S-052との再会を遂げた073、彼も参加する事になった臨海学校の二日目。第五世代型という登場に驚きつつも教官としての職務を全うした後に束へジョージと共に向かい、改めての自己紹介と顔合わせを行う事になった。
「初めまして篠ノ之博士、スパルタン-S-052.UNSC特殊作戦軍ノーブルチーム所属、ノーブル5です。突然の事にも関わらず私の事を受け入れて下さり深い感謝を」
「篠ノ之 束だよ、好きなように呼んで構わないしそんなに畏まらなくてもいいんだよ。束さんは束さんだし人類の為になんて崇高でご立派な使命がある訳もないからさ、ラフに接して貰えた方が束さん的にも楽だから」
「そうですかね、それじゃあ適度に崩して行かせて貰いますよ。ハルゼイ博士より気さくな方で正直ホッとしてますよ今」
「アハハッ噂に聞くスパルタンのお母さんにして人類の最高峰って博士さんだね。束さんとして是非ともお話ししたいもんだよ」
レイと違って随分と気さくに話しかけてくれるジョージに笑いかける、彼は酷くしっかりしている為か基本的に敬語を崩さないし常にキッチリしている。それに比べると酷く接しやすく話しやすい、レイも教官としての時みたいだと一番いいのだが、それは彼としては難しいらしい。
「それでジョージ君でいいだよね、レイ君から話を聞いた時は驚いたよ。まさか別のスパルタンさんとこうして会うなんて」
「レイは随分と博士に情報を提供しているようですね、やれやれっレイお前やっぱりハルゼイ博士に怒られるな」
「……やめてくれジョージ」
と悪い笑みを浮かべながらのそれに渋い声で答える姿に束はこれこそが本来の彼なのだと実感しつつも自分といる時は矢張り常に自分を抑制して押し殺していた事が察する。
「まあ束さんの護衛兼IS学園の警備強化って名目で学園に行って貰う事になるけど大丈夫かな、ジョージ君的にもレイ君と一緒の方が気は楽でしょ?」
「そうして頂けると有難いです、此方側の事も色々と調べたり知っていかないといけないですから」
「そっちはもうち~ちゃんに話は付けてるから安心していいよ、それと―――はいこれ」
懐からドッグタグが手渡されたジョージはそれを見つめながらもそれがISモジュールである事の説明を受け、それらが成す機能を聞いて驚きを隠せなくなった。
「……博士、貴方俺達の所よりもよっぽどとんでもない技術持ってますよ」
「いやいやそれでも宇宙進出出来ないから、実績的に言えばそっち方が何倍も凄いんだよ」
「凄い事は事実です、それに博士の凄さはこれからもっと知る事になる」
「おいおい流石に少しずつで頼む、短時間に一気に詰め込まれても処理しきれないぞ」
そんな事を言いつつも言われるがままにドッグタグを装着するとそれは少しずつミョルニルアーマーへの同調を始めていく、ジョージのアーマーは重厚なカスタマイズがされている筈だが、そこは束驚異のメカニズムで上手く抵抗しつつレイのアーマー同様の機能の獲得に成功する。
「……なぁ、ONIみたいな組織ないよな」
「あったとしても博士はISの発表から逃げ続けてる。逃走に関する技術については自分の技術力も使うからケリーに迫る程に凄い」
「そりゃ確かにやばいな……俺達の出番は最後の手段って訳だな」
「そう言う事だ」
短いながらも二人の間では完璧な情報交換がなされている、親友すら超えている家族としての絆を感じさせるやり取りに妹と上手くやれていない事を思うと少しばかり嫉妬が沸いてしまう。そんな思いの傍らでこの二人に勝てる相手なんているのだろうかと思う、そしてそんな二人に守られるIS学園……また襲撃があったとしても直ぐに抑えられるのだろうなと、思いつつジョージはISの機能を活用してアーマーが解除されるのを見て絶句する。
「……設備と技術者要らずだな」
「全くだ」
そんな驚きと衝撃だらけの束との対面を終了させた二人、束は得られたデータの解析と第五世代の修正作業に入った。護衛としての仕事は設備などで代用するので今は二人でゆっくり話していいと気を遣われた。レイとジョージは砂浜に立ちながら海と夜空を見つめていた。すっかり日も落ちて夜空の星空が海を煌びやかに飾るのを見つめながら、スパルタンは口を開く。
「ジョージ、これから俺達は如何するべきだと思う」
「考えなかったのか?」
「考えたくても俺には余裕がなかった。何で俺だけ生きてしまっているのかって考えちゃってな」
「今は死に損ない仲間がいるから違うって言いたいのか」
「そうじゃない、意地悪しないでくれ」
冗談もそれぐらいにしておきながら、真面目な声色で話をする二人。
「UNSCどころか人類は宇宙にすら十分な進出もしていない、スリップスペースドライブもまだまだだ」
「スパルタンも俺達だけか、そして全く別の世界……」
上げられる材料や現状を数えていくと絶望的な状況である事に変わりも無く、スパルタンとして生きる事も出来ない世界という現実の重みが圧し掛かってくる。リーチは間違いなく陥落している、地球の喉元にまでコブナントの刃は迫っているというのに自分達が出来る事は何もない。歯痒い、無力感が身体を蝕む中でも不屈のスパルタンは足を止める事はない。
「今は今で出来る事を一つ一つこなしていきながら、未来について考えて行くしかないだろうな……何なら俺達でUNSCの原型でも作ってみるか?」
「もしも作るなら最高司令官の座はジョージに譲るよ、俺はガラじゃない」
「そうかぁ?でも一夏だったか、あいつはお前の事をすごくいい先生だって慕ってたぞ。他の二人の女の子もな」
「教官と司令官は違うだろ」
そんな考えすら出せなかったレイはそれを聞いてある種の可能性、いややるべき事を考えようとしていた。もう自分達の運命は潰えていると言える、ならば何故この世界に居るのかを考えて何をすべきなのかを見つけるべきなのではと。互いに死ぬという覚悟をもって戦った末に此処にいる、だが自分達はまだスパルタンだ。スパルタンとして生きながらこの世界でその使命を果たす道があるのではないのだろうか。
「答えはまだ出せなくてもいいとは思う、俺もまだ全然この世界の事を知らない。まずは見聞を深めないとな―――まずはそうだな、お前が育ててる新米スパルタンの面倒って所か」
「その言い方はやめてくれ、俺はこの世界でスパルタンを作るなんて思ってないぞ」
「この世界でじゃないさ、この世界のスパルタンだよ……まあゆっくり行こうぜ」
スリップスペースドライブ
正式名称は「ショウ・フジカワ式光速機関」。要はワープエンジンである。ワープ、スリップスペースジャンプ専用の機関。動力機関などとはまた別のもの。これの機関を用いる事で人類は地球圏から離れた銀河圏まで植民地を広げるまでに至る事が出来た。
コヴナントは人類を遥かに上回る精度でのジャンプが可能だが、恐らくフォアランナーの技術をそのまま使用しているだけだと思われる。しかし人類はこれを自力で開発している。