アサルトビームライフルを構えながら目の前のそれへと意識を向けながらも073は久しぶりに感じる戦場の空気に懐かしさすら覚えていた。彼らスパルタンは基本的に戦いにのみ生きる、それ以外は冷凍睡眠に入り何か起きたら起こされるスパルタン。彼らは平和の為に戦うのに戦場の空気に力が入る事への想いを感じるのは学園にて平和を感じ過ぎてしまったからだろうか。
「ハンターに見えるな、あれもまるでロットガンだ」
乱入者へと視線を向けつつ素直な感想を言葉にする、眼前で雄たけびを上げながら殺気立っている獣のようになっている存在はコブナントにて重装歩兵の役割を行っていたハンターに似通っている部分が多く見受けられ連想させるには十分過ぎた。巨大な盾に蒼い装甲、巨大な銃、違う部分もあるが大きな特徴は概ね同じとも言える。だがあれと比べたら容易い相手なのは確実だろう。
「―――行くぞ」
ライフルのセーフティを外した後にトリガーを引いた。甲高く光線銃を思わせるような音ともに信じれない発射レートで弾丸が放たれていく。ISモジュール内にこのライフルの弾丸も収納されているが、その弾数が凄まじい勢いで減っていく。そんな弾幕が向かって行く。
『―――っ!!!』
ビームコーティングされた弾丸が飛来してくるのを盾で防ぐ、しかし弾丸は盾の半ばまで食い込んでいく。ビームを纏う事で貫通力も飛躍的に上昇している、巨大且つ分厚い盾にも深くまでめり込んでいく。だがそれにも動じる事もなくハンターにも似たそれは咆哮を上げながらゆっくり、少しずつ速度を上げながら突進をしてきた。そして盾で殴り掛かるがそれを後方へと飛び退きながらも更に弾丸を浴びせていく。そして盾が悲鳴を上げている中、SAWへと武装を変更しながらそれへ束が是非ともと言っていたドラムマガジンをセットする。
『盾を狙ってください、あれはもう持たないと思われます』
「分かった」
そう言いながら073はトリガーを引く、先程の物と比べると分隊支援火器にカテゴライズされるこれですら大人しく感じられてしまう。7.62×51㎜弾頭故に先程よりも威力は劣る……と思っていたのだが盾へと打ち込まれた弾丸は次々と火を噴いていき既にボロボロであった盾を完全に粉砕してしまった。
「この弾丸は」
『博士の自信作です。近接信管が内蔵されている弾丸です』
「そうか、いや何だって」
『簡単に申し上げますと徹甲榴弾マガジンです、現在のSAWはフルオートでそれらをばら撒く機関銃となっております』
「役に立っているから何も言えんな」
本当になんて弾丸を作ったんだと言いたくなるような思いだった、加えて言うなればこれはビームアサルトライフルの弾丸を作る過程で作った試作品で本来はこれすらビームコーティングを行う予定だったらしい。完成して居たら先程の時点であれの盾は爆散四散していた事になる。呆れた威力に073も少しばかり驚いてしまった。
『―――ォォォォォォッッッ!!!!』
怒りを露わにしたかのように咆哮を捧げながら、剥き出しになった悪意と共に保持していた大砲のような銃を向けた。躊躇する事も無く連射される、ロッドガンのような巨大さから放たれる弾丸を走り抜けて回避する。地面へと着弾した弾丸は青緑色の光を放ちながら爆発を起こし地面を熔解させてしまった。
「成程、ならっ―――」
恐らく性質もロッドガンに近いのだろう、ならばやる事は一つ。更に加速しながらスラスターを並列使用しながら疾駆、90キロを超える程の速度で迫りスパルタンに乱射するが咄嗟に身体を屈めるとスライディングを行いながらその股下を潜り抜ける。背後を取りながら地面を蹴って力を込めて肘打ちを頭部へと喰らわせる。
「貰うぞ」
『装填口は上部のようです』
一瞬、動きが鈍る隙を突きながらその銃を奪いながらもホルダーに収められていた燃料ロッドを取りながら上部へと押し込んでトリガーを引く。発射されたロッドは着弾と共に途轍もない熱を発しながら爆発していく、続けざまに放たれていくそれを受け続けていくそれ。本来この銃を使用することを前提に設計されている為か熱にもかなり強いように思える、だが其処へ追い打ちが掛けられる。
『っ―――!?』
「よぉ、返すぞ」
爆炎が途切れた瞬間に視界一杯に広がったスパルタンの姿、それは後方へと飛び退きながらマガジンである纏められた燃料ロッドの全てが投げ付けられる。そしてそこへアサルトビームライフルを撃ちこんで合計26発の弾丸が一斉に連鎖爆発していく。一際巨大な爆発と熱量はそれの装甲をドロドロに融かしていく。
『―――……!!』
爆炎と熔解しきった地面の上には使い物にならなくなった装甲をパージしたそれが膝を付いていた。まだ動けるのか錆びついた歯車のような動きをしている。だが盾や装甲、内部に格納されていた武装も熱でイカれてしまったのか同じくパージしてしまっている。もう戦闘力は完全に無くなっている、そしてそこへ一本のブレードが飛来しそれの胸へと突き刺さった。
「クロエが好きだったな、こんな感じの蹴り」
と073は胸へと突き刺さったブレードを押し込むかのようにそこへ飛び蹴りを浴びせながら、それを貫通しながら地面へと着地した。蹴り貫かれたそれは各部から激しいスパークを起こしながらも小規模の爆発を起こしながら最後に穢れた咆哮を天へと召し上げるとそのまま崩れ落ちるかのように倒れこんで機能を停止させた。
『エネルギーレベル0、再起動の確率は限りなく0です』
「此方S-073、織斑女史応答願います。敵機の撃破に成功、戦闘終了です」
『……ま、任せてしまったのは私だが早すぎないか……?こちらは後15秒で教師陣が突入する所だったのだが』
「そうですか、教員の皆さんを危険に晒さずに済んだのならば良かったです。敵機は回収いたしますか」
『そ、そうだな……搭乗者の確保をした後に運んで貰えるか』
と言っても恐らく生存などしていないだろうが……と千冬は思っていた。戦闘の際の判断は全て彼に委ねられる、それは彼が搭乗者を殺害するか否かまでも委ねられる。だがIS学園にこのようなことまでしているのだから殺されたとしても何も言えないだろう、死人に口なしという言葉もある訳だし。
「了解しました、ではすぐにお運びします。これは無人機のようです」
『そうかならば―――待て、今何と言った』
千冬は思わず聞き直してしまった、今073が今何と言ったのかを。それに対して彼は無造作に再び言い放った。
「これは無人機です、搭乗者など存在しません」
『―――馬鹿な』
彼がブレードを突き刺し蹴り穿ったのは胸部、そこに開けられた穴からは内部の機械のみが露出している。人間の姿など影も形も存在していなかった。IS学園を唐突に襲った謎の襲来、その中心に立つスパルタン。それが撃破したそれへの謎は深まりを見せながら―――悪魔を再び戦場へと誘い始めていく。
総勢341隻を超える惑星リーチ攻撃艦隊の主力、艦隊の最高司令官は後の歴史において重要な存在となる
ちなみにこの時のUNSC側の防衛戦力は、艦艇152隻と軌道防衛プラットフォーム20基のみ。コヴナントの艦隊とまともに戦うには少なくとも4~5倍の戦力を用意しなければならないというのにこの戦力差、どうあがいても絶望という言葉がこれほど似合う状況が惑星リーチを襲った。