鳴り響くアラート、緊急事態を知らせる本来あってはならない筈のそれがアリーナ中を駆け巡っていく。各国からやって来た要人らは突然の事に焦った。このIS学園に殴り込みをかけた事を知らせるものが駆け巡っているのだからそれは焦る、だがその恐怖や焦りを飲み込みながら行動を返していく。軍人なども少数おり、彼らが中心となって避難誘導を行い、生徒らと共に避難を行っていく。
「彼方は彼方で任せていいだろう、真耶侵入者については!?」
「分かりません、学園のセキュリティが捉えたのは……3秒前です!!超高速飛来する目標を確認したようですが、瞬間的にロストした後に今に至る様です!!」
管制室にて状況の把握と避難指示を出しながらも千冬は真耶に情報を求めていく。正しく決勝戦が行われようとした真っ先にこの事態、混乱するなと言うのが無理な話だ。アリーナのシールドを破った上に超高速で接近、ロストと言うのも更に速度を上げたのも考えられる。そんな相手が今アリーナの中にいる。教員たちがISで対処するにも出撃までに時間がかかる。
「一夏……!!」
「お、おいなんだあれ……!?」
「まさかこのIS学園に殴り込みをかけるなんて、愚かを通り越してもう尊敬すら覚えますわ」
セシリアの言葉に誰もが同意を浮かべざるを得なかった。全世界から注目を集める上に非常にデリケートな場所でもあるこの学園は繊細なバランスの上で成り立っているのである。そこに妙な事を働くという事はほぼ同時に世界を敵に回す事にも等しい行為。世界を敵に回す自殺志願者にほぼ等しいそれに思わず皆が言葉を失う中でアリーナの中央部、土煙の中に隠れているそれが遂に姿を現した。
中央部から無数の酷くごつい筒状の物が落ちて行く、それは宇宙船が大気圏へと飛び立つ際にパージされるロケットブースターのようだった。それらを使用して凄まじい速度を実現していたと言わんばかりの数、そして同様に目を引くのは肩に装備されている巨大な砲門のような何かだった。それは煙を放ちながらも放熱を行っているようだった。あれでアリーナのシールドをぶち破ったのだと言わんばかりだった。
深い蒼い装甲が陽の光で輝きを増している姿は思わず美しいとさえ思える程、だが余りの重厚さに身体の全身に緊張が走った。肩と一体化するかのようになっている砲門に右手にも巨大なキャノン、その巨体の7割を覆えるかのような巨大な盾を左にマウントしているそれはゆっくりと立ち上がった。073のように肌を一切見せないそれは従来のISならばあり得ないに近く、異質さを際立させていた。
『―――ッッッッ!!!』
そしてそれは凶悪な肉食獣を彷彿させる牙と怒りに染まった表情のまま、呪いに塗れた狂戦士が如く、学園全体を揺るがすような馬鹿げた音量の咆哮を上げた。
「何……あれ……!?」
「何て巨体……そしてあれらに装備された武器の威力を計算すると……拙いですわ」
「―――やばいちょっとカッコいいと思った俺がいる」
「自重しろ軍曹」
思わずラウラに窘められる一夏、本人も状況がやばいのは分かっているのだろう。だがいきなり現れたそれは重装甲に重火力、無数のブースターを装備していた事から本体は酷く重く動きも遅いのではないかという事を伺わせる。そして地獄の悪鬼を連想させるかのような形相に悪魔が如く咆哮、あのコンセプトで作った奴はロマンが良く分かってらっしゃると褒めてやりたい所だぁ、ともしかして余裕があるのではないかと思えるほどに一夏はある種の感激を持っていた。
「いやでも、如何すりゃいいんだあれ……これ下手に退こうとしたらあいつ追ってくるかもしれねぇよな……」
「ええ、そうなったら被害が甚大な事に……」
「でもあいつってアリーナのシールドを破ってるからこのまま放置するのもあまりに危険だよ……ラウラ、如何するべきだと思う?」
「……教員が来るまで喰いとめ、その後に私達は撤退するのが良いのだろうな」
素直にラウラに指示を仰ぐと彼女は冷静に直ぐに引くべきではなく、回避や防御を優先した上で時間を稼ぐことに徹する事を提案する。幸いなことに試合は始まる前だった事もあってSEも十二分にある、ラウラの停止結界ならば時間を稼ぐ事も可能なので作戦としては十二分あり、だが不安材料も多くあり最適解ではあるが当然大きな危険も覚悟しなければならない。
『織斑、ボーデヴィッヒ、オルコット、デュノア聞こえるか』
「ちっじゃなくて織斑先生!?」
『ああ、通信は良好だから焦らんでいい。総員よく聞け、10秒後に緊急ハッチを開ける。そこから全員避難しろ』
「ですが奴が……」
『心配するな、奴には取って置きの戦力が対処する事になった。巡回の時間がアリーナ周辺で助かった』
巡回という言葉で全員が気付いた、そして時間になった瞬間に稼働していくハッチへと全員が移動していく。乱入したそれは動き始めた一夏たちを肩の砲で狙いを定めて撃ち抜こうとする、アリーナのシールドを破る程の出力を受けたら絶対防御が発動しても確実にまずい。だがそんな事にはならなかった。ハッチの奥から飛来した一発の弾丸が砲門へと吸い込まれるように入った。内部でエネルギーが暴発しながら砲が吹き飛んだ。
「ウオッすっげぇ!?」
「軍曹さっさとしろ!!」
と思わずそれに見惚れた一夏はラウラに急かされてハッチに急いだ。そしてハッチの奥からアリーナの地を踏みしめた隣を通りながら、それへと向けて敬礼を送りながら撤退していった。それらが確認出来るとハッチは隔壁と共に閉ざされてアリーナは緊急用ジェネレーターによって更に強いシールドで覆われ完全に密閉される。所持されている武器の威力を考えると全く安心できる要素は無いがそこに立った者が安心を招く。
『レイ君頼んだよ。束さんも割といっ君の試合楽しみにしてたんだよ、あんな奴叩きのめしちゃって!』
「了解しました」
『システムオールグリーン、何時でも行けますよ』
「スパルタン-S-073、これより戦闘行動を開始する」
その手に構えられたのは束の手によって作られたアサルトビームライフルを構えた。初の実戦投入だが彼女が作ったそれに信頼を置きながらも目の前のそれへと意識を向け集中した。星をガラス化する者達から悪魔と呼ばれたスパルタンが今、戦いの場に帰った。
パリ級フリゲート艦
UNSCが多数所有するフリゲート艦の一種、直接戦闘能力を追求した設計となっている。このため大型の船体と強力な火力・装甲を誇るが、それと引き換えに地上部隊や降下艇の運用能力が失われている。
人類の主力艦といえる500m級の戦艦だが、残念ながら活躍の機会は薄い。人類対コブナントの艦隊戦の