「んでまあ束さんが調べた結果としては―――社長も正妻も白だったわ」
「何方も、ですか」
「こういう場合って正妻が黒幕です~ってのが多かったりするけど意外に白だったんだよねぇ……」
デュノア社の社長にしてシャルロットの父親であるアルベール・デュノア、その正妻であるロゼンタ・デュノア。そしてシャルロットの母親であるシェリラ・デュノア、問題となる愛人としてのシェリラの立場だがロゼンタとは元々アルベールを巡るライバル関係だったらしいが家の事情などもあり彼女が身を引き、その事にロゼンタも深く感謝を感じながらアルベールとの間に生まれたシャルロットの事については容認しているとの事。
「だぁけど不幸は起きるもんだよ、ロゼンタが先天性の病気で赤ちゃんを作る事が出来なかった。それまでは単純に仕事の忙しさでする回数の少なさもあったから出来難い体質なんだって思ってたんだって。漸く把握出来た時にはもうシェリアは残念ながら」
不幸に不幸は重なっていった。アルベールとロゼンタ自身はシャルロットには自分達には関わらないようにして生きて生けるだけの支援をする筈だったのだが、彼女がアルベールの血を引いている事をアルベールの反対勢力派閥に知られてしまった。そのままにしておけば彼女の身に危険が及ぶとアルベールとロゼンタはシャルロットを引き取る事にしたのだが……派閥に利用されない為にアルベールはシャルロットに辛く、冷たく当たる事しか出来なかった。
ロゼンタはそれを上手くフォローしたかったのだが、彼女も彼女で周囲からの目や派閥からの監視染みたものから逃れる事は難しく、心を痛めながらも辛く当たるしかなかった。
「……何て不運な」
「全くだよ。そして日に日に反対派閥がシャルロットに対する干渉を強めようとしているから、アルベールとロゼンタはこれ以上娘を危険に合わせたくないってので学園に送る事にしたんだってさ。幸いな事に彼らにはフランスの上層部と学園とのパイプがあったみたいだからね」
IS学園の治外法権、各国はIS学園に干渉することは禁止されている条約。それを利用して3年間の間でも彼女を遠ざけてその間に反対派閥を全滅させようと決意を固めた。そして驚きなのはアルベールとロゼンタがシャルロットを男として向かわせるように二人に忠実な信頼できる側近から命令を出した事だった。
「いやぁあのお二人さん中々に強かだよ。彼はもうデュノア社諸共深海に沈んでやるつもりだったんだよ、最低でもシャルロットが被害者として立ち回れるように今も必死に動いてる。多分完全に被害者として扱われるだろうね、いや束さんもこれにはビックリ。加えて反対派閥は国の上層部の一部ともべっちゃり癒着している、彼は国へのダメージも厭わない。寧ろそれも復讐にさえなる。いやぁ親の愛ってのは凄いもんだね」
デュノア社という全体で見ればメリットこそ皆無、だが二人からすれば大切な娘を守れるためならば会社がどうなろうが国がどうなろうが如何でもいい。正しく愛が成せる覚悟という奴だろう。
「これで社長も正妻がクソだったらレイ君に突撃して貰ってデュノア社を灰燼に帰す、が出来たんだけどなぁ……いやぁ此処までの覚悟がある二人にそんな事は出来ないなぁ」
「流石に灰燼に帰すは難しいかと、完全倒壊は可能ですが」
「まあアーマーでビルの柱圧し折るなんて容易いもんね」
これで深い所の事情は把握出来た、一先ずシャルロットは親からの愛を得られる事については語っても良いかもしれない。
「それでレイ君的にはどうしたいかな、元々束さんはち~ちゃんから話を聞いて調査をしてただけだからね。本当に男性IS操縦者なのかが分かればそれでよかったんだけど、その先はどうしたいかな」
「私としては此処でデュノア社長夫婦に恩を売りつつフランスの弱みを握れば弱みと強みを同時確保出来ます、いざという場合に博士の安全を確保するのに役立つかと」
「ムフフフッ流石レイ君、束さんの護衛を任せてるだけあって良い意見だね。まあその方面で進めても良いんだけどレイ君はどうしたいのかな」
「―――博士、あれを彼女に着せるなど思わないでください」
そう言われて向けられた視線の先には一つの形があった。それは極めてミョルニルアーマーに酷似している物だった、全身を包み込むようなアンダーウェア、その上から自らを守る装甲が幾重にも重ねられている。バイザーのようなメット、どう見てもミョルニルアーマーの近縁種とみるのが妥当な代物だった。
「私はそのつもりで助けるのではありません、スパルタンとして助けるだけです」
「市民への奉仕……だっけ、そうしたいなら止めないけどさ……そこに君の意志があるのかな、唯スパルタンという存在に縋っているだけにしか見えないよ
「私はスパルタン-S-073です」
そう言い切ると彼はそのまま去っていく、途中束はラウラに返しておいてくれと彼女のISを投げ渡しておく。彼女のISの中に仕込まれていた不愉快なシステムなど全て解析した上で再利用不能なレベルなまでに解体して完全抹消してやった、本国のデータ諸共。これで気が済んだと言いたい所だが……
「大きなお世話だったかな……」
ミョルニルアーマーを模したIS、それは彼が心から同胞を欲してしまった時にその願いを叶える為の物。束の技術力をもってしてもスパルタンを生み出した手術や薬物を再現など出来ない、したくもない。だから出来るのはスパルタンと似たアーマーを作る程度。差し詰めスパルタンⅤとでも言うべき存在を生み出す事が精々。
「レイ君、同胞が欲しいっていうのが君の本心の筈。スパルタン云々関係なしにね、ならそれに従うべきだと思うよ……今の君は機械みたいだよ、君は人間なんだから人間らしくすべきだよ」
スパルタン-102 フレデリック(フレッド)
白兵戦のスペシャリスト。特にナイフの扱いに長け、ソード持ちエリート2体と単身で渡り合い勝利した事もある猛者
総合的にも非常に優れたスパルタンであり、教官のチーフ・メンデスからS-2のリーダーとなる素質のある人物の一人として挙げられていた。
チーフからは「本気になればスパルタンの中でも一番になれる男だが、注目を浴びないよう二番手に留まっている」と評される。