自らの素顔を晒した事でより一夏たちが親しみを持って接するようになってきていた。矢張り彼の中に本当に人間なのだろうかという不安のような興味があったようで、それが解消された事で身近な存在だとそれが再認識された。そうであったとしても基本的に彼の毎日の変化などは無い、強いて言うなれば受け持っていた授業が元の教師に返したぐらいだろう。
「あのスパル先生、教え方のコツって御座いますか……?」
「何でしょうか突然」
「いえその……実は前まで私のクラスもやっていただいたじゃないですか、それで私も落ち着いたのでまた戻ったんですけど……生徒達からスパル先生の方が良いという声が多発して凹んでおります……」
大きな問題と言えば元の授業体制へと戻った事で基本的に一組での授業のみ参加するようになった073、他のクラスは元の先生が授業を行うのだが……教え方の質などが違ったり方向性の違いからか不満を漏らされて本職の教師としての自信が傷ついている位だろう……。一応自分の教え方などを教えてみると生徒達からの評判が良くなって本気で悩む先生方が多かったとか……。
「シエラ教官、是非とも私に訓練を付けて頂けませんか!」
「構わないが何故いきなり教官なのだ」
「ハッ。私ことラウラ・ボーデヴィッヒは数々のご無礼を働き織斑先生にもその事を強く責められました、そして先日の一件にて教官は織斑先生にも匹敵しうる方だと改めて尊敬した次第で御座います。なので敬意を表して教官とお呼び支度存じます!!」
「まあ好きにしてくれ」
とラウラの豹変染みた態度の変化、彼女としては今までの非礼などに対する謝罪と敬意の表れを表現する為の行動。彼からすればそれは少々懐かしさを覚えるような態度だった。何故ならば自らのファイアチーム・サバイブのメンバーと組んでリーダーと認められた直後に似ているそれに思わずメットの中で微笑んだ。ラウラのそれは可愛く映っていた、上に彼は特に気にせずにいた―――のだが
「教官、本日から父上とお呼びしても宜しいでしょうか!?」
「―――いやなんで、私はお前の父ではないのだが」
「日本では尊敬する男性にはそのようにお呼びすると私の副官が言っておりました」
「日本の風習には不思議な物があるのだな……」
と日本出身どころか地球出身でもない彼にとってはその真実を確認する術が全くない、それが正しいのかも分からず取り敢えず保留して二人一緒に千冬に尋ねてみる事にした。
「いやいやいやなんだそれは!?絶対間違っているぞっていうか誰からそんな事を聞いたァ!?」
「ボーデヴィッヒの副官がそう言っていたと」
「はい、クラリッサがそう言っておりました。日本ではそのようなしきたりがあり、年上の男性にはそのように呼ぶが良いと言われました。後もう少し進展したら嫁と呼ぶべきだとも言っておりました、実際そう呼ぶつもりでした」
「私は男だが」
「クラリッサ貴様ぁぁぁああああああああああああ!!!!」
と教員室から怒号が響き渡ったという。そしてドイツではラウラの副官が尋常ではない寒気を感じて震えあがったとか。
「ッシャアオラァ!!!」
と地下の設備にて魂の籠った叫び声が木霊する、久しぶりの束の護衛任務を行っている073。その日は日曜日の早朝、今日は授業は休みな上に訓練を付ける予定もない。言うなれば休日的な日なのだが束の護衛に専念する彼に束の声は届いていた。今までにない程に声に力が込められているそれに思わず其方へと顔を向けてみると目元に深い深い隈を作っている束が狂喜乱舞している姿が確認できた。
「やったやったよやったったぜイイィィィヤアアホオオオオオ最高だぜえええ!!」
『博士のテンションが振り切れていますね、此処の所一睡もせずに研究に没頭してらっしゃいましたから』
「レイ君レイ君レイ君聞いて聞いてくれるよね!!?」
「お聞きします」
「遂に、第五世代型のプロトタイプが出来たぁ!!!」
束大歓喜の理由は彼女が推し進めていた計画であり目標であった宇宙空間活動前提型IS、本来の活動範囲での使用を前提にしたIS。それはミョルニルアーマーの技術や各種を参考にしながらも彼女のオリジナル技術が詰め込まれた彼女の夢を体現したかのようなものだった。
「流石に核融合炉にはまだ手が届かないけど新開発の超大容量バッテリーを組み込んだ事で稼働時間と防御系システムに使うエネルギーを分けた、そしてコアからの供給もあるからミョルニルアーマー程じゃないけどリチャージも出来る!!やっとここまで来たぁ……」
と思わずソファに崩れ落ちるかのように座り込む束、宇宙への進出を夢見る彼女にとってミョルニルアーマーは目指すべき物全てが詰まっているような物。ある種ISが目指すべき進化の道の先にある、それらを追求した結果、第五世代型は従来のISと違って肌を一切見せない方式になったが、合理的に考えればこちらの方が安全なのは明白である。
「でもこれでもまだまだプロトタイプ、まだまだ上を目指すぞぉ~!!」
雄たけびを上げながらもまだまだ努力する事を決意しながら早速プロトタイプでのやるべきデータ収集のメニューを考える束。気密性、出力、デブリ対処、リチャージ、実験すべき内容は大量に存在する。それらから得られたデータを研究して次へと繋げていく。その連鎖に楽しさすら覚えている彼女に073は素直に良かったですねと言葉を送った。
「あっそうだ、ねえレイ君今日お休みなんだよね」
「はい、学園は休みです。間もなく臨海学校というのも近いらしく織斑たちも買い物へ行きました」
「あ~そっか……それじゃあさ、レイ君これから束さんとく~ちゃんと一緒にお出かけしよう。お買い物にさ」
「―――えっ?」
ジャッカル コヴナント側名称: キグヤー
優れた視覚・聴覚・嗅覚を有しており、それらを活かした偵察兵やスナイパーとして運用をされており、一部のスパルタンからは尋常ならざる恨みと怒りを買っている。
コブナントとは同盟を結んでいる傭兵に近い立場にあり、宇宙での海賊行為の容認を条件にという条約を結んでいる。