IS×SPARTAN   作:魔女っ子アルト姫

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束、073、少女ら。

「やっぱり……心配してた通りになっちゃったか」

『はい、申し訳ありません。私がもっとレイさんのケアを出来ていればよかったのですが……』

「いや十分にやってくれてるよ、でも全然足りない位に荒れちゃってるんだよ……」

 

旅館近くに仮拠点を設営している束の元へと届いたイグからの通信に全く役に立てなかった事への無力感、それが怒りとなって現れてしまう。それを抑え込みながらもどうすればいいのか策を巡らせるが、そんな事なんて出来っこないと結論が生まれてしまう。

 

「……無理だね、レイ君からすれば見ず知らずの私達なんてコブナントのそれに近い何かだし」

 

全く別の地球の人間、だが其処に彼を構成していた要因を一つもなく別次元の存在だと感じさせる。何も知らない者ならば必ず言うだろう。命を懸けて守る為の戦いをし続けた、その果てに生き延びたのならば人間として生きて守ろうとした平和を感じればいいだろうと。

 

「馬鹿の言う事でしかない、そんな事出来ないから苦しんでるだろうが……!!」

 

彼にスパルタンとして選ばれ、スパルタン-S-073となった事は誇りなのだ。家族に等しい仲間と共に戦い続けた日々が全てなのだ。人間(レイ)として生きるという事はそれから眼を背けるという事だ。共に死ぬはずだった仲間を置き去りにしてしまった、生きてしまっている彼はだからこそ苦しんでいる。

 

今の彼にとって生き地獄に等しい苦しみ、それは例え束とて彼を満たす事は出来ないのだろう。束はあくまでそれに関する情報を識っているだけで知っている訳ではない、仲間(スパルタン)ではない。絶対的な境界線で隔たれた壁を超える事なんて出来ない。

 

「何が、天災だよ……何が、何が……」

「束様……」

 

悲痛に歪んだ先に投げかけた言葉は何にも触れる事もなく消えていく、あるのは静寂だけ。唯圧し掛かってくる無力感とやり切れない思いが交錯していく中で束は迫ってくる気配に気づいたのか苦虫を嚙み潰しながら立ち上がって普段通りの笑顔を張り付けた。

 

「やぁやぁっレイ君、そっちのお仕事は終わったの?」

「いえまだ途中ですが間もなくです」

 

悟られたくはない……それは単なる見栄なのだろうか……同情なんて受けたくはないかもしれない、そんな気遣いを向けて位しか出来ない自分に酷く苛立っていた。

 

「では後程お伺いします」

「うんそれじゃね~」

 

機器の設置などを終えるとそのまま他の場所へと向かって行く彼を見送った後、崩れ落ちてしまう。言葉を交えると彼が危うい状態だとそれがより明確になっている。それを感じながら一つの決心をしながら束は鋭い瞳を作りながら拠点の中へと入るとあるカプセルの中に収められている物へと瞳を向けながらキーボードを叩き始めた。

 

「―――君は反対するだろうけど束さんはすべきだ思ってるよ―――これが君を癒すやり方だからね」

 

 

「完了、任務完了」

 

最後の機器の準備が完了し後は千冬にこの報告をするだけとなった。だが同時に綻びが生まれてしまった、僅かに指が震えた。思考がまた揺らいだ、またあれを考えてしまった。

 

「―――聞いて呆れるな……」

 

それを無理矢理収めながら立ち上がる。何であろうと任務をこなすだけ、そして自分は束の護衛に戻るだけだろうと言い聞かせて漸く震えが止まったのを見ながら自分が大分狂って来ている事を自覚せずにはいられなかった。だがそれを表に出さずに千冬の元へと報告に向かおうとするのだが……不意に砂浜から楽し気に響く声が聞こえる。海で遊ぶ生徒達の声がする。

 

「あっスパル先生~!!」

「一緒に泳ぎましょうよ~!!」

「いやアンタ先生があれ脱ぐと思うの?」

 

そんな声には応えない、筈だったのが千冬の声が過る。

 

 

―――のんびりやって貰って構わんぞ。

 

 

それに従うならば多少は時間をかけてもいいのではないか、長めに見積られた任務完遂までの制限時間を考えればまだまだ余裕はある。ならば―――と砂浜へと足を向けてみる。生徒達からは驚きと共にそれを歓迎する声が響いた。教官としての自分はそれに笑みを浮かべ―――スパルタン-S-073としての己が軋んでいる事に気付けず。

 

「ああ先生私の水着どうですかこれ!!」

「あざとい」

「狙いすぎ」

「お腹プニプニ」

「アンタらには聞いてないって嘘ぉ!?ちゃんとシェイプアップしたのよ!?」

 

賑やかで楽し気な生徒達の声、年頃の少女たちがやや大人ぶりすぎている水着などを纏っている姿は見眼麗しいのだろう―――それに彼は手を振ってやりながら大きく青い海を見つめた。

 

「……綺麗、だな」

 

地球出身ではない彼にとっても地球は故郷という不思議な自覚があった。それゆえに地球は絶対に守らないといけないという強い思いがあった。そして初めて地球を見た時の感動と沸き上がった使命感を忘れた事も無い。今自分はそんな地球の地に居る事に思いを巡らせていると背後から軽い衝撃が襲ってきた。

 

「先生、お仕事は終わったんですか?」

「デュノアそれに……オルコット」

「はいシエラ先生、お会いしたかったです♪」

 

後ろを見るとそこにはモデル顔負けなスタイルに見事に選び抜かれた水着を纏っている二人の美女がいる。普通の男ならば確実に目が離せなくなること間違いない。

 

「流石の美貌だな、モデル顔負けな美しさと可憐さだ」

「いやですわシエラ先生照れますわ♪」

「えへへへっ~♪」

 

と子供のような笑みを浮かべているシャルに赤らめた頬と共にさり気なくポーズを取るセシリア、明らかに誘惑する気MAXである。しかしスパルタンⅡである彼に効果は余りない。

 

「あの先生、是非ともお願いしたい事が御座いますの!!」

「なんだ」

「そ、その……是非サンオイルを塗って頂きたいのです!!」

「ちょっとセシリアずるいよ!!」

 

と攻め始めたセシリアに慌てるシャル、だがあの073が簡単にやるとは思えずに断れるのではないか、と言う考えもあったシャルロットはさり気なく気落ちするセシリアを想像して口角を上げる……のだが

 

「……経験は無いがそれでも良いのなら、織斑女史への報告の後でなら」

「ほ、本当ですか!?是非お願いします!!」

「え、えええっ!!?ず、ずるいよ僕もお願いします!!」

 

この時、彼は気付けずにいた。セシリアとシャルロットとの会話の最中に余計なことが考えずに済んでいた事に。それは彼女が自分と関りが強くなっているからだろうか、セシリアはスパルタン計画について話したからか、シャルロットは自分が救おうとした少女だろうか……何も分からないが僅かながらに彼の心は踏み止まれた。




再突入装備

ミョルニルアーマーへ装備するモジュールの一つで自由落下での大気圏突入に対応した装備。
大体高高度から落ちて平然と生きているチーフのせいで勘違いされがちだが、いくらスパルタンでも単独での大気圏突入は自殺行為である。アーマー内のジェル層でも衝撃を吸収しきれず、関節などをロックしたとしても流石のスパルタンでも何かしらの備えがない確実に死ぬ。

……筈なのだがチーフは何故か毎回毎回平然と生きている。
何故かと言われたら、チーフの運、としか言いようがない。
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