近場の自販機でジュースを買ってベンチに腰を落ち着けて話をする事になった一行、しかし一夏とラウラは酷く驚いていた。ラウラは目の前にいる存在こそが自分が教官と仰ぐもう一人の存在でありそんな人物が共に歩む女性と言えば一人しか思い浮かばなかった。一夏の反応を見ると恐らく間違いないと確信している、あの篠ノ之 束が目の前にいるという驚きに言葉を失いかけている。
「まあそう言う訳でね、束さんってば実は学園の地下に居るんだよね。そこで色々と研究とかしながら過ごしてる訳。理由としてはいっ君のデータをこっちで解析するって名目、まあ実際はいっ君のサポートというかまあなんというか賑やかしでもいいか」
「いやそこはハッキリさせましょうよ……」
「しかし教官があのアーマーを脱いでいる姿など初めて、です……」
柵に背中を預けるようにしながらも全周囲へと意識を配るようにして警戒を行っているレイ、例えアーマーを装着していないとしてもスパルタンゆえの習性は本能のレベルにまで染みついているので周囲への警戒は忘れない。良くも悪くも自分達は目立つのでそれらに混じる感情の一つひとつを鋭敏に感じ取っている。
「まあレイ君は護衛だからさ、無視して外歩く訳にいかないじゃん。だから今回は無理言って脱いで貰ったの。それとこっちはさっき話した束さんの義娘のく~ちゃんだよ」
「先程ご挨拶させて頂きましたく~ちゃんこと、クロエ・クロニクルです。余りに緊張なさらないでくださいラウラさん」
「い、いや私としてはそれは難しいのだが……」
挨拶をするクロエに苦々しい表情を浮かべてしまうラウラ、クロエはラウラと同じく試験管ベビーであると共に同じくドイツにて生まれた存在。が国が求めるような存在ではなかったために廃棄処分を受けそうになった所を束が救い養子として受け入れたという経緯がある。
「私としてはもうドイツも何も関係ありません、束様の娘であるクロエですので。気にされても私が困るだけです」
「ぜ、善処する……」
ラウラからすれば自分の国の闇をマジマジと見せつけられた上に自分がどのような存在なのかを突き付けられたような物なのでおいそれと受け入れるのは難しいだろう。時間をかけてゆっくりやっていくしかない。
「それで……えっと、何て呼べばいいんですかね」
「おおっいっ君思った以上に回転いいじゃない」
「ISの稼働訓練で上手くなるには回転が良くなきゃダメですからね」
束の名前を出さない配慮に束は素直に笑みを浮かべる。一夏的には以前の自分が鈍すぎただけと思っている。
「今の名前は高町 菜音さんだよ。菜音さんでいいよいっ君」
「私は高町 クロエです」
「因みにレイ君は高町 黎地ね」
「んじゃ先生は高町先生って呼べばいいんですかね」
「さんでいい」
「みょ、妙な気分だな……」
と思わず言葉にしてしまうラウラは悪くは無いだろう、彼女からすれば世界的な指名手配を受けている篠ノ之 束とその娘そして学園にて自分達の教官をしつつ束の護衛をしている073の偽名を容認してそれで呼ばなければいけないのだから。
「因みに何で高町なんすか?」
「この前見つけた喫茶店の看板娘さんがそんな名前だったんだよ」
「なんだ、この間違っているようで間違っていない漢字が割り当てられていそうな気配は……」
多分その予感はあっている。
「最近はこんな水着があるんだね~……つうか男性用少なくね、これでよくもまあ『此処になければない』とか胸張れたもんだな、後で本社宛にクレーム付けてやろっと」
「ちょっとたっ……菜音さん、メール爆弾めいた物だけはやめてくださいよ」
「大丈夫大丈夫、本社のメインサーバーが飛ぶ程度の事しかしないから」
「十分とんでもねぇ!!」
と本来の目的であった水着選びを開始した束こと高町 菜音。一夏とラウラもそれが目的だったようで一緒に水着選びを開始した。
