IS×SPARTAN   作:魔女っ子アルト姫

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レイ、食事、整体。

「―――……」

「シエラ先生、追加が来たようですわ」

「済まない、恥ずかしい所を……」

「そんな事ないですってそれだけ此処のご飯が美味しいって事ですから」

 

個室へと案内された073はセシリアとシャルロットと共に夕食を取る事になった。出されたのは純然たる和食のフルコース、日本食すらまともに食した事のない073にとっては洗練され美しさすら感じるそれらはまさに青天の霹靂と言うに相応しいものだった…だった。スパルタンは切り札、そんな彼らを投入する作戦は慎重に選ばれる、そんな彼らにはベストなコンディションを保つことが要求される故に待機時間などもあったが基本的に娯楽などに費やす事なども無いⅡ達は戦う事へと集中し続けていた。何時、命令が掛かったとしても動ける体制を維持し続ける事をし続けるのが普通。そんな彼らの食事は普通ではなかった。

 

だがその日、073であるレイは和食を口にした。魚を切っただけの刺身を口にして驚いた、美味いのだ。単純に魚の身を切って美しく並べただけである筈のそれが目を見張る程に、共に口にする白米の甘さにも驚きを感じさせられた。お椀の中にある吸い物を口にすると透明なのに力強い味が口の中を覆うのだ、なんだこれはと驚かずにはいられなかったのだ。

 

「レイさんって凄い健啖家だったんだね、学園でも凄いモリモリ食べてるんですか?」

「―――いやそう言う訳では……」

 

言えるはずもない、彼の食事は食事ではなく補給でしかない。スパルタンは兵士ではない、兵器だ。そう言わしめるかのように073はそれを続けている、それはスパルタンとして活動している間もずっとだった。チームが食事を取っている際も自分は薬で栄養を取り自分の分は部下へと回していた。単純に食い意地が張っていて取り合いをそれらを諫める為……だが今は違うのにそれを続けていた、だが今は違う事をしている。

 

「セシリア、其方の薬味を取ってくれ。試してみたい」

「はいこちらですね」

 

箸を初めてとは思えない程に上手く扱いながら食事を進める、薬味を加えてみると味が変化しながらも深くなった。自分の知らない命の側面だと思えるほどの衝撃を覚えてしまう。自分は此処まで食べれるのか、と驚くほどに食が進む。強化手術の影響か、食欲といった物は必要なものを摂取したと自分が感じられれば生まれなかった。故に必要分の薬を飲めば何も感じない。自分が此処まで物を美味しく食べれる、スパルタンになる前ならば当たり前だった筈の事が酷く新鮮に思えてしまっている。

 

「―――凄かった」

 

自分には成し得ないものだという思いと共に言葉が吐き出された。

 

「ハイとても美味しかったですわ」

「うん、流石はIS学園が貸し切りするだけの旅館なだけはあるよね」

 

洗礼された職人の技には美食の国であるフランス出身のシャルロットも笑みを浮かべ、貴族の当主であり大きな宴にも出席した事があるセシリアも満足する程の素晴らしい出来前の物ばかりだった。食後のお茶を楽しみながらにこやかな会話の後、主にシャルロットが待ちわびていた整体が始まった。

 

「―――後で織斑女史に言っておく」

「是非お願いします」

「あ、あのシャルロットさん大丈夫なのでしょうか、凄いゴキゴキ骨が鳴っている気が……」

「背骨も大分ズレているな……関節も……明日には全快するだろうがこれは酷い……」

 

千冬のサンオイル塗り、という名の一種の技を受けたシャルロットの身体は何故か大きなダメージを受けていた。肉体面だけではなく骨辺りまで浸透してしまっている。それらを上手く解しつつズレてしまっている骨を矯正し直す。翌日には完全に戻っている事だろう。

 

「織斑女史……加減を知らないのだろうか」

「あ"あ"っ~やばい超気持ちいい……新しい境地が開けそう……」

「黙って受けろ」

「あ、あのなんかすごい音がしているんですが痛くないのですか?」

「いや全然、セシリアも受けてみなよマジで凄い、世界が変わったみたい―――Mの気持ちが分かったかも」

「シャルロットさん!?」

「流石に冗談だよ、ホントだよ?」

 

この後、千冬の元まで出向いたレイが話をして千冬は思わず頭を下げたのであった。

 

「済まん……本当に私の善意のつもりだったのだが……」

「善意なのは結構ですが、そこで自らの感覚だけで相手にダメージが及ぶのが危険なのです。客観的に自らを判断した上で行動が求められるのが教える立場です」

「……ぐうの音もでん……」

「私よりも教育者歴が長い織斑女史がそれなのは如何かと」

「……」

 

とシャルロットという被害者もいるので今回ばかりは強めに注意をしておく事にしておくのであった。そしてそれらが終わった後に巡回へと気持ちを切り替えようとした時に―――気付いてしまった。自分は今まで何をしていたのかと。

 

「―――そんな、まさか、いやそんな事は絶対に……」

 

先程まで自分は何をしていたのか、その時に何を感じていた。何も感じずに考えず、その場の全てを受け入れていたのである。それはつまり―――迫りくる恐怖も何も失う恐怖も無かったのだ。スパルタンではなかった、レイであった。

 

いい筈の事ではないか、と思われる事へ彼は絶望した。レイであろうとするという事は嘗ての自分、スパルタンになる前へと戻ろうとしている事に他ならない。それはスパルタンであった自分を忘れようとしている、苦しさから解放される手段としてあり得るかもしれないと思っていたそれに自分から指を掛けていたのだ。忘却という甘い毒が立ち込める地獄が、また新たにスパルタンを貪ろうとする。

 

今度は―――彼の全てと言ってもいい誇りを奪おうと画策が始まった。




セイバー

UNSCが極秘裏に開発していた宇宙戦闘機。拠点防衛用として設計されている為に性能面を強く追及した結果、エナジーシールドを装備している。これにより、セラフの様なコヴナントの機体とも十分に渡り合える性能を持っている。機銃とミサイルを装備しており、追加ブースターを装備することで単独での大気圏突破も可能。

ノーブル6はセイバーの元テストパイロットだが、計画の機密度から正式には明かされていない。
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