約束を果たす為か、それとも道理を通す為なのか。説教を無事にされ終えたラウラは073へと会いに行ったが、その道中にてラウラの事を危険視しているセシリアに彼の事を尋ねられ何の用があるのかと問われ、話をしに行くだけだと伝えると自分も行くと言われたので共に来た。
セシリアとしてシエラは憧れの教師であるとともに意中の人でもある、だがラウラは余りにも行動が目立ちすぎている上に品行方正とは言い難くシエラに近づく事はあまりに許容出来なかった。政府命令で彼を排除する気かもしれないと思った、が彼との約束があると言われるがそれを確かめる為にも一緒に来たという訳である。そんな彼女も加えて話をする為に応接室へとやって来た、入り口には使用中の札を掛けて置く。
ソファに腰掛けながら前に腰掛けたラウラ、そしてちゃっかり自分の隣を陣取って何やら笑顔を浮かべているセシリアが気になかったが藪蛇になりそうなので突っ込むのはやめておく事にする。
「私の話、だったな。これほど早く聞きたがるとは思わなかった」
「め、迷惑だった……でしょうか」
自分に反抗的且つ攻撃的な態度を崩さなかった彼女にしては随分としおらしい態度を取る、あの後随分と千冬と話して中に溜まっていた色々なものを発散できたのかもしれない。そんな彼を見て073は少しだけ沈黙を作ってから笑った。
「私は怪しい奴に気を許す気などない……だったか。確かに私でも素直に教えを受けたいとは思わないかもな、丁度隣の彼女も似たような事を言っていた」
「シ、シエラ先生もうその事はおやめください……!!」
「済まない、如何にも連想してしまってな」
酷く慌てるセシリアにラウラも思わず、お前も人の事言えんじゃないかと呟く。
「わ、私は貴方ほど敵視してはおりませんでしたからセーフです!!」
「それでよくもまああれほど私の事を言った物だな、先のお前は如何に自分が清廉潔白と言わんばかりだったぞ」
「ま、まあ細かい事は宜しいです!!」
「おいそれでも貴族の当主か貴様」
そんなやり取りもありながらも先日の彼女とは大きな変化がそこにある、だからこそだろうか073は話してしまいたくなってしまった。自分の事を、知って貰いたかった、彼女も理解されたのだから自分もその位してもいいのでは……揺らぐ中で彼は思わず―――語りだしてしまったのだ、自らの事を。
「何から話すべきだろうな……」
「え、えっとそれではシエラ先生のお名前からお聞きしたいですわ!!」
「名前、か……」
「スパルタン-
この世界に来て数々の違反行為をしている身である彼にもう軍事機密もくそも無いだろう、そもそもがこの世界にUNSCは存在しておらず規約なども存在していないのにそれを律儀に守り続ける理由も無い筈なのに何故守り続けたのかと束にも言われた事がある。単純明快だ―――自分がスパルタンだからだ。書類上兵士ではなく兵器として識別される事から分かる様に彼らには人権が無い。故に兵器や兵士として動く事しか許されない。スパルタンとして生きた彼にはそれが正しいと思っていた。
「本来、私の名も顔も軍事機密だ。教える事も見せる事もしてはいけない」
「そ、そうなのですか!?」
「名前や顔までも……特殊作戦部隊の出身なのですか」
「そうとも言えるだろうな」
UNSC特殊作戦軍 ファイアチーム・サバイブ所属 サバイブ1 スパルタン-S-073。それこそが073を現す正式な識別コードだった。その名前すら束にしか伝えた事しかなかったのに今自分は―――本当の名前を伝えようとしている。行けない筈のそれを彼は行おうとしていた、不思議と止める事も出来ずに出てしまったそれに口にしてから自分は拙いと思ってしまう程に滑らかに滑り出してしまった。
「レイだ、それが私の名前だ」
「レイ、それがシエラ先生の本当のお名前なのですね!!私達を優しく導く光のような先生にはピッタリのお名前ですわ!!」
「スパルタンという名前からは想像できない程に人間らしい名前、ですね」