「なんかラウラも水着は学校の指定の奴しかないんだけど部隊の人からそれは素敵なものだけど色物の域を出ない!!とか熱弁されたらしいですよ、本人も折角学生やってるんだからかわいい系の水着を着て見たかったっていうのもあったらしいです。それで丁度一緒に居たんで折角だから買いに行くかって事で今に至ります」
「随分と愉快な部隊メンバーだな、それ絶対なんか日本文化を勘違いしてる日本人かぶれだろ」
全くもってその通りなのが恐ろしい所である。ラウラの副官であるクラリッサ・ハルフォーフは日本通を自称しているが、彼女の持っている知識の大半は日本の少女漫画・ラノベ・ゲーム等からのサブカルチャー文化から得たもので大体偏っている。父上&嫁云々もこの人のせいであり、一番質が悪いのが本人に悪気は一切なくマジで日本はそうなんだと思ってる点である。
「お父様、こちらの方が良いのではないでしょうか」
「明るめなのもいいが普段の落ち着いたものに合わせるのも良いと思うが……」
「むぅっ迷うなぁ……」
と同じように水着を選んでいるクロエとラウラの面倒を見るかのようにレイは主観的な物言いをし、二人はそれらを取り入れつつ物を選んでいる。そして一番大変だったのは一夏とレイの物選びで女性ものと比べると物が圧倒的に少ない。これには菜音も本気でクレームを入れる事を決心するのであった。
「俺は普通にボクサーのこれでいっか安いし」
「……これで良いか」
と本人たちは余り拘りを見せるタイプでもないのでサクッと決める事にした。因みにレイ自身は臨海学校でアーマーを外す気は基本的にないので泳ぐのかと言われたら皆無なのだが、周囲の楽し気な空気を壊さない為に合わせて購入する事にした。所謂男性用競泳水着のスイムパンツにした。
「さぁってと……お買い物も済んだけどこの後どうしようかな、いっ君たちは何か用あるのかい?」
「俺達は後は新作のゲームを買おうかなと思ってる位です。一緒にプレイするつもりです」
「因みにそれ何のゲーム」
「「EDF!!」」
「おk把握した」
もう完全に仲のいい友達になっている二人はそのまま束たちと別れてゲームショップへとダッシュで向かって行った。本来あの隣には一夏の事を好いている箒や鈴が一緒に買い物をしたいと思っていたのだろう、だがそれを本人が友達のラウラに付き合う事で天然回避を起こした。今頃箒と鈴がラウラと出掛けた事を聞いて大慌てで此方に向かっている頃だろう。
「頭の回転は悪くなくなったけど乙女心に気付けるようになるのは何時なんだろうなぁ……」
楽しいショッピングを終えて戻ると直ぐに束は研究の再開、クロエは少し疲れたのか休憩がてらにレイに買って貰ったドライバーで劇中再現をし始めた。そして彼は―――内部にアーマーが収められたドッグタグを掌に乗せながら見つめた。
「今の私はスパルタンなのか、それともレイなのか……今の私は何だ、本当にスパルタンなのか……教えてくれ……頼む、チーフ……貴方なら今どうするのか……俺に教えてください……」
ミョルニルアーマーの機能 その2
ある種のパワーアシストがあり、60tの重量がある戦車を一人でひっくり返せる力がある。またその重量にもかかわらず、走力やジャンプ力でも一般兵士に劣らない。
アーマーの動作は神経回路インタフェースにより、思考と同じ速さでコントロールされる。HUDには銃の種類にかかわらず常に照準が表示されており、正確な射撃をサポートする。銃火器の残弾やバッテリー残量を解析し、表示する。
モーショントラッカーにより、周囲360度の動く物体を探知できる。更にその敵味方も判別でき暗所で使用するフラッシュライトを内蔵している。が、スパルタンⅡは視力の強化手術も受けているので暗所も問題なく見える為、彼らとしてはあまり必要ではないのかもしれない。
背中には武器を装備するためのマグネットがありくっつけるように装備できる。
これらの機能を併せ持った末にアーマー本体は500キロ、そして巡洋艦一隻に匹敵すると言われるコストがかかってしまう。