既に日も落ちてしまい夜になった。一夏は気を遣って今日は洗面所で寝ると言ったのだがシャルロットは流石にそれは悪いと止めながら意地悪で襲わないでね、と忠告はした。一夏はそれを受けてそんな趣味ねぇよと言いながら少し不貞腐れるように布団を被るとあっという間に寝息を立ててしまった。そんな彼を見て微笑みながらシャルロットは天井を見つめながら横になった。
「(僕は、これから如何するべきなんだろう……大人しく自首するべきなのかな……)」
そんな事を思いながらもこの話を預かると言ってくれた073の事を考えると彼の厚意を無駄にするし、既に篠ノ之 束が動いていると仮定するとその邪魔にすらなると思って保留にしておく。そして同時に思わず彼の事が頭をよぎる。
「……如何してこんなにも先生の事、考えちゃうんだろう……」
一夏には本当に感謝をしている、彼は自分がフランスからやって来たエージェントで彼の機体のデータなどを狙って来ている事は知っている。その筈なのに彼は親身になって助けようしてくれた、女だと分かると配慮などもしてくれるようになり、フォローすることも約束してくれた。
「大きかった、なぁあの手……」
頭を撫でられる際に触れられた073の手、纏っているアーマーのアンダーの感触は硬くてゴツゴツしていたのに暖かくて心地良くてずっと撫でられたいと思ってしまう程に、名残惜しくなってしまう程に気持ちよかった。打算込み、つまり親切のつもりで助けるのではないとハッキリと言葉にしていたのにも関わらずにあの人の姿が心から消えない。
「戦ってる、姿もカッコよかったなぁ……」
ラウラとの戦闘を一夏と共に見つめ続けていた、ドイツ軍人が相手なだけに援護が必要かもしれないと思っていたのだがそんな物は必要なかった。構えていたライフルは自然と下がっていき気付けば魅了され、必死にその戦いを目で追い続けてしまった。圧倒的な力だけではなく卓越した技術に凄まじい精神力は恐れる事もなく飛来するワイヤーブレードの間をすり抜けていく。射撃だけではなくブレードでの近接戦闘も途轍もなかった。
「……傍に、いたいなぁ……」
そんな言葉と共に瞳を閉じる、眠気も大きくなってきたのかボンヤリとした意識に浮かび上がってくる細やかな願いが形になっていく。かの先生の補佐として同じようなアーマーを纏いながらもメットだけを外して笑顔を向けてみる、すると彼は何も言わずに頭を撫でてくれる。そんな光景が突然の事ばかりで揺れていた心、そんな心を思い浮かんだ光景は癒してくれた。そして気付けば身体に籠っていた力も抜けて彼女も寝息を立てていた。
ラウラへとISを返しに行った後にもう一度束からの呼び出しを受けた073は彼女からある物を渡されようとしていた。それは彼女曰くこれからのIS学園での教官職にも役立ち、技術体系やレベルが違うこの世界での行動の助けになるというものだった。
「それで博士、それは一体」
「フッフッフ実は先程ようやく形になったんだよ、それで急遽呼び戻しちゃって悪いね」
「いえ問題ありません」
「それで色々と頑張ってくれてるレイ君へのプレゼント!!」
そう言いながら束は手のひらサイズのデータディスクのような物を取り出してそれを機材へと接続した、すると投影型モニターの画面には何やら球体のような物が出現、それは瞳のようなピンク色の光を光らせながら此方を見つめた。それは何やら嬉しそうな音を立てながらも声を上げた。
『どうも、私はイグズーベラントウィットネス。お初にお目にかかります、貴方が私のマスターになられるレイ様ですね。博士からお話はお聞きしております、こういう時はこう尋ねるのですよね。問いますね、貴方が私のマスターさんですね』
「博士、これは……」
「フッフッフ……如何やらAI関係は束さんの方が遥かに上を行ってるようだね、やったぜ未来の技術に勝ったぁぁ!!!」
と狂喜乱舞する束、束はレイから提供されたデータを基に様々な研究を行っていたがその中で未来の技術に自分が勝っている物も発見した。それはAI技術である。
スパルタンが活躍した場では様々なAIが実用化され人間たちの助けになると同時に戦艦の制御なども行って共にコブナントと戦っていた。そんなAI達は人間の神経回路を超伝導ナノ・アセンブリッジによってそのまま複写し製作される。が、これを行う脳神経が著しいダメージを受ける為基本的に死人の脳からしかAIは生み出せない。
だが束をそれらを自ら設計したプログラムで構築した物だけで既に作り出していた。それらはISのコアに埋め込まれており、束は各コアにある意識達から情報や調査を行う事も出来る。そんなコア達を束は子供達と見て非常に可愛がっている。
「この子はレイ君の補佐の為に一から作った新世代型でね、元々ISに乗せるには情報量が多すぎて保留にしてたんだけどさミョルニルアーマーなら受け入れられる程の容量があるって分かってさ、この子を君に託したいんだよね」
「私に、ですか」
「今も授業とかで大変でしょ、その時に彼女が居たら便利だよ。色んな補佐とか予定の確認とかやってくれるし」
ミョルニルアーマーは簡単に言ってしまえば宇宙戦艦並の容量と核融合炉で動くメモリの塊と言っても過言ではない。事実としてマスターチーフは惑星リーチ脱出後にとあるAIをミョルニルアーマーにロードさせ、そのまま数々の戦いを乗り越えている。
その提案に073は少しだけ躊躇する、束の厚意は確実に善意の物だろうがミョルニルアーマーにAIを入れる事は彼には少しばかりの不安があった。だがそれを解消するような言葉が掛けられる。
「気にしなくても大丈夫だよ、イグには情報漏洩を予防する色んなセーフティを掛けてる。それに彼女自身も君の力になりたいって乗り気だから悪い事はしないよ」
『はい、お話をお聞きした時から是非ともご一緒したいと思っておりました。正直申し上げましてレイ様とこうして対面出来るだけで非常に嬉しく思っております、ああワクワクする♪』
「―――了解しました。博士のご厚意、有難く頂戴いたします」
「うん受け取ってくれたまえ!」
この世界で生きていく為には情報は絶対に必要になってくる、自分の足りない部分をAIにカバーして貰えるのは素直に助かる。それに、実は授業中に困ってしまう場面も多くあってその度に持っている知識や情報をフル活用してその危機を脱してきている。それに対する備えも出来るのは非常に助かる。そして束が直々にイグズーべラントをアーマーへと接続する、そしてメット内のHUDに彼女のアイコンが追加され声が聞こえるようになった。
『これで私とマスターは一心同体ですね、ああワクワクする♪』
「可笑しな気は起こすなよ」
『はい承知しております、それにしてもお話は聞いておりましたが凄い容量です。私を受け入れてまだ余裕があるなんて、まさかこんなに大きいだなんて……』
「イグちゃんちょっと今のエローい」
「?」
《イグズーベラントウィットネス》
とある星の管理を行うAI。妙に可愛らしい声質を持っており、また要所でどこか子供っぽい言動の影響かモニター独特のウザさが変に萌え要素に思えてくる異常事態を発揮。HALO5の誇る最強ヒロインと推す者が大多数存在する。
なかなかに「良い性格」をしている上に声が可愛く数多のスパルタンのハートを鷲掴みにした。海外のスパルタン達も総じて同様の反応を示している。残念ながら現時点でも声優さんが誰かは不明だが、彼女のキャスティングに関しては満面の笑みとともにサムズアップを送らざるを得ない。
今作では束が開発した新世代型AIとして登場。基本的に相違は無いが何処か箱入り娘のお嬢様的な印象を強く受ける。