーの性能とか話で大体予想してたけど余りにも凄すぎた」
「大袈裟です博士」
「いいや、マジで凄かった」
束は戻って来た073に向けて素直な感想を述べ続けていた。彼女も彼女で以前貰ったデータでどれ程の強さなのかという予想は立てていたのだが想像以上だった。これこそ戦場で数多くの敵を薙ぎ倒し人類の希望となったスパルタンの力の一端なのかと思い知らされた気分だった。
「レイ君マジで最強スパルタンじゃないの、マジで君より強い人いたの?」
「いました、遥かに強い人が」
束はそれを聞いても信じられなかった。073は激しい移動をしながらの射撃や偏差射撃に秀でている、当然近接戦も得意な分野でもあるがそんな彼以上の実力を持つスパルタンは多く存在している。
ナイフでプラズマで形成された剣を持つスパルタンⅡ並の身体能力を持つコブナントの兵士二人に勝つ、本気になれば誰も触れる事すら出来ない程速いと評される、ワイヤーに片手片足を使ってぶら下がった状態で飛行するコブナントの航空機のパイロットのみをぶち抜く、などなど073よりも上のスパルタンは多い。その中でも最強と言われているスパルタンこそ彼が尊敬しリーチにて彼が最後まで戦い続け未来へと紡いだ希望だった。
「それって前に聞いたマスターチーフって人?」
「S-117、チーフが最高最強のスパルタンです」
そんな風に語る073、束には彼が最も輝いているように見えた。S-117、そのスパルタンこそが最強だと疑わず誇りだと豪語するかのように胸を張り続けていた。そんな風に誰かを誇らしげに語られる彼を少しだけ、羨ましく思った束であった。
マスターチーフ
スパルタンIIの一人。本名はジョン、コールサインはスパルタン-117。
073が言うように最高最強のスパルタン。俊足や狙撃、ナイフ格闘、部隊指揮など個々の分野においてマスターチーフを上回るスパルタンは少なくないが、それら全てを高い水準で併せ持ち、他のどのスパルタンよりも「運」を持っている事が最強の所以である。
通称である
運の要素を含めた場合どれほど凄いスパルタンなのかと言われると、ガンダムのアムロ・レイとボトムズのキリコ・キュービィーを足して二乗したぐらいのスパルタンと言えば凄まじさが伝わるだろう。
アメリカではマリオ、ソニックなどと並び立つ程の超有名キャラクター。日本での知名度は低いが世界的にみると圧倒的な知名度を誇る。