―――言ってしまった、重大な違反行為だと分かっていた筈なのに言ってしまった。だが同時に心が叫ぶのだ、誰がそれを咎める、誰が自らの情報を晒して罰を与えるのか。この世界において優先すべきなのは自らの安全と生存、それを確保する為には自らが何者かを表して信頼と信用を確保するのが最優先なのも理解しているのに何時まで束という大きな存在の力を利用し続けるのか、と自らの行いを肯定するかのように訴えてくる。
悪い事などあるか、何も分からぬ世界で確保すべき信頼を得る為、それは自らと命とも言えるアーマーを守る事に繋がるのだと。既に束に様々な情報を伝えておきながら何を気にするのか、と続け様に責めるように問われる。そえらは既に精神的に衰弱が始まっていたレイの決意と大きく揺るがして……踏締めていた足を浮かべて前へと進めてしまった。
「済まんが名前もだが私の事は他言無用で頼む、後其方で呼ばれるのは慣れん」
「承知致しました、この名前は私とレイさん……いえシエラ先生との約束ですわね♪」
「私もいるのだが……分かりましたドイツ軍の名誉にかけて公言しない事をお約束します」
最期に既に信用はないかもしれませんが、と自罰的に苦笑するラウラにそれでいいと伝えながら何やら夢見心地になっているセシリアを呼び戻して話を続ける事にした。
「今更になってしまうが私の話は決して楽しい物ではなく聞いていて気持ちのいい物ではない」
それは二人も何となくだが理解していた、初対面の頃から何か過去にあったのではないかとずっと思い続けてきた。頑なに素顔や名前、過去を語ろうとしない人。そんな過去は他人においそれと語っていい筈の物ではないと刺しが付いていた。だがこうして話してくれるという事は自分達にある種の信用を向けてくれているという事、ならばそれを聞く者としては絶対の約束をして覚悟を決めて聞く、それが筋だろう。と真っ直ぐと見つめる。
『―――分かった、では話すか……』
「いよいよ……か」
「ちょっとち~ちゃん本気で聞く気なの?」
「当然だ。だって気になるじゃないか」
と束の地下施設に千冬の姿があった、そこには束のコンピュータに接続された端末がある。それはラウラの制服にこっそりと仕込んだ盗聴器から音声データが届けられる。束としては流石に失礼だろうと思った、しかし彼の口から語られる過去にも興味があった、情報としては知っているが矢張り彼の目線からの話は知っておきたいという思いがあったのも確か。それに束はミョルニルアーマーに組み込んだモジュールから音声を取れるので人の事は強く言えない。
千冬としては今回の一件で073への興味が一層強くなった、そして何より彼の正体に迫りたいという好奇心が何より大きかった。自分よりも遥かに強いであろう存在が近くに居るのにその正体に関して情報が手に入らない、ならば自分から取りに行ってやると言わんばかりの行動力。
「でもまあ、この後に奴には謝罪しに行くか……」
「あっそこはするんだ」
「当たり前だ、その位の良識はあるつもりだ」
束としては今すぐにも千冬を含めた彼女らを止めたかった、自分でも辛すぎて涙を流してしまう程の過去を聞いたらどうなる事だろうか。レイが自分の全てを完全に話すかは不明、ある程度は暈かすかもしれないが……それでも自分が何故軍に居た程度は話すだろう、それだけでも―――十二分に心を抉る事だろう。今ならば止めさせられる……筈なのに束は止める事が出来ずに―――
『私は最初から軍に居たわけではなかった』
『そ、そうなのですか?』
『ああ、私が軍に入ったのは……秘密裏に進めていた計画の被験者として―――拉致された事が始まりだった』
話を始めさせてしまった。
ODST(Orbital Drop Shock Troopers:軌道強襲降下兵)
その名の通り、軌道上から
彼らとスパルタンの力の差は言うまでもないが彼らも十二分に優秀な兵士である。彼らを戦力として例えると以下のようになる。
スパルタンⅡ:
スパルタンⅢ:ジムコマンド in エースパイロット
ODST:ジム in エースパイロット
その他兵隊:ただのボール