「おい何を騒いでいる、間もなく授業開始だぞ」
教室へと到達したが何やら中から騒がしい声が聞こえてくる、まだ授業前の時間なので別に騒がしくても問題はないと言えるかもしれないが後数分で授業の開始。出来る事ならばすでに着席しているのが望ましいのも確か。千冬が入り口から様子を窺うと何やら一人の少女がポーズを決めながら宣言を行い、その矛先を向けられている一夏は何やら握り拳でそれに受けて立っているようにも見える。何かのバトル物のワンシーンだろうか、と073は思う。
「(……あの子もああいうのが好きだったな)」
と何やらを考えていると千冬の声に反応したのか二人が此方を見た、同時にクラス中はシィ~ンと静まり返りながらもこのクラスの担任の姿を見て二人は顔を青くしながら固まったが少女の方は隣にいる073を見てあっと声を出した。
「あっえっと、スパ先生!?」
「スパル、既に奴と会っていたのか」
「昨夜に少し。彼女を受付にまで案内したまでです」
「成程な、凰間もなく授業が始まる。戻れ」
「はっはいィ失礼しましたぁ!!!」
と脱兎の如く立ち去っていく彼女の姿を見送る、如何やら彼女は千冬の恐ろしさというものが身に沁みついているらしい。駆け出していく姿に恐怖と動揺から全力で遠ざかる意思があった。
「さて授業を始めるぞ……織斑さっさと席に着け」
「あっはいすいません」
そんなこんなで漸く授業が始まったのであった。
授業中は問題は特に起こらず平和なまま進行、あっという間に放課後になった。今日は一夏のIS訓練に付き合う事になっているのでアリーナへと足を進めていると何やら騒がしく口論になっているのが見えてきた。そこではセシリアが溜息混じりに口論を行っている箒と鈴を見つめ、一夏はセシリアの隣で如何すればいいんだろうと言いたげな不安な表情を浮かべていた。
「騒がしい、何事だ」
「シエラ先生っ!」
と声が掛けられると花が咲いたような華やかな表情に豹変して振り向くセシリア、彼女の様子に女は変り身が早いというのは本当なんだなと知る一夏。
「実は……織斑さんとの総合訓練で凰さんもお手伝いとして参加すると仰ったのですがそれに篠ノ之さんが酷く反発致しまして……」
「俺的には相手をしてくれるのは有り難いと思ったんですけど……箒は、奴は二組の代表つまり敵だぞ!って」
態々へたくそな物真似をして説明した一夏に感謝しつつ状況の把握に成功する。セシリアのそれを合わせれば完璧な理解が出来る、箒の意見も分からなくもないが一夏の有難いというのも理解も出来る。彼からすれば彼女は格上の存在、そんな彼女が態々手伝いをしてくれるというのだから感謝すべき立場。
「それでこの争いか」
「はい……」
「俺がもっと確り言った方が良かったんですかねぇ……」
肩を落とす一夏、彼としても箒には感謝をしている手前もあるので強く言いにくい。そして鈴は彼としても久しぶりに再開したという幼馴染。そんな彼女が代表候補生なのは非常に有難くセシリア以上に親しく接っする事が出来るし彼女のISは近接主体だというので学べることも多いらしい。073は溜息を吐きながら地面を一度、強く踏みしめた。
「「っ!!?」」
軽めの爆発が起きたような音と舞い上がる土埃、そして凹んですらいる足元に二人が警戒するように体勢を作りながら振り向いた。そこには呆れているようなセシリアと苦い笑みを浮かべている一夏、そして腕を組んで見つめてくる073の姿があった。
「あっスパル先生!?い、何時からそこに……」
「先程な、話は二人から聞いた。篠ノ之熱くなり過ぎだ」
「も、申し訳ありません……」
と小さくなっていく箒に鈴はいい気味だと言わんばかりに鼻で笑うが直ぐに迫った073に息を呑んだ。昨夜も感じたがアーマーから感じられる威圧感、そして本人のオーラが合わさって言葉が出なくなってしまう。歴戦の軍人、いやそれすら生ぬるい表現ですらないのだろう。
「凰、君は二組の代表に就任したと聞いた。君の行いは君の敵を育てる行為にもなりかねないがそれでも良いのか」
「私的には全然、クラス的には敵でしょうけど一夏は昔馴染みですからその誼って感じですよ」
少々頬が赤くなり言葉を選んでいるような節があるがそこにあるのは純粋な善意。その他にも何かあるようだが敢えて指摘しなかった。
「成程…では織斑との近接訓練を頼めるか、私用のブレードはまだ完成していない」
「お安い御用で!!ほら一夏始めるわよその位は出来るんでしょうねぇ!?」
「舐めんなよ、俺のISは最初ブレード一本だけだったんだ舐めんなよ!!」
「何その地雷機体、最早産業廃棄物レベルの産物じゃないのよ。今は大丈夫なの?」
と即座に鈴は一夏と訓練を始めるのだがそこにあるの和やかな友人同士の空気が広がっていた。箒とは違う肩を組んで歩けるような友人の雰囲気。そして互いにブレードを握りしめると即座に剣戟の音が響き始めた。
「おっとぉっ!!何だちょっとやるじゃないのよぉ!!」
「嘘だろ何で今の反応出来るんだよ!?」
「年季の差って奴よ!!」
とそんな軽口すら飛び出す光景に箒はもっと集中するべきだろうに……だから私とならあんな言葉など……と呟いているが違う。彼はあれで集中している、彼の意識は完全に鈴にだけ注がれており相手の挙動全てに気を配る程に視野を広く持ちながらも全く意識がブレない。
「織斑は様々な経験を積む、それは勝利と敗北の双方も必要になる。それに凰は近接主体、そんな格上の存在は必要だ」
「しかし……」
「篠ノ之さん、清濁併せ吞むですわ。織斑さんに一番必要なのは成長です、それを促してくれる且つあれほど親し気な方は貴重ですわよ」
「……私以上に日本語を上手く使うな」
少しばかり納得がいかなさそうな彼女だが、一夏の為ならば致し方ないと……と少しだけ考えを改めようとする箒の姿に073は安心しつつ妙に迫ってくるセシリアの相手をするのであった。
スパルタンIV
戦後に行われた計画によって誕生した最新世代のスパルタン。チーフらスパルタンⅡ、ノーブル(5除く)らスパルタンⅢに続く存在。技術革新等により身体強化のハードルは相当下がっているらしく子供からの教育・強化ではなく志願兵からの選抜で構成されている。恐らく、強化手術もスパルタンⅢ以上に安全性と確実性が高いものと思われる。
「スパルタンⅡ並の能力を持ちスパルタンⅢ以上に数が揃えられる」が売れ込みのようだが、ハード面の性能はともかく兵士としての技量はスパルタンⅡやⅢには遠く及ばないというのが現場の評価である。
一応彼らの名誉のために付け加えておくと、そもそも遺伝子レベルで優秀な人材を幼少期から徹底的に訓練したスパルタンⅡと言葉は悪いが元が凡人のスパルタンⅣとを比べるのはいささか酷な話ではある。